Zero-45様のご厚意のもと書かせて頂いております
【登場人物】
提督(151)
大佐、子供にアイスぶつけられるレベル
五月雨(50)
通称、青髪ロング、痒いところに手が届く
吉野中将
Zero-45様の『大本営第二特務課の日常』の主人公
髭で眼帯の勇ましさやこれまさに武将、所属する艦娘からの好意の多さやこれまさに快男児
時雨
Zero-45様の以下略、当基地所属の頭が高い時雨様とは別物
アツかりし夏の日差しになんか絶対負けない!と決意する冷房のパワフル送風を全開にした夏の執務室、基本ロクな話のない軍の回線を使った電話が鳴り、イヤな予感を感じつつも取らないワケにもいかないのが大人である
「もしもぉーし、ウチはピザの配達とかしてないですよぉ〜」
『そうか、じゃ寿司でも持って来い、上をな』
相変わらずガハハハうるせぇクソオヤジこと大将殿と小粋なテイトクジョークを交えつつ、次は大規模作戦だとか最近どーよ的な話をし、イヤな予感だけを膨らませつつ早く電話切りたいと考えていると、声のトーンが変わり、大将殿は今回の本題を話しだした…
『オマエんトコに監査が入るぞ』
「はぁ?監査っすか?」
『しかも中将直々に』
「は?」
ナニ言ってだこのオヤジ、イカレているのか?
『中将直々とかなかなかないぞォ?』
「………中将ォォォォォ!?ちょ!ちょ…待てよ!ハァ?ちょっと待て大将殿!なんでそんな大物がウチに来るんだよ!?」
『知らん、今回はオレの与り知らんトコで決まっておったし、まぁ色々事情があってオレも今回の話は手が出せん』
「いやいやいや、え……?マジで?」
『マジ』
いや、まぁ、そりゃ上には上のお付き合いっーか勢力図的なモンがあるのはわかるが、さすがにいきなりまったく知らん派閥の中将が来るとかタダ事じゃないだろ
『しかも少々ヤバいヤツらしいからなァ、まぁ、アレだ?いい感じにアレしとけ』
とりあえず、事前に連絡ぐらいはしてやる親心に感謝しろよガハハハとか笑い、大将殿は電話を切りやがった…っーかいい感じにアレしとけってなんだよ、どんだけふわっとした指示なんだよ、相変わらず腹立つなあのクソオヤジは…
「………はぁ」
「監査、ですか?」
「あぁ、しかも中将様直々のな」
軍なんてのは上に行けば行くほどアブないヤツだらけの組織だ、しかも中将クラスとなるとおそらくは全員が覇気の使い手、俺の子供にアイスぶつけられる能力じゃフルボッコ確実ぅ!だ
「なんかよくわからんが艦娘オタスケ課がどーのこーのでウチに問題があるとかなんとかで一度見に来るとかなんとか…なんなんだ、一体」
「艦娘オタスケ…?」
「なんだ?知ってるのか?」
「えぇ、なんか電話相談みたいなヤツですよ、たしか、前に開設のお知らせとかなんとかチラシが届いてましたね、今も掲示板に貼ってるハズですけど…」
そういやなんかそんな紙が貼ってたような気がするな、大して気にもしてなかったが…もしかしてアレだろうか?フリーダイヤルをいいコトに、ウチのバカどもがイタ電しまくってるとか…
「鈴谷さんとかよく電話してるそうですよ」
「………ほぉ」
あの野郎ォ…いらんコトばっかしやがって、ヤンチャか?ヤンチャやろワイ?オイタばっかしよんねんか?
