【登場人物】
提督(214)
モクモクしているモクモク人間
神風(3)
沸点が低いプッツン長女、メルヘン思考
朝風(3)
デコが広いプッツン次女、好きなライスはハヤシライス
松風(2)
ボーイッシュ四女、なんやかんやで姉は怖い
クソ寒くはあるがタバコは吸いたい、そんな一流のスモーカーである俺は、執務室でギシギシしていると五月雨からうるさいんでニコチンでも摂取して来て下さい、あとシャーペンの芯買って来て下さいと300円渡され、おつりでジュースを飲んでいいですと執務室から叩き出された…
「あのヤロウ、俺はカーちゃんの奴隷かっーの」
まったくあの寒色系駆逐艦が、俺を一体誰だと思ってやがるんだ、だいたいなんだ白と青って、そーゆートコもムカつくんだよ、あの青髪ロング子は………ん?
「……右よし!左……よし!」
廊下の曲がり角に、なんかデカいのを持ったチビが曲がり角の向こう側を窺うように見ながら立っていた、誰だっけアイツ?なんか見覚えがあるような、ないような…まぁいいや、提督として気さくに挨拶ぐらいしとくか
「よーう!そこのシビスケェ!ハッピーかーい?」
「誰がチビよ!!って、しまっ………なんだ、提督か」
「なんだとはなんだ、だいたい誰だオマエ?敵か?」
「神風よ!!」
デカい棒みたいな物を持ち、キィーキィーと喚くのはたしかにアレだ、そう、アレ、神風クン、長州派維新志士の人斬りみたいな子でルックスもイケメンだ
「カミ……?あぁ、あの有名な神風クンか」
「え?有名?ホントに?」
魚雷磨きのバイトでは右に出る者はいない驚きと感動の鏡面仕上げを創り出すまさに魚雷磨き界のレジェンドと言っていいだろう
「いやぁ〜…そっかそっかぁ〜、やっぱ有名になっちゃうか〜、だって我ながら可愛いんじゃないかな〜って思える容姿だし、やっぱオーラは隠しきれないって言うかぁ〜」
何が隠しきれないオーラだよこのチビ、隠しきれてないのは人斬りの過去なのだよ
「で?その神風クンはこんなトコでナニやっとんのかね?」
「え?あ、いや…」
神風クンは手にした妙にデカい包みを背中に隠そうとしたが、いかんせん包みがデカすぎてナニ一つ隠せていない
「だいたいなんだその鈍器みたいなのは?アレか?丸太か?」
「なんで丸太なのよ!」
長女のくせに煽り耐性ゼロの神風クンは手にした丸太のような包みを俺に打ちつけて来たので、とりあえず右手でそれガードした
「ほぉ…これはいい丸太だな」
「だから丸太じゃないわよ!離しなさいよ、バカ!」
「バカじゃない、提督だ、だいたいキサマ、なんだその口の利き方は!立て、修正してやる」
「うっ……ま、まぁ、口の利き方に関しては謝るわ、ごめんなさい」
煽り耐性ゼロだが素直に頭を下げられる子らしい神風クンは素直に頭を下げてごめんなさいと謝った、なるほど、なかなか素直で良い子じゃないかね、提督はそーゆー素直な点を評価するのだよ………しかし
「ダメだ」
「なんでよ!?謝ったじゃない!」
「誠意が感じられんな」
「せ…誠意?お、お金なら………ないわよ」
誠意=金か、なるほど…さすがは神風姉妹の長女、妹達を食べさせる為に魚雷磨き、芋の皮剥き、お風呂掃除から洗濯まで、とにかく日がな一日忙しく働く女給さんのようにハードな仕事をこなしているだけはある
「金など不要だ、口を開けなさい」
「は?」
俺は手にしていたビニール袋から黒光りする棒を取りだし、それを神風クンのブチこんだ
「もがぁ!!?」
「どうかね?九三式酸素エクレアの味は?ほら、もっと美味しそうにしゃぶりなさい」
「ちょ!も……ぢ!甘…っ!んんん!?」
普段から倹約家で、食事は麦飯や炒った豆などが中心と聞く神風クンに俺からのビッグボーナスなのだよ、きっとアレだろう、以前、デカリボンの妹にまだ鎖国してんのかよーとかディスられてたぐらい文明開化してない子だ、乗せてやるよ!九三式酸素エクレアって名前のKUROFUNEに!
しかし……わりとクリーム多いなコレ…ちょっと乱暴に持ったらハミ出そうだな
「もががががが!」
「こぼすなよ…っ!全部舐めとれ、丁寧にな」
「うぅぅ……げほっ!うぇぇ……甘ぃぃぃ!でも…美味しぃぃぃ」
良かった良かった、神風クンは初めて食べたのであろうエクレアに、なんだコレ?甘いぞ!くそっ!なんて甘さだ!と感動に身震いし、ちょっとハミ出て頰に付いてしまったクリームをペロペロと舐めて恍惚な表情をしている、まったく…良い事をした後は気分がいいな!
