【登場人物】
提督(79)
正月はアツい餅
五月雨(32)
正月は雑煮に餅
鈴谷(28)
正月は力うどん
新品のパンツを穿いた元旦の朝のような爽やかさの漂う執務室…
「五月雨くん」
「五月雨です、合ってますけど…何ですか?」
「お年玉をあげよう」
懐から茶封筒を取り出し、スタイリッシュに五月雨に投げ渡した
「はぁ、一応ありがとうございます」
「一応とはなんだ?一応とは」
「せめてお年玉っぽくポチ袋に入れてくださいよ」
「ゴチャゴチャ言ってるんじゃないよ、この髪長駆逐艦が、だいたいなんだその髪は?テ●モテを使い切るつもりか?」
当基地の正月は基本的に休暇を与えている、一部のヤツは実家に帰省しており、そうでない者は初日の出暴走に出掛けたり、寮で寝ゲロしたりと過ごし方は様々だ…
ゴン!ゴン!
ブ厚い鋼鉄の扉に流れ弾が当たったようなノック音、朝二番の来客がやって来た
「ティーッス、鈴谷がお年玉貰いにきましたよぉ~」
正月から雌の匂いをプンプン漂わせるザ・ビッチ・オブ・マスタービッチ、鈴谷がヘラヘラ笑いながらやって来た
「おめでとう」
「おめでとうございます、お年玉ください」
「お年玉か…君には3つの選択肢がある」
「マジ?鈴谷3択強いよ!マジ強い」
「では下記のプランから選びたまえ」
①スネークバ●トォー!
②スネークバ●トーッ!
③スネークバ●ト!
「スネークバ●トしかねぇよ!!なんなの!?せめて良いユメ見せるとかないの?」
「無い」
「正月から厳し過ぎるッ!!夢が無さ過ぎるッ!」
「ゴチャゴチャ言ってるんじゃないよ、このビッチは、だいたいオマエに邪眼とかもったいねーんだよ」
「どーでもいい時に使うじゃん、っーか金!ほら!金!お年玉!お年玉ちょうだい!ちょうだい!ねぇ?チョーダイよ!鈴谷もう欲しくて欲しくてたまんないじゃん!」
「やかましい」
ゴン!ゴン!
重厚な鋼鉄の扉を叩き、おそらくは昨日はさっさと寝たのであろう第六駆逐隊のキッズ達がやって来た
「あけましておめでとう、なのです!」
「ハラショー」
「あけましておめでとうじゃない」
「暁ちゃんのくせになのですが被ってるのです」
「うむ、おめでとう」
俺は懐からポチ袋を取り出して1人1人丁寧に手渡し、アツいシェイクハンドを交わした
「やったぁー!」
「ハラショー」
「これでドル●ゲドンX引くじゃない!」
「イ●ンモールに行くのです!」
キッズ達はキャッキャとハシャぎながらお年玉を手に走り去った
「…」
「…」
「…なんでガキどもには気前よく渡すのに鈴谷にはくれないんですか?」
俺は胸元から煙草を取り出し机の上でトントンしてから口にくわえる
「…五月雨、火」
「煙草なら外でお願いします」
「なんで鈴谷にはくれないんですか!?」
まったく、相変わらず細かい事にうるさいビッチ野郎だな
「クソガキどもには渡したじゃん!ナニそれ?おかしくね?」
「ちなみに私も貰いました」
五月雨はシレッと茶封筒を取り出してみせる
「ほらっ!サミーも貰ってるじゃん!!」
「やかましい、だいたいオマエはなんだ?重巡か?」
「航巡だよ!ナニ?航巡にはくれないとかそんな感じなの!?」
「ん?あぁ、まぁ、それでいいや、うん、それな」
「テキトー過ぎるッ!渡さない理由がテキトー過ぎるッ!!」
「ったく…うるさい野郎だな、ほら、金やるから缶コーヒー買って来い、釣りはやる」
「わーい………って!!500円かよッ!万札出せよ万札!」
ゴン!ゴン!
三度叩かれる重厚なる真理の扉、開かれたその向こう側から来たのはインターナショナルパッキンボインと言う名のKUROFUNE!アイオワ
「Hai a HappyNewYear、どう?このFURISODE?」
「…おっふ」
「…おっふ」
「よくお似合いで」
その衝撃は俺と鈴谷がおっふせざるを得なかった
「…アイオワくん」
「ナニ?」
「コレ、少ないがとっておきたまえ」
「ナニこれ?OTOSHIDAMA?」
アイオワとアツいシェイクハンドを交わし、アイオワはゴキゲンに去って行った…
「…」
「…」
「なんでボインにお年玉あげたの?」
「ボインだからだ」
「鈴谷もまぁそこそこある方だと思うんですけど?なんで鈴谷にはくれないの?」
「釣りはやると言ってるだろーが」
「そんなついでじゃないで鈴谷もお年玉袋に入ったやつが欲しいんですけど!」
「ゴチャゴチャ言うんじゃないよこの子は」
ゴン!ゴン!
またか、どいつもこいつも暇なのか?
「うるせぇ!!今、取り込み中だよ!!鈴谷がお年玉貰う番なんだよ!」
「あら?鈴谷、居ましたの?」
「熊野ェ…」
「あけましておめでとうございますわ」
やって来たのは鈴谷の妹、エセガント航巡熊野
「うむ」
懐にはもう無いので尻のポケットからポチ袋を取り出し、スタイリッシュに熊野に投げ渡す
「イヤッホー!これで新しいウルトラダッシュモーターを買いますわー!」
「ハッハッハ」
「ちょ!待てよ!」
「なんですの?」
「なんだ?」
「や……そんなナニコイツみたいな顔されてもマジ困るんですけど、じゃない!お年玉ッ!甘い!熊野に甘いッ!」
「別に甘くありませんわよ、ねぇ?普通ですわ」
「あぁ、別に甘くないな、普通だ」
「甘いッ!どう考えても甘過ぎるッ!っーかやっぱ仲良くね?提督と熊野仲良くね!?」
「そんな事はないぞ、たまに歯ブラシ借りるぐらいだな」
「そうですわね」