本編的にはここで終わりです
【登場人物】
提督(143)
何故こうなったのか!後から頭を抱えるものの正しい答えを絶望的に出せないタイプ
とりあえず名前は出さないスタイルなのでテキトーに“ああああ”とかそんな感じ
暗雲立ち込める今日の良き日、梶輪大将の手配したセレブリティなオーラと老舗感溢れる料亭にて見合いと言う名の決闘の幕が上がったッッッ!
「よし………と」
「何がよしですか、ネクタイ曲がってますよ、ネクタイ」
「うるせぇな、お前は俺のオカーサンかっての」
相変わらず痒いところと細かいコトにグダグダ文句言う五月雨の指摘を受け、ネクタイの位置を修正しつつ俺は見合い場所として用意された部屋“大灼熱の間”なるイヤな予感しか感じない部屋の襖を開けた
「ティーッス、遅くないけど遅くなりましたー」
「やかましい、まずは挨拶せい、挨拶」
部屋には既に大将殿と見合い相手とただならぬ気配を放つ初老の紳士が来ており、大将殿に促され、とりあえず今回の見合い相手である黒髪ロングに視線を向け………
「…ん?」
子供………?何故子供がいるのだろうか?目の錯覚かなんかだろうか?なんか相手が写真のイメージよか小さく見えるんだが、嗚呼、こりゃアレだな、小さく見えるってコトは俺が勝つ!ってコトでいいんだよな、うん
「………って!そんなワケあるかァ!!」
「!」ビクッ!
いやいやいや、コレ写真と違いすぎるだろ?あきらかにサイズ違い過ぎるだろ?全体的に、完全に写真はイメージですじゃねーかオイ!ファミレスのハンバーグぐれー写真とイメージ違い過ぎるだろ!?合ってんの黒髪ロングだけじゃん
「やかましい、まぁいいから座れ、席を始めるぞ」
「いやいやいや大将殿、え?大将殿?ちょっと俺の目を見て俺の質問に答えよーや?」
「いいから座れ」
大将殿は邪眼避けのサングラスを素早く着用し、とりあえず今はグダグダ文句言わずに座れと俺の肩を砕く勢いで掴んだ
「アダッ!!痛い痛い痛い!わかった!わかりましたよ!座りゃいいんしょ、座りゃ」
「さて、主役の二人も揃ったところで“見合い”の席を始めようか、有馬殿、こやつが地方支部ながらも艦隊司令を預かる私の部下で名を…」
ーーー
有馬優
海軍の技術関係部署にそこそこ大きな関係を持つ企業“有馬”のお嬢様で三人兄妹の末っ子、上には企業の実質的な経営に携わる兄と、企業の顔役・宣伝塔をこなす姉がおり、兄姉とはかなり歳が離れているせいか、街を歩けば親子にすら間違われる事もあるらしい…
「////!!」
両親だけではなく歳が離れた兄妹故か、兄姉にもかなり溺愛されているらしく、ただでさえ大企業のお嬢様、しかも超絶過保護+超箱入りとして育てられたせいか、外界との接触が極端に少なかったせいか、元々の気性なのか、非常に内気で人見知りな性格となってしまったそうな
「大将殿」
「なんだ?」
「この国の結婚出来る年齢知ってるか?」
「男は夢●したら、女は〜…まぁ、その気になったらだったか?」
「男は18で女は16だよッ!!」
ナニ言ってんだこのクソオヤジは、イカレてんのか?いや、イカレてやがる、このオヤジには自動ブレーキシステムどころかマトモなブレーキすら搭載されてねぇ…
「俺はまぁ…いいとして、え〜…お嬢様は何歳だよ?」
どう見ても犯罪適齢期だよ、タイーホ待ったなし案件だよ、とりあえず贔屓目に見ても発育の悪いJC、贔屓目に見なかったらJSと言われても納得するね、俺は!
