【登場人物】
提督(215)
未だ中二病から抜け出せずにいる大人、恥ずかしい大人とも言う
天龍(4)
深刻な中二病、オレカッコいい!と思っている背景には妹から無償の愛で天龍ちゃんカッコいいと褒め称えられてる点にある
木曾(5)
重度の中二病、言動がオラついてるキャラで通してるものの、姉ちゃん達が怖くて仕方ない末っ子
2月14日、その、素敵な日付けが俺達を行動させた!
特にやる事もなく、談話室でおしゃべりしながらお菓子を食べていた俺と天龍と木曾、誰かが何気なく点けっぱなしにしていたテレビから、今日はバレンタインデーですねーとの話題が聞こえてきたので、俺達は、よっしゃ!誰が一番チョコ貰えるか競争しよーぜ!と盛り上がり、早速各々散って、再びこの談話室に戻って来たのだが………
「…何故だ」 【提督:1】
「クッ!ありえねーぜ!」 【天龍:1】
既に談話室に戻っていた俺と天龍はそれぞれの戦果をスタイリッシュにパキりつつ、何故自信満々に出て行った結果がこれなのかと互いに机をバシバシと叩き、敗北感と言う名のビターテイストを噛み締めていた…
「おうおうおーう!シケたツラじゃねーか敗者どもー!」
そんなビターな俺達の前に、木曾のアホンダラがゲラゲラ笑いながら帰ってきた
「木曾ォ!」
「敗北者…?取り消せよ!今の言葉!」
「オイやめろ天龍!」
「でもアイツ提督をバカにしやがった…!」
「オマエもバカにされてるんだよ!」
なにコイツ自分の方が勝った気でいるんだよ、テメーも俺と同じく1つ、しかも妹からしか貰ってねーじゃん
「っーか木曾、オマエそんだけ自信満々に帰ってきたぐらいだから余程の大戦果なんだろーな?」
「フッ、オレを誰だと思ってるんだ?漆黒の衣を纏い禁断の力を手にしたダークナイト、木曾様だぜ」
木曾は懐から、計4つのチョコレートっぽい箱を取り出してテーブルの上に置いた
「4つか…」
「4つだぜ!」 【木曾:4】
「………オマエ、コレ、姉ちゃん達から貰ったろ?」
「は、ハアァ!?そ、そそそそ!そんなワケねーし!!」
ナニ自信満々に言ってんだコイツは、4つとか間違いねーだろ、っーかコレ“球磨姉ちゃんより❤︎”って思いっきりカードが刺さってるじゃねーか、完全に身内からじゃねーか
「なんだよビビらせやがって、ヘヘッ…木曾、案外シャバいじゃねーの?」
「ハアァ!?天龍!じゃ、オマエは誰から貰ったんだよ!」
「龍田」
「身内じゃねーか!!じゃ、提督は?」
「俺?五月雨」
あの野郎、執務室に行ったら、今日バレンタインらしいんでどうぞと言って執務机に置いていたが……なんだろうな、この1ミリとも込み上がらない嬉しさは
「………つまりアレだ、俺達全員、ほぼ身内からしか貰ってねーってコトか?」
「あぁ…」
「チッ!何故なんだ!」
俺、天龍、木曾、この基地では他の追従を許さないスーパーハンサムボーイズである俺達がまさかの大敗北を喫する結果になろうとは誰が予想できたであろう、俺達と言うハンサムに何が足りないと言うのか…っ!?
