【登場人物】
提督(207)
功を焦る軍隊に良い未来はないな
梶和大将
通称大将殿、海軍三大奥義を使える
五月雨(59)
髪の長い駆逐艦、超長い
天海中佐
主人公オブ主人公
「はぁ…?それはアレっすか?」
「まぁ、要はアレじゃな、アレじゃアレ、最近よく聞く………DG」
海軍中央司令参謀部施設の地下に作られた上級将校専用のサウナ室、使用頻度も利用者も少なく、また、実はこんな部屋がある事自体を知らない者も多く、ハッキリ言って予算の無駄遣い施設だが、こーゆーコトに公金を突っ込めてシレッとしていられるのが大人の特権である
そして今、その無駄遣いサウナには全裸の男が2人で向かい合って座っている…
「ナニがDGだ、BGだろ」
「そうじゃそうじゃ、カッカッカッカ!」
そっちじゃったわー!と大将殿は何がそんなにおかしいのかゲラゲラ笑い、ついでに大きな屁をコイた
「クサっ!この狭い部屋でなんてことしやがんだこのクソオヤジ!」
「カッカッカッカ!まぁ、そーゆーワケでヨロシク頼むぞォ!」
「何がヨロシク頼むぞだよ、くだらねぇ…そーゆーのはキ●タクにでも頼めよ、冗談じゃねーっの」
…今回大将殿から呼び出された厄介オブ厄介事の用件、それは、平たく言ってしまえば以前、大人の事情で見合いした超絶箱入りお嬢様(JS)の社交界的お披露目を兼ねた企業のパーリーが開催されるらしく、俺はそのパーリーにてお嬢様(JS)の身辺警護をやれと言うハナシなのだが…
しかしこの仕事、普通に考えれば、栄えある海軍大尉である俺がやる仕事ではない、そんなものはキム●クに頼めばいい話なのだが、どうにもこのパーリーに乗じて軍の後ろ暗い部署と裏社会の国際的な大手が絡んで色々とやらかしているらしく、当日はかなり高い確率でドンドンパチパチ、ドンパチパーリーが開催される可能性大とのコトだ
「まぁそう言うな特佐、ワシにも色々ある、色々なぁ」
「ナニが色々だよ、テメーの色々に巻き込むなっーの」
ちなみにこの任務に併せ、俺の階級は例外的に大尉から特佐とか言うふわふわした感じの階級に引き上げられるらしく、理由としてはお嬢様の護衛がしょーもない尉官では格好がつかんとのコトらしい、とりあえず少佐相当にあたるよくわからないふわふわした佐官に限定的に引き上げるそうだ
「はぁ………ってか、身辺警護がなんで武器の持ち込み禁止だよ?おかしくね?チャカは?ハジキは?ピストルは?俺はナニをどーやって護ればいいの?」
「大丈夫じゃ、お前には硬度4.5!肉のカー●ンがあるじゃろーが」
「ねぇよ、っーかさすがに銃が出たら分が悪いわい!死ねっーんかい!」
「そうじゃ、有馬のお嬢様だけは護って死ね」
このクソオヤジ、なんてコトをハッキリと言いやがる…
「言っておくが、有馬の現当主兄妹からは妹にカスリ傷一つけようものなら、カスリ傷一つにつき、百回殺すとのお達しだ」
「あ、悪魔か…っ!」
有馬の現当主兄妹、今の有馬グループの実質的なトップらしく、お嬢様(JS)の歳の離れた兄と姉なそうだ、兄の方は政経雑誌で、姉の方はたまにテレビで見たコトぐらいはある…
「だいたいオマエ、チャカ持っとっても役に立たんじゃろ」
「役に立たんとかゆーな!苦手なだけでちゃんと使えるわい!」
「嘘をつけ」
「嘘じゃねーし、こないだ基地で開催した射的大会じゃ一番多く屋台をブッ壊したしな!」
まぁ、当日使った銃は夕張に三千円握らせて作らせたジャイアントガトリングを使用し、射的を破壊した後“俺はまだ弾丸を撃ち尽くしてはいないッ!”と思い立ち、たまたま近くを歩いていた鈴谷に乱射したのだが………あと、射的大会の成績は満場一致で反則負けだった
「まぁいい、ま、精々頑張るがいい、お嬢様の護衛、身辺警護人、DGを!」
