【登場人物】
提督(186)
空気が読める大人、溶けにくいチョコレートをポケットに入れているチョコレートの人
択捉(4)
択捉姉妹の長女で革命同志、全ては、レボリューション
松輪(2)
択捉依存症の些かアレな妹、革命同志ではないらしく、同志ガングートを苦々しく思っている、かなり
自販機で缶コーヒーを買い、喫煙所にでも行って休憩するかと廊下を歩いていると、自販機コーナーになにやら小さいのが居た…
「択捉ちゃん!択捉ちゃん!択捉ちゃんは苦いのも炭酸も苦手だからクリィミィーなのでいいですよね?ね?ね?」
「あー…うん」
「じゃあ択捉ちゃんカフェオレにしますか?それともカフェラテにしますか?どっちにしますか?私としてはカフェラテがオススメです!あ、択捉ちゃんの好きなチョコレートもあります!一緒に食べましょう択捉ちゃん!」
「あー…うん」
誰が言ったか、声をかけるだけで事案発生と名高い歩く声かけ事案発生装置、海防艦キッズの択捉と、たしか……えぇ、なんだっけか?まぁ名前なんてどうでもいい、自称択捉の妹が仲良くベンチに座ってキャッキャとハシャいでいた…
「よぉ、元気しとるかね?」
「あ、テイトク…」
「ヒッ……!?こ、こんにちは」
健全な風紀を旨とする上司として、とりあえず俺は声かけ事案発生装置の二人にきわめて紳士的に挨拶をした、念のために言っておくがこれは声かけ事案ではない、紳士として当然の行為、挨拶と言う上司と部下のコミニュケーションの一つである
「松輪、離れて、ウザい」
「う、ウザ!?え…択捉ちゃん、私、択捉の何か気に触るコトでも!?」
「距離が近い」
択捉は距離の近い妹の身体をグイグイ押してひっぺがすと、微妙に空いたスペースにテイトク、ここが空いてる、ほら!ここ座れ!ここ!と言いたげにベンチをバシバシと叩いた
「やだよ、姉妹なんだろ?仲良くしろよ、仲良く」
ライトに択捉をコール、レフトに妹をコール、センターに俺とか間違いなく俺の人生がファイナルフェイズだよ、そんな姿誰かに見られたら間違いなく轟斬!ガルガンチュアパ●ッシャーで俺の世間体とPRIDEが真っ二つにされ、ロリペド野郎の烙印を押されるのだよ
「私と択捉ちゃんは仲良しですっ!」
「…松輪、ウザい」
「仲良しですよね?仲良し以上の私達の間には何人たりとも入れない仲良しですよね?」
択捉の妹こと松輪は再びグイグイと択捉との距離を詰めようとしているが、択捉はそれを阻止すべくグイグイと押し返す、もしかしてコイツら、実は仲悪いんだろうか?
