【登場人物】
提督(121)
私は変態ではないと声を大にして言える大人
プリンツ・オイゲン(5)
自称ビスマルクさん一の舎弟、ビスマルク以外は基本、便所に吐かれたタンカスと思っている
ビスマルク(4)
ドイツが誇る大戦艦、大変お美しい御方、男女問わず熱烈なファンがいる
自販機に缶コーヒーを買いに来たら、自販機の前にまるで蹴ってくださいと言わんばかりのケツがあったので、ノンファイヤーで蹴りを喰らわせると、ケツの主は無様な声をあげて自販機に激突した
「イダァ!?」
「さっさとどけ、俺は一刻も早く缶コーヒー買いてぇんだよ」
「チッ、クソアトミラールがァ!」
「ア゛ァ?誰がクソアトミラールだクソプリンが」
ドイツから来た刺客、もとい、ドイツから来た重巡プリンツ・オイゲン
俺の敬愛するビスマルクさんの周りをウロチョロする鬱陶しい害虫のようなヤツだ
「さっさとオレンジジュースでも買って帰れや、祖国にな」
「ハァ?誰がビスマルクのアネゴをこんなクソ島国に残して帰るかボケ、お前が帰れや」
「ア゛ァ?」
「あ゛?なんだコラ?ヤる気かコラァ?この…プリンツ・オイゲンとよォ~?」
お互いにピキッ!パキッ!とメンチを切り合いアンアン言い合いながら距離を詰める、本来なら乳デカ、腰細、ケツデカ、金髪美少女とこんな間近に急接近!と心ときめく状況だろうか、コイツに関してはそんなモノを一切感じない、おそらく、俺たちは神話の時代からの天敵同士だったのではないだろうかとすら思う
「ダンボールにグチャグチャに詰めてクール宅急便で祖国に“転属”させてやるよ」
「やってみろよ、チンカスクン!」
「上等ォ!」
神話の時代からの聖戦の幕が上がる、おそらくこの戦いは互いに死力を尽くした神々のアツき戦いにも匹敵する後世に残る神話となるだろう、互いの小宇宙を極限まで燃やし、俺達は確実に相手の息の根を止める為の奥義を繰りだ……
「あら?テイトクとオイゲンじゃない?なにしてるの?」
「び…ビスマルクさん!」
「ビスマルクのアネゴォ!」
今から死力を尽くして殴り合おうとしたその時!デカい猛獣を連れたビスマルクさんが俺達の居る自販機コーナーの方へ歩いて来た
「あ、このミルクティー、ここの自販機にしかないのよね」
ビスマルクさんはミルクティーがお好みなのか…
「すぐに施設内全ての自販機に入れさせます!」
「そう?助かるわ」
俺はスタイリッシュに携帯を取り出し、素早く明石へとコールする
『はいはい、なんですか?』
「俺だ、今すぐ施設内の全ての自販機にミルクティーを入れろ」
『え?ムリ』
「ムリじゃない、今すぐやれ、できなければ殺す、できないと言っても殺す、できませぇーんと叫んでも殺す」
…ったく、クズが、ビスマルクさんがお求めになっているんだ、緊急事態発生と言うのがわからんのかあのスケベピンクが、今度会ったらあのスケベスカートのスケベスリットにアツアツの糸コンニャク流し込んでくれる
「別にそこまで急がなくていいわ」
「ハッ!しかし…」
「いや、ホントにいいから…」
ビスマルクさん、なんて慈悲深く遠慮深い方なのだろう、尊い!尊い御方だよ!
「ところでビスマルクさんは愛猫のお散歩でしょうか?」
「えぇ」
ビスマルクさんの愛猫、ロ●ム
どう見ても可愛いらしい猫と言うよりは、あきらかに肉食の猛獣だがビスマルクさんが猫と言うならば猫なのだろう、その愛猫ロ●ムは今、プリンツの尻に牙を突き立てていた
「痛ッ!痛い痛い痛い!噛んだ!このバカ猫なんでいつも噛むのォ!?」
「バカ猫…?オイゲン、今、バカ猫って…?」
「まさかッ!よしよぉ~し!可愛いですねぇ~、ロ●ムくんは可愛いですねぇ~ジャレてるんですねぇ~」
プリンツは牙を突き立てられながらナイスガッツの精神で耐えた
「フッ…私の聞き間違いね、オイゲンがそんな事を言うわけがないわ、そうでしょう?」
「はいっ!」
「テイトク、見ての通りロ●ムはとても賢い子よ、人は決して襲わないわ」
ビスマルクさんの背後で、現在進行形で襲われている気がするが、まぁ、見なかった事にしよう
「テイトク、良かったらアナタも撫でてみてもいいのよ?」
「え?」
…いや、ムリ、アレはムリ、確実にどこか食いちぎられるッ!
「いや、今日ボクお腹痛いんでまた今度にしようかなと…」
「まぁ、そう言わずにィ…」
プリンツの野郎が凄まじい力で俺の肩を掴む、コイツ!殺る気かッ!この猛獣に俺をズタズタにさせるつもりか!?
「ほら…ダイジョーブですって、私にも全然懐いてるしィ…」
「ちょ…オマエ、オマエ、やめろマジで!シャレにならん!シャレにならんマジで!」
ロ●ムの強烈な前脚パンチが俺の内臓に確実なダメージを刻んだ
「オゴォ!?」
「ロ●ムったら…早速じゃれてるのかしら?」
び…ビスマルクさんには愛猫と俺がふれあう姿に見えているのだろうか?今の一撃でアバラが砕けた気がするんだが…
「ククク……そうだ!殺れ!殺れロ●ム!そのゲスチンヤローの喉元を喰いちぎってしま……って痛ぁい!!なんで噛むのぉ!?あっち噛んで!あっち!」
「フフ…やはりロ●ムはオイゲンによく懐いているわね、もしかして私より懐いているんじゃない?」
「そ…そそそうですかね?」
「…び、ビスマルクさん、ちょ…ちょっと用事思い、いえ体調が悪いんで…」
「そう…?言われてみると顔色が悪いわね、オイゲン、テイトクを医務室まで連れて行ってあげなさい」
「は……はぃ」
こうして、ビスマルクさんは愛猫と共に、プリンツに先に寮に戻っているわよと言い残して去って行った…
「ハァ…ハァ…」
「ハー…ハー…」
「…オイ、ケツプリ」
「…なんですか?」
「決着は、また…今度な」
「そうしましょう」
その後、互いに力尽きた俺達は自販機の缶ジュース補充にやって来た明石に発見、緊急搬送され、翌日を知らないベッドの上で迎えた