【登場人物】
提督(134)
正義の心はヒーローから教わった
夕張(25)
正義の心はママの中に置いてきた
長門(14)
正義の心はみんなの中にある!
「新しい装備を開発しました、ハッキリ言って自信作です」
朝からスッキリとした爽やかな五月晴れの執務室、残る最終海域攻略の為、どうしたものかと頭をひねりつつアツいティーを飲んでいると、夕張のアホンダラがニコニコしながらやって来た
「…今こそ汝が右手にその呪わしき命運尽き果てるまで、高き銀河より降りたもう蛇遣い……」
「なんでいきなり本気モードなんですか!?」
「どうせロクなモンじゃねぇんだろ?ならもう最初から殺っても文句ねーだろーが」
夕張の自信に満ち溢れた自信作はだいたいロクなものではない、これは既に常識、聖●士に同じ技が二度通じないぐらい常識だ
「大丈夫です!今回のスンゴイメカは必ずや提督もご満足頂けます!」
「いいだろう、もしご満足頂けなかったら…屈み弱P連打→斬●拳→屈み弱P連打→斬●拳の地獄ハメでハメ殺すからな」
「は、はぃ!きっとご満足頂けると信じております!はい!」
なんでちょっと嬉しそうなんだよコイツは…そんなにハメられるのが好きなのか?
「今回開発した作品はこちらァ!」
狂った科学者特有の大仰な身振り手振りで大きく仰け反った夕張の後ろから現れたのは重厚かつメタリックな紫色のボディのメタルヒーロー!
『Janpers●n、For Justice!』
「名付けまして、特捜ロボ、ジ●ンパーソンです」
「…足があるな」
「なんと100mを6.5秒で走れます」
「ハッキリ言う、気に入らんな」
…どことなく、以前作った悪魔の研究、バイオボーグ・キヨゴルディに似ているような気がするが、もしかしなくても中身は清霜なのだろうか?
「このジ●ンパーソンですが、基本スペックとしてはパンチ力15t、キック力35t、ジャンプ力は20mは跳べます」
「ふ~ん、で?中に清霜が入ってんのか?」
「いえ、このジ●ンパーソンに中の人などいません!純度100%!純粋なロボットです!」
「本物のロボットか」
『ジ●ンパーソンだ、ヨロシク』
「え?あぁ、はい」
ジ●ンパーソンは爽やかに、そのメタルな手を差し出して握手を求めたので俺もとりあえず握手で返した、なんだろうなこの感じ、幼い頃にデパートのヒーローショーに行ってヒーローと握手した懐かしくもアツかりし少年の日を思い出すのだよ…
「このジ●ンパーソン、ロボットですが悪を憎む正義の心を持ってまして、人の痛みや悲しみを理解する事ができます」
「すげぇなオイ!」
「えぇ、我ながらなんで私がこんな正義漢を作れたのか理解に苦しみます!」
「作った本人がゆーな」
たしかに、夕張には正義を愛する心だとか人の痛みや悲しみを理解する高尚な脳ミソはない
「とりあえずこのジ●ンパーソン、パンチでル級も倒せますし、キックでタ級もメリ込ませます!」
「すごいじゃないか」
「えぇ、たぶんジ●ンパーソンを深海棲艦の秘密基地に放り込んだら70時間以内で殲滅可能です」
「すげぇなオイ!」
これが特捜ロボか…何が特捜なのかは知らんが、もうコイツだけでいいじゃないか、そうだ、せっかくだし、北の魔女とか呼ばれてる新しい敵もコイツに任せれば全部OKなんじゃないのか?
「しかしこのジ●ンパーソン、1つ問題がありまして…」
「問題?なんだ?燃費が悪いとかそんな感じか?」
「いえ、なまじ優し過ぎる分、生物に相手だと手加減してしまうんですよ」
「…ハァ?」
「平たく言えば、相手がロボットなら容赦なく破壊しますが、生物的な感じだと良心の呵責的なアレで躊躇うトコがありまして…」
「…ハァ?」
「相手が悪の犯罪ロボットでも、悪の意志を失った場合とかでも見逃しちゃう悪い癖があります」
なるほど、とりあえず悪だとしても改善の余地やその心があるならトドメは刺さないってワケか、まさしくヒーロー的なロボットだ、メタルなボディにヒーローの心を持つ、これまさにメタルヒーロー!
