不健全鎮守府   作:犬魚

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年の瀬KENZEN回

【登場人物】

提督(78)
ユーレーだの妖精だのふわふわしたものは信用しないが自分の中の宇宙は信じる

夕張(12)
ユーレーだの妖精だのふわふわしたものを信じないニューロンの申し子、たぶん妖精が見えてない


提督と夕張とNYの変人

「最近、出るらしいです」

 

「何が?」

 

読んでいた文庫本を机に置き、珍しく神妙な様子で喋る五月雨に視線を遣った

 

「夜に、なんかこう…白いのが?」

 

「ふ~ん」

 

あぁ、まぁ、そーゆー夜もあるな、こうアレだよなアレ、ムラムラくるっーか、猛る己自身を抑えられないアツい衝動みたいな

 

「一応言っておきますが、今お考えの性的なものではなく、霊的なものです」

 

「ハァ?そんなの考えてねーよ?考えてねーし」

 

たまに思うが、コイツ、俺の心が読めるんじゃないか?だとするとコイツは邪眼の天敵なのでは…?

 

「っーか、霊的なもんってなんだ?霊的って」

 

「なんか駆逐艦の寮の廊下に半透明の白い影が出るらしいですよ」

 

「ふ~ん」

 

「ふ~ん、じゃないですよ、ほら、目安箱にも投書がいっぱいあるんです」

 

そう言いながら五月雨は目安箱をひっくり返して投書とゴミを机の上にブチ撒ける、誰だよゴミ入れたヤツ…

とりあえず五月雨は適当な投書を手にとって読み上げる

 

『幽霊がどーのーこーの言って暁が夜中にトイレに行けなくて困る』

 

『幽霊が出るっ!とか言って暁が夜中に便所に行けなくて困るじゃない』

 

『幽霊怖いとか言って暁が朝、アレ●ガルドの地図作ってマジウケる』

 

『ヤバいっぽい、路上で重巡マジヤバいっぽい』

 

『この磯風、今度G●Dを調理しようと思う、あーんしてやるのもやぶさかではないので是非食べてくれ、逃げるなよ?この磯風、決して逃がしはしない』

 

「…まぁ、こんな感じです」

 

…たしかにユーレー関係の投書があるな、軽い殺害予告みたいなのがあるが、見なかった事にしよう

 

「どうしますか?」

 

「ふぅ…バカバカしい、ユーレーとかいるワケねぇだろ?」

 

「でも目撃情報がいっぱいありますよ?」

 

「アレだよアレ、みんな疲れてんだよ?どうせアレだろ?どいつもこいつも昼間にツチノコでも探して無駄に体力削ってんだろ?」

 

「…」

 

「とりあえず寝る前にパン●ース穿くかペットボトルにする、これで解決だ」

 

「…もしかして、怖いんですか?」

 

「…は?ナニ言ってんだオマエ?そんなワケないだろ?」

 

コイツ、なかなか鋭いな…いや、鋭くない、だってユーレーとかマジ怖くねーし

 

「じゃ、今夜、寮の見回りをお願いします」

 

「は?」

 

「は?じゃないですよ、もし出たら撃退してくださいよ、間違っても恐怖の叫び声とかあげないでくださいよ?みんな寝てるんで」

 

真面目な顔して何言ってんだコイツ!?

 

「ちょ!待てよ!」

 

「本来なら私もお付き合いしたいところですが、私も夜は早く寝ちゃうんで、最長でも0時までなんですよ」

 

「シンデレラかッ!」

 

「シンデレラじゃないです五月雨です、じゃ、お願いしましたからね」

 

「待て待て待て待て!ステイ!ステイだよステイ!ステイアウェイだよ!なんなのオマエ?生まれながらの無法地帯なの?」

 

「大丈夫です、提督が1人じゃ怖くて失禁気絶して朝起きた駆逐艦のみんなにみっともない姿を見られないように手は打ってますから」

 

「しねーし!!誰が漏らすかよ!」

 

◆◆◆

 

02:00 駆逐艦寮、通称男●寮

 

この草木も眠る丑三つ時に、男●寮の前に集まった2つの人影…

 

「フーッ~…異常無し、よし、帰るぞ」

 

「まだ中に入ってないじゃないですか」

 

五月雨が事前に声をかけていたアンチオカルトの急先鋒、スーパーサイエンスネットワークの申し子、軽巡夕張

 

「俺にはわかる、今日は出ない」

 

「大丈夫ですって、ユーレーだの妖精だのそーゆーふわふわしたよくわからない物は科学の前には無力に等しいと言うことを教えてあげますよ!」

 

新たな煙草に火を点ける俺の横で自信満々に喋るこのアホンダラ…背中に背負った機械はゴーストをバスターするアレだろうか?

 

「この………ドリルの前ではね!」

 

ジャキィーン!!

 

「ドリルかよ!」

 

背中の機械からにょきっと生えたアームに搭載されているのは紛れもなくドリル!

