不健全鎮守府   作:犬魚

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初夏の人類とヤツらとの壮絶な死闘!

【登場人物】

提督(英語ならなんとか)
中佐、クズ・ゲス・カスの三重殺

秋雲(自称少年漫画家)
自称陽炎型、先日陽炎姉妹で焼肉したらしいのに呼ばれなかった

早霜(おませな駆逐艦)
夕雲型、秋雲を見るその右目はだいたい殺意を込めている


提督と初夏の大戦争 前編

「てぇへんだてぇへんだー」

 

梅雨の中休み、爽やかな晴れ間の広がるこの良き日……今日はきっとどんな素敵なコトが待っているのだろうと水先案内人脳で考えつつ執務室で今週のジャ●プを読んでいると、夕雲型のようで陽炎型のような気もするふわふわした存在、秋雲が執務室の重厚な扉を開き駆け込んできた…

 

「うるせぇよ」

 

「てぇへんなんすよ!」

 

「まぁ落ち着きたまえ、ナニがてぇへんなんだ?あ?」

 

俺は先日、夕張のアホから貰った“気持ちを落ち着かせ脳をリラックスするスプレー”を秋雲の顔にBUKKAKEてやると秋雲はアヘェ…とか言いながら両膝をついた

 

「…や、ヤツらが……っ!ヤツらが来たんすよ!」

 

「あ?誰だよヤツらって?アレか?深海怒涛の基地強襲か?溢れる知性で返り討ちにしてやんよ」

 

「違うっすよ!カッパっすよ!カッパのヤツらがまた現れたんすよ!」

 

「………はぁ?カッパだぁ?ナニ言ってんだオマエ、イカレているのか?だいたいオマエ、アレだよアレ、カッパとか実在するワケねーだろーが、アレだよ、ほらアレ、どうせカメとかカワウソとかだろ?」

 

「いやいやいや、マジなんすよ!ってか前にホンモノのカッパが出没たじゃねーっすか!」

 

「あったか?そんなの」

 

「あったっすよ!お花見の場所取りで丁度良さげな場所に居て相撲とかしたっすよ!」

 

「あ~…」

 

あったな、そういやそんなコトが………あんトキはたしか長門とグラペンのバカどもが駆逐艦のアホガキどもにいいトコ見せようとしてカッパに返り討ちに合い、香取先生がオレの生徒に手を出すなーッ!で鬼の手グシャーッ!みたいに撃退してくれたんだっけか?たしか…

 

「それにカッパのヤツら、前回よりパワーアップしてるんすよ!そりゃもうメチャパワーアップしてるっすよ!」

 

「はぁ?カッパがパワーアップとかまったく意味がわからんのだが…」

 

頭の皿が強化セラミック製にでもなったのか?

 

「とりあえず来てくださいっす!見たらわかるっすよ!百聞は一時の恥っすよ!」

 

「一見にしかずな、一見に」

 

とりあえず、秋雲のアホにマジヤベーんすよ!マジヤベーんすよ!と腕を引かれるのも鬱陶しいので、俺は再びやって来たらしいカッパを見に行く事にした…

 

◆◆◆

 

基地の外れにある小川…

 

『ぎょうじ』

 

『ぎょうぎょうじ』

 

全体的なカラーリングは上から下まで緑、背中に甲羅を背負い、口元はクチバシ的な感じでトンガリ、頭に皿的なナニかを乗せた奇妙な生命体………これまさに“河童”の特徴に溢れているのだが、以前、この小川に現れたカッパとは決定的に違うものがある

 

マッチョである

 

『ぎょうじ』

 

『ぎょうじ』

 

そう、マッチョである

 

カッパと言うには些か体格もデカく筋肉質で、見た目だけでコイツは強靭(つよ)いと確信するには十分すぎる体躯ッッッ!!そして、そのカッパ的なナニかが数匹、小川の側でたむしろ、よくわからないカッパ言語で会話をしていた…

 

「オイオイオイ、なんだいありゃ?」

 

「カッパっすよ、カッパ」

 

「いやいやいや、アレがカッパとかないだろ?ほら、前に見たヤツはもっとガリガリな感じだったじゃん?」

 

