不健全鎮守府   作:犬魚

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忘れた頃にバスケする難しい年頃

【登場人物】

提督(198)
女子供にも厳しいバッドガイ、バッドガイ

涼風(4)
通称、五月雨B、凶暴な方の五月雨と言われており、よく間違えられる

山風(14)
地味に最近あまり出番のなかった小さい方の緑、扱いが難しい


提督と開幕!ウィンターカップ2018

「オラァ!!」

 

「キター!江風のアリウープ!」

 

「今どっからパスがきたんだーッ!」

 

午前中の仕事を済ませて自販機で缶コーヒーを買い、喫煙所でタバコでも吸いながらヤン●ガでも読むかと考えながら廊下を歩いていると、体育館からえらくやかましい歓声が聞こえてきたので覗いてみたらバカどもがボールを取り合って飛んだり跳ねたり走ったりしていた…

 

「フーッ〜…やっぱ前言撤回するわ、江風ェ…オマエサイコーっぽい!」

 

「こっちはハナから全開だぜェ!夕立ェ!」

 

冬の全基地バスケットボール大会、通称ウィンターカップの開幕初戦、夕立擁するチーム由良VS江風&海風擁するチーム鳥海の激突とあって初戦から大盛況、両エースが互いにゾーンに入門する熱戦となっていた…

 

「速すぎてナニしてんのかまったくわからねー!」

 

「ホントに同じ駆逐艦なのかよ!?」

 

「大したヤツやでぇ江風クン…!ただ、それでも最強はユウダチや!」

 

両エース互いに一歩も譲らない目まぐるしい攻防が繰り広げられるコートを見つめるギャラリーの中には夕立と同じ白露型キセキの世代の天才達の他に、勝ったり負けたりしてる微妙なチームを率いる陸奥と睦月型のアホガキども、全国区のシューター舞風を擁するチーム瑞穂レギュラーとハクいスケでお馴染みの瑞穂、そして新進気鋭の新チーム、旧ソビエト式近代的トレーニングで鍛えあげた鉄の軍団、ガングート率いるチーム声かけ事案…

 

「…あ、テイトクだ」

 

「ん?よぉ、オッサン、オッサンも見に来たのか?」

 

「オッサンじゃない、提督だ」

 

客席ベンチの近くに立っていると、改白露型の緑のトゲトゲチビと改白露型の五月雨B………ではなく、涼風がやって来た

 

「なんだそれ?缶コーヒーか?あたいにも一口くれよ」

 

「やだよ、自分で買って来いよ、自販機コーナーで絶賛発売中だぞ」

 

「カーッ!ケチくせぇなこのクソメガネは!」

 

「メガネはカンケーねーだろーが!メガネは、お前は今、望月さんを敵に回したぞ!」

 

「あ゛?上等だよ、っーか望月さんってダレよ?」

 

望月さん、睦月型唯一のオシャレメガネっ子で格ゲーが超強い、もうヤバいぐらい強い、俺や鈴谷のレベルからしたら神と虫ケラのレベルであり、望月さんが対戦台に座っただけで相手が泣いて謝り、心臓発作を起こす場合すらあり、100円入れただけでKO、むしろ金も入れず勝ったことすらあるらしい…

 

「………と、まぁ、これが望月さんだ」

 

「ふ〜ん」

 

涼風の野郎、1mmも興味なさげな顔で鼻ほじりやがって…

 

「ま、どうでもいいわ、なぁ山風の姉貴ィ」

 

「…ワリとどうでもいい、あと提督、ここ座って、ここ」

 

「あ゛?なんだって?」

 

「…いいから」

 

珍しく機嫌良さげな山風がベンチをほらここ座れ!ここに!とバシバシ叩くのでとりあえず俺はベンチに腰掛けると、俺の膝に山風かケツを乗せて着席してきた…

 

「〜♪」

 

「……なんだコレ?」

 

「ギャハハハハハ!!さすが山風の姉貴ィ!アタイらには出来ないコトを平然とやってのける!っーかやらねぇけど」

 

「わからん………まったく、わからん」

 

なんかよくわからんが、妙に上機嫌そうなクソチビだと言う事だけはわかるが………ハッ!?そうか、山風は冷たいベンチではなく、暖かい座椅子を求めていたと言うことか……それで、それを私は迷惑に感じ、マシーンにしたのだな…っ!

