【登場人物】
足柄(つよいおとこ)
妙高姉妹の三女にして伝説の狼、足柄にとって拳とは…
拳>戦車>>>車>>>バイク の格付けであり、魂のこもった拳ならだいたいなんでも打ち抜ける、魂さえこもればダンクでビルも破壊する
大淀(まるで知性を感じない)
足柄のマジダチ、見た目だけはインテリ
足柄との付き合いは長く、昔はお泊まり会で好きな子の名前を言いっこしたぐらいの仲
「うっお―っ!! くっあ―っ!! ざけんな―っ!」
「オイ!足柄サンがまた荒れてんべ!」
「超怖えー」
妙高型重巡の三番艦、足柄、通称ワイルドウルフ、かつて南街商店街を仕切る闇の王と裏格闘技界の帝王を倒し、伝説の狼と呼ばれた何よりも自由を愛する女の中の男として今なお無邪気な駆逐艦のキッズ達からは憧れの対象とされている…
「どうしたァ?足柄ァ…」
荒れて椅子とテーブルに当たり散らす、そんな近寄り難い足柄に平然と近寄るインテリ眼鏡系軽巡、大淀
足柄とは小学校の教室で教科書の見せっこもしたコトがあるぐらい長い付き合いのベスト・フレンド…
「まぁ落ち着けよ足柄よォ~…ここはキッズの遊び場、談話室だぜ?見ろ、キッズ達がマリカーできねぇじゃねぇよォ~」
憩いのスペース、談話室…
広めのフローリング、寝転がれる畳敷き、提督や明石が暇つぶしに買って読んだコンビニコミック、そしてスーパーファミ●ン内蔵テレビ、艦種を問わずに誰しも楽しめるスペースである談話室で、睦月型のキッズ達は提督から借りたマ●オカートでハシャいでいたのだが、荒れ狂う狼にビビり部屋の隅でガタガタと震えていた
「フッ…私としたコトが」
足柄はポケットから取り出したBURBE●RYの財布から紙幣を抜き、一番近くにいた文月にスタイリッシュに投げ渡した
「悪かったなオマエらーッ!コイツでナニか美味いモンでも買いなーッ!」
「ヒュー!さすが足柄サンー!」
「デキるオンナのCharismaハンパねー!」
キッズ達は足柄に頭を下げ、キャッキャとハシャぎながら談話室から去って行った
「………で?今日はなんで荒れてんだオメー?」
「あ゛ー?」
大淀はテキトーな椅子に座り、テーブルに置いてあったティーバッグを開けてカップに入れ、スタイリッシュにポットのお湯をカップに注いだ
「まぁ…アレよ、アレ…」
「ハァ…?アレ?あ〜…アレね、アレ、うん、アレ」
大淀と足柄は互いにテーブルに置いてあったチ●コパイの小袋を開けスタイリッシュに口に放り込んだ
「で?ナニ?」
「ナニ?じゃねーよ、なにアレとか言ってワカったフリしてんだテメーは、1mmもワカってねーじゃん、あ?そのメガネは度入ってんのか?あ?」
「入ってんよ、もうマジキツキツのがよォ」
「ま、いいや………まぁ、アレよ、春休みってワケで、キヨシとアサシとカスミ連れてデパート行ったワケよ」
「オマエさぁ、え?オマエさぁ?え?足柄さぁ〜…え?なんで私に声かけねーの?ナニ?礼号組にはメガネ枠いらねーの?え?ナニ?舐めてんの?もう私プッツンするわ、マジプッツンだわ、ク●ニさせっぞコラ?」
「舐めてねーよ、テメーのチーズ臭いアソコとかマジ吐き気がするわ」
「はいキレた、マジプッツンしたわー…誰のアソコがチーズくせーだとコラァ?このサゲマ………あ、悪い、アゲサゲどころか新品未開封だったわ、っーかまだ工場から出荷すらされてなかったわ」
「ア゛ァ!?誰が新品未開封だとコラァ!?え?ナニ?この足柄をディスってんの?あ?コラ?オイ、メガネコラ、立てよ、タイマンだ、オモテ出ろやクサマンティスがァ!」
「誰がクサマンティスじゃコラァ!!上等だコラァ!吐いたツバ呑まんとけよォ!」
足柄と大淀の間にハゲしいメンチビームの火花が飛び散り、空気中を漂う微粒子に反応してスパーク光を放ち、お互いに思わずイタズラなKISSをしてしまいかねない距離まで顔を近づけ…
『『あ』』
…唇と唇がフレンチな接触事故を起こし、お互いになんか気まずくなり、まぁ…今日はカンベンしてやんよと椅子に座り直した
「…で?ナニ?デパート行ったワケ?」
「行ったワケよ」
