不健全鎮守府   作:犬魚

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最終海域突入!前哨戦と言う名の出オチ

【登場人物】

提督(135)
和菓子なら案外食べる

五月雨(45)
姉妹でスウィーツバイキング行くぐらいは食べる

夕張(26)
板チョコはパキる


北の魔女①

今作戦最終海域!大ホッケ海北方…

 

深海北方艦隊精鋭集団を率いるのは、前回珍しく休暇を貰っていた深海棲艦が誇る屈強なるタフ・ガイ、戦艦棲姫ッッッ!

 

『フゥーハハハ!ナンドデモ沈ンデイケェ!!!』

 

勢い良く飛び出してきた戦艦棲姫の中段突きをかわしざまに合わせた右は顎の先端を正確に捉え、脳を頭骨内壁に激突させ意識を刈り取る

 

既に意識を分断された戦艦棲姫の下顎にダメ押しの左アッパー

 

さらに、左背足による廻し蹴りは、戦艦棲姫を更なる遠い世界へと連れ去り………前のめりに倒れた、その間、実に2秒!!

 

「ヘーイ、比叡、タオルくれネー」

 

「お疲れ様です!金剛の姉者!」

 

これが、当基地が誇る暴力パート担当の頂点に君臨する金剛姉妹、その長女のベストコンディションの姿である

 

◆◆◆

 

「とりあえず、前哨戦は勝ったそうですよ」

 

「そうか」

 

五月雨は受話器を置いて現場の状況を簡潔に報告し、冷蔵庫からペットボトルを取り出してグラスに麦茶を注いだ

 

「フーッ~…前哨戦はストレート勝ちか、なかなか幸先がいいじゃないか」

 

「そうですね」

 

今作戦では、支援を含めて今まで出番が一切無く、イライラと不満と殺意を募らせていた金剛姉妹を満を持して出陣させてみたが、やはりアイツらはハンパじゃない

 

「…で?前哨戦はいいとして、ここからが本番ってワケか、サミダンデライオンくん、敵旗艦艦隊と海域の情報はどうだ?」

 

「五月雨です、一応それなりに揃えておきました、これです」

 

「フーッ~…ふむ、なるほどなるほど」

 

敵は相変わらずのよくわからん超装甲バリア搭載の新型か、ふむふむ、なるほどなるほど………しかし、なんだろうなコイツ、今までも深海棲艦のファッションセンスには光るものを感じていたが、コックさんみたいな長帽子はいいとして、ほぼ全裸にマントとかコイツもかなりブッ飛んだセンスをお持ちらしいな

 

「どうしますか?このまま金剛さん達を主力に行きますか?」

 

「そうだなぁ~…」

 

まぁ、現場の空気としてはこのままヤる気の空気みたいだし、ここで武蔵とか投入してチームとしての流れを切るのは良くないだろう

 

「ま、とりあえずこのまま行くか」

 

ゴン!ゴン!

 

煙草を灰皿に押し付け、とりあえずの方向性を決めたその時、執務室の重厚な扉を叩き、常にヘソを丸出しで無駄にスレンダーな下腹を見せつけてくるスタイルの軽巡が入って来た

 

「お疲れ様です!夕張です!」

 

「何の用だ?」

 

「今日は提督にとびっきりワクワクする情報を伝えに参りました!サー!」

 

何がサーだ、舐めてんのかコイツは?

 

「くだらねぇ情報だったらケツ穴にホース突っ込んで水道の蛇口チョロチョロ開で時間を掛けてダメージを与えるからな」

 

「全開じゃないんですね」

 

「はいっ!かならずや御満足頂ける情報です!」

 

五月雨はペットボトルの麦茶をグラスに注ぎ、夕張に手渡し、夕張はそれを一息にグイっと飲み干し大きく息を吐いた

 

「美味いッ!そして心なしか!身体がアツくなってきた気がしますね!コイツぁ!」

 

「媚薬入りですから」

 

「マジで!?五月雨ちゃんマジで!?」

 

「冗談です、小粋な五月雨ジョークですよ」

 

「マジかーッ!五月雨ちゃんマジかーッ!」

 

コイツら、たまに一緒に買い物行ったりとかジョーク言うぐらいは仲良いんだな

 

「さて提督、前回……いえ、前々回ですか?昨年の秋を覚えてますか?」

 

「去年の秋?」

 

なんだったっけかな?たしかなんとか第三法とかそんな感じだったか?なかなか俺をアツくさせるファイトだった気がしなくもないが…

 

「昨年の秋、ビキニ沖に出撃した長門さんや酒匂ちゃんが悪魔もブッ飛ぶ超絶パワーを発揮した件を覚えてますか?」

 

「あ~…あったな、そんなの」

 

ビキニ沖に漂う禁断のアトミックパワーを解放させたあの惨劇か

 

「今回はさすがに禁断開放とはまでは行きませんが、特定の娘がヤる気を出せるでしょうとのデータが出てます」

 

「特定の娘?また長門か?」

 

「いえ、今回は那智さん、木曾さん、阿武隈さん、初霜ちゃん、潮ちゃん、霞ちゃん、そしてヴェールヌイちゃんですね」

 

「ふ~ん」

 

「………あれ?意外と食いつきが悪いですね」

 

夕張曰く、なんかよくわからんエネルギーでちょっとやる気が湧いてくるらしい

 

「話はそれだけか?」

 

「え?あ、はい、そうですけど」

 

「わかった、下がりたまえ」

 

「…え?あ、はい………あの、ホースは?」

 

「くだらない話ではなかったからな、なんなら褒美に饅頭でも食べるかね?」

 

俺は机に置いてあった梅ヶ枝餅を一つ手に取り、夕張に渡してやった

ちなみにこの梅ヶ枝餅、俺は饅頭と言ったが正確には饅頭ではなく餡子入りの焼餅である

 

「あ、はい、ありがとうございます…」

 

「なんだ?梅ヶ枝餅は嫌いかね?」

 

「いえ…」

 

人が誉めてんのになんで残念そうなんだコイツは……アレか?誉められるのが恥ずかしい多感な気難しい年頃なのだろう




次回は②

イベント海域最終回

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