不健全鎮守府   作:犬魚

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帰ってきたグルメ犯罪艦!全員合わせて懲役19879524年

【登場人物】

伊良湖(3)
通称、間宮の子分

磯風(5)
グルメ死天王、季節の逆転シェフ

比叡(4)
グルメ死天王、知性溢れる天才シェフ

間宮(9)
グルメ死天王、グルメ神に最も近いシェフ
今回は出ない


提督と死のフルコース

当基地にはグルメ四天王と呼ばれる生粋のグルメ犯罪者達が居る…

 

その、恐るべきグルメ拳は空を裂き、そのグルメ蹴りは大地を割ると言い伝えられており、あの地球一のタフ・ガイと言われた長門や、鍛える事は女々しいの体現者である武蔵ですら正面からヤり合う事を避けるとまで言われている……

 

 

『お久しぶりです大尉、その後、お身体の方は如何ですか?』

 

「おかげさんで元気ブリバリよォ〜…今度テメーのツラ見たら思わずフラッシュ・ピストン・マッハパンチ喰らわしてやりてーぐれによォ〜」

 

春は曙、年始の執務室……上からお達しのあった任務を可能な限り速やかに遂行し、書類に印鑑を押して処理済み棚に放り込む、やはりこーゆー細かい事でチマチマとポイントを稼ぎ上からの心象を良くしないとな!そんなふうに考えていた矢先、珍しく軍の回線を使った電話が鳴った…

 

『お元気そうでなによりです』

 

「で?ナンの用だ?テメーからの電話なんてだいたいロクなモンじゃねぇしな、で?なんだ?軍がヤバいのか?」

 

『まぁ、ヤバいと言えば前々からヤバいですが』

 

オイ大丈夫か?コレ軍の回線使ってるけど大丈夫か?

 

『まぁ、用件なんですが近い内に私がそちらに……いえ、よく考えたら大尉が来る事になりますか、まぁ、詳しいのその時にでも』

 

「オイちょっと待て天海!オマエなんだそのちょっとヤなフラグ立ててんだ?オイ」

 

『ではまた…』

 

「もしもし?オイ!もしもぉーし?チッ………あの野郎、切りやがった」

 

あの野郎、新年早々なんてイヤなフラグ立てやがるんだ…アレか?たまにやってくるシリアスに挑戦したい難しいお年頃を煩ってるアレか?ムリムリ、やめときゃいいんだよ、そーゆーのは他所に任せてウチはウチらしく、執務室で漫画読んだり喫煙所でタバコ吸ってりゃいいんだよ

 

「相変わらず仲の良さそうなコトで」

 

「今の会話のどこに仲良し要素があったんだ?あ?このクサミダレが」

 

「クサミダレではありません、五月雨です、お茶飲みますか?」

 

「貰おうか、マグマのように熱いやつをな」

 

ーーー

 

午前の仕事を済ませ、俺と五月雨はたまには間宮の店でオシャレなスイーツ的なモンでも食うかと間宮の店へとやって来たのだが………

 

「閉まってるじゃねーか!」

 

「閉まってますね、あ、でも中に誰か居ますよ、ほら」

 

「あー?」

 

たしかに、五月雨の指差す先になにやらセコセコ動いている女給さんみたいなのが居る、アイツ誰だったっけか…?

ウチにあんなキュートな女給さんいたか?

 

「サミー、ウチにあんなテーブル拭き中の立ちバック専用みたいな尻いたか?」

 

「テーブル拭き中の立ちバック専用かどうかは知りませんが前々から居ましたよ、間宮さんの弟子の伊良湖さん」

 

「伊良湖…?あぁ、思い出した、間宮の子分な」

 

【給糧艦:伊良湖 グルメレベル25】

オードブル-白身魚のムース

スープ -甘海老のポタージュスープ

魚料理 -舌平目のムニエル

肉料理 -仔羊のハーブロースト

主菜 -明石ファーム産牛フィレ肉のポワレ

サラダ -アボカド生ハムのカプレーゼリースサラダ

デザート -伊良湖スペシャルケーキ・無明逆流れ

ドリンク -100%フレッシュオレンジ

 

