不健全鎮守府   作:犬魚

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シリアスパートに突入する全3回

【登場人物】

提督(88)
主人公、勲章モノの活躍は特にない

五月雨(36)
最も付き合いが長い秘書艦、趣味はコーヒーとクロスワードパズル

大将殿
横須賀の大将殿、入隊前から配属まで提督に色々と便宜を図っており提督の後ろ盾とも言える人物、優れた艦隊司令能力を持っているものの、最近は軍内部の政権闘争で第一線から退いている


提督暗殺編 前編

生きている上で、背に腹は代えられない状況と言うものが何度かある…

人生もエロゲーと同じく選択肢の連続であり、その選択肢の中にはパンにするかご飯にするかぐらいどうでもいいものから、これからの人生を決定付けてしまう重要なものまで様々で、人はある程度それを見極めながら生きている…

 

そして今、俺はその重要な選択肢を選ぶ岐路に立っている…

 

◇◇◇

 

「それはつまり、栄転と?」

 

『まぁ、そうなる、キサマにも悪い話ではなかろう?』

 

「まぁ、そうっすね」

 

『追って正式な通達が届く、楽しみにしとれ』

 

大将殿の相変わらず豪快な笑い声が耳に残り、俺は受話器を本体の上へと戻した

外気は寒いが日差しはある冬の執務室、俺は胸元から煙草を取り出して火を点ける

 

「煙草なら外でお願いします」

 

「灰皿、あとコーヒー淹れてくれ」

 

「今……なんと?」

 

「…灰皿よこせ、あとコーヒー淹れろ」

 

一瞬、五月雨は何を言われたのかよくわからず機能停止したが、すぐに元に戻って灰皿を用意してコーヒーを淹れる機材を用意する

 

「フーッ~…」

 

正式な辞令とあっちゃ断るワケにもいかんよなぁ、昇進だけならまだしも、まさかの転属、しかも大本営直轄の部署…

大将殿は俺をコキ使いたくて仕方ないのか?

 

「コーヒーです」

 

「うむ」

 

見た目は普通、香りも芳醇、一流の機材と一流の技術と一流の情熱で淹れた至高の一杯

 

「…相変わらずお前の淹れるコーヒーは不味いな」

 

「悪かったですね」

 

普段なら静かに怒気を撒き散らす俺の不味い宣言に、五月雨は珍しく素直に応じた、思えば初めてではないだろうか?コイツが自分のコーヒーが不味いと認めたのは…

 

「それで…」

 

「まぁ、正式な辞令なら仕方ないわな」

 

「ですよね」

 

転属となれば、この基地には新たな別の将校が来る事になるだろう

幸いにもここはさほど激戦区でもないし、戦力もそれなりに揃っているので若手の新人とかならやりやすいかもしれない

 

「次は優秀なイケメンが来るぞ、たぶん」

 

「そうですね」

 

「最初はバカどもに多少面喰らうかもしれんが、まぁすぐに馴染むだろ、たぶん」

 

「そうですね」

 

「もしかして勲章モノの活躍してくれるかもな、たぶん」

 

「そうですね」

 

「…そうですねしかないのか?テメーは?」

 

「提督こそ、たぶんが多すぎです」

 

俺達は互いに苦笑し合い、今まで互いのどうでもいいところをよく見てるもんだと感心した

 

「とりあえずは正式な辞令まではこの件はお前のその無い胸に秘めとけよ」

 

「無い胸は余計です」

 

「…無いだろ?」

 

「ありますよ、失礼な」

 

「よし、じゃ触って確かめてやるから動くなよ」

 

「触ったらマジで折りますよ」

 

折るか……まぁ、殺すって単語が出ないだけまだマシだな

 

◆◆◆

 

大将殿の電話から数日後、大本営付きの特務佐官なる人物が来訪するとの連絡があり、基地内では壁の落書きを消したり、破損した建物の修理をしたりと大掃除の様相を呈していた…

 

「クソッ!届かねぇ!」

 

「誰だよあんな高いところに書いたヤツ!」

 

「ミカァ!やってくれるか?」

 

駆逐艦のキッズ達が魍魎だのうんこだの書かれた壁をピカピカに磨く作業を見守っていたビッグセブンこと大戦艦長門…

長門はこの時を待っていた、キッズ達では届かないであろう高さの落書きに達するこの時を、困り果てたエンジェルス達の前に颯爽登場し、よし!このビッグセブンが肩車すれば届くだろう!キャービッグセブン素敵!好き!大好き!の流れになるこの時を…

豪放にして狡猾!ビッグセブンこと大戦艦長門ッ!

 

「ハハ…お困りのようだなエンジェルスた…」

 

「あったよ!たまたま夕張さんが持ち歩いていた脚立が!」

 

「でかした!」

 

「クッ!なんて高さだ…チクショウ!なんてグラグラしやがる!」

 

「ミカァ!」

 

「すげぇよミカは…あの高さをモノともしねぇで」

 

爽やかに声をかけようとした長門は静かに踵を返すと夕張が脚立を追いかけてハァハァと息を切らせて走ってきた

 

「…ハァ、ハァ…私の脚立、あ、長門さん、こないだビキニで発揮した長門さんのファイナル禁断パワーを倫理観とか道徳とか無視した人体実験したいんでサンプ…」

 

「フンッ!!」

 

ドゴォン!!(腹パン)

 

「オゴォ!!」

 

「すまん、手が滑った」

 

「オ゛ヴエェェェェェェェ…」

 

夕張は口から光る吐瀉物を吐き出して、前のめりに倒れた

 

◇◇◇

 

ご心配なく、階級なら上がりますよ、二階級特進です

 

そりゃ嬉しいね、ところでどうだ?お互いに銃をおろして話をしないか?銃口突き付け合って会話するのは趣味じゃないんだ

 

それもそうですね

 

じゃ、お互い123で下げよう、な?

 

わかりました、では…3

 

…2

 

1ッ!!

 

パーーーンッ!!!

 

夜の闇に、2つの銃声が重なった

 




次回は中編ですって
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