足柄曰く、この春に進学や就職、転勤や引越しなどで新生活を送る人達向けに様々なニューアイテムが並んでいるらしく、足柄としては春物のニューアイテムの物色、ついでに、礼号キッズ達も春休みにちょいと小粋なお店で遊んだら満足するだろとの考えだった…
「で?ナンか買った?」
「買った買った、バッグとレースアップシューズ」
「マジ?マジで?良さげ?マジ良さげ?見して、あとで見して!」
デパートに行った足柄と礼号キッズ達、とりあえず足柄は自分の買い物をするためにキッズ達に千円ずつ手渡し、それでゲームでもやってきなさいとゲームコーナーへと解き放ち、自分は下の階でオシャレにショッピングを楽しむいつもの流れだったワケだが…
「でだ、買い物したし、ガキども回収して上のレストランでメシでも食って帰ろうと思ってゲームコーナー行ったワケよ」
「ほぉ?それで?」
「でよ、ゲームコーナー行ったらなんか知らねーけどえらい人が多いワケよ」
「ふ〜ん、なんかやってたの?」
「なんかアレな、アレ、最近流行りのVRゲームがどーのこーので体験イベントみたいなのやってんのな」
「ふ〜ん、VRねぇ〜」
大淀はVRとかVRVマスターしか知らねーわと言ってポットのお湯を再びカップに注いで二番出汁ティーを口に含み、マッズ…と呟いた
「で、案の定、キヨシとアサシが私を見るなりやりてーやりてーゴネまくり」
「ま、案のJOEだわな」
「で、それ見てカスミが“VRに興味があるなんてアナタたちってホント最低のクズね!”って言ってんのな」
「相変わらずカスミ、口悪りぃーのな、でもそこがチャーミング」
「あぁ、マジチャーミング」
大淀はバチコーンとウィンクし、足柄はフッ…と笑い、互いに手を握り合った
「で、やったワケよ、VR体験」
「やったワケか、VR体験」
足柄曰く、イベント用に設置されたVRマシーンは、ヘッドマウントディスプレイを被ると、まるで高層ビルの屋上からせり出した鉄骨を歩く的な体験ができるゲームらしく、現実世界的には平均台のようなものを歩くのだが、VR効果でものスゴい高い所に立っているように感じるらしい…
「ふ〜ん、最近のゲームはスゲーのな、で?そのゲームナニ?渡りきったら黒服が拍手してくれんの?」
「さぁ?知らね」
「知らねーのかよ」
「でだ、キヨシとアサシとカスミがやってみたがいいが、まずキヨシが速攻でビビっちまって膝ガクガクしてんのな」
ちなみに、足柄はふと茶目っ気を出してプレイ前に、鉄骨には電流が流れてるから触ったらビリっとするとか言ってしまったせいでキヨシは足場に触るコトもできずにガクガクとバランスをとっていた…
「で、アサシがキヨシに前に進め…っ!進め…っ!って言ってんの、半泣きで」
「アサシもビビってんじゃん」
「で、キヨシとアサシがイヤだー!死にたくないー!死にたくなーい!とか言ってマジ迫真」
「ふ〜ん、で?カスミは?」
「カスミ?あぁ…カスミね、カスミはねぇ〜………落ちたわ」
「落ちたのかよっ!?いつ!?」
キヨシとアサシが前に進めない…っ!そして自分も前に進めない!そんなカスミはキヨシとアサシに心配をかけない為に落ちた!あの怖がりでツンデレなカスミが悲鳴一つ上げずに…っ!
「キヨシとアサシとしては後ろに居たはずのカスミが居ないってわかってマジ絶叫、死んだー!カスミが死んだー!ってマジ大絶叫」
「あー…」
「で、2人して助けてー!かあさーん!かあさーん!ってルーク・ス●イウォーカーばりに助けを求めてんの、係員さんも周りの客もマジドン引き」
「あー…そりゃ引くわー」
「で、係員さんが気を利かせて“あの…お母さん、ちょっとアレなんで、ここで中断しますね”って苦笑いしてくれたワケよ」
「あー…まぁ、そーゆーのもあるわな」
「………で、VR体験終わって死にたくねぇ…!死にたくねぇよ!とかグズグズ言ってたガキども連れてレストラン行ったらホットケーキばっかアホみたいに注文しやがった」
「いいじゃんかよ、それで機嫌直ったら…」
「あのレストラン、高いうえに小せーんだよ………ってか大淀、今度はオマエ連れてけよ、マジで、コレマジで、マジだから」
「え?無理」