「たぶんアレっすよ、アレ、進化とかしたんじゃねーっすか?」

 

「進化か…」

 

まさかこの短期間の間にこれほどの劇的な進化を遂げるとは提督も予想だにしなかったのだよ、もはやアレはカッパではない、現代の汚れた川と言う過酷環境で生きる為に進化した生命体“川フォーマー”と言っていいだろう…

 

『ぎょうじ』

 

そんな川フォーマー達を草むらの陰から見ていた俺と秋雲だったが、川フォーマーと目が合ってしまった

 

「あ、やべ」

 

「こっち来るっすよ!こっちに!」

 

「待て待て、落ち着きたまえ秋雲よ、相手は進化したカッパ、川フォーマー……見たところ、先ほども仲間同士で会話的なものをしていたぐらいだ、きっと対話する事も可能だろう」

 

「なるほど、さすが提督っす、この秋雲、メチャ感動したっす」

 

「ハッハッハ誉めるなよ、弱く見えるぞ」

 

そして、そんな俺達のところに一匹の川フォーマーがやって来てクチバシを開いた…

 

『ぎょうじ』

 

「テイトクテイトク、コイツなんて言ってるんすか?」ヒソヒソ

 

「たぶんアレだよアレ、こんにちは的なアレだよ、今のは」ヒソヒソ

 

「なるほどー、さすが提督、略してさす提っす!」ヒソヒソ

 

…正直、行司だか行事だかに聞こえないが、たぶん大丈夫だろ

 

『ぎょうぎょうぎょうぎょうじぎょうじ』

 

「なるほど…」

 

『ぎょうじぎょうじ』

 

「スゴいな…」

 

『ぎょうぎょうぎょうじ』

 

「…あぁ、君は悪くない」

 

川フォーマー語を聞きつつ、とりあえず当たり障りのない相槌を打ってうんうんと首を振ってみるが………うん、まるでわからん、ナニ言ってんだこの生物

 

「さすがテイトクっす、川フォーマー語ペラペラっすね」

 

「秋雲」

 

「なんすか?」

 

「ちょっとオマエ、寮に行ってキタローくん呼んで来い、キタローくんを」

 

「キタロー…?あぁ、早霜っすか?あのネクラっ子呼んでどうするんすか?」

 

「ちょっとキタローくんにコイツらがナニ言ってるのか通訳して貰おうと思ってな」

 

「わかってなかったんすか!?」

 

「わかるワケねーだろーが!!ぎょうじ!にしか聞こえねーよ!」

 

とりあえずはアレだ、この川フォーマー達は俺達にコミュニケーションをとる気はあるらしい、そしてコイツらは所詮、進化したとは言えカッパ、つまりは妖怪的なナニかだ………なら、こちらも対・妖怪的なモノのプロフェッショナルを呼び寄せる必要があるだろう

 

「ってか、なんで早霜?」

 

「キタローくんなら妖怪に強いだろ、たぶん」

 

「なるほど、よくわかんねーけどわかったっす」

 

‐‐‐

 

「…早霜、参りました」ボソボソ

 

「待っていたのだよ、よく来てくれたね」

 

「いえ…」ボソボソ

 

秋雲に呼びに行かせて15分、意外とスピーディーかつ迅速に戻ってきた秋雲と、対・妖怪のスペシャリスト、キタローくん…

 

「ときにキタローくんは川フォーマー語とか得意かね?」

 

「川フォーマー…?」ボソボソ

 

「アレなのだよ」

 

俺はキタローくんの肩に左手を置き、右手で小川のほとりに居る川フォーマーを指差した

 

「………カッパですか?」ボソボソ

 

「たぶん進化したカッパだろう、で?どうかね?イケそうかね?」

 

「…やってみます」ボソボソ

 

そう言ってキタローくん川フォーマーのところへ行くと、ぎょうじぎょうじと話す川フォーマー達の話を聞いて頷いていた…

 

「早霜にわかるんすかね?」

 

「大丈夫だろ、彼女ならやってくれる」

 

「なんでそんな早霜に対してアツい信頼あるんすか?」

 

「だってオマエ、アレだよアレ、ほら、キタローくんって言ったらアレだよ、妖怪事にはめっぽう強そうっーか…」

 

