不健全鎮守府   作:犬魚

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激震!司令部!辿り着いたこの場所でperiod!!

【登場人物】

提督(176)
中佐、もうすぐ大佐(予定)

日女大佐(5)
大佐、野望の女将校、えーのん避けてー?死ぬで…あの子と、笑顔で刺せる


定例会議Ⅱ 前編

皆々様こんにちは、最近めっきり寒くなってきましたね!喉元過ぎればアツさを忘れる、アツかりし灼熱の夏から季節は秋に、そして、ゆらりとゆらりと冬の気配を感じつつある今日この頃、皆々様はどうお過ごしですか?え?僕ですか?アハハハ…僕ですか、アハハハ…僕は今……………

 

 

地獄に来ています

 

 

「アレでしょ?死刑でいいんじゃないですか?」

 

「まぁ待たんかい、そう結論は急いじょらんのじゃあ…」

 

「何も話するコトなぞありゃあせん!」

 

目の前で繰り広げられるアツかりし会議の様子を、努めて平静に、そう…努めて平静に様子を眺めつつ、俺は隣に座る大変に高貴で大変にエレガントな御方の御様子をチラリと確認する

 

「どうしました?Admiral?」

 

「いえ!なんでもありません」

 

「そう……」

 

この会議の場で、最も高級な椅子に座り、最も偉い人の居るべき場所にごく自然な御様子で居る大変に高貴な御方は微笑を浮かべ、白熱する会議の場に向けてエレガントに発言なさった

 

「Everyone, why not take a break?」ニコッ

 

「ア゛ァ?」

 

「…たしかに、一度休憩を挟みましょうか?」

 

「そうじゃのぉ〜…」

 

陛下の大変に高貴な御言葉に、アツかりし義論をぶつけ合っていた海軍将校のエラい人達はそうじゃのぉ〜だの、一度喫煙休憩を取らんとのぉ〜だの言いつつ、とりあえず会議は一度中断、休憩時間に入ることとなった…

 

「あ……あの、陛下?」

 

「Admiral、我々もお茶にでもしましょう」ニコッ

 

「は、はぃ!!」バギッ!!

 

この場で最も高貴な御方の手を取り、俺は努めと平静に会議場から休憩の取れる場所へと陛下を御案内する事にした……

 

◆◆◆

 

秋の大本営主催定例会議、年に一度、東西に別れてはいるが少尉以上の将校が大本営直轄のデカい司令部に集められ、やれ深海のゴミクズどもを皆殺しだとか、やれ生かして帰すワケなかろーがだの話合う海軍将校の社交場的な場であり、儀式的なものでもある…

ちなみに、頑張っている基地や鎮守府には頑張ったで賞的な賞を貰え、頑張ってない基地や鎮守府にはなんで頑張らんのじゃボケカスが!オノレ海軍舐めちょるんか?あ?舐めちょるんか!?あー!?あー…アレな、アレ、野球しよっか?的な全員悪人的に叩かれる公開処刑の場でもある

 

そんな秋の定例会議に、今日、俺は来ていたのだが……

 

「セ〜ンパイ♪お久しぶりっす!」

 

「………チッ」

 

バス停でバスから降り、とりあえずタバコでも吸うかと内ポケットをまさぐっていると、背後からクロスチョップを喰らわせ、開いてるのか閉じているのかよくわからない細い目でニコニコ笑う顔見知りが立っていた…

 

「チッ!ってなんなんすか?可愛い後輩にいきなり舌打ちとかヒドくないっすか?」

 

「うるせぇよ、しかもナニがセ〜ンパイ♪だ、キメぇわ、っーか吐き気がするわ」

 

「ヒドっ!?」

 

「ヒドくない、当然だ」

 

いきなり俺にブチかましを敢行してきたのは、いつもニコニコ、ウザくて鬱陶しい事にかけては右に出る者はそうはいないであろう選手権で上位が狙える逸材、日女大佐

一応、俺の後輩ではあるが昇進速度は速く、ウザいのに有能らしい

 

「アヒャヒャヒャ、もう!センパイってば中佐のくせに超偉そう!」

 

「やかましい!っーかもうすぐ大佐に戻るわい」

 

そう…以前、中将相手にやらかした罰を受け降格&減俸の憂き目にあった俺だがもうすぐその刑期を終え、俺は海軍大佐として甦る事ができる…ッ!クックック…この俺の大佐として完全復活した時こそ!俺の降格を喜んだ下郎どもは全員処刑だァ!1人も生かしてはおかんぞ!