「オイ、間宮の子分オレだよオレ!オレオレ、開けてくださいよー」

 

とりあえず俺は中に居る間宮の子分に気付かせるべくドアをバシバシと8ビートなリズムで叩いた

 

「…ん?ゲッ!?テイトク…っ!?ちょ…!やめてくださいよ!ドアが壊れるじゃないですか!」

 

「ハッハッハ、すまんすまん、ついとカッとなった」

 

「何がカッとなったですか……で?何の用ですか?言っときますけど間宮さんなら居ませんよ」

 

間宮の子分こと伊良湖クンは俺の顔をジロジロ見てなにやら露骨にイヤそうな顔をしているが、まぁたぶんアレだろう、そーゆー気難しい年頃ってやつだな

 

「なんだ?あの乳牛はどっか行ってんのか?」

 

「えぇ、なんでも…グルメショーウィンドーの熟成がどうのこうの言って年末から休暇取って出かけてますけど」

 

「そうか…」

 

さすがはグルメ四天王の中でも最もアクティブ派と名高い間宮……感じたか、センチ●リースープの鼓動を…ッ!

 

【A級グルメ犯罪艦:間宮 グルメ懲役4545072年】

 

オードブル-サタンフィッシュのタタキ(捕獲レベル推定60000)

スープ -?

魚料理 -?

肉料理 -?

主菜 -?

サラダ -?

デザート -?

ドリンク -オレンジジュース

 

「そーゆーワケで、間宮さんが帰ってくるまでは開店休業中です、お湯と電子レンジなら使って構いませんよ」

 

「仕事せーよ!仕事、間宮の子分クンよォ!」

 

「間宮の子分ってなんですか!間宮の子分って!私の名前はイラ…」

 

「しゃーなしだな、サミー、あっちの飲み放題ティーバッグのティーでも飲むか」

 

「そうですね」

 

「聞けよ…ッ!!提督はまだしも…!さみ……さみ?さみ?すず?や、やっぱさみ!五月雨さん?までヒドくないですか!?」

 

コイツ、五月雨の名前が曖昧なのか……命拾いしたな、間違ってスズカゼとか呼んでたらそのキレーな顔が親でも区別つかねーぐらいグチャグチャに整形されていたのだよ

 

「ヒドくないです、あと、五月雨です」

 

ーーー

 

とりあえず、五月雨と共に安いティーバッグにお湯を淹れた安いティーを飲みながら今年こそオレ浜風ちゃんに告ろうと思ってんだいいじゃん言っちゃいなYO!勇気を出しTE!と言うアツい議題で話をしていると、なんか皿がテーブルの横から流れてきて俺の前で停止した

 

「…オムライスだな」

 

「オムライスですね」

 

俺たちがオムライスの流れてきた方向に視線をやると、そこには、脚を組み、テーブルに片肘をつき、さぁ!おあがりよ!言いたげにバチコーンとウィンクする超A級グルメ犯罪艦が座っていた…

 

「フッ…」

 

「フッ、じゃねーよ!誰がこんな殺人兵器頼んだ!」

 

「殺人兵器…?フッ、まぁ…ある意味間違いではないな、この磯風会心の一食、食べれば天にも昇る気になれると自負しているぞ!」

 

【A級グルメ犯罪艦:磯風 グルメ懲役1192296年】

 

オードブル-秋刀魚っぽいやつを焼いたやつ(捕獲レベル推定30000)

スープ -鰯水(捕獲レベル5)

魚料理 -なんとかいう魚を煮たりしたやつ(捕獲レベル推定55000)

肉料理 -?

主菜 -?

サラダ -?