まぁいい、上からゴチャゴチャ言われるのは今に始まった事でもない、どのみち監査は逃れられんし、偉い人なんてちょっと頭下げて誠意見せりゃ大抵はそれで満足するもんだ
「サミー、とりあえず監査に来る中将様の事を調べといてくれ、ざっくりで構わん」
「はぁ、構いませんけど……何処のなんて方ですか?」
「たしか……大坂鎮守府の吉野とかなんかとか…」
「はぁ、大坂の吉野中将ですね」
◇◇◇◇◇
市街地からは車で30〜40分程度、微妙な高さの地域密着型の山とレジャーにも漁業にも適さない海の近くにその基地はあるらしい…
「提督、お茶はいるかい?」
「ん?貰おうか」
ローカル線の鈍行電車のシートは硬く、長時間座っていると尻と背中に深刻なダメージを受けかねない、今回の旅に同行して来た秘書艦の時雨くんからペットボトルのお茶を受け取り、駅で購入したかしわ飯弁当を流し込んだ
「田舎と言ったら田舎だけど、微妙な田舎だね」
「まぁ、深刻な田舎ってワケでもないねぇ」
窓の外の景色を見ながらお互いに率直なようで曖昧な感想を告げる、そもそも今回の監査、足柄からちょいちょい受けてた例の問題基地、なんか全裸で土下座させたり執拗にア●ルを開発したりとロクでもない話や、艦娘の給料を完全出来高払いにしてるやら基地所属の艦娘がゲーセンでたむろし、街でチンピラまがいの事件をたびたび起こしているやら、調べれば調べるほどホコリしか出てこない…
ただ、職務には意外と忠実らしく、大本営からの海域作戦などにも参加、勲章もののとは言わないが毎回微妙な戦果を挙げ、上から怒られないギリギリのラインを保っており、それを意図してやっているのか否かでかなり評価は分かれる事になると思う
「お土産は何にしようか?せっかくの提督との二人旅なんだし、何か記念になるものを買いたいね」
「時雨くん、言っとくけどコレ、旅行じゃないからね?仕事だからね?」
「あ、帰りは温泉に寄って帰るのはどうかな?行きに着いた駅にあるバスターミナルから直行バスがあるらしいよ?」
「もしもし?時雨くん、提督の話聞いてる?仕事、仕事だからね?」
“同行”秘書艦の時雨くんは湯布院・別府を満喫!湯けむりガチファックとか書かれた旅本をグイグイと見せてくる、ってか近い!本が近い!ってかナニその本!?
そもそも、ここに来るにあたり、誰が提督の出張に同行するのか?仁義なきカンムスファイト!が開催され、戦って、戦って、戦い抜いた結果、時雨くんの同行が決まったらしい…正直、提督としては戦い抜いた後にふと、振り返ってみて積み上げられた屍と己の所業に虚しさを覚えて何がカンムスファイトだ!何が理想的な戦争だよ!と後悔して欲しかったよ…
「楽しみだねぇ………温泉」
「温泉に行くんじゃないからね、仕事!提督達は件の問題基地に監査に行くんだからね?」
「………もう面倒だし、叛意アリって報告上げて大将率いるガチ連合艦隊で殲滅してもらったらどうだい?」
やだ、ナニ言ってるのこの子、マジ怖い…
「そんなコト出来るワケないでしょ!?」
「やだなぁ、冗談さ、冗談」
いや、今のは絶対冗談の目じゃなかった…
◆◆◆◆◆
吉野中将来訪三日前……
「相当ヤバい人ですよ」
五月雨は数枚の書類を俺の机に置き、率直かつ簡潔な意見を述べる
「そんなやべぇのか?」
「えぇ、大佐から中将に異例の昇進をしてますし」
なんだそりゃ?大佐から中将って…オイオイ、そりゃなんだ?四皇の首でも挙げてきたのか?どんな出世だよ
「あと、これはあくまで噂ですが…以前、軍の査察部隊に目をつけられてコレを追い払ったとか…」
「えー………ナニそれ、超ヤバいヤツじゃねぇか」
「だから、相当ヤバいって言ってるじゃないですか」
五月雨から受け取った書類には小難しい報告がツラツラと書かれており、ところどころ、キナ臭さがプンプンする単語が目に付く…
「ちなみにその書類、天海中佐からです」
「ハァ?」
なるほど、あのイケメンなら部署は違えどコレぐらいの情報は持ってるってワケか、っーか五月雨のヤツ、天海と連絡取れるくらい仲良かったのか?そっちの方が俺は驚きだよ
「…まぁいい」
俺は書類を机に置いて胸元のポケットにタバコがあるかを確認した
「中将殿には最上級でエグゼクティブなおもてなしをするしかあるまい…」
「はぁ?」
「そう!誰もが羨むゲスト・アドミラルにしてなァ!!」
次回は戦慄!大監査 前編 です