【登場人物】
潜水棲姫(3)
グレた
「とりあえずいつもの様子見から始めるか…相手はどんな感じだ?」
「潜水艦みたいですね」
俺は本部から届いたFAXを机に置き、冷蔵庫から出したペットボトルの麦茶をグラスに注いで再び椅子に座り直し、煙草に火を点けた
「フーッ~…潜水艦か」
「えぇ」
◆◆◆
『…ハァ』
また来たよアイツが…もうホントなんなのアイツ?何の恨みがあんのアイツ?なんでいつもいつも執拗に狙ってくるの?何がイスズには丸見えなの?何がスケスケなの?目がレントゲンか何かなの?
『潜水棲姫クン!楽シンデイテコーゼ!』
『油断セズニイコーゼ!』
『ヤ、モウイイカラ、ミンナソンナヤル気出サナクテイイカラ、テキトーニ殴ラレテ、ヤラレタートカ言ッテ帰ロ』
とりあえず、事前の深海ミーティングでは開幕で私が出るとほぼ確実にイスズが来るだろうと予測されてたので仕方ないとして、とりあえずせっかく北に来たのだから蟹でも穫って帰ろう
『ナニ言ッテンダヨ潜水棲姫クン!』
『勝ツ事ヲ諦メンナヨ!ラシクネーヨ!』
『俺達ダッテ今マデノ俺達ジャネーゼ!』
イ級、ヌ級…なんていいヤツだろう、こんなやる気のない私にまだ何かを期待してくれている、でもダメなんだよ、圧倒的天賦の才能の前ではあらゆる努力が通用しない事を私は知っている
『セッカク北ノ海キタシ、蟹穫ローヨ、蟹』
そうだ、テキトーにヤメテヨォとか言ってさっさと蟹でも穫ろう、今の時期穫れるかは知らないけど…
『潜水棲姫クン!』
『潜水棲姫クン!』
『モォイイダロ!!意味ネーンダヨ!開幕雷撃スラネェ私ニ期待ナンカスンナヨ!姫級ダカラナニ?ウンザリダヨ!』
何が姫級だよ!そもそもなんだよこの装備!ビーム砲とか撃てそうな形してんのにまったく役に立たねぇし!無駄に重いし!なんなのマジで!?毎度毎度爆雷喰らってオデノカラダハボドボドダァ!
『潜水棲姫クン…』
『潜水棲姫クン…ソンナニ想イツメテ』
『ワカッタロ!私ナンカカ級ニスラ劣ルンダヨ!』
『イヤ……潜水棲姫クンニシカナイ“武器”ナラアル』
『ハァ?』
ねぇよそんなモン、この役立たずはビームどころか魚雷も吐かないし
『ソンナモン………ナイシ』
『アルサ!ソウダロミンナ!』
『アァ…ソウダナ!アルゼ潜水棲姫クンニシカナイ“武器”ガ!』
『ソレハ“タフ”ナ“スピリット”サ!』
『潜水棲姫クンノ屈強ナでぃふぇんすハ確実ニアイツラ苦シメテルヨ!』
『ソンナ姿ニ俺達ハイツモ“勇気”ヲ貰ッテタンダヨ!』
………ディフェンス、そうか、ディフェンス力、たしかに、タダではアイツらに負けたくない一心、もう撃沈するって痛みでも歯を食いしばって耐えぬいた、S勝利だけは渡したくない、A判定だよクソがって…
『フ……フフフ、ハハハ!』
『潜水棲姫クン!』
『潜水棲姫クン!』
『アー……ハハ、イヤ、ゴメンゴメン、ソウダッタワ、アァ…ソウダッタ』
私には、この………最高のチームメイト達がいる!たしかにヤツらはヤバい、この潜水棲姫が小便チビっちまうぐらいヤバいが、もう迷う事はない、全力でぶつかるだけだ!
「勝つのは五十鈴!勝つのは五十鈴!」
「勝者は五十鈴!勝者は五十鈴!」
心なしか、聞き慣れたヤツらの声援が近付いているような気がしてきた、いや…来ているッ!
「アーン?五十鈴には丸見えだぜーッ!」