不健全鎮守府   作:犬魚

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MIYABIな御方と姉妹達

【登場人物】

提督(120)
陛下とは違ったベクトルで苦手

初春(2)
初春型の長女
雅な御方、ただ者なのか、ただ者でないのかよくわからない

子日
初春型の次女
正月時期に行方不明になる

若葉
初春型の三女
コミュ障、ホントはもっとお喋りしたい年頃

初霜
初春型の四女
初春型きってのスーパーエース、抑えの切り札、声が妙にクセになる珍しい善人


提督と初春型と春の防災器具点検

暖かくなったし、そろそろ防災点検の時期が近付いているので施設内の防災器具の点検をして回ろうと考え、ファイルを片手に基地内を歩いていると花壇の辺りに雅な駆逐艦と雅でない駆逐艦が座っていた

 

「これは黄色のぉ…」

 

「ハハッ!誠に黄色御座いますな!」

 

「子日よ、この花はなんじゃ?」

 

「ハハッ!この花はマリーゴールドに御座います!」

 

「ふむ…まりぃごぉるどか……春らしく、美しい色彩じゃ」

 

「ハハッ!大変美しゅう御座います!」

 

初春様と子日…だっけか?ナニやってんだアイツら?

 

「む?おぉ、提督ではないか?妾に何か用か?」

 

「いや、ただ通りがかっただけだ……です」

 

初春型の頂点に君臨する長女、初春様、見た目通り雅な御方である

俺がこの基地を任されてワリとすぐにこの御方も配属されているので付き合い自体は結構長い、当初は五月雨や由良さんとあの人絶対高貴な生まれで何かしら事情があり、やんごとなき身分を偽り、こんな辺境に身を隠している高貴な御方だよと噂していたものだ

 

「今日は良い天気ですなぁ!」

 

「ん?あぁ、そうだな」

 

初春型の次女、子日、基本的には初春様とつるんでおり、初春様の問いに見事に答えてくれる初春様の知恵袋的なアレらしく、見た目に反して大変博識なそうだ

 

「で?オマエらはナニやってんだ…です」

 

「うむ、今日は良い天気じゃから花壇の手入れでもしようと思っての」

 

「ふ~ん」

 

なるほど…っーかこの花壇、誰が手入れしてるのかと思ったら初春様が手入れしてたのか、知らなかった

 

「初春様、お手が汚れまする」

 

「ん…?まぁ、よかろう」

 

「……では、こちらの軍手をお使い下さい」

 

「む、軍手か………これは妾とした事がウッカリしておったわ、子日は準備良いのぉ」

 

「滅相も御座いません」

 

ウチのアホンダラどもは基本的に長女至上主義制が多いが、なんだろうな…この初春姉妹に関しては長女至上主義ではなく、長女絶対君主制でも採用しているのだろうか

 

子日は恭しく初春様に軍手を手渡し、初春様はそれを褒めて遣わした

 

「…して、提督は散歩か何かか?」

 

「いや、今日は防災器具の点検をして回ろうとな……です」

 

「防災器具点検か、ふむ…そう言えば以前、妾も付き合った事があったのぉ」

 

「あぁ…そう言えば」

 

五月雨と防災器具点検しながら歩いてたら暇なので妾も付き合おうと点検の列に加わり、最終的にはなんか大名行列みたいに人がゾロゾロと付いて来るよくわからない事になったっけな…

 

「まぁ、今日は花壇の手入れがある故、妾は手伝いはできぬが…」

 

「いや、別に急ぐ仕事でもないし……です」

 

「子日よ」

 

「ハハッ!」

 

子日がピーッ!と甲高い口笛を鳴らすと、執務棟の上からなんか大型の猛禽類みたいなのが飛んできて、子日の腕にガッチリと止まった

 

「デカっ!?なんだそれ!?」

 

「子日の飼っているハヤブサじゃ」

 

「ハヤブサぁ!?」

 

これ絶対国の許可とかいる感じのアレだろ、っーかハヤブサとか生で初めて見たぞ、コイツ、絶滅してなかったのか…

 

「行け!」

 

ハヤブサはキィーと鳴きながらどこかへ飛んで行った

 

「…なんなんだ?一体」

 

「提督よ、妾は手を貸せぬ故、若葉と初霜をお主に付ける、存分に使ってやれ」

 

「は?」

 

「遠慮はいらぬ、すぐここに来る故、暫し待つがいい」

 

「いやいやいや、別にそこまでして貰う必要は…」

 

別にそこまでして貰う必要は無いのでやんわりと断ろうとしたが、雅な初春様の背後から、子日がサ●コガンみたいなの銃口を俺のアタマに向けていた

ヒュー!どうやら美女の誘いを断るって手はないらしい!