 

「ま、センパイが中佐でも大佐でもなんでもいいっすけど、私の方が最終的にエラくなるし」

 

「やかましい、寝言言ってんじゃねーぞテメー、俺が上に行った暁にはテメーは真っ先に公開処刑してやる」

 

「アヒャヒャヒャ、じゃ、私が上に行ったら今の上層部全員処刑してセンパイを私専用のお茶汲み係にしてオハヨウからオヤスミまでお茶淹れてもらうっす」

 

このクソ野郎が……ナニがそんなに楽しいのか、いや、コイツはおそらく俺が苦しむのを見るのが好きな生粋のSなのだろう、恐ろしいヤツよ…コイツだけは上に行かせるワケには行かねぇ

 

「あ、そうそう、そーいやセンパイ独りっすか?」

 

「あ?」

 

「あじゃないっすよ、いつものあの子、ほら!髪長い子、えー…サミーダレちゃん?」

 

「五月雨?あぁ、アイツなら置いてきた」

 

「マジっすか?アレっすか?ハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそーにないって感じっすか?」

 

「アイツはウチの万騎長だからな、こんなしょーもない会議に連れてくるまでもない」

 

「へぇ〜、じゃ、今日はセンパイお一人様っすか?じゃ、今日は私とヴェーちゃんとお昼一緒しねーっすか?」

 

「誰がお一人様だ、秘書艦なら来てるぞ」

 

「え?マジっすか?どこにいるんすか?」

 

「………まぁ事情があってな、ウチの秘書艦は俺とは別に自家用車でこっちに来ているハズだ」

 

「ハァ…?」

 

そう………自家用車でここに向かって来ている、たぶんそろそろ此処に着く頃だろう、ほら、アレだよ、耳を澄ませば狂おしく、身をよじるようなエギゾーストが……

 

「お、オイ!!なんだアレは!?」

 

「こっちに向かって来ているぞ…」

 

「なんだアレは……クルマ、いや、馬車ッ!!馬車だ!」

 

甲高い蹄に蹄鉄音を鳴らし、匠が造り上げたであろう重厚かつエグゼクティブな車を引き、まるで翼ように広がる真っ白なタテガミを靡かせた白馬がカッポカッポと会議会場である司令部に前へとやって来た…

 

「どぉーどぉー…フッ、待たせてしまったかな?Admiral?」

 

「…いや、全然」

 

行者席に座り、手綱を引く赤い髪の女は何がそんなに誇らしいのか、ニヤリと笑って俺を見た

 

「ちょ!センパイ!馬車!馬車っすよ!?」

 

「あぁ、馬車だな」

 

周りに居る有象無象の将校同様、さすがのヒメもビックリしたらしく、俺の肩を掴んでガックンガックンと俺の身体を揺らした…

まぁ、なんだ?ホントはアレだよ、俺のクルマじゃアレだし、とりあえずレンタカー屋にでも行ってクラ●ンでも借りてくるかと思ってたよ?ホントは、でもな、アレだよ、コイツがどーしても!自分が御送迎をする!って聞かなかったんだよ、で、アレだ、一応公道とか走るしアレだろとか思って念の為にナンバープレート出してもらったらナンバー“く56”だった時にはさすがの俺も戦慄したね…

 

「陛下、会場に到着致しました」

 

赤髪の白騎士は恭しく馬車の扉を開き、開いた戸から誰もが敬う、そう…ごく自然に下郎でスイマセンと頭を下げたくなる絶対的な王の力を持つ美しき御方が姿を現した

 

「ありがとう………Admiral、お待たせしたかしら?」

 

「いえ!陛下におかれましては遠路へのご足労大変お疲れ様でした!」

 

「ふふっ…まだ来たばかりですよ、Admiral」ニコッ

 

馬車から地に降り立った陛下の殺人的破壊力を誇るロイヤルスマイルが早速炸裂し、周囲に居た俺と同じく会議に呼び出されであろう将校達の内、結構な数がその膝を屈してしまった……おそらくは俺と同じく佐官程度の階級ではこの覇気に耐えきれまい、ちなみに俺は左手の小指を自ら折る事で耐えた

 

「な…なんて覇気だ…!」

 

「クッ!このオーラ、ハンパじゃねぇ…」

 

「心の弱い者は退がれ!覇●色だッ!」

 

ある者は膝を折り、またある者は意識を失い、さらにある者は同行してきたのであろう秘書艦から叱責を受けていた…しかし、さすがは中将以上であろう将校と秘書艦どもは違う!この覇●色を前に平然と立っている!

