不健全鎮守府   作:犬魚

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会議の後編、戦わなければ生き残れない!

【登場人物】

提督(177)
中佐、今度も壁をブチ破る

Warspite(10)
陛下、とても高貴な御方、大変に御心の広い御方だが最近やってきた女王陛下の騎士には頭を痛めている

Ark Royal(3)
女王陛下のロイヤルナイツ、女騎士型の究極体カンムス
ド美人で真面目で礼儀正しい頼れる存在だッ!………たぶん!

天海中佐(4)
イケメンの主人公属性の特務中佐、オチ要員


定例会議Ⅱ 後編

オッス!オラ、ハンサムな提督!西の陣営の海軍将校達が集まる会議が遂に始まり、周りは見たコトもねぇスゲー実力者達ばっかりでスゲーワクワクしてっぞ!カーッ!早くオラも戦いてぇーっ!!

 

「って!そんなワケねーだろォォォォォ!!」

 

午前の会議を終え、昼休憩を挟んでから再開なので、俺は陛下と共に昼食を摂る為に建物の外へと向かっていた…

一応、この施設内にも食堂があるらしく、会議参加者の多くはこの食堂を利用するか、あらかじめ用意して来た弁当を施設内のどこかで食べるのが一般的である

ちなみに、弁当持参の場合は86%が秘書艦のお手製(これ重要)、10%が購入した弁当、4%が提督自身が作るといったデータがあるらしく(ヒメ調べ)弁当持参組はとりわけ上司部下の関係が良好ぅ!な感じらしい

 

「センパイセンパイ、むしろ万騎長よかヤバいんすけど、殿下どころか陛下とかナニ考えてるんすか?」ヒソヒソ

 

「色々あるんだよ、色々」ヒソヒソ

 

俺達と同じく、昼食を摂る為に建物の外へと向かっていたヒメとその秘書艦は俺にヒソヒソと小声で話しかけてきた

 

「まぁアレだよ、アレ、男には自分の世界があるんだよ」ヒソヒソ

 

「はぁ?よくわかんねーっすけど、わかったっす」ヒソヒソ

 

とりあえず、俺は弁当なんて気の利いた物は用意してないし、陛下が自らお手製の弁当などお作りになるワケもない、しかし、女王陛下の騎士こと陛下のセ●ム、アークロイヤルくんが勿論女王陛下の昼食も万全の準備をしておくと事前に言っていたので何か用意しているのだろう…

俺達は建物の外へ出て、駐車場に待機しているであろう馬車へと……

 

「…ん?」

 

「なんすかね?コレ」

 

「ハラショー、芳ばしい香りだよ」

 

建物を出てすぐの広場、俺達の他にも多くの将校やその秘書艦達が居るのだが………なんだろうな?その、広場の中で一際目を引く屋台的な何かと、新鮮な何かを焼く食欲を刺激する芳ばしい香りと、何かをパタパタと焼く赤い髪の女…

 

「…ナニやってんだ?オマエ」

 

「フッ、待っていたぞAdmiral」

 

赤い髪の女騎士ことロイヤル空母のアークロイヤルくんは金網に乗った貝を金属的なハサミで掴み、クルリとひっくり返した

 

「実は先日、女王陛下がテレビを御覧になっている際、お祭りの出店に大層興味しんし●丸な御様子で見入っておられてな…」

 

「何が興味し●しん丸だ」

 

「そこでこのアークロイヤル、女王陛下の御心を察し、この機会に、女王陛下の日常に小さな驚きを味わって頂こうと屋台的なモノを用意したワケだ」

 

「用意したワケだ、じゃねーよ」

 

しかも焼いてんの牡蠣だよ!どっから仕入れて来たんだよこの牡蠣!?っーか、なんでランチタイムに牡蠣小屋開店してんだよ!ナニ考えてんだコイツ!バカか!バカなんだな!?嗚呼わかった!バカなんだ!

 

「おねーさん、牡蠣一丁」

 

「む、ちょっと待ってくれ、すぐ焼けるからな」

 

「ハラショー、コイツは新鮮さを感じる」

 

…しかもこの野郎、女王陛下の為とか言いながら普通にそこらのヤツにホイホイ焼いて振舞ってやがる、よく見るとあっちにもこっちにも牡蠣の乗った紙皿を持った提督やら秘書やらが居るし…

 

「フッ、どうだAdmiral、こうやって新鮮な牡蠣を振る舞うコトで軍内部におけるAdmiralの人気もまさに投網一発だろう?」

 

「何が投網一発だ」

 

ま、まぁ…コイツなりに俺と陛下の事を考えてやっているコトなんだろうが、あの海より深い御心を持つ陛下ですら頭を抱えるこの女騎士風ロイヤル空母……

 

「Admiral、どうかArk Royalについては…」

 

