不健全鎮守府   作:犬魚

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冬のトレンディ執務室

【登場人物】

提督(199)
文系、数学は算数の時点で諦めた

香取先生(16)
メガネが素敵なエレガントティーチャー、できるまで熱血指導

鹿島先生(16)
可愛い顔したエロガントティーチャー、転属願いは一向に受理されない


提督と香取先生と冬休みstudy

「提督、珈琲をどうぞ」

 

「やや!これはこれはありがとうございます!」

 

香取先生の淹れてくれた珈琲は洗練されていながら多様で深い陰影を感じさせ、それでいて荒々しさと繊細さを秘める実に深い味わいが口に広がる大人の味である…

 

「んんんー……!エクセレンツ!さすがは香取先生ですなぁ、教育者としてだけでなく珈琲の腕も一流でいらっしゃる」

 

「まぁ……提督ったら、褒めても何も出ませ……あ、チョコレートがありました、よければこちらもどうぞ」

 

「やや!これはこれは…いけませんなぁ、まるで催促したようで、いや、実に恥ずかしい!」

 

「あらあら、ふふふ…」

 

「ハッハッハッハ」

 

まったく、香取先生はいつだってエレガントでいらっしゃる、こんな素敵であると同時に素晴らしくアツい教育魂を持つ先生に指導をしてもらっているウチのバカガキどもは実に運が良いだろう、なんと言っても香取先生はどんなクズでも見捨てないワルの更生のスペシャリストだ

 

「…うわ、相変わらずイラッとくるわ、姉さんと提督のトレンディ小芝居」

 

「鹿島、何か言った?」

 

「いえ!何も言ってません!何も言っておりません!サー!」

 

鹿島先生は姉である香取先生を心から敬っておられるのだろう、完璧…まさに完璧、下等艦娘には真似出来ない完璧艦娘に相応しい完璧な敬礼をしている、心なしか、香取先生の笑顔に鹿島先生の膝が震えているようにも見えたが…まぁ気のせいだろう

 

「ところで鹿島先生、その書類はなんですかな?」

 

「え?あ、はい、コレは駆逐艦の子達から集めた冬休みの宿題です、まだ採点途中ですが…」

 

「なるほど、宿題ですか」

 

そう言えば最近、夜中に談話室に集まったクズどもが削除…削除…とか呟きながら何やらカリカリとノートのようなものに書き込んでいたな、あれは冬休みの宿題をしていたのか、特に冬休みを設けていたワケではないが、あえて宿題を出していたとは…まったく、如何なる時でも教育の心を忘れない先生方には感動すら覚えるのだよ

 

「そうそう鹿島、夕立と村雨のクズどもはちゃんと提出したかしら?」

 

「え?あ〜…うん、たしかあった気がするかな、たぶん」

 

「ダメじゃない鹿島、キチンと確認しないと…姉さん感心しないわね」

 

「あ〜…うん、ごめんなさい」

 

鹿島先生は素直にごめんなさいと頭を下げる、まぁアレだ、数も多いし、そりゃ鹿島先生がお美しい先生とは言えミスだってするだろう

 

「まぁまぁ香取先生、鹿島先生もまだ正月疲れが残っておられるのでしょう」

 

「我が妹ながらお恥ずかしい限りです」

 

「いやいやいや、先生方にはご苦労をおかけっぱなしで!私の方が至らぬ点が多くて恥ずかしい限りです」

 

「まぁ、そんなご謙遜を…ふふふ」

 

「いやいやいや、ハッハッハッハ」

 

香取先生は口元に手をやりエレガントに笑う、まったく、香取先生はいつだって俺をアツくしてくれる素晴らしい先生だな…

 

「………あの、ところで香取姉ぇ………じゃなかった、香取姉さん、この問題なんだけど…?」

 

「なに?」

 

「やっぱこの問題はおかしいと言うか…なんか変と言うか…」

 