 

「あらら?えれぇの連れてるじゃないの?」

 

「どこの所属じゃあ……?あのボンクラはァ?」

 

「おーおー、怖いねぇ」

 

さすがは半分ヤクザみたいなモンである海軍将校、やはり“上”に居るヤツらは違うな、うん

 

「ではAdmiral、参りましょうか?」

 

「ハッ!御案内させて頂きます!」

 

陛下の御手を恭しくとろうとすると、赤い髪の女ことロイヤル空母のアークロイヤルくんがちょっと待てAdmiralと割ってきた

 

「Admiral、ちなみに私はどうすればいいのだ?」

 

「ん?あぁ、とりあえず駐車場?駐車場で待機しててくれるか?」

 

「フッ、駐車場だな…了解した」

 

馬車って駐車場でいいのだろうか?まぁ、いいよな、馬車だし…

 

「では…」

 

こうして、俺と陛下は会場のある建物へと歩き始めた…

なんだろうな?こう、誰もが羨む最高級のブランドを連れて自信に満ち溢れた姿で肩で風を切って歩く………うん、なんか違うな!コレ!俺が求めていたものと致命的に何か違う!

 

ーーー

 

会場へと入った俺と陛下、ちなみに、ここに来るまでにたぶん300人ぐらいの提督が自ら膝を屈したが俺は悪くないし、会場に入った瞬間も数人が椅子から転げ落ちたりしたが俺は悪くない、そう、俺は悪くない、俺はただ、秘書艦と共に呼びされた会議に来ただけの話だ、俺は悪くない

 

「え〜…席は」

 

しがない中佐である俺に用意された席は当然ながらしがないパイプ椅子、まぁ、普通は提督同様に秘書艦もパイプ椅子なのだがまさか陛下をパイプ椅子に座らせるワケにもいくまい……さて、どうしたもんか?

 

「Admiral、そんな隅ではなく、あの席が空いているようですし……あの席にしましょう」

 

「え?あ、はい」

 

どうしたものかと考えていると、陛下はなにやら良い席を見つけたらしく、その優雅な御手で俺を引いて歩き出した

 

「ほら、ここです」

 

………うん、いいね、この席、まさに会議の主役が座るべき場所だよ、いわゆるお誕生日席的な、うん、こう…アレだね、この場で最も位の高い者が座る為に空いてるであろうエグゼクティブチェアーじゃないかと…

 

って!!そこ元帥殿の席ィィィィィィ!!!

 

「Admiralもこちらへ」

 

陛下はごく自然にその席に座り、その隣に空いているフカフカエグゼクティブチェアーを俺に勧めた

 

「ア゛ァ?」

 

「おーおー、怖いねぇ〜」

 

「…オイ、アイツどこの凡骨じゃ?」

 

元帥席のすぐ近くに居並ぶ大将達と言う名のバケモノ達からのアツい視線!?だ…ダメだ、殺される…!い…命を諦めるしかない…ッ!そうだ!陛下!今ならまだ陛下にこの席はマズいのでどうにかあっちの席へとお願いすれば…っす!?

 

「ハッ!?」

 

焦る俺の視線の先、会場の入口方向から明らかにただ者ではない雰囲気を持つ勲章みたいなのをいっぱい付けた老人がこっちに向かって歩いて来ている………間違いねぇ、元帥だ…ッ!ヤバい!ヤバいヤバいヤバい!こ、殺される!?ただでさえもう大将クラスが何人か今にも俺を殺しそうな殺意をぶつけて来てんのに!元帥とか一番やべーヤツじゃん!

 

「あ…あの、陛下…」

 

早く!早くなんとかしなければ!!このままでは自分の席を取られた事に腹を立てた元帥と陛下の間で外交的軋轢が生まれ、日英開戦確実ぅ!ついでに俺の死も確実ぅ!

 

…しかし、こちらに歩いて来ていた筈の元帥殿はここに来る前に立ち止まった

 

「ほぉ………」

 

そして、元帥殿は何やら可笑しそうに肩を揺らし、本来俺が座るべきパイプ椅子の席へと歩き、そこに座った!!

何考えてんだあのジジイ!?アレ?なんか面白そうだからって好々爺的なアレ!?っーかテメーの周りの将校もドン引きしてるじゃねーか!佐官の中に元帥とか誰だって緊張するわ!空気読めよジジイ!!

 

「Admiral、顔色が優れないようですが?」

 

「あ、アハ…アハハハ、アレですかね、たぶん緊張してるんだと思いますよ、たぶん」

 

「No problem…大丈夫ですよ、Admiral、アナタはもっと自信を持つべきです」ニコッ

 

陛下の高貴で有り難いお言葉と優雅でエレガントなロイヤルスマイル………

こうして、一番偉い人が座る席に、ある意味では間違いではない御方が座った今年に定例会議は始まる事となった…

 




次回は後編

中佐、最後の戦い

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