「いえ……心中、お察し致します!」

 

「…Thank you for your concern」

 

まぁ、悪気が無いだけでなく、むしろ本人的には良い仕事したと誇らしげに胸を張っているのでなおタチが悪い

ちなみにこのアークロイヤルくん、焼いた牡蠣を手渡す際にキチンと腰を曲げて頭を下げるので、そのロイヤルバレーが圧倒的コンニチハするせいか、手渡される際にガン見してしまった他所の提督さんが秘書艦からブン殴られて口論になる姿をちょいちょい見かけたが、俺は悪くない

 

「っーか、アークロイヤル、オマエまさか陛下にもここで牡蠣をむしゃぶりつかせるのか?」

 

「ハハッ!まさか、陛下にはこちらのテーブルに特製のSandwichを御用意してある」

 

「牡蠣の意味は!?」

 

「?、これは女王陛下に庶民的文化を間近で御覧になって頂く目的だが…?」

 

だ…ダメだコイツ、早くなんとかしないと…

 

「Admiral、どうか寛大な御心を…」

 

「え…えぇ、わかっております、わかっております陛下」

 

◆◆◆

 

「舐めてんじゃねーぞバカヤロー!殲滅するって言ったらみんな殺すって意味じゃねーかバカヤロー!」

 

「もう殺す殺さねーのハナシじゃねーんだよバカヤロー、もうちょい考えろやバカヤロー」

 

「講和だァ?ナニ日和ってんだオメーはァ?生き恥を晒すなゆーとるんじゃワレェ…」

 

午後の部、午後も元気にアツい議論が飛び交う会議場…

深海棲艦に対してなのか、俺に対してなのか、殺意溢れる活発な意見がホイホイ飛び出ている

 

「…はぁ」

 

隣に座る陛下はアツい会議の様子にとても満足しているようでなによりだ……と言うか元帥!本来この席に座るべき人物の元帥は少佐やら中佐に交じって退屈な会議の中でヒソヒソとなにやら内緒話をしているらしく、オマエあの娘好きなんだろー?告っちゃえよーだの、ヒュー!あの練巡パイオツでけーだの楽しくお喋りをしている……大丈夫か?軍上層部

 

「……はぁ」

 

さて、とりあえず会議が終わった後について考えてみるか…

まぁ、こちらに陛下が居る以上、外交的要因からこの場で処刑と言うコトはないだろう、だが………万一の事態を考えればこの場で第3次世界大戦開戦もあり得なくもない

そこでこのハンサムな提督は今後に対して何パターンかの予想をしてみた…

 

①会議は無事に終了

②ここから先は公開処刑だァ!

③ワシが逃がさん言うたら命を諦めんかいバカタレェ…

 

モチロン俺がマルを付けたいのは①だが、どう考えても無理だろう、運良くこの会場から脱出!この施設の格納庫にあるYF-21を奪取してリミッターカットしたら逃げ切れる可能性はあるが…

 

「………やるか」

 

………まぁ、死なばなんとやらか

 

ーーー

 

今年の定例会議も無事に終了し、会場が俄かにざわざわとしだした…

 

「あの…陛下、少しよろしいでしょうか?」

 

「なにかしら?Admiral」

 

「…陛下、申し訳ありませんが私はこの後、少々タフな用事があります故、後から参ります」

 

「そう…?ArkRoyalが帰りはAdmiralも是非御一緒にと言っていたのですが………仕方ありませんね」

 

「ハッ!申し訳ございません!」

 

「よいのです」ニコッ

 

俺は陛下から最上級のロイヤルスマイルと、アナタも気を付けて帰ってくるようにとの御言葉を頂き、出来る限り最高の笑顔で陛下を会場から送り出した…

ちなみに、陛下の御退場の際は、誰からとでもなく、ごく自然に全ての将校達が敬礼していたのは言うまでもあるまい…

 

「さて………」

 

会議場の重厚な扉が閉まると同時に、背中からヒシヒシと伝わる殺意の嵐ッ!!!

 

「…生きて帰れる思うちょらんよのぉ〜?」

 

「元帥殿、アレ、死刑でいいんでしょ?」

 

「えぇ覚悟しとるやないかワレェ?」

 

千を超える将校達が集まるこの会場はたった今から会議場から処刑場へと変わったのだッ!!俺は上着を脱ぎ捨て、殺意と覇気を撒き散らす将校達に向き直って吠えた

 

「こいやァァァァァァ!!言っとくが半分は地獄に道連れにすっからなァァァァァァ!!」

 

 

その咆哮が、ステキなパーティーに始まりとなり、こうして海軍名物ケンカパーティーが始まったのです…

 

◇◇◇◇◇

 

後日、海軍特務課御用達病院……

 

「お久ぶりです、中佐」

 