 

「は…はぁ、ありがとうございます、です」

 

「うむ」

 

どうにもこの御方は苦手だなと悩んでいると、アナログハヤブサメッセージを受け取ったらしい新たなる初春姉妹の刺客がやって来た

 

「フッ、若葉だ」

 

初春姉妹の三女、若葉

上二人の姉とはあまり似ておらず、どっちかと言えば暁ちゃん姉妹や睦月姉妹に似ているが、なんか複雑な家庭事情でもあるのだろう、意外と読書が好きらしく、よく明石の店でハードカバーを買っている姿を見るが、コイツとは殆ど話をした事が無い、たぶんシャイボーイなのだろう

 

「初霜です」

 

初春姉妹の四女、初霜

これまた上二人に似てない複雑な事情の妹、一見地味だが、妙にクセになる個性的な声をしており、雪風、時雨に並ぶ抑えの切り札として強力打線をバシバシとシャットアウトする初春姉妹きっての稼ぎ頭としてチームに貢献している

 

「お主ら、今日は提督の防災器具点検に同行してくれぬか?」

 

「フッ」

 

「いいですよ」

 

なんかすげーアッサリ了承したな、似てないけどやっぱ仲良いのか?この姉妹

 

「じゃ、まぁ頼むわ」

 

‐‐‐

 

とりあえず、若葉と初霜を引き連れ防災器具点検に回り、途中、長門がオマエだけ駆逐艦のエンジェルスと仲良く防災器具点検だと!ズルいぞ!とか言ってたが、通りがかった陸奥に虎砲を喰らってズルズルと引きずられて行った

 

「まぁ、今日は助かったぞ、なんでもテキトーに食ってくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

「フッ…」

 

防災器具点検を終え、小腹が空いたのでマミーヤにやって来た俺達は、若葉と初霜にテキトーな甘味を、まぁ上の姉ちゃん達にはコイツらになんか持たせて帰るか…

 

「さて、何にするか………ん?キタローくんじゃないか」

 

席に座ろうとすると、窓際の席に夕雲型のキタローくん……いや、早霜だっけか?いまいち名前が曖昧だが

 

「どうも」ボソボソ

 

「君もアマイモン食ってエネルギー充填かね?」

 

「まぁ…そんな感じです」ボソボソ

 

「良ければ君も一緒にどうかね?」

 

「お邪魔でなければ…」ボソボソ

 

◆◆◆

 

…私は知っている、さっきからコイツは提督と同じものを食べていると言う事を

 

「フッ…」

 

「どうしたの?若葉」

 

「いや…」

 

…初霜は気付いていない、あの前髪に隠れた右目が血走っている事を、そしてその右目は常に提督を見ている事を

 

「このクレープ美味しいね」

 

「フッ…」

 

◆◆◆

 

ハー…ハー……ハァハァ!!このバニラエッセンス!んんっ!甘っ…ハァ…ハァ…提督が口にしたものと同じものが私のナカに!んはぁ…フーッ……フーッ!濃厚なミルクレープが私のナカで溶け出し…て!ンンぁ!あっ…アッ!ハァハァ…次は……コーヒー、提督の喉を通ったコーヒーと同じコーヒー…同じインスタントのコーヒー…ハァ…ハァ…ハー!あはぁ……焼け付くみたいなアツさッ!アッ…アッ…!

 

「…あ、ヤベ、スプーン落とした」

 

「新しいのをどうぞ」ボソボソ

 

「ん?あぁ、悪いね」

 

「後で、私が返しておきます」ボソボソ


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