不健全鎮守府   作:犬魚

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後段作戦開始、安心で安全な船旅編成について考える回

【登場人物】

13ちゃん(3)
前回加入した新メンバー、妹が心配でならない姉の鑑


迎撃!士魂の護り①

新種の芋臭い軽空母を沈め、我々は新たなステージへと突入した…

 

「さて、次の海域だが…」

 

千島北端、占守島に敵が上陸侵攻を開始したらしく、今回の我々も目的はこの敵を右ストレートでブッ飛ばす事にあるのだが…

 

「敵は陸上型か…サミダリューン、卿の意見を聞こう」

 

「五月雨です、とりあえず基地航空隊ぶつけて陸上施設に大ダメージな陸上キラーみたいな装備でブン殴るのが定石かと…」

 

「ふむ、卿の意見を是とする」

 

陸上キラー的な装備となると、三式弾とかWG42とかその辺か、ならば狂気の陸上ダメージを叩き出せる大淀か夕張、それに内火艇とか積める感じの駆逐艦が必要になる

唯一、心配があるとするなら、道中の火力と編成が貧弱になるがそこはガッツで補ってもらうか…

 

「提督」

 

「なにかね?」

 

「一応、余所からの情報で、この海域には潜水艦の登用が有効だと言う情報がありますが…」

 

「潜水艦か…」

 

アイツら、今頃エル●タージュ美術館でキャッキャとハシャいで審美眼を鍛えているのだろう

 

「潜水艦と航巡もしくは重巡、それと空母でかなり安全かつ安心に敵旗艦まで辿り着けるとの情報が多数寄せられてます」

 

「そうか」

 

俺は胸ポケットから煙草を取り出し、火を点け、窓を開けて大きく白煙を吐き出した

 

「フーッ~…そうか」

 

今日も良い天気だ、最高のトラベル日和ってやつだな

 

「五月雨、電話」

 

「168さんでいいですか?」

 

「168さんでいい」

 

五月雨はジーコロジーコロと電話機の番号を回し、受話器を俺に手渡した

 

ぷるるるるる……ぷるるるるる……

 

『………もしもし?』

 

「俺だ」

 

『イヤよ!絶対に帰らないから!今回の休暇は誰にも邪魔させない!絶対に屈したりしないんだから!』

 

いきなり取り付くシマもねぇなコイツ、いや、絶対に屈しないとか言ってるだけクッする感があるのか…

 

「まぁ待ちたまえ168くん、何も私も鬼や悪魔ではない」

 

『じゃあナニ?お土産なら空港でマカ●ミアナッツしか買わないんだから!』

 

「今回、我々が望む人員は1人だ、ただ1人だけで構わない」

 

『ひ…1人だけ?』

 

「仕事の内容も簡単、優秀な航巡もしくは重巡、それと正規空母を……そうだな、ダブルドラ……いや、トリプルドラゴンをつけよう、安心で安全な豪華旗艦待遇での船旅を約束しよう」

 

『………ちょっと考えさせて、すぐかけ直す』

 

ブチッ!ツー…ツー…

 

「…切りやがった」

 

「みんなで相談でもするんじゃないですか?」

 

◆◆◆

 

ロシア、サンクトペテルブルク…ネヴァ川を臨む地に立つ美術館、1764年、エカチェリーナ2世がドイツから美術館を買い取ったのがエル●タージュ・コレクションの始まりと云われている…

 

「なんだったのね?」

 

いつもは痴女待ったなしと言われている19も、旅先ではオシャレな服に身を包み、その様はまるで絵画から抜け出た天使と言われても過言ではないだろう

 

「…誰か1人、帰って来いって」

 

「1人…」

 

みんな仲良し、潜水艦達の間に緊張が走る、誰か1人、この、楽しいロシア満喫ツアーを切り上げねばならない

 

「もし、イヤだと言ったら?」

 

「おそらく全員口寄せの術は確実ぅ!でちな」

 

基地にまるで蛇博士のようなニンジャ、川内が居る、潜水艦全員、いつの間にかマーカーを付けられているらしく、ヤツがその気になればロシアだろうが仙人界だろうが何処にいようと、チョコパ食ってようがトイレでウ●チしてようが問答無用で喚び出される

 

「とりあえず58はパスで」

 

「8ちゃんもイヤです」

 

「19もイヤなのね」

 

「168だってイヤよ!」

 

むしろ、全員イヤ、これはもはや常識…

しかし誰かが行かねばならない、誰かを生贄に捧げなければこの楽しいツアーは終わり、最悪、川内の蛇にレロレロされる刑すら有り得る

 

「ろーちゃんもイヤですって!」

 

「ユーもイヤ」

 

「よし!ここは年功序列でいこう!年功序列!一番若い下っパが行く!これでどう?」

 

168から出た画期的意見!年功序列と言う名のパワーハラスメント、略してパワハラにアツい同意の声と賛同の頷き!

 

「異議なし」

 

「異議なしでち」

 

「異議なしなのね」

 

「で?1番新人なのは…?」

 

前回加入した新メンバー、14と13にアツい視線が注がれた

 

「アネキ…元気で」

 

「14ちゃん…」ポロポロ

 

「マカダ●アナッツ買って帰るから!」

 

「うん、うん…」ポロポロ

 

14と13はアツく抱き合い別れの涙を流し、168はポケットからスマホを取り出して素早く基地にコールする…

 

「あ?もしもし?168です、13ちゃんが帰るんで、はい、13ちゃんです、口寄せお願いします」

 

‐‐‐

 

その日の夜、宿泊しているホテルの部屋に戻った14は姉である13が置いて帰ったらしいビデオカメラを見つけたので再生してみた

 

ザーッ……ザッ

 

14ちゃん?いい?よく聞いてね?この包みの中には後でみんなで食べようと思ってたシベリアが入ってるの、後でみんなで食べてね?みんなが美味しいって言ってくれたら救われると思うの、ホントは私が直接持っていこうと思ったけど…

そうするのは、なんか違うなって思えて…ここで基地に帰らないと、自分が自分でなくなるような…

提督が憎いとか、深海棲艦をブッ殺したいとか言うんじゃないけど…うまく言えないけど………アイツと、離島姫みたいなのと戦ってみたくなったの、私が潜水艦だからかな?理由はお姉ちゃんよく分からない

14ちゃん、お姉ちゃんたぶん中破くらいはするだろうけど、その事で深海の人を恨んだりしないでね?彼らだって私と同じで自分のやるべきと思ったことをしてるだけかもしれないし、ね?これはお姉ちゃんのお願いね?

もし………もし、運良く作戦がすぐ終わったらね、必ずまたここに来るから、みんなと合流するから、約束ね?

じゃ、これでお別れね、14ちゃん、休暇を楽しんでね?センパイ達によろしくね?

 

ザーッ……ザーッ……




次回は②

戦慄!北端上陸姫!

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