不健全鎮守府   作:犬魚

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提督暗殺編への序奏回

【登場人物】

提督(87)
前聖戦の時はキ●ンサーで御座いました

長門(13)
逆賊の汚名着せられ非業の死を遂げる

大和(3)
本当は海上の愛と正義の為に戦いたかった


提督と超戦艦と悪魔

「提督、大和型戦艦大和と長門型戦艦長門、参りました」

 

「フッ、何の用だ?同志提督よ」

 

未明から微妙な小雨が降り続ける暗雲立ち込める天気、執務室に呼び出された大和と長門はいつもとは様子が違う提督に怪訝なものを感じていた

 

「うむ、よく来た二人とも、実はサンクチ●アリが誇る大戦艦級の君達を呼んだのは折り入って話があるからだ」

 

「はぁ?」

 

「フッ、折り入って話とは水臭いじゃあないか」

 

「君達も知っての通り、深海棲艦との戦争が始まって早数年、我々は海上にはびこる悪を打ち払う為に戦って来たワケだが…」

 

提督は買い置きの缶コーヒーを一口飲んでひと息つく

 

「新たなる聖戦の幕開けの前に、私もそろそろ提督の座を退こうと思ってな、そこで君達二人のどちらかに譲ろうと考えた」

 

「…はぁ?」

 

「なんだとォ!?」

 

突然の提督引退発言に、さすがに大和、長門の両者とも驚きを禁じえず動揺が走った

 

「まぁ色々考えた結果、仁・恥・勇を兼ね備えた長門、これよりお前に提督の座を任せる事にする」

 

「は?………このビッグセブンが?」

 

「…」

 

「まぁ、ウチの戦力はそこそことは言え性格と素行に少々問題があるヤンチャなヤツばかり、だが遅くとも二月中頃には必ず聖戦が起きる、その時の為に多くの艦娘達を立派に育てて貰いたい」

 

提督は缶コーヒーを飲み干し、缶をダストシュートに放り込んだ

 

「大和よ」

 

「はぁ?」

 

「聞いての通りだ、長門に力を貸してこれからのサン●チュアリの為に尽くしてくれ、よいな?」

 

「…はい、フフ…長門さんこそ次期提督に相応しい立派な艦娘だと私も考えていました、この大和、これからも一命を尽くしましょう」

 

◆◆◆

 

この基地には提督しか立ち入れない場所が三つある、一つは提督の私室、一つは男子トイレ、そして最後の一つは提督専用の高台…通称、ス●ーヒル

 

「むぅ…やはり何度見ても北斗七星の横に禍々しいアレが見える」

 

最近始めた趣味の天体観測、星はいい、あの満天の星を見ているとこの星の小ささと、そこに立つ自分がとてもちっぽけな存在であると認識できる

 

「…む?」

 

何者かの気配を感じ振り向くと、そこには大和が立っていた

 

「大和か……貴様、たとえ大戦艦級と言えど立ち入る事は困難なこのス●ーヒルにどうのようにして」

 

「別に私には困難ではなかったですけど?まぁ、世界最大最強の戦艦と言われてますし」

 

「ふむ…で?何の用だ?まさかわざわざそんな事を言う為にここに来たのか?」

 

「………提督、何故、世界最大最強の私ではなく、次期提督に長門さんを?」

 

「言ったはずだ、仁・恥・勇を兼ね備えた長門こそ提督に相応しい艦娘だと」

 

「…仁・智・勇ならば決して長門さんに勝りこそすれ劣るとは思ってません、いえ…むしろ私の方が長門さんに勝っていると思いますが…何故ですか!?」

 

なんか心なしかハァハァと肩を震わせている気がするが…もしかして誘っているのだろうか?

 

「そんな事か、私はな…お前の中にとてつもない悪魔が住んでいるような気がしてならんのだ」

 

まぁ、これが取り越し苦労ではあれば良いのだが…

 

「フッ……ふふふ」

 

「どうした?具合でも悪いのか?それとも、やっぱ誘ってる…」

 

「見抜いていましたか…私の秘密を、さすがは提督、ただの窓際族の冴えないボンクラと言えど海軍将校」ギロッ!

 

「な…なんだ!?大和!キサマいったいッ!?」

 

「死ねッ!提督ーッ!!」

 

突如として牙を剥いた大和の拳が俺の胸を貫いた

 

「ゴバァ!!…や……やま、と…やはり私の目に狂いはなかった、お…お前は…邪悪の化身」

 

「フッ……老いぼれめ、なまじ私の正体に気付くからこうなるのです、幸いな事にこの提督帽子を被っていればウチにいる娘達はだいたいバカだから気付かないでしょうし」

 

大和は死んだ提督から提督帽子を奪い取り頭に被った

 

「こうなった以上、私が提督になりすましてこの基地を掌握するまで!そう!この大和こそが提督になって海を支配するんです!ハーッハハハハハ!」

 

◆◆◆

 

「…と言う夢を見ましてな」

 

「なるほど…」

 

本日快晴の執務室、外では駆逐艦の子達がキャッキャとハシャぐ声とたまに何かが崩れる音が聞こえる…

五月雨さんは姉妹でスイーツバイキングに行くとかで休暇をとっており、現在、執務室には私と香取姉さんが来ていた

 

「…って!夢オチかよッ!!」

 

「コラ、鹿島、なんて言葉遣い!姉さん感心しませんよ」

 

「あ…はぁ、スイマセン、まさか長々と尺使っての夢オチには何かイヤな思い出があって…」

 

「ハッハッハ、鹿島先生は繊細な方でいらっしゃる」

 

「そうなんですよ、我が妹ながら少々神経質なところがありまして…」

 

香取姉さんは口元を隠して優雅に笑う、なんでこう…スイッチ入ってない時の香取姉さんはエレガントなんだろうか

 

「…姉さんはなんでこんな変人に好意があるんだろう」ぼそっ…

 

「鹿島?何か言った?」

 

「いえ!何も言ってないです!何も言っておりません!サー!」

 

「そう……しかし提督、例え夢の中とは言え、提督に害意ある逆賊には少し厳しい躾が必要なのでは?」

 

逆賊とか言ったよ、普通に逆賊とか言っちゃったよこの姉

 

「ハハ…それには及びませんよ先生、何故なら俺はこの基地の者達を皆、ファミリーと思って愛しています、たとえ刺されようともそんなバカをそれでも許します」

 

「嗚呼…素晴らしいお考えです、提督」

 

何言ってるんだろうこの人達は…ってか、それ海軍じゃないで海賊




次回から本当の提督暗殺編

海軍の闇は深い…

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