 

「もうちょっとアレじゃないのか?なんかよくわからんビーム的なモノが出る装置じゃなかったのか?それ?」

 

「何言ってるんですか?このドリルさえあれば何でも出来ます!不可能だって可能です!ドリルの持つ無限の可能性を信じる事で、この閉ざされた宇宙に風穴を開ける事も出来るんです!信じるんです!ドリルを!」

 

ナニ言ってんだコイツ?イカレてるのか?よく見ると夕張の両目は螺旋状にグルグル回っている気がするが……たぶん変なクスリでも打ってるんだろう

 

「さぁ!行きましょう提督!」

 

「ざらっと見たら帰るからな?いいな?ざらっとだぞ?」

 

寮内に進入した俺達はとりあえず入口付近をぐるっと見回す、特に物音もなければ非常灯の薄い光だけが灯っている

 

「…何もいませんね?」

 

「よし、帰るか」

 

「待ってください、コレを使いましょう」

 

そう言って夕張はフリー●一味が使っている戦闘力を測る例のアレみたいなものを取り出して左目に装着した

 

ピピピピピピピ!

 

「ありましたよ!反応が!」

 

本来なら、でかした!と言いたいところだが今日は言いたくない、夕張はこっちですと言って俺を置いて先に進もうとするので俺は仕方なく夕張の後を追う、別に1人になるのが怖いじゃあない、俺はあくまで夕張を心配しているだけだ

 

「50000……55000…70000!スゴい!まだ上がるッ!」

 

「何が!?」

 

「え?戦霊力ですけど?…う゛っ!」

 

ボンッ!!

 

夕張のス●ウターが小さく爆発して壊れた

 

「…これはかなりの強敵ですね!」

 

「アレか?今の爆発はポルターなんちゃら的な感じか?そんな感じで壊れたのか?そうなんだな?」

 

「…居ました!」

 

「あ?」

 

夕張の指差した方向、たしかに………なんか白いもやっとしたなんかふわふわした感じの、いや…髪の長い女みたいな?

 

「髪長い女とか鉄板ネタじゃねーかッ!ハハ…ないない、どうせアレだろ?長門かなんかだろ?」

 

「提督、実はこの寮、以前は墓地だったそうですよ」

 

「なんで今それ言うんだよ!!」

 

クソッ!!なんで長門じゃねぇんだよ!忍べよ!カメラ持って駆逐艦寮に忍び込んどけよ!!

 

「フッ…たかが髪の長い女の霊ぐらい、このドリルでブチ抜いてやりますよッ!」

 

ドリルアームが螺旋回転の唸りをあげ、夕張は髪の長い女に突貫する!コイツ…意外と早く走れるじゃないか!

 

「因果の輪廻に囚われようと残した思いが扉を開く!無限の宇宙が阻もうと!この血のたぎりがサダメを決める!DNAの一片まで完全消滅せいやァァァァァ!!」

 

幽霊にDNAがあるのかはさておき、夕張はまるでスレードゲル●ルの如きカットインを決めて走っ………

 

ズシャアッ!!!

 

「ウボァー!!!」

 

「コケたァァァァァ!!!」

 

あの野郎ォォォォォ!!この大事な場面でコケやがったァァァァァ!!なにやってんだアイツ!!

 

ぶすッ!

 

「ンホオォォォォォ!!ドリル!ドリルゥゥゥ!!奥まで衝いてくるゥゥゥ!!二重螺旋くるぅぅぅぅ!!」

 

コケた拍子に背中のドリルアームが夕張の尻に刺さり超螺旋エナジーから夕張の中でビッグバンしたようだ…

 

正直、その様子は俺もドン引きだが幽霊もドン引きだったらしく、俺達はごく当たり前のように互いに夕張の姿に敬礼をしていた

 

「ちょっと…うるさいんですけどぉ」

 

「なんなんですか…」

 

「また暁かよ…」

 

どうやら今の騒動で何人か起きてしまったらしく、パジャマだったりパン1だったり全裸だったりのアホどもが部屋から出て来た

 

「…なにコレ?」

 

「夕張…?夕張さんじゃないコレ?」

 

「あ、提督もいる…なんなんすか?新手のプレイですか?」

 

ぞろぞろとガキどもが部屋から出てくると、いつの間にか幽霊らしき女の姿は居なくなっていた

 

「変なプレイは部屋でやってくださいよ」

 

「アレですか?ケツに挿したまま散歩とかそんな感じの…?」

 

「うわ…引くわぁ」

 

「ってか、これはヒドい」

 

「とりあえず写メ撮ろ、写メ」

 

いかん、このままでは俺が変態プレイヤーされてしまう

 

「誤解すんなクソガキども、俺達はユーレー退治に来てたんだよ」

 

「ユーレー退治に来てなんでケツにドリル挿入ってんだよ!」

 

「ありえねーだろ!」

 

「もうちょいマシな言い訳考えろよなー!」

 

‐‐‐

 

翌日の基地スポ…

 

深夜の徘徊プレイ!問われる駆逐艦寮の安全と基地の風紀!

 

『いつかヤると思ってました 練習巡洋艦K島』

 

『引くわーマジ引くわ、マジ変態じゃん 自称航空巡洋艦S谷』

 

『駆逐艦寮に行くなら何故このビッグセブンにも声をかけないのか、誠に遺憾だ 大戦艦N門』

 

…ちなみに、五月雨の野郎はあの騒ぎの中も普通に寝てたそうだ


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