不健全鎮守府   作:犬魚

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ぎょうじが行司で行事

【登場人物】

大鳳(カ●リーメイトの謎)
ナイスガッツ体育会系空母、ラビリンスの怪物

曙(第七駆のヤンチャボーイ)
口癖はクソ、野良犬にクソ丸と名前を付けて菓子パンを与えるクソ優しい一面もある

時津風(状態異常)
長門曰く、他人には決して懐かない犬、主人の代わりに攻撃したり身代わりに防御したりするらしい

九千坊河童連合
カッパの集団、なんと兵隊は九千もいるらしい


提督と初夏の大戦争 後編

人類と川フォーマーの熱戦!激戦!超激戦が繰り広げられる大SUMOU対決、長門とグラペンの安定の黒星発進からいきなり追い詰められた我々は絶対に負ける事の許されない大事な大事な第三戦に、地球一のタフなエア・キャリアーが来てくれたッッッ!!

 

「巨人・大鳳・卵焼きってヤツですね、初春様」

 

「まぁ、字はちと違うがのぉ」

 

「しかしコレは読めませんねぇ、提督の采配は相変わらず理解に苦しみます、この崖っぷちの状況に起死回生の作戦でもあるのでしょうか?」

 

「妾にもわからぬ、ま、そう願いたいところじゃな」

 

ーーー

 

『ぎょうじぎょうぎょう』

 

DOHYOと言う名の丸いリングに上がる強靭な力士型川フォーマーとどちらかと言えば小兵の部類に入る装甲空母、大鳳……当基地に配属された時、新しい駆逐艦の人と勘違いされ、駆逐艦寮に部屋を充てがわれた辛い過去もありクサって荒れていた時期もあったが、ナイスガッツ体育会系軽巡、長良主将からのアツいナイスガッツビンタを受けて更生し、今やナイスガッツ陸上部には欠かせないナイスガッツとなっている…!

 

「大鳳ォー!ファイオー!ファイオー!ファイオー!」

 

「T A I H O U !TAIHOU!ゴールデン!ゴールデン!」

 

ナイスガッツ陸上部達のアツいナイスガッツ声援をその身に受け、DOHYOにリングインした大鳳は力士型川フォーマーを見上げる形で一瞥し、力士型川フォーマーもまた、この小兵がただのナイスガッツではない事を本能で察したのか、頭の皿をキュキュッと拭いて気合を入れた

 

「大鳳でるわよ!」

 

『ぎょうじ!』

 

NOKKOTA!のゴングが鳴り、まるで子供とゴリラほどの体格差がある大鳳と力士型川フォーマーがハゲしくぶつかった!!

 

『ぎょう!?』

 

「ぐ…ぐぅぅぅ!」

 

『ぎょ…ぎょうじ、ぎょうじ!』

 

「くっ…!!くぅぅ!」

 

倍以上の体格差のある力士型川フォーマーのぶちかましを受けてなお、大鳳は踏みとどまっているッ!!何故この小柄な生物は自分のぶちかましを受けてひるまない!動かない!その、あまりにも不自然で不気味な現象が川フォーマーを戦慄させ、混乱させたッ!!

 

「これはいったいどうしたコトだァァァァァ!!あの怪物のぶちかましを正面から受けた大鳳さん!まったく動かなーい!そのどっしり感たるや、まるで大木だァァァァァ!」

 

「ほぉ……これは、ほぉ…」

 

「初春様、解説の初春様!これは一体なんなのでしょう!」

 

「これはおそらく………ミオスタチン関連筋肉肥大じゃな」

 

「………はぁ?え?ミオタスキンニク…?」

 

「ミオスタチン関連筋肉肥大じゃ」

 

DGF-8ミオスタチン、筋肉の成長抑制因子…

この遺伝子の突然変異と先天性の優れた筋骨により見た目は駆逐艦の方ですか?と問われるほど小柄な体格を持つ大鳳は、見た目とは裏腹にその重量は長門や武蔵にすら匹敵するッッ!!

 

異常な筋肉量を賦与するミオスタチン関連筋肉肥大により、人は人を超え、人智を超えた力を発揮したその姿たるやまさしく、超人!!

