【登場人物】
足柄(7)
通称、ワイルドウルフ
子持ち処●とディスられてるいる子持ち●女
大淀(6)
足柄のマジダチ、昔は眼鏡っ子じゃなかったらしく、最近はコンタクトについて考えている
「うっお―っ!! くっあ―っ!! ざけんな―っ!」
「オイ!足柄サンがまた荒れてんべ!」
「超怖えー」
妙高型重巡の三番艦、足柄、通称ワイルドウルフ、先日、たまには地元に帰ろうと考え帰郷するもなんやかんやあって秘伝書を巡る戦いに巻き込まれたが持ち前の力業と男気でこれを解決した件は駆逐艦のキッズ達から憧れの対象とされている
「どうしたァ?足柄ァ…」
荒れて椅子とテーブルに当たり散らす、そんな近寄り難い足柄に平然と近寄るインテリ眼鏡系軽巡、大淀
足柄とは眼鏡を着用するようになる前からの付き合いらしく、昔はよく夏休み終了前に宿題の見せっこを行った仲である
「まぁ落ち着けよ足柄よォ~…ここは憩いの談話室だぜ?キッズ達がビビって楽しいスゴロクできねぇじゃねぇかよォ~」
憩いのスペース、談話室
朝潮がみんなで遊ぼうと考え、お小遣いをはたいて購入した人●ゲームM&Aと言う名の少々なアレな感じのボードゲームを朝潮型のキッズ達で楽しく遊んでいたが、今はいつ飛んでくるやもしれない足柄のスターダンクボルケ●ノに怯えて部屋の隅でガタガタと震えていた
「フッ…私としたコトが、オマエらァー!コイツでチューインガムでも買いなァー!」
足柄はPR●DAの財布から数枚の紙幣を取り出し、スタイリッシュに一番近くにいた荒潮の胸ポッケに入れてやった
「ヒュー!足柄サンオトコマエー!」
「さすが足柄サン!まさに餓狼!本物の餓狼だー!」
キッズ達は足柄に頭を下げてキャッキャとハシャぎながらチューインガムとついでに遊●王カードを買う為に明石の店へと走って行った
「…毎度毎度荒れてんなオマエ、ガクシュー能力ないのか?オマエ」
大淀は手近な椅子を器用に足で引き寄せ、足柄の対面に座った
「ガクシュー能力とかオマエにだけ言われたくねーよクソメガネ」
「あ゛?」
「あ゛?やる気か?」
「…いいじゃねーか、立てよ足柄ぁ…タイマンだ」
足柄と大淀の間に電気溶接でよく見る裸眼で見てると目を痛める火花がバチバチと散り、お互いアンアン言いながら顔を近づけたが、途中でお互いの顔見てたらなんか変な気分になったのでやめた
「…で?今回はナニにキレてんだ?どうせアレだろ?また私は置いてけぼりだろ?ハイハイ知ってますよ、礼号組鉄の結束とか所詮はポーズですよね?ホントは礼号組で一番強くて美しい私にみんな嫉妬してるんですよねー」
「うるせーよ、誰がテメーなんぞ嫉妬すっかボケ」
「ハイハイ負け犬負け犬、あ、負けウルフか」
「見苦しいヤローだな……大淀、ちょっとあっちの壁見てみ?壁」
「はぃ〜?」
談話室の壁には先日の授業で駆逐艦のキッズ達に描かれた“わたしのそんけいするかん”と題された似顔絵が画鋲で貼られており、大淀は目を細めてその絵を凝視した
「!」
その中に汚い字で“おおよどさん”と書かれている絵があった…
正直言って決して巧くはない拙い絵だが大淀にはハッキリとわかった、この絵には心が籠もっていると!大淀にとってはこの絵はルーベンスの聖母被昇天よりも、ベラスケスのラス・メニーナスよりも価値あるモノなのだと!
「か…カスミッ!!なんて良い子ッ!」
「ちなみにキヨシはワケわからんロボット描いて、アサシはマグロみたいな魚描いてた」
「うっ……ぅぅ、なんて…なんて優しい子っ!天使……カスミこそ天使や、この薄汚れた世界に光臨した白き翼の乙女や!それに比べて私は…私はっ!」
涙が、涙が溢れてくる、大淀の目からアツい感動の涙がとめどなく溢れ、足柄はポケットから取り出したお気に入りのバー●リーのハンカチを大淀に渡してやった
「ブンッ!!フンーッ!!あー…スッキリした」
「ちょ!オマエ!オマエ鼻かむとかやめろよッ!あ~…っーかマジか、マジかオマエ?」
「はい、返すわ」
「洗って返せ」
鉄の結束、礼号組には獣は居てものけものは居ない事を確信した大淀はバーバ●ーのハンカチをポッケにしまった
「で?ちなみに今日はなんでキレてんの?また合コン行ったんか?」
「行ってねーし、っーか来週行くぞ、来週、若手将校」
「マジ?」
「マジ」
「ウチの提督散々小突いたら渋々どっかに電話してセッティングしてくれた」
「やるじゃん、クソメガネのくせに」
「オマエがゆーな、オマエが、オマエもクソメガネだし」
「は?」ピキッ!
「は?」パキッ!
足柄と大淀は再びメンチビームて火花を散らし、唇が触れ合うか触れ合わないか微妙なところでメンチ切るのをやめた
「…で?ハナシは戻るけど、今日はナニ?なんでキレてんの?」
「いや、さっきキヨシとアサシとコンビニにアイス買いに行ったワケよ」
「今日はデパートじゃねーのな、私のは?」
「ねーよ」
「マジ?」
「…で、まぁ普通にアイス買ったワケよ、ガリ●リ君」
「キレるトコねーじゃん、普通じゃん」
「待て待て、今からキレるトコなんだよ」
「あ、今からね」
大淀はテーブルに置いてあった誰かのフ●ンタオレンジを開けて一口飲んだ
「で、帰ろうかと思ったら丁度コンビニに買い物に来た妙高姉さんにバッタリ会ったワケよ」
「妙高姉さんかよ…死んだな、オマエ」
妙高型重巡の頂点に君臨する絶対的な姉妹の王、妙高、入隊前から地元で数々のレジェンドを作り上げてきた生きるレジェンド、現在でも地元では妙高姉さんと言ったら当時のワル達が震え上がって数多の脚色された伝説を居酒屋で酒の肴にしている…
「駐車場に見覚えあるF50の●ーマ来た時にイヤな予感はしてたのよ」
「ナニ?妙高姉さんにカツアゲでもされたんか?」
「や、妙高姉さん、キヨシとアサシにお菓子買ってくれた」
「優しいじゃん」
「あと、キヨシとアサシに1万円づつお小遣いくれた」
「めっちゃ優しいじゃん、ナニ?妙高姉さん優しくね?」
「で、いくらなんでも1万円とか多すぎるからって返そーとしたらいいからとっとけって、オモチャでも買えやって…」
「……私らガキんトキはパンチしか貰った覚えねーよ」
「で、キヨシもアサシも妙高姉さんありがとーありがとーってハシャぎまくり」
妙高姉さんの懐の深い羽振りに、足柄の買ったガ●ガリ君など投網一投、一瞬にして人気と言う名の魚群を持っていかれた足柄…
「……まぁ、つまりアレか?今回はガキどもが原因じゃなくて妙高姉さんだと?」
「まったく……ガキどもを甘やかすなってのな」
「別にいいじゃねーかよ、心狭いなオメー」