 

「俺ほどの男が!なんてケツの穴が小さい!」

 

「缶コーヒーくれよ」

 

「自分で買って来い」

 

ついでに、隣に座った涼風が俺の缶コーヒーに手を出してきたのでその右手をこちらも右手で迎撃し、無事に缶コーヒーを守護った…

 

「ケチくせぇオッサンだな」

 

「オッサンじゃない、提督だ、っーかテメーさっきからなんだその口の聞き方は、俺はこの基地で一番偉い提督様だぞ、俺だって怒る時は怒るからな、本気と書いて本気‼︎で怒るからな」

 

「へいへい」

 

「…テイトクテイトク!それ!それちょっと頂戴!」

 

五月雨Bの1ミリバールも感じられない反省に若干イラっとしていると、今度は緑チビが缶に手を伸ばしてきた

 

「あ?ブラックだぞ?」

 

「…いいから!」

 

大きな森の小さな巨人、動くと髪がいちいちトゲトゲしい山風は俺の缶コーヒーをひったくり、豪快に飲み………干さず、やはりブラックである事にビビったのか、チビチビと口をつけ、案の定、苦味ーッ!と言いたげな顔で俺に返却してきた

 

「…苦い」

 

「BLACKだからな」

 

だから言ったのだよ、人の話を聞かんヤツだな……とりあえず、俺はポケットに入っていた溶けにくいチョコレートを取り出し、山風の鼻をつまんでやり、息苦しくなったところにチョコレートを放り込んだ

 

「…む!?………ぷはぁ!む!?……う…ぅん」

 

「チョコレートだ」

 

「…知ってる、普通にくれたらいいのに」

 

「甘えたコトを抜かすなフヌケが」

 

チョコレートでさらにゴキゲンになったらしい山風は人の膝の上で貧乏ゆすりして足をブラブラしだした、っーか膝が痛い、あと、足も痛い、蹴るなよこのクソガキ

 

「カーッ!!ラブコメかい!アレかい?駆逐艦だけど子供じゃない的なアレかい!」

 

「ナニ言ってんだオマエ?イカレてんのか?」

 

ナニ言ってだこの五月雨Bは、イカレてんのか?いや、よく考えたらイカレてたわ、AもBもプッツンしてたわ、うん

 

◆◆◆

 

「バカな!?カワカゼの方が速いやと…!?いや、ゾーンのタイムリミット!!」

 

白露型最強の敏捷性と野性を誇る夕立が遂に江風によって止められ、ターンオーバーを許した…ッ!

 

「勝たなきゃ面白くないっぽい!」

 

「うるせぇンだよ!テメーのお返しはもういンねーよ!なぜなら…これで終わりだからなァァァァァァ!!」

 

ターンオーバーに追いついた夕立の頭の上からゴールにボールを叩き込むと同時に終了のブザーが鳴った

 

「よっしゃァァァァァァ!!勝ったァァァァァァ!!」

 

「やったわね江風」

 

「ようやく…ようやく勝ったぜ、なぁ!海風の姉貴ィ!」

 

そして、勝利に湧くチーム鳥海のメンバー達を見下ろし次の試合に備える強豪達…

 

「…フッ、まさかあのユウダチがやられるとは…」

 

「これはどうやらデータを書き換える必要があるな」

 

「面白いものを見せて貰ったよ」

 

ウィンターカップ初戦は波乱のスタートを切ったッッッ!!


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