不健全鎮守府   作:犬魚

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全三回予定の一回目

【登場人物】

提督(142)
本編の主人公、喫煙眼鏡
好きなカレーは肉なしカレー

五月雨(48)
初期艦でほぼ専属秘書、痒いところに手が届く

大将殿
海軍省、横須賀所属の本部大将、昔は前線でヤンチャしてたが現在は権謀でヤンチャしてるヤンチャオヤジ


提督の花嫁編 前編

「…ハァ?見合いっすか?」

 

俺は受話器を片手に五月雨の淹れたクソマズコーヒーを啜りながらワリとどうでも良さそうに通話先へと相槌を打つ…

 

『そうだ、悪いハナシじゃないから会え』

 

「ハァ…?普通にイヤなんすけど?コレ断ってOKすかね?」

 

『いいワケなかろう、相手の詳細資料は先日送ったハズだが………お前、見てないのか?』

 

「さぁ?そんなモン見てないっすねぇ~」

 

視界の先で五月雨がなにやら執務室の隅に置かれたダンボール箱を指差しているが……あぁ、たぶんアレか

 

『まぁ、お前の事だから腐るモンでもあるまいし、どうせロクなモンじゃないからと放置しとるんだろう』

 

「まぁそんな感じっすね」

 

『まぁいい、早急に中身を確認しろ、見合いの日まで三日しかないからな』

 

「三日ァ!?ちょ…ちょっと早過ぎじゃないすか?僕にも心の準備とか、美容室の予約とかエステの予約とか…」

 

『やかましい、いいか?逃げるなよ?逃げたらお前は海軍の裏切り者として本部中将五名率いる大和型含むガチ連合艦隊でこの世から消すぞ』

 

やだもー、ガチだよ!このオヤジ、俺を消す為にバスターコールとか何考えてんだよ、常々このオヤジマジヤベーとか思ってたけど、たかが見合い断るぐらいでコレだよッ!

 

「へいへい…行けばいいんしょ?行けば」

 

『それだ、わかればいいんだよ、わかれば、聞き分けのいい息子を持ってオレは幸せ者だぜ』

 

「誰が息子だ、っーかコレ、見合うだけ見合って後は断っていいんだよな?」

 

『は?いいワケなかろう』

 

「ハアァ!?」

 

『オレの顔を立てろよバカヤロウ』

 

‐‐‐

 

大将殿との通話を終え、受話器を置いた俺は棚に置いてあったお客様用のガラス製灰皿を取り出して執務机に置いた

 

「禁煙ですよ」

 

「コーヒー、アツいヤツおかわりくれ」

 

「アツいのですね」

 

俺は胸ポケから取り出した煙草に火を点け、これまた無駄に強固な防弾ガラスの窓を開けて白煙を吐き出した

 

「フーッ~…」

 

空は青いな、こう…アレだな、この澄み切った空の青を見ていると誰を殺せば世界が平和になるのか考えるのが馬鹿らしくなってくる、人もまた地球が生み出した天然自然の産物、人と人が分かり合えば世界はいつだってラブ&ピースじゃないだろうか…

 

「コーヒーです」

 

「うむ」

 

本日二杯目、五月雨のクソマズコーヒーを啜り、再び白い煙を吐く

 

「…相変わらずお前の淹れるコーヒーはマズいな」

 

「二杯目ですよ」

 

もしかしたら二杯目だと味が変化するんじゃないかと淡い期待をしてたが、やはりマズいものはマズかった

 

「箱、開けてみましょうか?」

 

「そうだな」

 

五月雨は引き出しからカッターナイフを取り出し、ダンボール箱を開封して中から無駄に厚そうなファイルを取り出し俺によこした

 

「ふ~ん…」

 

詳細を見るに、相手は技本に関わり合いのありそうな企業一族か、え~……特殊マテリアル加工を生業にしており、起源は江戸初期から続くどーのこーの………ふむ、よくわからんがワリとデカい企業体らしい

 

「あ、相手ってこの写真の人じゃないですか?」

 

「あ?あぁ、たぶんそうだろ」

 

黒髪ロングの如何にも感じのお嬢様の写真、まぁ最近の写真加工技術はマジパナイしな

 

「美人じゃないですか」

 

「美人なんじゃね?」

 

「あれ?反応薄いですね、美人さんですよ?」

 

「会った事もないヤツに興奮するかよ、写真なんざ清楚系AVのパッケージみたいなモンだろ」

 

「例えが最悪ッ!!」

 

「ハァ……まぁいいや、とりあえず会うだけ会ってみるか」

 

正直、かなり気が進まないが仕方ない、これも仕事だと割り切るしかない、結果はどうあれ嫌な仕事も割り切ってやるのが大人だ

 

「出かける準備しねぇとな、五月雨、お前も付いて来い」

 

「は?」

 

「は?じゃねーよ、お前は俺の何だ?」

 

「……部下、ですかね?」

 

「そうだよ、しかもタダの部下じゃないで俺の頼れる秘書艦様だろーが、秘書艦手当払ってんだぞ」

 

「まぁ…たしかに、ほぼ専属の秘書艦ですけど………え?私行かなくても良くないですか?」

 

ナニ言ってんだこの青髪ロングは、イカレてんのか?

 

「ナニ言ってだお前、あくまで大将殿お達しの業務の一環なんだから秘書連れててもおかしくないだろ?」

 

「まぁ…そう言われたらそうですけど」

 

「だろぉ?わかったらゴチャゴチャ言ってないお泊まりセットとかビッと気合の入った服とか用意しとけよ」

 

「…はぁ?」

 

五月雨は納得したような、納得してないような微妙な感情を眉間の皺で表したものの、わかりましたと言って同行に納得した

 

‐‐‐

 

そんなワケで、出発当日…

俺と五月雨は目的地まで運転していくのはさすがにダルいので公共の交通機関を利用して移動していた

 

「しかし中央に行くのも久しぶりだな~」

 

「そうですね」

 

いつ以来だろうな、勲章ものの活躍するワケでもなく、常に微妙な戦果しか挙げてないので偉い人の集まる魔窟……ではなく偉い人の集まる海軍省なんぞにお呼ばれするコトなんざ皆無だしなぁ~…もしかしたら提督の辞令受けた時以来か

 

「たまには鈍行列車の旅も悪くですね」

 

「そうだな」

 

「あ、もうすぐ陸橋ですよ、陸橋」

 

「俺が軍の偉い人ならここで爆破だな」

 

「そーゆーイヤなフラグ立てないで下さいよ」

 

「小粋なテイトクジョークだ、オイ、駅弁くれ、駅弁」

 

「はいはい」




次回は中編

ヤな旅、死のキブン
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