「////!」
お嬢様はなにやら顔を赤くして言おうとして諦め、もう一度チャレンジしようと俺を見たがやっぱり顔を逸らし、後ろに控えているただならぬ気配を持つ老紳士になにやら耳打ちし、紳士は一つ咳払いして口を開いた
「お嬢様は今年で12で御座いますと仰られております」
やっぱアウトじゃねぇかァァァァァァァァ!!もしかしたら見た目に反してこのゲームの登場人物は全員18歳以上ですとか期待したけどやっぱアウトじゃねぇかァァァァァ!!見た目通りだったよチクショウ!
「大将殿」
「なんだ?」
「ちょっと僕お腹痛いんで帰っていいですか?」
「我慢しろ」
まぁ、冷静に考えたら仮に見合い話が上手くいったとしても今日明日にケッコンしろとかそんなルールないんだよな、とりあえずお付き合いとか、婚約とかはあるかもしれないが…そう考えると相手は良いとこのお嬢様だ、そーゆー話は庶民に比べて早いのかもしれん
「…はぁ」
「////!!」
しかしこのお嬢様、さっきから全然喋らないし、俺と目を合わせようともしないな、まぁ、まだ遊びたい盛りの多感な年頃だろうし気持ちはわからんでもない、ハッ!これは先方からお断ってくれる良い流れが来てるんじゃないのか?
「とりあえず、若い二人で庭でも散歩してきたらどうだ?定番だろ?」
「外、雨降りそうなんすけど?」
「降ったら建物に戻ればよかろう」
大将殿のテキトーな思い付きで、とりあえず俺とお嬢様は料亭内にあるワリと大きな庭をフラっと歩く事になり、俺は微妙どころかスネークバ●トの射程外を歩くお嬢様と外に出る事にした
「って、ちょっと待て」
「なんだよ?」
「お前も有馬殿も散歩中ぐらいお付きの者ぐらい置いていかんか」
「あ?」
俺の後ろにはただならぬ青髪ロングと定評のある頼れる俺の秘書、五月雨、そしてお嬢様の後ろにはこれまた戦後日本で闇のファイトでもして生計を立てていたかの雰囲気を持つ老紳士、たぶん、お嬢様お付きの執事だろう
「しかし梶輪殿、お嬢様にもしもの事があれば…」
「私は別に構いませんよ、ここで待ってますから」
「むぅ…」
老紳士と五月雨の間に一瞬、バトル漫画特有の緊張感が走った気がしたが、まぁ気のせいだろう、老紳士は俺に近付き、くれぐれも…!と短く説得力溢れる耳打ちをした
ーーー
「はぁ〜…」
ダメだ、ため息しか出ねぇ、外とは言え、さすがに煙草吸うワケにも行かず、俺は二酸化炭素を吐き出すマシーンと化していた
「////」
お嬢様はお嬢様で俺の3歩後ろどころか9歩くらい後ろにいるし、っーかナニ話したらいいんだ?現役JSのお嬢様なんかと話す話題なんかねぇよ、っーかどう扱っていいのかすらわからん
「…ふ〜む」
いや待て、よく考えたら俺には駆逐艦のキッズをドッカンドッカン笑わせる小粋なテイトクジョークがあるじゃないか!よし、それでいこう!
「え〜…お嬢様?」
「////////!?」ビクッ!
あかん、コレはあかん、ウチのアホガキどもと同列に扱ったらあかんやつや、お嬢様は小柄な身体を撥ねて俺から更に距離をとってしまった
「あ〜…その、なんだ?今日は天気悪いっすね?」
「////」コクコク
お嬢様は大きく何度も頷いた、とりあえず意思の疎通は出来るらしいな…
「お嬢様も若いのに、大人の事情でこんなしょーもない場に呼ばれて大変っすね」
「////!」フルフル
「まぁ、俺がこんなコト言うのもなんですが…お嬢様まだ全然若いし、普通に可愛いし、人生これからっすよ」
「/////////!」
「あと、ケッコン相手は可能な限り自分で選んだ方がいいっすよ」
ケッコンなんてのは幸せで、幸せで、幸せの絶頂でやるのが理想的だ、まぁあくまで理想であって現実ではないが…
血と硝煙とヤニで汚れきった大人である俺から真っ白で輝かしい未来溢れるキッズへのせめてものエールを贈ろう
「////」コクコク!
