不健全鎮守府   作:犬魚

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イベント海域ではない通常回

【登場人物】

提督(133)
別に!アンタの為じゃないんだからね!

海風(10)
改白露型の空気読める天性の世話焼きガール

江風(10)
改白露型の空気読めない天性のヤンチャガール

山風(13)
改白露型のよくわからないシャイガール

涼風(3)
改白露型の五月雨によく似たドッペルゲンガー、凶暴

夕張(24)
マゾ


提督と改白露型と星を見る人

春の大型連休も終わり、とりあえず煙草でも吸って今後の作戦海域と今日の晩飯について考えようと喫煙所に向かっていると、改白露型の仲良し姉妹がゾロゾロと歩いてたので声をかけてみた

 

「よぉ、ナニやってるんだ?」

 

「あ、提督」

 

「アタシら今からプラネタム見に行くンすよ」

 

プラネタムってなんだよ、ナニ言ってんだコイツ?アホなのか?いや、アホだったな

 

「…江風、プラネタムじゃない、プラネタリウム」

 

「近所の公民館みたいなのに出張プラネタリウムが来てんのさぁ」

 

「ふ~ん」

 

出張プラネタリウムか、噂には聞いた事があるが実在するんだな、まぁ、コイツらも天体に興味がある多感な年頃だろうから勉強してくるのも悪くない

 

「私達は特に出撃予定も入ってないし、せっかくなので姉妹で見に行こうと思いまして」

 

「ふ~ん」

 

「テイトクも一緒に行かねーすか?」

 

「やだよ面倒くさい」

 

「ンだよぉ!冷てーなぁ!」

 

「コラ!江風!提督になんて口の利き方してるの!!」

 

「ご…ゴメンねーちゃン!!ぶ…ぶたないで!」

 

しかしプラネタリウムか…俺も子供の頃、まぁまぁ近所の学術博物館みたいなところに行って何度も見たものだ、人工とは言え星の海に感銘を受け、我が往くは星の大海と決意し、宇宙を手に入れようと莫逆の友と誓った日をありありと思い出す…

 

「よし、アタイら先に駐車場行ってるからテイトクはとっと準備してきなよ」

 

「うむ………って、ちょっと待て、俺は行かないぞ」

 

「いいじゃねぇかよ、車ぐれー出せよ」

 

「やだよ面倒くさい」

 

「そうよ涼風、提督はこう見えてお忙しい方でいらっしゃるのよ」

 

海風姉ちゃんの言い方には微妙にトゲがあるが悪意はないのだろう

 

「んなこたぁねーって、どうせ今から喫煙所でエロ本読みながら煙草スパスパ吸うんだろ?んな機関車トー●スみてーにケムリばっか吐いてないでアタイらと一緒に星でも見よーZE」

 

「機関車●ーマスに謝れ、あと、何がZEだ、カッコつけやがって…」

 

‐‐‐

 

…それからなんやかんやあったが、俺は結局改白露型のオシャレな姉妹達と近所の公民館的なところへ来ていた

 

「アネキアネキ!なんか出店がある!」

 

「江風!ハシャがない!出店は後にしなさい」

 

「えー!?」

 

江風は出店のフランクフルトに興味津々の多感な年頃らしく、さっきからフランクフルトを眺めながら髪のよくわからない横っパネをピコピコと上下させている……動くんだな、アレ

 

「…テイトク、テイトク」

 

「なんだ?」

 

山風は俺の裾をグイグイと引っ張り何かの出店を指差した、コイツもアツアツのフランクフルトが食べたい年頃なのだろうか?

 

「…アレ、なに?」

 

「あぁ…ありゃ星座早見盤だ」

 

「…なにそれ?」

 

「星座と星を素早く探す事ができるスグレモノだ」

 

「…ふ~ん」

 

もしかしなくて欲しいのだろうか?いや、俺は空気の読める大人ではあるが子供を甘やかす大人ではない、そうだ、俺は女子供であろうが容赦しない、平然とボディを蹴り上げる事ができるクールで冷徹な大人だ

 

「…フッ」

 

俺は財布をポケットから取り出し、店員のお姉さんから星座早見盤を、磁石を搭載した暗闇でもボンヤリ光るタイプのそれをスタイリッシュに購入した

 

「…つい店員のお姉さんがお綺麗だったのでなんとなく衝動買いしてしまったが、実は俺は星座に詳しい星座博士なので俺には必要のない物だったな、お前にやろう」

 

「…いいの!?あり……ありがと」

 

べ!別に!いらないけど、なんとなく!つい!買っただけなんだからね!買ってから冷静に考えていらないって思ったから!たまたま近くにいた子にあげただけなんだから!そう!たまたまよ!たまたま!

