不健全鎮守府   作:犬魚

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今回のお話は輪音様のご好意で書かせて頂いております
いざ、書いてみると長くなったので前後編の全2回

【登場人物】

提督(159)
よくわからない美学を持つ変態ではないモレスター

天海中佐(3)
有能イケメン特務中佐、提督とは一方的に友達

函館の男
輪音様の『はこちん!』の主人公、艦娘たらしと言うとんでもない二つ名を持つDT




提督と北国の中佐 前編

真夏日MASSAKARIのアツかりし8月、ロクでもない内容に定評のある軍の回線を使用した電話が鳴った…

 

「…ハァ?艦娘ごろしぃ?」

 

『“艦娘殺し”ではありません、“艦娘たらし”です』

 

オイオイオイ、艦娘殺しとかすげーなオイ、アレか?艦娘殺しのジャバウォッキーの爪とかそんな感じのアレか?

 

『艦娘たらしですよ、中佐』

 

「中佐じゃない、限りなく大佐に近い中佐だ」

 

通話先の天海のイケメンジョークに多少イラっとしたものの、俺の小粋なテイトクジョークはイケメンになんか絶対に屈しない

 

「で?その艦娘殺しだか艦娘たらしだかなんだか知らんが、それがなんだ?お前の暗殺対象か?」

 

『貴方は私をなんだと思ってるんですか…』

 

「殺し屋」

 

大本営直轄第五特務課、表向きはただの情報課との話だが実情は軍内部の暗諜が主な仕事内容らしく、場合によっては平然と人をハジくかなりのアンダーグラウンドぶりで、俺も以前、上のゴタゴタのアオリを喰らってコイツに殺られかけた

 

『まだ根に持ってるんですか…』

 

「当たり前だバーカ」

 

まぁゴタゴタの縁もあり、天海とはそれ以来、なんやかんや連絡を入れてきたり情報をくれたりとそれなりの付き合いをしている、五月雨曰く、気に入られてるんじゃないですか?と吐き気のするようなコトを言っていたが、俺はホ●ではないのでスルーした

 

『ハハ…まぁ、冗談はここまでにして、その艦娘たらしと呼ばれる男ですが……今度キュウシュウに行くらしくて、どうにも中佐の基地にも寄るそうですよ』

 

「中佐じゃない、限りなく大佐に近い中佐だ………っーか、そんな話聞いてねぇが?」

 

『今日明日中に正式な連絡があると思いますよ』

 

「ふ〜ん」

 

なるほど、天海の野郎、わざわざ先に俺に教える為に連絡してきたワケか…

 

「ってか天海、さっきから言ってるその艦娘たらしってのなんだ?」

 

ある意味、とんでもないアダ名だぞ、それは…ナニやったらそんなとんでもキャッチコピー貰えるんだよ、アレか?24時間耐久駅伝ファックとかそんな感じか?

 

『…まぁ、彼を表すに最も適した通称ですかね』

 

天海曰く、北の大地にある函館鎮守府と呼ばれる地方基地の司令官であるその男は、凄まじい数の他拠点所属の艦娘の引き抜き率を誇っているらしく、その男が一度訪れた地では翌日から所属艦娘の函館への転属願いが殺到しているそうだ

 

「ほぉ…そりゃすげーな」

 

そりゃアレだな、魔性を持つ美少年で相当なテクニシャンで一度味わえばもう他では満足できなくなる恐るべきマグナムチ●ポの持ち主なのだろう…

 

「天海ぃ、そいつハジぃちまえよォ〜」

 

『理由もないのですが?』

 

「バカか、イケメンなんて生きてるだけで大罪なんだよ、イケメンはもれなく絶滅しろよ、お前も含めて」

 

『嫌ですよ、と言うか…その函館鎮守府の提督はイケメン……とは些か違いますね』

 

「あ?」

 

『年齢で言えば私や中佐より上、40代ですし』

 

「ナイスミドルかッ!?」

 

カッコ良さと思慮深さを兼ね備えた中年層ナイスミドル、なるほど……大人の抱擁力と色気、そしてダンディズム、若くてイケメンなだけのヤンチャボーイにはない魅力がそこにある…ッ!

 

『まぁ、中佐のところの所属艦はちょっとアレですし、ないとは思いますが一応、先に伝えておきます』

 

「ぬぅ…」

 

まぁ、天海の言う通り、うちのバカどもがナイスミドルに靡くとはイマイチ考え難いが……

 

『情報が不十分な点もありますが、その魅力は艦種を問わずに多岐に渡り、ちょっと会話をするだけで陥落確実らしいですよ』

 

「すげーなオイ」

 

………その男、もしや俺と同じく“逸脱者”かッ!?

“牝”の資質を持つ女を見抜き、その願望を解き放ち極上の快楽を与える事を至上とする、狩人ッ!

 

「ふ、フフフ…なるほどな」

 

『何がなるほどなんですか?』

 

「いや、なんでもない、情報の礼にお中元でも贈ってやろう、揖●乃糸でいいか?」

 

『あ、結構です』

 

ーーー

 

天海との通話を終え、俺は胸ポケに入っているタバコを取り出して机に置いた

 

「タバコなら喫煙所でどうぞ」

 

「置いただけだろーが、五月雨、茶、麦茶くれ、麦茶」

 

「はいはい…」

 

五月雨は冷蔵庫から麦茶の入ったボトルを取り出し、嫌がらせのように並々と注いだグラスを俺の机に置いた

 

「表面張力と言うモノを知っとるかね?サーミーくん」

 

「五月雨です、勿論知ってますよ」

 

何が知ってますよだコノヤロー、地味な嫌がらせしやがって…アレか?1つ下の妹が生唾ゴックンのビシバシモンみたいなドスケベ水着姿だったのが気に入らなかったのだろうか?

 

「チッ、まぁいい、五月雨、ママんトコに連絡入れといてくれ、また接待デーがあるってな」

 

「はぁ?それは構いませんが…」

 

まぁ、今度は中将とか大物でもないし、さほど気を遣う必要はないが…とりあえず天海がわざわざ伝えてきた“艦娘たらし”だ、そのナイスミドルな技を余すコトなく完全無欠の模倣……いや“奪って”やるぜェ〜、そうすりゃこの俺もモテまくり待ったなしだろう、アレだよアレ、目指せ!モテ道だよ!

 

◇◇◇◇◇

 

湿度を帯びた真夏の暑さ、キュウシュウ…

 

「…暑い」

 

電車を降り、駅を出た瞬間から照りつける灼熱の日差しに汗が吹き出してくる

 

「提督、タクシー乗り場、あっちだって」

 

「あぁ、うん」

 

函館鎮守府を預かるその男と、帽子を被り、彼に付き従う大柄でグラマラスな女性は荷物のトランクをゴロゴロと押しながらタクシー乗り場へと向かい、タクシーに乗車すると目的地である海軍の基地を運転手に伝えた…

 

「あー…暑いねぇ」

 

「ホント」

 

「お客さん軍の人?この暑い中御苦労だねぇ」

 

「ハハハ…まぁ、仕事ですから」

 

「そっちのセクシーな人も軍の人?なんか頭に角みたいなのあるけど?あー…アレか、ファッションってヤツか、ファッション!」

 

陽気にお客に話す運転手の後部座に座っているのは、函館鎮守府の提督、そして………人類の敵と呼ばれる深海棲艦、戦艦棲姫




次回は後編、です

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