俺のちょっと良い言葉にお嬢様は何度も頷いた、よかったよかった、良い事した後は気分が良いものだ
◇◇◇
「サミちゃんよォ」
「なんでしょうか?梶輪大将」
提督と有馬のお嬢様が庭に出ている間、私と梶輪大将と執事の人は外の様子を眺めながら普段味わう事が無い高級な茶葉を味わっていた…
「一応聞いとくが、お前さん野郎に気はないのか?」
「はぁ?」
「や、仮にそうだったとしたら流石に悪りぃなと思ってなぁ」
「そうですね、とりあえず今日は朝から提督とステディな関係ってコトになってます、明日には別れますけど」
「………デキた部下を持ってるのぉ、アイツも」
「よく言われます」
特別、好きでもなければ嫌いでもない、提督との付き合いはこの距離感が一番ラクでいい
「今日限定の交際関係……やはりあの男、小癪な策を講じておりましたか…」
有馬様のお付きの老紳士然とした執事さんが苦々しいとばかりに口を開いた
「えぇまあ、基本的に提督は小癪で姑息で小狡い小物ですから」
「クッ………何故にお嬢様はあのような下衆に興味を持たれたのか」
「はい?」
思わず聞き返してしまった、え?お嬢様が興味を持ってるって…?
「今日の席はオレが任されて仕切ってはいるが、有馬側からの希望で設けた席だぞ」
ナニ言ってるんでしょうかこの大将殿は、もしかしてイカレているのでしょうか?
「………え?マジですか?」
「マジ」
………提督、貴方がいつどこでナニをしてしまったのかは知りませんが、これは本格的にヤバいかもしれません、と言うか、ホントなにしたんですか!?
◆◆◆
とりあえず、無事に見合いと言う名のエンターテインメント決闘も無事に終わりを迎える事ができたようだ
正直、最初は写真詐欺にビビって手札事故をおこしかけたが流石は俺、一流の提督は引きたい時に引くべき札を運命的に引くものだ
「じゃ〜…とりあえずお互い前向きに検討するってコトで、お疲れしゃーっしたー」
前向きに問題を先送りにする、まぁ時間は十分にあるし、後は時間が全てを曖昧にして解決してくれるだろ
なんか執事の爺さんみたいなのがスゲーメンチ切ってる気もするが、まぁ二度と関わり合いになることもあるまい
「じゃ、そーゆーワケで、帰るぞ五月雨」
「はぁ」
用事さえ終わればこんなとこにゃ用はない、さっさと帰っていつもの怠惰……ではない、熱意とガッツ溢れる職務に戻らねば
「あ!あの……っ!」
俺達が席を立ち部屋を出ようとすると、背後からなにやら聞いた事のない鈴の音のような声が聞こえたので振り向いてみると、有馬のお嬢様が相変わらず赤面してオロついた様子で立っていた、って………今の声、見た目を裏切らない綺麗な声じゃないか
「ま…また」
「あぁ、次はもうちょい楽しくお喋りでもしたいもんだな」
「////////////!!」
まぁ、次があればの話だが…
余程の変人でもない限り、次はないだろうし、お嬢様はエレガントであって変人ではないだろう、うん
こうして、上司主催の見合いと言う名の降って湧いた嫌がらせのようなイベントも終わり、俺と五月雨は中央で一泊してから再び鈍行列車の旅で基地への帰路についた…
次回は通常回ではなく延長戦!
ヤツの目が開く時!そこは地獄と化す!