 

「かつての歴史の逸話にいくつか残る超人伝説の正体もこのミオスタチン関連筋肉肥大だったとも言われておる…」

 

「なるほど~…」

 

「しかしこのミオスタチン関連筋肉肥大は超人遺伝子であると同時に問題点もある、まぁ…わかりやすくざっくりと言えばじゃが、多量の筋肉に対して常に大量のカロリーを摂取せぬばならぬ、つまりアレじゃ、まぁ…すごく腹が減るワケじゃな」

 

川フォーマーは混乱していた…

 

こんな生物がいるのか…っ!?この体躯に合わない強靭無比な力!圧倒的に体格で勝る自分が、力で圧倒されている理不尽…!

 

『ぎょう…ぎょう!』

 

押されているッッ!!かつてない力で!!押される…!そしてDOHYOを割ったッッ!!

 

「電車道!電車道だァァァァァ!!大鳳まさかの電車道で川フォーマーを寄りきったァァァァァ!!」

 

「うむ、実に見事!」

 

「なんとあの圧倒的巨躯を持つ川フォーマーを力で制しました!なんと言うコトでしょう!観客席からは割れんばかりの歓声と屁コキ空母コールです!誰がこの屁コキ空母の勝利を予想していたでしょう!まさかの大番狂わせです!」

 

見事、川フォーマーから大事な大事な一勝をもぎ取った大鳳は観客席から飛び降りてきたナイスガッツ長良主将からカ●リーメイトを、そしてナイスガッツ女子マネージャー速吸クンからスポーツドリンクを渡され、アツいナイスガッツよくやったと背中をバシバシ叩かれている…

 

「やりましたよ提督!約束!ちゃんと守ってくださいよ!」

 

「あ、あぁ…任せておくのだよ」

 

勝ったらナイスガッツ陸上部まとめて焼き肉を奢ってやると約束したが……まぁ、食い放題でいいだろう、大鳳はカ●リーメイトをボリボリと食べながら腹減ってしょうがないですよ!と言い、長良主将からコイツぅ!とアツいナイスガッツ背中バシバシを受けてハシャいでいた…

 

◆◆◆

 

「さぁー!ここで連勝して次に望みを繋げたい人類軍!続いての登場は綾波姉妹!反抗期まっさかりの気難しくて繊細なお年頃!曙ちゃんの登場だーッ!」

 

「曙か…」

 

「取組前のインタビューでは“相撲は踊りじゃないわ!格闘技よ!”と気合十分なコメントをしてくれた曙ちゃんですがこれは期待できますねー!」

 

「うむ、まぁ…あやつが相撲上手かどうかは知らぬが期待はさせて貰おうかのぉ」

 

‐‐‐

 

「よし!勝ったら焼き肉食い放題だ!気合い入れていけよ!気合い!」

 

「うっさい!触んな!」

 

俺は今から戦場へと上がる曙に気合いとリラックスを与えようと尻をバシバシ叩き提督からのアツい激励を送った

 

「言われなくてもやったるわよ!言っとくけど焼き肉は第七駆全員だからね!」

 

「安心したまえ、腹いっぱい食わせてやるのだよ………勝てればなァ?」ニマァ…

 

「…ハァ?え?ナニそれ?私が負けるとでも思ってんの?」

 

「いやいやいや、提督はモチロン、ボノボノの勝利を信じているよ?うん、モチロン信じている、キミは勝つってネ」ニマァ…

 

「………ハァ?ナニそのツラ、ナニ?信じてないの?は?ナニ?バカにしてんの?あと、私のコトをボノボノってゆーな!」

 

とりあえず、曙の闘争心とPRIDEに火を点ける事に成功した俺は笑顔で曙を送り出した…

 

『ぎょうじ』

 

「フンッ…ナニが力士型川フォーマーよ、見せてやるわ!第七駆逐隊の恐ろしさってヤツを!」

 

HAKKEYOI!のゴングが鳴り、やはり体格を活かしたぶちかましを敢行してきた川フォーマーに対し、曙の取った戦法は………猫だまし!!