「どれ?」

 

「これなんだけど…?」

 

鹿島先生は香取先生に宿題のプリントを手渡し、香取先生はナニ言ってるのかしらこの子は?イカれているのかしら?と言いたげにクスクスと笑い、俺にもそのプリントを見せてくれた

 

「まったく、相変わらず鹿島ったら漢字が苦手みたいで…」

 

「や、コレ漢字が苦手とかそんなのじゃないよ!?」

 

「ほぉ…どれどれ、なるほど」

 

下線の漢字の読みを書きなさい

問1

妹が朝からお腹が緩くて下痢便気味と言っていたのでとりあえず腹パンした

 

答え げりべん

 

問2

可愛い顔した妹は後ろの穴も相当使い込まれているので腸内環境が心配だ

 

答え ちょうないかんきょう

 

「…ほぉ、コレはアレですな、昨年流行ったとかなんとかドリル的な」

 

「えぇ、やはり子供達の興味を引きやすいと思いまして参考にいたしました」

 

「や、参考どころかとんでもない改悪だよ!」

 

さすがは香取先生だ、クソガキどもが楽しみながらお勉強出来るように、良い物、そして良い点を取り入れ、さらにはそれをワンランク上のスタディとして昇華している

 

「…はぁ、まったく、鹿島にも一度改めて教育が必要かしら…我が妹ながらお恥ずかしい限りです」

 

香取先生は執務机に置いてあるメモ紙を一枚失礼しますとエレガントに取り、手にしたボールペンでサラサラと美しい字を書き込んだ

 

「鹿島、ちょっとこの問題を解いてみなさい」

 

「え?やだよ、どうせまた納得いかない感じの…」

 

「鹿島」

 

「ハイ!喜んで!」

 

香取先生のキラッとキラめく素敵なメガネに、鹿島先生のおっぱいと身体がビクッと跳ね、早速問題の書かれたメモ用紙を手に取った

 

「………ん?」

 

「どうしました?」

 

「んんんー?か、香取姉ぇ…あの、ちょっといいかな?ちょっと!」

 

「なんですか?あと、今は仕事中ですよ、香取姉ぇはやめなさい、香取先生か、せめて香取姉さんと呼びなさい」

 

さすがは香取先生だ、公私はしっかりと分ける生真面目さ、まったく…香取先生はいつだって俺の心に感動と感謝を与えてくれる…

 

問1

3以上の 自然数nに対して、Ⅹn+Yn=Znを満たすような自然数 Ⅹ、Y、Zは存在しない、これを証明せよ

 

「………って!!解けるかァァァァァァ!!これアレでしょ!?なんか懸賞金とかある系の数学でしょ!?」

 

鹿島先生はメモ用紙を勢い良く床に叩きつけた

 

「あら?バレた」

 

「バレるよ!!そもそも香取姉ぇに解けるの!?」

 

「解けるけど?」

 

「………え?」

 

「解けるけど?」

 

さすがは香取先生だ、鹿島先生は床に叩きつけたこの難問……いや、過去、360年に渡り数学界最大難問として君臨し続けたこの難問を既に解いておられる

 

「…はぁ、鹿島、アナタには少し再教育が必要なようですね、申し訳ありません提督、我が妹ながらお恥ずかしい限りで…」

 

「いやいや、香取先生もまさかのフェ●マーの最終定理を出すとは、御冗談も一流でいらっしゃりますなぁ!ハッハッハッハ」

 

「まぁ、提督ったら…ふふふ」

 

この後、俺は香取先生とどうです?今日は小洒落た夕食でも一緒にと誘い、二つ返事でOKしてくれた香取先生とオシャレなディナーを楽しんだ後、ママの店でこれからの教育についてアツい話し合いを楽しんだ…

 

 

「わからない……香取姉ぇの趣味も、このトレンディ小芝居も、わ…私には難易度が高すぎる」


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