「クッズィッスィズ!スリラー!スリラーっナイ!」
「アハッハッハ、姉貴は本当に音痴だなぁ、耳が腐りそうだよ」
「ハァ!?松風ェ!?アンタ喧嘩売ってんの!?」
良い事をした後は思わず鼻歌でも歌ってしまいそうに気分が良いと思っていると、神風姉妹の次女と四女がアホな話をしながら廊下の先から歩いて来た
「よぉ、シャバ僧ども」
「誰がシャバ僧よ!」
神風姉妹の次女、デカリボンこと朝風、姉妹一の文明開化通らしく、洋食や洋楽に興味津々丸らしい
「アハッハッハ、たしかに姉貴はシャバ僧さ!」
神風姉妹の四女、ヅカ風こと松風クン、一見するとチ●ポついてそうなハンサムボーイだが、チ●ポはついてない
「そもそも提督、こんなトコでナニやって…」
「あ、姉貴ィィィ!!」
「なによ!!いきなり大声出さないでよ!殴られたいの!?」
朝風は松風の胸ぐらを掴んだが、松風があ…あれを見ろと言わんばかり指差していたので、ナニよとか言いながらこっちを見た
「ヒイイィィィ!!か…神風姉ェ!?」
「や、ヤバいよ…ヤバいよ姉貴」ガクガク
「か…神風姉ェ………いや、様子がおかしいわね、どうしたの!?神風姉ェ!」
朝風は未だ恍惚から抜け出せない神風の両肩を掴みガックンガックンと揺らした
「て……提督からぁ〜…黒くて、甘い棒をぉ〜口に入れられてぇ〜……中から、白くて…?あれ?黒かったかな…?なんか濃くて、喉にからまるのが〜…」
「な、なんですってー!?」
「それは本当なのか神風姉っ!」
「嘘でしょ神風姉ェ!!開国しちゃったの!?まさかの硬度10並のカタさを持つ神風姉ェが開国しちゃったの!?」
長女をガックンガックンと揺らす次女はそれは本当なのか!?オマエの文明はホントに開化してしまったのか!大正浪漫どころかオマエは一気にトレンディ高度成長期に行ってしまったのかー!とか言いながらガックンガックン揺らしていた
「な…なんてこと!なんてこと!」ぶるぶる
「こ、このケダモノ!まさかよりにもよって神風姉に獣欲をブチ撒けるとは思ってなかったよ!これで普段から口うるさい神風姉も少しはおとなしくなってくれるコトを期待するよ!」
「ナニ言ってんだオマエら?俺がオマエらみたいなクソチビのアホガキなんぞにコーフンするワケないだろーが」
「じゃあ!あの神風姉ェはナニ!?」
俺はとりあえずナニやら勘違いしているらしい朝風と松風に、懇切丁寧にここまでの流れを説明してやった、おやつにでも食うかと買ってみたエクレアを神風クンに与え、神風クンはそのあまりの美味さに、今やその心は此処にあらず、きっとその心は今、マハラジャで踊りまくっているのだろうと…
「まぎらわしいわ!」
「まったくだよ!」
「やかましいわい、っーかおませさんか、オマエらは、ったく…どっからそんないらん知識を…」
やはりインターネッツか!インターネッツが若年層への性風紀に深刻な乱れを助長させているのかッ!
「まぁいいわ………で?神風姉ェの横にあるそのデカいのナニ?丸太?」
「知らねーよ、丸太なんじゃねーの?」
「そう言えば神風姉、こないだ僕ら殴るのにビンタじゃ足りないわねとか怖いコト言ってたね…」
「マジ?ちょ…松風、怖いコト言わないでよ」
この2人、長女から日常的にビンタされるぐらいの落ち度にまみれているのか…
「な、何が丸太よ!そんなモンにビビる朝風さんじゃないですよーだ!」
「でも姉貴、こないだ部屋で神風姉から大和撫子がスリラースリラーうるせーとか言われてビンタされてたし…」
「あれはまぁ…アレよ、神風姉にも洋楽の良さをわかって貰おうと…」
ちなみに、三女の縦ロールからも音痴とディスられ、五女からも不快音とディスられたらしい
「まぁ音痴だかはどうでもいい、とりあえず長女を部屋に連れて帰ってやれよ、その丸太も」
「ハァ!?なんで私が!?」
「いいよ姉貴、僕が丸太を持つから姉貴は神風姉を…」
こうして、神風クンと謎の丸太は朝風&松風のバカコンビに背負われて去って行った…
よし!喫煙所に行ってタバコ吸って帰るか!
ーーー
…後日、神風の持っていた謎の丸太は意外にもチョコレートだったらしく、神風はいつも粗食に付き合わせている姉妹に美味いモンを食わせてやりたいとコツコツと貯金し、遂に購入したのだが、いざ買って持って行くとなると恥ずかしくなりどうしたものかと攻めあぐねていたところだったそうだ…
丸太チョコレートは無事に姉妹達に贈られ、今まで鬼とか言って悪かったよと次女と四女はアツい感動の涙を流し、姉妹の結束はより一層強固なものになったそうだ…
「ハァ………えくれあ食べたいなぁ〜」ボソッ…
「な、ナニ言ってんの神風姉ぇ!?」
「ヤバいよ!神風姉がヤバいよ!」
その後、神風クンはたまにボーっとして妙にニヤける時間が増えたらしいが、俺は悪くない