デザート -浜風と作ったプリン

ドリンク -オレンジジュース

 

「ほっぺた、落ちちまうぜ?」バチコーン☆

 

「誰が食うかボケ!自分で食えよ」

 

「まぁそう言うな提督よ、もしかしてアツアツは苦手か?なんならこの磯風、フーフーしてアーンするのもやぶさかではないぞ?」

 

「うるせぇよ、テメーのフーフーもアーンも何の価値もないわい」

 

まぁ、それが浜風ちゃんならば俺はこの殺人兵器を果敢に口にし、前のめりで死ぬがな

 

「フッ、まぁそう言うな提督よ、この磯風、朝から一生懸命作ったのだ、その心意気を買うのもまた、男ではないか?」

 

「やかましい」

 

ちなみに、朝から試行錯誤している最中、匂いにつられてやってきた時津風が試作品を食い、ウレションしながら泡を吹いたので浦風がすぐに病院だよぅぅぅ!と連れて行ったそうだ

 

「ったく…誰がわざわざ自ら死を選ぶかっー……」

 

ゴトッ………(カレー)

 

俺の背後から、磯風のオムライスを横に退けるように、新たな皿が置かれた…

 

「おせちもいいけどカレーもねです」

 

「お…オマエは」

 

「あ、比叡さん、こんにちは」

 

当基地の“暴”に君臨する金剛姉妹、その次女にして超A級グルメ犯罪艦ッ!比叡ッ!

 

「あ〜ぁ〜…ダメですねぇ、提督はグルメな人なんですから、こんな弱小オムライスをテーブルを置くのはご遠慮頂けますかねぇ〜」

 

【A級グルメ犯罪艦:比叡 グルメ懲役141421356年】

 

オードブル-なんかの鳥の卵(捕獲レベル推定28000)

スープ -?

魚料理 -?

肉料理 -なんかこう…飛ぶやつを焼いた肉(捕獲レベル測定不能)

主菜 -?

サラダ -すごい草(捕獲レベル推定120000)

デザート -豆大福(150円)

ドリンク -金剛姉者が買ってきたなんかお高価い紅茶

 

「クッ!貴様ァ!誰が弱小オムライスだ!今のセリフを取り消して貰おうか!」

 

殺人オムライスをバカにされた磯風は、果敢にも同じく殺人カレーを手にした比叡につっかかった

 

「オイオイオイ、喧嘩すんなよ殺人シェフ同士で…」

 

「いーや!これはこの磯風の名誉の問題……いや!散って行った第十七駆逐隊の名誉の問題だ!」

 

散ったのか!?それ作る過程でオマエの仲良し姉妹散ってんのか!?

 

「フッ…たかが駆逐艦のボウヤ如きが、戦艦と駆逐艦では神と虫ケラほどの差があると言うコトがわかっていないらしい」

 

比叡はある意味敗北フラグのような事を言ってはいるが、まぁ、あながち間違いってワケではない、しかし比叡よ、戦艦と駆逐艦の優劣を分けるのは艤装の強さではない……小宇宙の大きさだ

 

「戦艦比叡!キサマに食●を申し込む!」

 

「ほぉ……この比叡に●戟を挑むとは、フフッ…せっかく見逃してあげようと思ったのですが」

 

「この勝負の審査はモチロン提督だ、異存ないな?」

 

「いいでしょう!この比叡に挑んだ事を後悔させてあげますよぉ!」

 

「ちょ!待てよ!異存あるわい!!ナニ勝手に人を審査員にしてんだ!殺す気かッッッ!!」

 

 

………この後、なんやかんやあって厳正なる抽選の結果、審査員に俺、明石、松輪が選出され、とりあえず松輪は邪眼による幸せな夢を見ながら磯風のオムライスを食し死亡、俺と明石は互いに奥義、グ●メ・デ・フォアグラを繰り出す死闘となったが最終的には互いに身体の変調→意識の混濁→絶命へのロードを突っ走った………

 

あとついでに、間宮食堂をいらんこと汚した磯風と比叡は帰って来た間宮に麺棒でしこたま殴打され、泣いて謝った

間宮の子分は間宮からアイアンクローされて床にビッタンビッタン叩きつけられて泣いて謝った


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