『夕張、悪の反応をキャッチした』
「マジですか?」
『あぁ、すぐ近くにいるようだ!』
「よし!ジ●ンパーソン!出動です!」
ジ●ンパーソンはメタルヒーロー特有のガシャンガシャンとロボット的足音を鳴らしながら執務室から出て行った
「提督!私達も行きましょう!ほら!早く早く!」
「ん?あぁ」
まぁ、ジ●ンパーソンの性能を見ておくにはいい機会かもしれんな、っーか、すぐに近くにジ●ンパーソンに感知される悪って誰だよ…
◆◆◆
執務室棟から出てすぐ、ヤキュウもサッカーもマラソンでもできる基地内グラウンド…
今、この基地内グラウンドで睦月型の姉妹達が走り込みと言う名のアツい汗を流していた
「フフッ…いいぞ、いいぞ」
そして、そんな睦月型の姉妹達を遠巻きから見守るように立ち、GNバズーカのような望遠レンズで撮影する1人の戦艦、長門ッ!
「まったく、駆逐艦のエンジェルス達は最高だな」
睦月型の姉妹達は走り込みを終了したのか、指導者である陸奥の周りに集まり、陸奥はそんな姉妹達にあらかじめ用意していたクーラーボックスから冷たい飲み物を渡していた
「クッ!陸奥め!陸奥め!陸奥めッ!」
なんて羨ましいッ!何故このビッグセブンではなく陸奥なのだ!何故エンジェルス達は私に指導を仰いでくれないのか!長門は歯軋りして陸奥への殺意を募らせていたその時!
「むっ!?」
長門の頬をかすめ、JPと書かれた銀色のカードが地面に刺さった
「なんだこれは…?」
『貴様、あの子供達を盗撮していたな』
「なんだキサマは?」
『Janpers●n For Justice!』
「ジャン…?なんかよくわからんが、私は盗撮などしていない、何故なら私はビッグセブンだからな!」
‐‐‐
ジ●ンパーソンを追いかけ、夕張と外までやって来ると、ジ●ンパーソンは今、まさに犯罪者との死闘を演じていた…
「ナニやってんだ…?アイツ」
ジ●ンパーソンと戦っている長門、どうせいつものように駆逐艦のキッズ達を激写していたのだろうが………問題はその姿だ、今、長門の服には駆逐艦のキッズ達の写真が10枚くらい遺影のように貼り付いていた
「アレが噂に聞く長門改二・コンプリートフォーム!」
「あんな改二イヤすぎるわ!!」
夕張曰わく、なんか近日、長門の第二改装が実装されるのでは?との噂があるらしい……それにしてもアレはヒドい
「キャオラッ!」
『グハァ!』
長門(遺影フォーム)の殺人キックがジ●ンパーソンを蹴り飛ばし、ジ●ンパーソンは大きく仰け反った
「オイ!ジ●ンパーソンが負けそうだぞ!」
「まさか長門さんの力がこれほどとは…」
どんだけ強いんだアイツ…
『クッ!夕張、ヤツを倒すには今の俺を捨てなくてはならない……MX‐A1に戻るしかない!俺の回路を切ってくれ!』
なんだ?MX‐A1って?
「バカ言うんじゃないですよ!それは理性を…良心を司っているアナタの命ですよ!」
『いいんだ、だがこれしかない!敵に対する徹底的な攻撃と破壊本能、それが今の俺には必要なんだ!………頼む!回路を切ってくれ』
「…わかりました」
夕張はジ●ンパーソンの胸を開け、なんか尖った針みたいなもので回路を刺すと、ジ●ンパーソンは電源が切れ、MX‐A1として再起動した
『………ターゲット・ナガト、抹殺スル、破壊スル』
「む?」
MX‐A1が非情の15tパンチを長門に叩き込んだ
「ぐぼぉ…!!」
『抹殺スル、破壊スル』
「コイツ!急にロボットっぽくなったぞ!面白い……このビッグセブンに勝てると思うなよ!」
『抹殺スル』
長門とMX‐A1の死闘は二時間に及び、最終的に爆発と爆炎の中から現れたのはMX‐A1、いや、ジ●ンパーソンであった
善悪判断の回路が切れた筈のジ●ンパーソンは人間とロボットの境界を越え、本物の心を手に入れたのだろう…
そして………
「行くのですか?ジ●ンパーソン」
夕張はジ●ンパーソンにこれから必要になるであろう機材を手渡した
『あぁ、この世界にはまだ倒すべき悪がいる、俺は人々の為にこの力を使いたい』
「そうですか、でも、たまには帰って来てくださいね!」
『あぁ、また会おう!』
こうして、ジ●ンパーソンは夕日を向かって愛車で走り出した、ありがとうジ●ンパーソン!君達こそ人間とロボットを繋ぐ真のヒーローだ!さらば僕らのヒーロー!
Janpers●n For Justice!!
◇◇◇
「オイ、夕張、なんか鋼材が異常に減ってるんだが…?」
「ジ●ンパーソンの修理ってお高いんですよねー」
にこやかに笑う夕張の顔を掴み、容赦無く執務室の壁に叩きつけた
「スネークジェノサ●ドーッ!!」
「オゴォ!!」
「立てコラァ、テメーはユメじゃ済まさねーぞ!」
次回は最終海域、北の魔女