「………よぉ」

 

ベッドの上で海スポを眺めていると、イケメン特有の嫌味のない爽やかな笑みと、お見舞いらしいフルーツセットを手にした天海中佐がやって来た

 

「あ、天海中佐、お久ぶりです」

 

「五月雨さんもお久ぶりです、お元気でしたか?」

 

「えぇ、まぁ…」

 

何がえぇまぁだ、五月雨は微妙に器用だか不器用だかよくわからない形で切ったリンゴを俺を口にねじ込んできた

 

「フガフガ……ぐっ!」

 

「聞きましたよ中佐、今回はまた派手にやらかしましたねぇ」

 

「む……ごふっ!!ゲーフッ!」

 

「それに、ご無事そうでなによりです」

 

「オマエにはコレがご無事に見えるのか?」

 

頭蓋骨骨折及び脳挫傷、鼻骨骨折、第7歯から第4歯欠損、第1歯及び第2歯欠損、頚椎捻挫、左鎖骨不完全骨折………まぁ、正直、全部言ったらキリがないのでアレたが、どう見てもメチャメチャにヤられてるんだが…見た目はもう志士雄さんよりヒデーんだが?

 

「むしろ、よく生きて帰れましたよね」

 

五月雨は再びリンゴの皮を剥き始める、っーかコイツ、さっきからリンゴしか剥かねぇな

 

「やはり中佐は興味深くて面白い人ですねぇ」

 

「やかましい」

 

結局、あの後会議場は隣に居る誰かをただブン殴るだけの大乱闘!スタイリッシュケンカパーティーと化した、まぁ元々、海軍なんて半分ヤクザみたいなゴンタが多いし、誰かが祭りじゃ祭りじゃ!喧嘩祭りじゃーとか言い出したらもう誰にも止められない、動き出した新時代のうねりは誰に止められねぇよ!な感じで狂乱の坩堝と化し、俺を含めて参加者の8割が病院送りとなる大惨事となった…

 

「あ、そうそう、コレ、日女大佐から中佐にと…」

 

天海はひ●こ饅頭の箱をテーブルの上に置いた、っーかヒメの野郎、アイツ絶対あんトキ俺を刺してきやがったぞ!躊躇なく心臓狙いやがって…俺じゃなきゃ見逃しちゃうトコだ 、ちなみに、ヒメの野郎は病院送りにならなかったらしい

 

「あと、最近中佐宛てで上から書類が届いてませんでしたか?」

 

「…あったか?そんなの」

 

「ありましたよ、読まずに放置してるのが」

 

「あぁ、アレな」

 

あったな、そーいやそんなのが

 

「その書類は破棄していいそうです、で……こちらが私が預かってきた新しい書類です」

 

「はぁ?」

 

なんだよ破棄して書類って、破棄していいなら最初から送ってくるなってのな…とりあえず俺は今、両手が絶賛使用不可中なので五月雨に開けてくれと頼んだ

 

「え〜………読んでいいんですか?」

 

「構わん、わかりやすく簡潔に述べよ」

 

「とりあえず提督、明日から大尉です」

 

「………は?」

 

「明日付けで大尉です」

 

ナニ言ってんだこの青髪ロング子……イカれているのか?え?ナニ…?大尉、オイオイ…一文字間違えてるんじゃないのか?尉じゃないで佐だろ?

 

「いえ、大尉です」

 

「二階級特進ならぬ二階級特退ですか………なかなか出来る事じゃありませんよ、中佐」

 

「なんだよ二階級特退って!?っーかただの降格じゃねーか!?」

 

「や、むしろ降格で済んでる時点で良かったじゃないですか」

 

「よくねぇよォォォォ!!!アダっ?あだだだだ!痛い痛い!」

 

「大丈夫ですか大尉?」

 

「大尉じゃねーよッ!!痛い!さみ!さみだ!ナース!ナース呼んでくれ!おっぱいデカいナース!」

 

「大尉、尿瓶ならここにありますよ」

 

「やかましい!!ブッ殺すぞ天海ェ!!」

 

 

海軍のHOTな情報満載新聞海軍スポーツ、略して海スポ!

 

四年に一度の祭典!海軍名物喧嘩祭り開催!参加者の多くは爽やかな汗とリットル単位の血液を流し、日頃溜まった鬱憤を解消しましたと笑顔で次回の開催が楽しみですと答えてくれました、また舞鶴所属のある将校は“ナンでこんな楽しそーな祭りにオレを呼ばねーンだよ!ズリぃーぞォ!”ととても悔しがったそうです

 

あと、今回の会議に参加した将校の何割かに牡蠣に当たった症状が見られ、当日、無許可で牡蠣小屋をやっていたと言う赤い髪の女が居たらしく、現在もその行方を追っているとの事です

 


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