【登場人物】
提督(202)
大尉、所謂クソ大尉
お茶会で私のケーキはないのか?と尋ねる恥ずかしい大人、軍の学校は下から三位で卒業した
日南中尉
坂下郁様の『それでも僕は提督になると決めた』の主人公、所謂、才気溢れるイケメン主人公、軍の学校は上から三位で卒業した
「はぁ?へいへい、わかりました、じゃ、そーゆーコトで頼みます、はぁ?あぁはいはい、わかってますって、アレでしょ?なんかこうイイ感じなアレでしょ?わかってますわかってますって、じゃ」
受話器を戻し、机に置いてあった書類に再び目を通してみるが……うぅむ、見れば見るほど憎らしい面構えよ、此奴め、学生の時分よりさぞかしキャーキャー言われていたであろう事は容易に想像できるわい
「受けるんですか?演習」
安いティーバッグの紅茶と安い特売品のクッキーを俺の机に置き、五月雨は既にわかっているであろう回答を聞くべく尋ねてきた
「まぁな、よくわからんが中将殿からの依頼だ、紳士として受けて立たねばなるまい」
先程までの電話はクソオヤジこと大将殿だったが、用件的にはこうだ、なんでも、大将殿とは派閥は違うもののワリと話す仲の桜井とかいう中将から俺に演習の申し込みが来たらしく、俺としては中将なんかと接待ファイトなんぞ御免被りたかったのだが、話をよく聞くと、なんでも、その桜井中将とかいうジジイの子飼いである若手将校との演習らしい…
「紳士としてですか、なるほど…相手の方はなかなかのイケメンですね」
「あぁ、イケメンだ」
五月雨は机に置いた書類を手に取り、ほぉ〜…中尉さんですか、まだお若そうなのにイケメンで、中尉さんで、イケメンで、ほぉ〜軍の学校を三位の成績で、これは優秀でイケメンで有望なイケメンですね〜…と当てつけがましく言っていたのでとりあえずその書類をそこの壁のトコに貼れと命じた
「クックック…若手のエリート将校様かなんか知らんが、この俺にタテついたコトを後悔させてやるわい」
「いや、別にこの中尉さんがタテついたワケでは…」
俺は机の引き出しにしまってある自決用兼いざと言う時用ナイフを取り出し壁に貼られた書類にブン投げた
「クックック…この俺にタテついた代償は高くつくと言うコトをこのヤングボーイに教えてやる、クックック…ハッハッハッハ…ハァーッハッハッハッハ!!」
「や、刺さってませんよ」
◇◇◇
宿毛湾泊地…
「なかなか来ないね、相手」
「来るのおっそーい!ねぇ!ホントに今日なの?時間と日にち間違ってない?」
たしかに、もうすぐ演習の開始時刻だと言うのに相手の艦隊どころか、先方の将校もまだ来ていない……もしかして、何か移動の途中でトラブルでもあったのだろうか…
「う〜ん、何度か確認したんだけどね」
先日、桜井中将からとびっきりイキのイイ演習相手を用意したから準備を入念にしておけと指示があった…
桜井中将曰く、相手将校は大尉ではあるが一時は大佐にまで昇りつめた人らしく、大規模作戦への参加も何度かあり経験はかなり豊富な男とのコトなんだが…
「そもそも大佐から大尉に落とされるってかなり危ない奴なんじゃないの?」
「だよねぇ〜…」
「たぶん………相当に悪いヤツ」
先方を待つ間にみんな好き勝手な事を喋っているが、正直な話、そう言う事は誰が聞いているのかわからないからあまり口に出してはいけないと注意した方がいいのだろうか…?
「とりあえず桜井中将に連絡してまだ先方が到着してないってコトを伝えるか…」
「そうだね」
時雨に桜井中将への連絡を手配しようとしたその時、島風があっちから誰か歩いて来たよーと声をあげたのでそちらを見ると、たしかに………誰かが、ん?誰か…?
もしかしてあの人が先方の大尉………でいいのか?い、いや…たぶん
「ノースリーブにサングラスだね」
「あ、あぁ…」
さすがに時雨も含め、ウチの艦娘達もドン引きのスタイル……いや、ノースリーブでサングラス自体もアレだけど、今の季節は冬ッ!圧倒的なまでに冬…ッ!外気温は最高気温一桁の今日ッ!
「やぁ、お待たせしたね」
「あ、いえ……はい、あの……本日の演習をお受けして頂いた大尉………ですよね?」
やばい、思わず疑問形で聞いてしまったが、ノースリーブサングラス大尉は特に気にした様子も見せず肩をすくめて見せた
「ご覧の通り、軍人さ」
…軍人?ご覧の通り?