 

パチンッ!!!(猫だまし)

 

『ぎょ!?』

 

完全に虚を突かれる…ッ!この、小さな小兵が小さいなりに編み出した精一杯に…ッ!巨躯を持つ川フォーマーには考えつかなかった………否、長いカッパ相撲界の歴史にもたしかにこの技は存在していた…ッ!かつてのカッパ相撲史における第七十二代横綱“残酷丸”がこの小手先の技を使い、自分よりも大きな相手に勝利を挙げていたと記録にはある…

 

「しゃあッ!」

 

『ぎょうじ!ぎょうじ!』

 

虚を突いた曙、差し手で相手を引き、相手が寄って来る差した方の足を基点とし他の足を差し手の方に大きく開きながら差し手を返すように投げる、所謂、下手投げを仕掛ける曙だが…

 

「右下手投げか!いや…これは!」

 

「第七駆!潮ちゃんの必殺技!鬼車だァァァ!!し…しかし、鬼車は潮ちゃんのようなふわふわおっぱいがあってこその勢いと反発力が必要なハズ…!曙っぱいは潮っぱいには遠く及ばないのに何故…!これはいったいどーゆーコトでしょう初春様!」

 

「おそらくはアレじゃな、自分は一人ではない、第七駆の仲間達と一緒に戦っているのじゃと言う一種の覚悟的なアレじゃろう、ふむ…粋なコトをするものよ」

 

「なるほど!」

 

右下手投げこと鬼車が不発に終わり、再び冷静さを取り戻した川フォーマー…

 

『ぎょうじ…』

 

おそらく相手は今ので決めに来ていたが不発に終わった、ならばもう怖いものは何もない!一気に勝負を決める!川フォーマーの覚悟も決まった!自分の全力を出すに相応しい相手!

 

『ぎょうじぎょうじ!!』

 

パチンッ!!(猫だまし)

 

『ぎょ!?』

 

まさかの二度目の猫だまし…っ!?有り得ない…!初手以外に繰り出してくるなど想定の外、否、まさか同じ取組で二度も使用うなどカッパ相撲史にも無い!!

 

「しゃあッ!!」

 

『ぎょうじ!!』

 

再びの鬼車!否、下手投げ・鬼車と下手捻り・鬼嵐を同時に使用する必殺の薙ぎ…!!

 

『ぎょうじ!!?』

 

まさかの連続に、ついに川フォーマーの巨躯がDOHYOに地を付けた!!

 

「決まったァァァァァ!!百鬼薙ぎだァァァ!!曙ちゃんヤりました!人類軍まさかの連勝!まさかの勝利です!」

 

「うむ、見事な勝利じゃ」

 

「やりましたね!初春様!」

 

「うむ、妾も感動したぞ」

 

見事な曙の大勝利に、ベンチから出てきた提督と長門とグラーフがワッショイワッショイと曙を胴上げし、気安く触んな!クソが!と罵倒風照れ隠しに皆が感動した…

 

◆◆◆

 

人類対川フォーマー最終戦、環境破壊が作り出した進化した水棲モンスター、川フォーマーVS悲惨なペットブームの作り出したアニマルモンスター、時津風

人類の業と人類の業が今、DOHYOと言う名のバトルフィールドに上がる!

 

『ぎょうじ』

 

「ぐるるる…」

 

川フォーマー大将MITSUNARI と時津風は互いにメンチを切り、NKKOTA!のゴングが鳴るのを今か今かと待つ…

 

「いよいよ大将戦です、どうでしょう初春様、ここまでの試合、二連敗からの二連勝と言うドラマチックな展開でここまで来ましたが…」

 

「うむ、まぁ、内容自体は悪くはないのぉ」

 

「反則負けとは言え、長門さんもグラーフさんも一応、相手を倒してますしね」

 

「うむ」

 

‐‐‐

 

大将戦!NKKOTA!のゴングが鳴り、先に飛び出したのは海軍基地が誇るクレイジードッグ!時津風!

 

「ぐるるるる!!」

 

強烈なハウンドタックルをぶちかましたが!!川フォーマーの圧倒的体格に対し、その巨躯を揺るがす破壊力が足りていない!

 

『ぎょうじ』ニヤリ…

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

ハウンドタックルが効かない敵……時津風は低く唸り、川フォーマーの様子を窺うようにDOHYOの隅でジリジリと移動し、ベンチから時津風の世話係である長門からの激励が飛ぶ

 

「よーし!よしよし時津風!まずは相手をよく見るんだー!」

 

「オイ長門、アイツ、ホントわかってんのか?」

 

他人には決して懷かない犬と定評のある時津風は低い唸り声を止め、今度はグルグルと前転運動しながら飛びかかった!!

