不健全鎮守府   作:犬魚

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もしかしたら、逆だったのかもしれねぇ回

【登場人物】

提督(147)
それが大人の特権だよ

島風(4)
スカートの意味を考えさせる痴女、しかしスカートを穿いているので風紀的に問題はない

天津風(2)
よく見ると、スケスケだぜ!


提督と島風と孤独の毒

島風型1番艦、島風

その、他の追従を許さないスタイリッシュ痴女ファッションはどこの基地・鎮守府においても目のやり場に困ると言う回答が多い実にけしからん格好をした駆逐艦である

 

さて、午後も元気ブリバリに仕事すっかーと考えつつ喫煙所で煙草を吸っていると、その、スタイリッシュ痴女の島風が菓子パンを持って廊下をうろついていたので声を掛けてみた

 

「よぉ、ナニやってんだ?」

 

「おう!?」

 

「昼飯か?そんなモンで足りるのか?」

 

「えぇ…まぁ」

 

オイオイオイ、食べ盛りのお子さんがクリームデニッシュ1つだけですか、まさに超人的な消化力と言えますね、それに、野●生活のフルーティ味も添えて実にバランスがいい

 

「テイトクはタバコですか?」

 

「タバコですが?」

 

この島風、見た目は些かアレだが話をしてみるとワリと謙虚で人見知りするタイプらしく、昔は地味でパッとしない子だったらしいが田舎から出て来る際、友達を作りたいと都会的ファッションをベンキョーし、ナニを間違えたのかそのカッ飛びファッションに行き着いたそうだ

 

「そういやオマエ、香取先生が今度廊下を走ったら殺すって言ってたぞ」

 

「殺っ!?」

 

「フーッ〜…俺は懐が深くてハンサムで優しいから許してやるが、香取先生には迷惑かけるんじゃねーぞ」

 

「おぅ!了解しました!」

 

ちなみにこの島風、香取先生には非常に懐いているらしく、香取先生もたまにこの痴女をラーメン屋に連れて行ってラーメンを食わせてやっているらしい、以前、色々あって、この島風がどのみちロクなヤツじゃねーから見つけ次第殺るぞ!って話になった時も香取先生だけは自分の生徒を信じた件もあったな、懐かしい話だ…

 

「フーッ〜…」

 

「テイトク!」

 

「なんだ?」

 

「前から気になってたんですが、それ、美味しいんですか?」

 

「…どうだろうな?旨いっーか、美味くないっーか…ケムリだしなぁ」

 

「へぇ〜」

 

「まぁアレだ、タバコの旨さとビールの苦さに旨みを感じるのは大人の特権ってヤツだ」

 

その苦味と引き換えに、若さを手放し、大人である事をただ認めて次に活かす、それが大人になると言うコトだろう、このスタイリッシュ痴女にもいつしかわかる日が来るだろう

 

「しかし、俺も小腹がすいたな…明石のカスんトコ行ってなんか買ってくるか」

 

食堂行ってガッツリ食いたい気分でもねぇし、こないだ間宮にウホッ!イイ尻してるね!と気さくに挨拶したら汚物を見る目をされたからあんま顔出したくねぇし…

俺は灰皿にタバコを投げ込んでベンチから立ち上がった

 

「じゃあな、便所飯もほどほどにしとけよ」

 

「便所飯じゃありません!べ…ベンチで!ベンチで食べるつもりだったんです!友達と!」

 

「あ?」

 

ナニ言ってんだコイツ?このどこへ出しても恥ずかしいスタイリッシュ痴女に友達とか居たのか…?初耳だな

 

「オマエ、友達とか居たんだな」

 

「いますよ!友達!テイトク失礼過ぎ!」

 

「すまんすまん、そういや友達居たな、連装砲ちゃんと連装砲ちゃんと連装砲ちゃんが」

 

陽炎型のあま…アマツ、アマツなんたらは連装砲くんしか居ないがコイツには3人も居るんだったな

 

「クッ!」

 

島風は悔しそうに顔をそむけた、どうやら友達とはマジで連装砲ちゃんと連装砲ちゃんと連装砲ちゃんらしい

いかんな、このままでは青春の甘酸っぱいイベント満載の多感な年頃をこの娘は孤独のまま過ごし、そうだよ!オレは最初から独りだった!オマエにはわかんねぇだろうな!温かい家族も!優しい姉妹も居たオマエには!とか言って闇堕ちするかもしれん…

 

「島風ェ…」ポロポロ…

 

「な、なんですか?」

 

「わかるってばよ…独りはつれーよな、ハンパじゃねーよな」ポロポロ…

 

「ちょ!なんですか!?なんでテイトクが泣くんですか!?ってか、別に連装砲ちゃん以外にもちゃんと…」

 

「よし!提督がラーメン奢ってやるぞ!付いて来い!」

 

俺は島風の頭の耳長族みたいな黒いアレを掴み、島風を引っ張って歩き出した

 

「ちょ!痛い痛い痛い!痛いです!それに私待ち合わせが…ッ!!」

 

「ハッハッハ!子供が遠慮なんかすんな!大盛りでもいいんだぞォ!」

 

このシャイガールめ!そうだ、こーゆー拗らせた子は無理矢理にでも連れ出すコトで変わっていく!そうですよね!香取先生!これが真の教育なんですね!香取先生!

 

「ハッハッハ!アーハッハッハ!」

 

「オーゥ!!痛い痛い痛い!もげる!リボンもげるぅぅぅ!!」

 

◆◆◆

 

提督が島風のウサ耳的なアレを引っ張りラーメン屋に連れて行かれた頃…

 

「…遅い」

 

執務棟の裏側にあるベンチで独り座る天津風は未だに来ない友達をずっと待っていた

 

「…遅いなぁ」

 

そんな天津風の足元に、ベンチ周りの除草作業を終えた連装砲くんが戻って来て目をチカチカと点滅させた

 

「………独りは辛いってばよ」ポロポロ…




次回は久しぶりに香取先生と鹿島先生

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