「遅れてしまってすいませんでした、このノースリーブサングラス大尉が電車を一本間違えたせいです」
ノースリーブサングラス大尉の横に居る長い青髪の艦娘がすいませんでしたと頭を下げる、たしかこの娘は……え〜と、白露型の…たしか時雨の姉妹艦の子だったかな、たしか、名前は…
「すず…」
「五月雨だよ、中尉」ボソボソ
「失礼、五月雨さんですね、教導艦隊日南司令部候補生です」
危ない危ない、時雨が小声で教えてくれなかったら間違えるところだった、危ない危ない
「私のコトは気さくに大尉とでも呼んでくれたまえ」
「は、はぁ…」
ノースリーブサングラス大尉はフェアに戦おうぜと言いつつ握手を求めてきたので、こちらもその手を握り返………
「甘いぜボーヤ!」
「!?」
ノースリーブサングラス大尉は握手と見せかけて膝蹴りで飛びかかってきたので思わず避けてしまった
「チッ………やるじゃないか」
「な、な!?」
なんだいきなり!?ノースリーブサングラス大尉の強襲に、ウチの艦隊達がざわめき立って抗議の声をあげた
「いきなり何するんだコイツ!」
「ひなみん!敵だよ敵!コイツやっぱ悪いヤツだよ!」
「ま、待つんだみんな!な?落ちついて!まずは落ちつこう」
抗議の声と殺気立つ艦娘達を宥め、再びノースリーブサングラス大尉と向き合うと、ノースリーブサングラス大尉は不敵な笑みを浮かべた
「なるほど、突然の不意打ちにも動じない良い将校だ、悪かったね、試すような事をして」
「試す…?」
あ、あぁ…なるほど、今のはそーゆー意味だったのか、びっくりしたなぁ、色々な意味で今までに会った事のないタイプの将校だな
「い、いえ…こちらこそ」
改めて握手を交わし、秘書艦を交えて本日の演習についての確認をする…
演習内容は通常戦の6対6の艦隊戦、お互いに事前の編成は知らないブラインドゲームだが、桜井中将曰く、ノースリーブサングラス大尉の指揮下には大和型まで居るらしいので、ある程度はこちらの練度に合わせた編成内容で来るとのコトなのだが…
「え〜と…大尉の方は、あの、見たところそちらの五月雨さんしか居ないみたいですが」
「私はただの同行秘書艦なので演習には参加しません」
「あ、そうですか…」
じゃあ、他に6人の艦娘が……あれ?もしかしてまだ来てないとか
「フッ、日南中尉……お見せしましょう、今日!君を地獄に突き落とす我が精鋭達を!」
「はぃ?」
ノースリーブサングラス大尉は大仰な身振り手振りでいでよ我が精鋭達よー!と叫ぶと、どこからともなく不気味な笑い声が聞こえてきた
「な、なんだ!?」
「ひなみん!アレ!あそこ!」
「ゲェーッ!通信用鉄塔のところに誰かがー!」
…たしかに、通信塔のところになにやら頭の上から足の先までスッポリとマントのようなものを被った6人の影がいる!?
「紹介しましょう、まずはミステリアスパートナー1号!」
「バゴァ!バゴァ!」
「ミステリアスパートナー2号!」
「グギャギャギャギャ!」
「ミステリアスパートナー3号!」
「フショー!フショー!」
「ミステリアスパートナー4号!」
「ジョアジョアジョア!」
「ミステリアスパートナー5号!」
「グロロロロ…」
「ミステリアスパートナー6号!」
「グフォフォフォ」
ろ…6人の艦娘…?いや、艦娘なのか?え…?艦娘だよな、たぶん、うん、ノースリーブサングラス大尉に紹介された6人の見るからに怪しいマント集団が降り立った、や、むしろなに一つ紹介されてない気もするけど…
「これが我が部隊!若手のイケメン将校を始末するべく集めた精鋭達よ!」
「は…はぁ?」
…ダメだ、ミステリアスパートナーってコト以外は何もわからない、いや、ブラインドゲームって…?え?これがブラインドゲームなのか…?
「さぁ、始めようじゃないかね日南中尉クン、殺戮のパレードを…ゴングを鳴らしたまえ」
「え?あ、はい…」
【宿毛湾教導艦隊】VS 【6人の精鋭達】
Warspite - ミステリアスパートナー1号
島風 -ミステリアスパートナー2号
神通 -ミステリアスパートナー3号
祥鳳 -ミステリアスパートナー4号
瑞鳳 -ミステリアスパートナー5号
時雨 -ミステリアスパートナー6号
「えー………」
改めて見るに、なんなんだよミステリアスパートナーって!!これ演習だよね?これ桜井中将知っててこの演習斡旋したの!?
「さぁ行くがいい我が精鋭達よ!ヤツらに本物の戦いと言うヤツを教えてやるのだ!ハハハ…ハッハッハ…ハァーッハッハッハッハ!」
ノースリーブサングラス大尉は何がおかしいのか、ゲラゲラと笑い、秘書艦の五月雨はクズですいませんでしたとこちらに頭を下げる
とりあえず、一応正規の演習である以上、たとえ誰が相手でも全力を尽くそう…
次回は後編
激突!教導部隊VS知性溢れぬ外道集団!