【登場人物】
提督(99)
陸奥と意外と漫画の趣味が合うらしい
秋雲(3)
アツかりし漫画家、色々と画風が変えれる多芸
「…どうすかね?」
軍なんてヤバい仕事はさっさと辞め、週刊少年誌での連載を目指すアツかりし自称漫画家、秋雲…
「う~ん、ちょっとパンチが弱いな」
秋雲の描いてきた新作、アツかりし本格ベースボール漫画“なんと五十六”不良少年である五十六が五十六ボールを武器に高校野球からプロ、そしてメジャーにまで挑戦する合間にゴルフしたりヒットマンに狙われてケンカしたりするアツい内容の作品だった
「そうっすか、今回は自信あったんすけど」
「ところで秋雲よ」
「なんすか?」
「この……背景とかにチョイチョイ描かれてるマツ毛の長いモブキャラはなんだ?」
スタンドにいる観客や街中に描かれているキャラクターはどう見ても無駄に濃い作風と合っていない少女漫画の美男美女みたいな絵なんだが…
「あ、それ夕雲の姉さんが描いてるんすよ」
「夕雲?」
「ちなみにトーンは巻雲が貼ってるっす」
なるほど、チョイチョイあきらかに緊迫したシーンに合ってない点描トーンとかあったが…なるほど、それで納得がいった、ひょっとしてこれはギャグか何かだろうかと疑っていたが…
「って!!ダメだろォ!?アシスタント使い方おかしいだろ!?」
「やっぱそうっすか!?いやぁ~…なんとなくそんな気はしてたんすよ、完成した原稿読んでみて………なんか違うなって」
「たまに五十六の顔がベルばらみたいな顔になってたのもそのせいか、ギャグの一環かと思ってたぞ」
「や、私が寝落ちしてる間に夕雲の姉さんが替わりに描いてくれたらしいんすけどね」
ちなみにこの秋雲、以前は一人で描いていたが限界を感じ、最近は夕雲、秋雲、風雲と秋雲組なるチームを結成して漫画を描いているそうだ
「とりあえずオマエ、絵だけは上手いんだから今風のキャッチーな絵柄に変えてみろよ」
秋雲が好んで描く絵柄は少年ジ●ンプではなく、どちらかと言えば漫画ゴ●ク寄りなので、このままでは連載を勝ち取るのは難しいだろう
「まぁ、描けなくはないんすけど……あ、そういや前に話してたラブコメなんすけど、一応ネームだけできたんすよ」
「なんだ?一応って」
「う~ん、なんか描いてみてなんか違うなって、どうにもそこから先に進まなくて困ってるんすよ」
「ふ~ん」
秋雲から受け取ったネームをパラパラと読んでみたが、たしかにこれでは弱い気がする
「主人公は冴えないボーイか、よし、イケメンに変えよう!」
「イケメンっすか!?」
「バカヤロウ、冴えないシャバ憎がなんかよくわからんけどモテモテになるなんてのは古いんだよ、今はイケメンだよ、イケメンが無双して好き!抱いて!の時代なんだよ」
「なるほど…」
「よく考えろ、冴えないシャバ憎だと読者がなんでコイツが?って思うが、イケメンだったらイケメンなら仕方ないって思うし、ヒロインだってイケメンだから仕方ないって股を開くんだよ」
「なるほど……たしかに、時代のニーズっすね!」
「あとはそうだな……よし、主人公はイケメンで中二病にしよう」
「中二病っすか!?それはちょっとどうかと…」
「それがいいんだよ!完璧過ぎるイケメンだと読者も飽き飽きしてるからな、ちょっとぐらい残念な要素ってのがある方が好感が持てるだろ?」
「な…なるほど」
「あとはそうだな……あ、そうだ、イケメンで中二病で姉ちゃん達のせいで女が苦手!コレだな!」
「姉ちゃんっすか?」
「そうだ、この設定なら女に対して鈍感だったり幻想抱かなかったり自然とできるからな!ちなみに姉ちゃんは1人じゃダメだぞ、複数必要だ」
「なんでっすか?」
「1人の姉だと主人公に依存するダメなブラコン姉の割合が比較的多い(提督調べ)それ故に、姉は複数居て、主人公に対して柔和だったり横暴だったりと様々な属性で主人公がこの属性への耐性がありますよってコトを読者に説明し易くなる」
「なるほど……!たしかにそれなら作中の色々と面倒なコトを解決できそうな気がするっすよ!早速考えるっす!」
こうして、俺と秋雲は主人公とその家族構成についてアツく話し合い、大雑把な設定が完成した……
「コレっすね…」
「あぁ、完璧だぜ」
主人公:イケメン、中二病、女が苦手で原因は4人の姉
長女:厳しく優しい長女、怒ると怖いクマ!
次女:厳しいけど長女より甘い次女ニャ!
三女:あんまり厳しくないけど次女より優しくない三女、オレ様属性
四女:あんまり優しくないけど長女より甘い四女、三女と仲良し
「…完璧っすよ、こりゃジ●ンプの看板確定っすよ」
「あぁ、コイツはラブコメ界の大革命……マジのレボリューションになるぜ」
この設定と秋雲の超絶美麗画力さえあればイケるだろう、俺達は互いにアツい握手を交わしてこの感動を分かち合っていると、スーパーの袋を持った五月雨が執務室へとやって来た
「…お疲れ様です、ん?秋雲さんじゃないですか、珍しい」
「お邪魔してます!」
「オレンジジュース飲みますか?今買ってきたばかりですから冷えてないですけど…」
「いえ!お構いなく!もう帰りますんで!」
秋雲は勢い良く立ち上がり、今から原稿を描くんで完成したら持ってきますと言って元気良く去って行った
◆◆◆
後日………
「………コレ、木曾だな」
「…えぇ、自分も描いててなんかそんな気がしてたんすけど」
完成した原稿を机に置き、俺はファミレスでも行くかと呟き、うなだれたままファミレスへ行った