秋雲
ハードコアエロ漫画家、ではない
できれば一般誌で連載を持ちたいと夢見ており、ちょっとエロいぐらいは描くが基本は健全
提督(16)
色々と偏った漫画知識の持ち主
実はジ●ンプ歴より月●ガ歴の方が長い
明石の店で煙草と缶コーヒーを購入した俺は、提督室に戻る前に一服する為に喫煙所に来ていた
「フーッ~…」
喫煙所に貼られたは近所の納涼花火大会のポスターにはデカデカと長門の写真が写っていた
そう言や、なんかポスターのモデルに選ばれたとかなんとか言ってたな…
俺はとりあえず右目の場所に画鋲を刺し、左目に煙草で根性を入れてやった
「ナニ小学生みたいなコトやってるんですか?」
「ん?お前は…トリコ?」
「秋雲っすよ!誰っすかトリコって!?」
通りかかったのは陽炎型だか夕雲型だかよくわからない駆逐艦、秋雲
秋雲は何かの遣いか、大きな茶封筒を抱えていた
「なんだそれ?ハンコなら持ってねぇぞ」
「いや、コレは私が描いた漫画の原稿っす、雑誌に投稿するんすよ」
「ほぉ~エロ漫画か?」
「違うっすよ、バトル漫画です」
コイツ、バトル漫画とか描くのか、意外だな…
前に聞いた噂では余所の秋雲はハードコアエロ漫画を好んで描くと聞いてたが…
「ちょっと見せてくれよ」
「まぁ…いいっすけど」
「俺はこう見えても漫画にうるせぇからな」
秋雲から原稿を受け取り、とりあえず読んでみる…
ふむ、コイツ絵は上手いな、今風のキャッチーでスタイリッシュな絵柄、名だたる刀剣に宿る熱き魂がルックスもイケメンな男子に擬人化して戦うハイスピードサムライアクションか…
「キャオラァ!!」
俺は読み終えた原稿を床に叩きつけた
「嗚呼ッ!私の原稿ォォ!ナニすんだアンタァァァ!!」
「バカかテメーは!なんだこのイノチの篭もってねぇ漫画は!こんなモンで少年達がワクワクすると思ってんのか!?ア゛ァ?」
「い…イノチッ!?」
「こんなんでジ●ンプで一番になるとかおこがましいわボケッ!」
「いや、そこまでは言ってな…」
「お前が漫画を描くの何の為だ!金か!ちやほやされたい為か!違うだろ!?読んで貰いたいからだろーがッ!!こんな読者に媚びた漫画じゃねぇ…お前が本当に描きたいモノを描けよ!」どん!
「わ…私が本当に描きたいもの!?提督…目が覚めたっす!自分間違ってたっす!」
俺と秋雲は互いに熱い涙を流しガッチリと硬く手を握り合った
「私!本当はハーレムラブコメが描きたいっす!」
「いいじゃねぇか!少年誌の限界まで攻める!初めて投稿した作品は親にも見せられないドエロス漫画!最高にロックじゃねーか」
少年誌にはムネワクワクのアツいバトル
漫画だけではない、エロ本を買う事ができない少年達の股ぐらをカチンコチンする漫画も必要なのだ
「とりあえず、前に考えていた案があるんすけど…」
「ほぉ、見せてみろ」
秋雲は別の茶封筒から原稿を取り出し、俺はそれを受け取った
ふむ、主人公の冴えないボーヤが在りし日の軍艦の魂を持った美少女達と共に深海から現れた謎の敵と戦うちょっとエッチなハイフリートミリタリーアクションか…
「…どうっすか?」
「ん~…悪くないんだけどさぁ、ちょっとパンチが足りないな」
「パンチっすか」
「この、え~少女達が纏う装備?コレもうちょっと少年心くすぐるギミック感出してみるか」
「ギミック感?」
「よし、ちょっと紙とペン貸せ…………そうだなこんな感じだ」
『吹雪型の艤装・オブジェ形態』
「いやコレ完全にアレじゃないすか!絶対怒られるっすよ!」
「大丈夫だ、聖衣じゃないからセーフだ」
「う~ん、なんかそう言われると大丈夫な気がしてきたっす」
「あとはそうだな、この最初の方で主人公が家を出る時に出てる主人公のお母さんな」
「え゛?モブにすらダメ出し?」
「もうちょい若くておっぱいデカくてムラムラする良いケツに定評がありそうな感じにしよう」
「いや、お母さんの出番とかそこしか無いんすけどォ!?今後二度と出てこないんですけどォ!?」
「バカヤロウ!後々にこーゆーのが伏線として生きてくるんだよ!」
「ふ…伏線っすか?」
「そうだ、後にお母さんが主人公の敵として現れるんだが、実はお母さんは敵になりすまし、己の命を犠牲にして主人公に神艤装(ゴッドギソウ)の力を目覚めさせるんだよォ!」
「お母さんが重要キャラ過ぎるッ!!っーかなんでお母さんそんなに推すの!?マザコン!?っーか主人公は艤装付けないから!」
その後、俺と秋雲はアツい漫画制作会議
を続け、原稿は完成し新人漫画賞に応募した
…結果、普通に落選した