【登場人物】
提督(116)
地域の偉い人に頭下げる事に余念がない小物
明石(10)
明石だってダメージは受ける
春!その素敵な季節が提督を行動させた!
地域の皆様に愛される基地でありたいと普段から考えている我々は常日頃から地域の清掃活動やしょーもないイベント活動にも積極的に参加し、大丈夫!この拳は怖いものじゃないんだよと己の凶器を安全物だと偽る超手加減の精神に勤めてきた
「っーワケで、今年も基地開放、春の地域密着型春祭りなワケだが……サミー、現在の来場者数は?」
「二千人弱ですね」
常々、財政難に悩むところがある当基地にとって、基地を挙げての大イベントは地域へのふれあいアピールと同時に運営資金を獲る為の資金稼ぎでもある、こちらの手札は見た目だけは可愛い艦娘だ、調子に乗って攻めきたところを罠カードオープン!オマエの財布はゼロだぜッ!のコンボが待ち受けているとも知らずにバカどもがやって来る、ククク…この可愛いだけかと思ったか?残念だが俺の手札は牙を持つカードだぜッ!
「あ、浦風さんがお好み焼きの手が回らないと連絡がありましたけど…」
「鋭意、努力したまえ」
「暇そうな人に応援に行くように連絡しておきます」
お好み焼きなんぞショボい売上などどうでもいい、問題は今日のメインイベント、鉄の城・長門VS伝説の修羅・陸奥のエキシビジョンマッチだ、
「さて…俺はちょっと外を見てくる、ここは任せるぞ」
「わかりました、あ、外に行くついでにお好み焼き買ってきて下さい」
「覚えてたらな」
◆◆◆
『コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!』
基地特設リングではメインイベントの他に三試合が組まれており、現在は第二試合、天龍VS藤波の対決が行われていた
「いったー!ドラゴンスクリュー!」
「天龍苦しい!天龍苦しい!これは苦しいーッ!!」
「天龍!ギブアップ?」
「NOーッ!!」
「OK!!ロープブレイク!!」
メインでもないのに会場のこの熱気、アツい戦いを繰り広げられているのは意外だったが、まぁコレはコレでありだろう
「フーッ~…」
「あ、提督」
「ん…?お前はトリコ?」
「明石ですよ、ビール買いませんか?ビール、今ならなんと900円」
背中にビールサーバーを担いでニコニコと笑う明石、コイツ…またしょーもない小銭稼ぎを考えたか
「っーか高いな、オイ」
「えー?普通ですよ、普通」
ニコニコとぼったくり価格を提示する明石の後ろから緑色のトゲトゲしい頭がやって来た
「…明石さん、ビールなくなった」
「お疲れ様~山風ちゃん、あ、じゃこっちの使ってね、そっちのは新しく補充してくるから」
明石と同じくビールサーバーを担いだ山風は明石のビールサーバーと交換しようとビールサーバーを地面におろした
「オマエ、また明石に雇われてんのか?」
「…うん、1杯50円」
「仕入れ1杯が約200円、それを900円で売って700円から山風ちゃんに50円バックで利益650円、笑いが止まらんですよ」
明石はゲラゲラ笑いながら今日の利益に目を輝かせている、コイツ…もう転職した方がいいじゃないのか?むしろ、コイツが工作艦の仕事してるの殆ど見た事がないんだが…
「ちなみにそのビールサーバー、満タンでどのぐらい出るんだ?」
「ん~…だいたい50杯ぐらいですかね」
50×50で空になれば山風に2500円か…なかなか良い商売をしやがる
「…よい……しょ」
「チビスケ」
「…チビスケゆーな、山風」
「ちなみに、今日はそれ、何回ぐらい交換したんだ?」
「…15回ぐらい?」
な……750杯だと!?コイツ、1人でどんだけ売ってるんだ!?売りすぎだろ…T●KYOドームでもこうはいかねぇ…
「山風ちゃんはスゴいですよぉ~、黙っててもバンバン売ってきますからねぇ~、もうお姉さん大助かり~」
「…やめて、頭撫でるの」
山風曰わく、歩いてたらオッサンが買ってくれるらしく、その姿を見たオッサンがオレも!オレもと買ってくれ、悪魔的美味さッ!と涙を流すそうだ
「ちなみに明石、お前は?」
「2杯!」
「ダメじゃねーか!オマエ全然売れてねーじゃん」
「おかしいですよね、私それなりに可愛いくないですか?」
明石は明石でダメージを受けているらしい
「ビール1杯でそのスケベスリットに1まさぐりとかしたら売れるんじゃねーの?」
「イヤですよそんなの、まるでビッチじゃないですか」
「じゃ、こう…カップを胸で挟んで注ぐとか」
「なんでそんなのばっかなんですか!私も普通に売りたいんですよぉ!山風ちゃんみたいに立ってるだけでちやほやして欲しいんですよぉ!」
「クズが…ッ!」
まぁ、コイツから漂うどうしようもなく金が好きッ!みたいなオーラをどうにかしないと無理な話だろうが………いや、無理か、圧倒的天賦の才能の前にたかが淫乱ピンク如き凡才の努力がかなう筈がない
「アーカーちーん、ビールなくなったー」
「ん?」
打ちひしがれる明石の後ろから、ビールサーバーを担いだ新たな売り子がやって来た
「ゲッ!テイトク」
「オマエは……ハルサメ」
ビールサーバーを担ぐ白髪のそいつ、白露型のハルサメ、あぁ…ハルサメだ、うん、断じて人類の天敵、深海棲艦ではない、しかも姫級とかヤバいヤツでもない
「あ、ワルサメちゃんもお疲れー」
「どもっス」
「オイ明石、オマエ、コイツも雇ってたのか?」
っーかコイツ、今ワルサメって言ったよな…?もしかして気付いてるのか?
「バイトしたいから是非にって」
「いやぁ~今月課金しスぎて」
この姫級、どんだけ闇堕ちしてるんだ…誇り高き深海の戦士のプライドとかどうなってんだ?
「オイ、オイ明石、ちょっと来い」
「な、なんですか?もう!こんな人前で提督も結構大胆ですね」
俺は明石の肩に手を回して小声が聞こえる範囲に引き寄せた
「オマエ、コイツが春雨っぽいアレって知ってんのか?あ?」
「え?だってどう見ても駆逐棲姫でしょ?アレ、なんか白いし」
「…気付いててよく使うな、オマエ」
「まぁ無害っぽいし、ってかあの子よくウチの店にカップ麺買いに来ますよ、ジャージで」
「ジャージかよ」