「それゲゲゲの人であって早霜はただのネクラっすよ、あ、帰って来たっす」

 

秋雲の冷静で的確なツッコミを聞かなかったコトにしつつ、君は悪くないと相槌を打っていると、キタローくんが川フォーマー達との来るべき対話を終えて戻ってきた

 

「どうだったかね?」

 

「はい、彼ら……単純に“相撲”がしたいそうです」ボソボソ

 

「SUMOU…ッ!!」

 

「はい、相撲です」ボソボソ

 

相撲……だと?たしかに、カッパはキュウリと相撲と尻子玉が大好きなよくわからない生物ッ!そういや前回も相撲対決をして長門とグラペンが尻子玉ファックされ悶絶していたな…

 

「彼らはただ純粋に、私達との相撲を楽しみたいと考え、今回はカッパの中でも選りすぐりの相撲上手、力士型川フォーマーを集めたそうです」

 

「なるほど、力士型川フォーマーか…」

 

しかし純粋にSUMOUを楽しみたいか……なるほど、誰が強くて誰が弱いか、力と力の真っ向勝負、カッパと言うものもなかなかどうしてピュアな生物なのかしれないな…

 

そんなカッパ改め川フォーマーズからの宣戦布告の旨を聞いた俺がどうしたものかと頭を捻っていると…

 

「フッ、話は聞かせて貰ったぞ同志提督」

 

「フッ、私達に声をかけないとは……水臭いぞ、同志Admiral」

 

「お、オマエ達はーッ!!」」

 

どうやらあっちの草むらの陰でスタンバっていたらしいバカ二人……ステゴロならイチバンでしょうと誰もが噂する最強の6‐Pack!大戦艦長門…っ!そして、魔界生まれの上級を超えた王族級魔族と噂されている痛快空母グラーフ・ツェッペリン…っ!

 

「フッ、以前は不覚をとったがこの長門、負けっぱなしは性に合わんのでな」

 

「フッこのグラーフ・ツェッペリンも同様だ、同志Admiral」

 

「オマエ達…」

 

前回、駆逐艦のキッズ達からちやほやされたいが為に力士型ですらないフツーのカッパの前に無残にも敗北し尻子玉をブチ抜かれ、キッズ達の人気と称賛は香取先生にも持っていかれたダメコンビだが……この瞳の輝き、フッ、どうやら今回は一味違うらしい

 

「いいだろう、この戦い、オマエ達の力を借りるぞ」

 

「フッ、任せておけ」

 

「フッ、ヤツらクソカッパーどもに地球生物の力を見せてやろう」

 

とりあえず、長門とグラペンで二敗するとしてだ、あと三人は必ず勝てるヤツを呼ばないとな…

 

「…提督、お困りのようでしたら私が…」ボソボソ

 

「キタローくん………いや、キタローくん、君の心意気は嬉しいが相手はあのマッチョ……力士型川フォーマーだ、君のように華奢で繊細な子がぶちかましでも喰らったらケガしてしまうかもしれない、それを提督としても見過ごすワケにはいかないのだよ」

 

あのバカども違ってキタローくんはまだ子供だ、彼女にはまだ若さと未来がある、そして、天才漫画家としての圧倒的才能も、そんな彼女にこんなしょーもないコトでケガをさせるワケにはいかない

 

「わかったかね?キタローくん」

 

「はい、提督がそう仰るのなら…」ボソボソ

 

俺は努めて紳士的にキタローくんの頭に手を置き何も心配はいらないのだよと安心を大安売りしてやった、たまにはこうして良い上司ぶるコトで下の者との円滑なコミニュケーションをとる事を忘れない提督の鑑だな!

 

「よし、ではキタローくん、川フォーマーどもに伝えてくれ、明日のこの時間!我々は貴様らを撃滅(たお)す最高の戦力を連れてくる!人類を舐めるんじゃねぇ!とな…」

 

「わかりました」ボソボソ

 

 

こうして、初夏を迎えつつあるこの季節に、俺達人類と川フォーマー達との壮絶な戦いが幕を上げた…




次回は後編

ぎょうじ

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