 

「出た!!時津風の必殺技(フェイバリット)!絶・天●抜刀牙だー!!」

 

「あの技を食らってキン●マがグシャグシャにならなかったヤツはいねーぜー!」

 

「オイオイオイ、死んだわあのカッパ」

 

大歓声の中、グルグル回りながら飛びかかった時津風!!しかし、川フォーマー、これを冷静で的確な判断で打ち下ろしの右手ハタキ落としで迎撃!

 

ビタンッ!!(ハタキ落とし)

 

「ぎゃわんっ!!」

 

『ぎょうじ』

 

ハタキ落とされた時津風は、DOHYOの上でピクピクと痙攣し、やがて動かなくなった…

 

「決まったァァァァァ!!ハタキ落とし!決まり手はハタキ落としで決着ゥゥゥ!時津風敗れました!時津風敗れました!この瞬間、九千坊河童連合の勝利が決まりましまァァァァァ!」

 

『ぎょうじ』

 

『ぎょうぎょうぎょう!』

 

『ぎょうじ!ぎょうじ!』

 

カッパ達は勝利を決めた大将を祝福しようと大将MITSUNARIのところへぎょうぎょうと駆け寄るが、大将MITSUNARIはそれを制し、倒れたまま動かない時津風を優しく抱きかかえ、口からビーム的な光を時津風に浴びせると、ぐったりとして血色の悪かった時津風の顔色にみるみる生気が溢れてきた!

 

‐‐‐

 

「ぬぅ…アレは、カッパフラッシュ…!」

 

「なんだそれは?」

 

カッパフラッシュ!!それは、カッパの口から出るビーム的な光であり、その効果はドブ川を綺麗な川に変えたり、鋼鉄をひん曲げたり、死人を生き返らせたりと様々な奇跡を起こす聖なる光と言われている…

 

「へへっ、カッパのヤツら、リングを下りればノーサイド、お互いに健闘を称え合うってか…」

 

「フッ、意外にイイヤツらではないか、妖怪のわりに」

 

「フッ、見上げたフェアプレーの精神だな、ヨーカイのわりに」

 

そして長門とグラペンの恥ずかしい大人コンビは何がそんなにも誇らしいのか、フッとか笑いながら大したカッパだ…とか、やはりカッパか…とか言いつつ腕を組んで立っている…

 

「フッ、フェアなプレイに、この長門も感動したぞ」

 

「フッ、奇遇だな同志ナガト、このグラーフ・ツェッペリンもだ」

 

長門とグラペンにバカコンビもお互いに健闘を讃え合う仲間達やカッパどもの輪に入るべく、フランクに近くに居たカッパに話しかけ……

 

『ぎょうじぃ!!』

 

ブスッ!!(尻子玉ファック!)

 

「んほぉ!!」

 

「オゴォ!!」

 

『ぎょうぎょうぎょぎょぎょう!ぎょうじ!』

 

フランクに話しかけた瞬間、尻子玉をブチ抜かれた長門とグラペンは尻を突き出す姿勢のままその場に崩れ落ちた!

 

『ぎょうじ!ぎょうじ!』

 

カッパ言語に詳しい有識者のキタローくん曰く、今のは“ただしテメーらはダメだ、ペッ!”と言っていたらしい

 

こうして……俺たち人類と川フォーマーの壮絶な戦いは終わった………結果として、人類はヤツらに敗北したが、ヤツらは意外にもフェアで紳士的な妖怪らしく、良い勝負だった!お前とはまた戦いたい!とカッパ語で言っていたらしく、妖怪と言う不気味さと言うより、まるで黄金のような爽やか風を残し、カッパ達は川へ帰って行った…

 

しかしいつの日か、そう、いつの日か俺たち人類が再び天然自然への恩恵と感謝を忘れ、再び川を汚す時、彼らはきっと還ってくるだろう………この母なる自然を守る、守護者達が…!!

 

川フォーマーズ!! 【完】

 

◆◆◆

 

「…と言う感じでどーっすかね?」

 

執務室で缶コーヒーを飲みつつ秋雲の持ってきた新作漫画、人類とカッパの壮絶な戦い!川フォーマーズを読み終わり、原稿を丸めて秋雲の頰をブッ叩いた

 

「あふんっ!!痛いじゃないっすか!」

 

「いや………普通につまんねーよ、コレ」




次回

アツき侵略!ジャーヴィス!

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