「BGだよ!」
◆◆◆
隠し事無用、秘密の会談を終えた俺と大将殿は、とりあえず最後の晩餐になるやもしれんし、オマエとオマエの秘書子に美味いモン食わせてやろうと些かお高価い肉を食べに来ていた…
「ほれほれ、ドンドン食え、ドンドン、パチパチ焼けるからのぉ、ほれ、髪長お嬢ちゃんの〜……え〜?髪?髪なんとかちゃん」
「はぁ、いただきます、あと、五月雨です」
「そうじゃったそうじゃった!カッカッカッカ!」
クソオヤジは焼いた肉をひょいひょいと五月雨の取り皿に入れガハガハ笑っている…
「おいジジイ、俺の肉がないんですけどぉー?」
「あ?勝手に焼いて、勝手に食え」
「俺が焼いてる肉までこの青髪ロング子に渡すな!ってか、いつからそんな甘くなったんだよ?あ?アレですか?ロリコンですか?いい歳コイたジジイがロリコンですかー?」
「ロリコンじゃない、大将じゃあ………ま、ほら、アレじゃな、孫は可愛い的なアレじゃ、アレ」
「ナニが孫だよ、おいサミー、オマエからこのお爺ちゃんに言ってやれ、早く死ねって」
大将殿は五月雨に甘い、そう、会った時には必ずお小遣いを渡すぐらい甘い、まったく、ウチの子を甘やかすのはやめて欲しいのだわ
「あ、これ良い感じに焼けてますよ、はい」
「ん?あぁ、悪いな」
五月雨はここぞとばかりにお高価な肉を食べつつも俺の取り皿に肉を放り込んでくる、コイツのこーゆーところがムカつくんだよ、こーゆートコが
「サミ……?サミなんとかちゃん、ワシにも…」
「ご自分でどうぞ」
「厳しい…ッ!!オイ!この子ワシに対して厳しいんじゃあないか…?ワシのシルバーハートがズタズタになるぞォ!?」
「ズタズタになりゃいいじゃん、おいサミー、タレく…」
「どうぞ」
嗚呼………本当に腹が立つ
◇◇◇
「お久しぶりです、大尉………ではなく、特佐でしたね」
「よぉ、天海」
大尉……ではなく、特佐はやる気なさげに煙草の煙を吐き、吸殻を灰皿に押し付けて深くため息を吐いている
まぁ、彼からすればため息以外の息は出ないのだろう…
とりあえず行きましょうかと声をかけ、特佐と共に車に乗り込みエンジンを始動する
「………で?どーよ?やるの?やらないの?」
「やるやらないで言うならやるでしょうね、正直、僕はこの為にここに居たと言っていいですし」
「そうかぁ〜…やるかぁ〜」
特佐は上着の中から煙草を取り出し、火を点けようとしていたので禁煙車ですと伝えるとイヤそうな顔でヘイヘイわかりましたーと煙草を上着の中に戻した
「…ま、オマエの事情は仕方ないとして、とりあえずコレだけは言っておく」
「はい?」
「危なくなったら守ってね」
「ヒロインですか、アナタは…」
…正直、これほどまでにまったく嬉しくない守ってねはそうは無いだろう、特佐はゲラゲラ笑いながらですよねーと言っているが………まぁ、これが彼の好きな小粋なテイトクジョークと言うやつだろう
「特佐こそ、今回は本気で危ない橋ですが………ちゃんと五月雨さんに色々と伝えてるんですか?」
「バカ言うんじゃないよ、アレは俺が選んだ秘書艦だ、俺とアレの間に余計な遺言など要らねぇな」
「そうですか」
ーーー
…子供だった頃、僕には妖精が見えました
妖精が見える者は艦娘を率いる海軍司令としての適性が高い、そう言われ、その日から将来はきっと僕も大勢の艦娘を率いて共に戦う立派な海軍の将校になるんだと信じ、日々、勉学や運動に励んできました、いつの日か、皆の前に立つ司令として恥じる事のないようにと…
ただ、その夢はある事件を境に消え…
妖精は僕の眼には映らなくなり…
そして、僕には新しい夢………いや、必ず果たすと誓ったドス黒い目的が産まれ、僕の手に一縷の希望だけが残されていた
次回は後編、ちなみに最後は完結編