 

「カーッ!ツンデレかい!」

 

「ツンデレじゃない、提督だ」

 

涼風のツッコミは適切ではない、何故なら俺はツンデレではないからだ

 

‐‐‐

 

そんなワケで、出張プラネタリウムへと入館してみた俺達…

 

「いらっしゃいませー」

 

「…ナニやってんだ?オマエ」

 

「え?バイトですけど?」

 

受付に立っていたのは綺麗なお姉さんではなく夕張だった…

夕張曰く暇なのでバイトしているらしく、受付だけでなく投光機材の取扱いや解説も兼ねているらしい

 

「今日は星の事を勉強して行ってくださいねー」

 

夕張はニコニコと笑いながら入館チケットとパンフレットを交換し手を振って俺達を館内に招き入れた、コイツ、もう軍辞めて転職した方がいいんじゃないだろうか?

 

『えー御来館の皆々様こんにちは、本日皆々様に星の解説をさせて頂きます夕張です、夕張は北海道にある地名ですが、なんと私は佐世保生まれの長崎っ子なんですよー、不思議ですねー、あ、ちなみに長崎と言えば長崎ちゃんぽんが有名ですが~…』

 

館内の照明が消え、夕張によるマイク解説が始まった

 

『…ちなみに夕張と言う地名の由来はアイヌ語からきておりまして、アイヌ語のユーパロ“鉱泉の湧き出る場所”と言う意味があるんですよ~』

 

星の解説しろよ!いつまで自己紹介してんだコイツ、どうでもいいわ!

だが、意外にも夕張お姉さんのマイクはウケているらしく、なんとなく周りから笑い声が聞こえる、コイツ、マジで転職した方がいいんじゃないのか?

 

『えー…では皆々様、西の空をご覧ください、なんかありますね?』

 

なんかってなんだよ!雑!解説が雑だろ!

 

『あれは太陽です、よく見てください、太陽が沈みますよー』

 

太陽が沈み、天井が暗くなると無数の星を示す光の点が現れた、そうそう、コレだよ

 

「テイトクテイトク!アレなに?」

 

光の点に目をキラキラさせた山風が俺の袖をグイグイ引っ張った

 

「ん?あぁ、夏の大三角形だ」

 

『えー…皆さんあちらをご覧ください、あそこになんとなく見覚えのある七つ星がありますねー、アレが北斗七星です』

 

紹介する星の光量が強まり、見る者にわかりやすくする為に星と星とを線で結んでいく、そうそう、プラネタリウムはコレがあるからわかりやすくいいんだよ

 

『ちなみに、北斗七星の横にある星が死兆星です、見たら死にます』

 

解説ッ!!その解説必要かッ!!

 

『え~…実はこの北斗七星、おおぐま座の一部にあたりまして、だいたい腰から尻尾の部分になるんですよー』

 

む…なんだ、意外とまともな解説もあるじゃないか

 

『はい、大きな星が点いたり消えたりしてますねー、大きい彗星でしょうか?いえ、違いますよー彗星はもっとバーっと動きますからねー』

 

解説ッ!!解説がイチイチ危ないッ!!ほら見ろ!なんか周りのお父さん達がちょっと暑苦しそうにしてるじゃねーか!出たがってるじゃねーか!

 

『え~…皆々様ご覧ください、太陽系の星が段々と動いてますねー…もうすぐ一列に並びますねー、はい!コレで太陽は完全に月に隠されましたー、グレイテスト・エクリップスの完成ですねー、地上は永遠の闇に閉ざされちゃいましたー』

 

プラネタリウムでハーデスの野望完成させるなッ!!ナニやってんだアイツは!?

 

…こうして、夕張お姉さんのしょーもない解説を挟みつつ、それなりにわかりやすく星座の解説をし、プラネタリウムの上映はつつがなく終了した

 

‐‐‐

 

「いやぁ~面白かったなァ~」

 

「あぁ、アタイも星座博士になれた気がするよ」

 

江風と涼風はゲラゲラ笑いながらフランクフルトの屋台へ走って行った

 

「どうだった?山風」

 

「…別に、まぁまぁ、ふつう」

 

海風曰く、普通に面白かったと言う意味らしい、トゲトゲしい頭だが根はシャイガールだな

 

「出張上映、またの御来館をお待ちしてまーす」

 

「二度と来るか!っーかオマエも帰ってくんな!」

 

「えー?あ、提督、私今日はもうあがりなんで一緒にご飯でも食べて帰りませんか?」

 

「あ゛?」

 

…まぁ、腹は減ってるな

 

「まぁ構わんが…」

 

「あ、では私達は姉妹で何か食べに行きますので帰りは電車で…」

 

夕張の誘いに、変に空気の読める子、海風が山風の手を引いて出店の方へ去ろうとすると、山風が夕張の膝を勢い良く蹴りあげた

 

「ギャアアアアアア!!お皿が!お皿がァァァ!!」

 

「山風っ!?なにしてるの!?」

 

「…別に」

 

山風はのた打ち回る夕張を養豚場の豚を見るような目で見下し、俺の裾をグイグイと引っ張り出店の方へ歩きだした

 

「…行こ、フランクフルト食べたい」

 

「ん?あぁ、まぁフランクフルトも悪くないか」

 

何がこの子を行動させるのかよくわからんが、俺達はお皿がー!と叫ぶ夕張を置いて出店に行く事にした、まぁアイツなら大丈夫だろう


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