「まぁそう邪険にするなよ、可愛い妹だろ?」
「可愛い妹なのはそうだけど………正直、ウザい」
「択捉ちゃん!チョコレート!チョコレート食べますか択捉ちゃん!択捉ちゃんの好きなミルク入り!択捉ちゃん!ほら!」
「………ね?」
グイグイくる妹を押し戻しつつ、択捉はどーよ?このウザさと言わんばかりこちらに同意を求めてきた
まぁ、たしかにこれはウザいな、ウザくはあるが、択捉的には可愛い妹でもあるので邪険に扱うワケにもいかずに困っていると言うワケか…
「………あ、そう言えばそろそろ同志ガングートと約束してるスペツナズ体操の時間だ」
「択捉ちゃん!?」
択捉は閃いた!と言わんばかりベンチから立ち上がり、礼儀正しく俺に頭を下げてダッシュで去って行った
「ま、待って!!行かないで!行かないで択捉ちゃん!あ……ああぁぁぁ!うああぁぁぁ…択捉ちゃんがッ!択捉ちゃんがッッッッ!!」
「まぁ、同志ガングートとスペツナズ体操なら仕方ないわな」
まるで鬼畜レ●プされたかの如く、ベンチに座ってガックリとうなだれた松輪は小声でブツブツと択捉ちゃん択捉ちゃんと呟いている………こえーよ、なんだよコイツ、択捉好き過ぎだろ、さすがの提督もこの露骨な落胆ぶりにはドン引きなのだよ…
「まぁ、そう気を落とすな、え〜…松輪くん?そうだ、提督がジュースでも奢ってやろう、オレンジでいいか?それともオレンジは100%じゃないとダメかね?」
「………ょめ」
「はい?」
「ま…………め…」
なんかブツブツ言ってやがるよこの子は…やだなぁ、提督はこーゆーおとなしめで繊細な今風の子は苦手なんだが…
「魔女めェェェェェェ!!魔女め!魔女め!あの魔女めェェェェェェ!!!」
「お…おぅ!?」
「私のッ!!私の択捉ちゃんを!!私の択捉ちゃんを!よくも私の択捉ちゃん……ッ!あの強くてクールな択捉ちゃんを堕落させる魔女めッッッッ!!」
何がおとなしめで繊細な今風の子だよ、提督もドン引きのとんだエキサイティングぶりに、海防艦松輪は呪いの怨嗟がこもった声をあげてベンチをバシバシと叩いた
「ま…まぁ、落ちつきたまえよ松輪くん…択捉はほら、同志ガングートとなんか仲良いみたいだし…」
「はぃ?」ギロッ!
「あ、はい、サーセン」
やだ、この子、超怖い……この俺が無意識のうちに後退りしているだと?
「提督は知らないんです!昔の択捉ちゃんはああじゃなかった…もっと強くて、気高くて、クールで、カッコよくて…嗚呼、最高ですよ!ふふふ…そう、最高なんですよ択捉ちゃんは…私の択捉ちゃんは」
「お…おぅ」
深く、暗き闇より暗いドス黒い瞳を輝せながら松輪はウットリとした表情で択捉の素晴らしさを語る…
「あれはそう……まだ私が小さい頃です」
「今も十分小さいがな」
「私が択捉ちゃんのお人形を持って外で遊んでいると、近所のガラの悪い少年達からお人形を取り上げられてしまい困っていたんです…」
「あー…あるある、あるよね、男の子には、そーゆー紳士的じゃない年頃って」
「いじわるな少年達は私が返してくださいと言っても聞かず、あまつさえ、よし!人形の服を脱がせてやるぜ!あそこが本物と同じかどうか見てやる!とまで言うのです」
「あー…あるある、あるよね、男の子には、男の子ってはいくつになってもとりあえず美少女のフィギュアのスカートは下から覗いてみるのだよ」
とりあえず話の流れからするとアレだろう、この大ピンチに択捉が紳士として見過ごせずに現れ、ボコボコにされても別にキミの為じゃあない!紳士として恥ずべきコトだからだ!って紳士的にハンカチーフを落として行く感じだろう…
「そこへ颯爽と択捉ちゃんがやって来てッ!!」
「やって来てェ!!」
『いいぜ松輪、よく吠えた…この勝負、最後までこの姉を信じ抜いたお前の勝ちだ』
やだ!!超カッコいい!?
「さらに択捉ちゃんは年上のイタズラ男児達にこう言ったのです!」
『大きなお兄さん達が全力を出しても倒せない少女が、こうして目の前に立ってやっているんだぜ』
「っーかイケメン過ぎるだろォ!?それホントに択捉か!?」
「択捉ちゃんです」
…コイツのドス黒い瞳には択捉に対する美化フィルターかなんかかかっているのだろうか?
「………それが今の択捉ちゃんはあの魔女のせいでッ!!魔女めッ!!魔女めェェェェェェ!!」
「まぁ落ちつきたまえ、ほら、チョコレートでもどうかね?」
…ダメだコイツ、まぁ、あのアツかりし革命戦士ガングートに真っ向勝負でケンカ売れる心意気だけは買おう、心意気だけは
次回はイベント導入編、たぶん