「いや…待てよ」
「どうした天龍?何か気付いたのか?」
天龍はハッとなったのか、唐突に何かに気付いたようにテーブルをバシッと叩いた
「何故今日俺達が基地内を歩いても誰もチョコレートを渡さなかったのか………それは誰もチョコレートを持っていなかったからだぜ!」
「な…なに?」
「それはどーゆーコトだ!天龍!」
天龍は眼帯を抑えながらユラリと立ち上がり、スタイリッシュにぐるりと回った
「俺の考えはこうだ!おそらく今日の朝、チョコレートを持っていたハズのみんなは基地内に余計な物を持ち込んではいけないって没取されちまったんだ!」
「没取………ハッ!まさか、香取ーヌか!」
「さすが木曾だ…あぁ、その通りだぜ」
「ま…まさか香取先生が」
天龍のヤツ、まさかそこに気付くとは……コイツ、かなりのキレ者!いや、やはり天才か…
「そして…おそらく香取ーヌに没取されたチョコは俺宛に溢れているハズだぜ」
「いや、それはない、たぶんこのオレだろう」
「オイオイオイ、天龍クンに木曾クンよぉ〜!オマエらが俺に勝てると思うちょるんか?」
オイオイオイ、だとすればこの勝負…まずは香取先生のところに行って本日の没取物を改めさせて頂かねぇと決着が付きそうにないな、まぁ、勝つのは俺だが…
「いや、勝つのはこの俺、天龍様だ!」
「フッ…いや、勝つのはオレ、この木曾だ!」
「よっしゃ!とりあえず香取先生んトコ行くぞ!香取先生んトコ!」
こうして、俺達スーパーハンサムボーイズは談話室を飛び出し、香取先生が居るであろう執務棟の教務室へと行くコトにした…
廊下を歩いている最中、通りがかりで何人かに声をかけられたが、今ちょっと急いでるんで、すいませんプライベートなんで、とスーパーハンサム特有の断りを入れて俺達は廊下を練り歩いた…
そして、俺達は香取先生が居るであろう教務室へとやって来た…
「失礼します!」
「邪魔するぜぇー!」
「お邪魔する!」
教務室の扉を開けると、自分のデスクで忙しそうにペンを走らせる香取先生がそこに居た、まったく、デスクワークする姿もエレガントでいらっしゃる
「ん…?あら、提督……と、天龍さんと木曾さん、何か御用ですか?」
「何か御用じゃねーぜ!チョコあるんだろ?出しな!」
「言っとくがオレ達はマジだぜ!」
天龍と木曾はチョコ出せ、チョコと!香取先生に詰め寄り、香取先生はナニ言ってんだコイツら?みたいな顔をしていたが、とりあえず2人にビンタを浴びせた
ビタンッ!!(ビンタ)
「テンシューッ!!」
「キソッ!!」
「………とりあえず、話がまったく見えないのですが?」
香取先生はエレガントに頰に手を添え、これはいったい何事ですかとエレガントに俺に問うてきたので、俺は冷静かつ的確に香取先生に本日の没取物はありませんかと尋ねた…
「没取物ですか………あぁ、ありますね、ほら、コレ」
香取先生は机の横に置いた小箱から、べ●ブレードを取り出した
「海防艦の子から没取しました」
…たぶんサドさまだろう、そういやさっき、通りがかりの廊下でサドさまが“わ゛だしのずぶりがんれぐいえむ゛ー!”とかガン泣きしてた気がするが…
「…そうですか」
「夕方には返しますよ?あ、なんでしたら提督から返して頂いても…」
「いえ、香取先生からの方が良いでしょう」
「そうでしょうか…?まぁ、提督がそう仰るなら」
将来有望な悪のエリートである佐渡さまも、香取先生にはかなわないらしい、まったく…香取先生の教育姿勢には感動すら覚えるのだよ
「ま…待てよ香取ーヌ!」
「チョコは…?オレ達のチョコは…?」
「はい?チョコ…?」
香取先生の熱血指導ビンタから立ち上がった天龍と木曾はチョコくれよチョコォ〜とまるで戦後の日本を思わせる風態で香取先生に縋った
「あぁ……そう言えば今日はバレンタインでしたね、あらあら、私としたコトが、提督、せっかくわざわざ教務室まで足を運んで頂いたのに御用意していないなんて…」
「あ、いえ…」
「今日の仕事が終わったらすぐに買ってきますので…」
あくまでも仕事を優先する、素晴らしいお考えです先生、まったく…香取先生こそ教育者の鑑だと俺は改めて確認させて貰ったのだよ
「ねーのかよ!チョコ!オレのは!?」
「あるんだろ!?俺宛のヤツあるんだろ!?」
「あの……提督、この2人はいったい…?」
「気にしないでやって下さい、コイツら糖分が足りないだけなんで」
次回こそハッキリ言って自信作、たぶん