不健全鎮守府   作:犬魚

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敗北を知りにはるばるやって来た最凶新人艦ッッッ!!

【登場人物】

神鷹(元客船)
ドイツから来て色々あって名前も姿も変わった

岸波(ゆるふわヘアー)
目が笑ってない

Maestrale(合法駆逐艦)
マエストラーレ級の長女、合法

Gotland(軽巡的なナニか)
スウェーデンから来たよくわからない艦種

Nelson(大貴族)
英国から来た新たなる刺客


続続続続続続・提督と新人と面接

10月に入り最近肌寒さを感じるゴキゲンな執務室…

 

「で?最初は例によって海防艦のボンクラか?」

 

「いえ、今回は海防艦の子はいないみたいですよ」

 

「マジか」

 

どうやら上もようやく海防艦の新人を配属させる事に、なんか違うなと思ってくれたようだな、そうだよ、その通りだよ、ウチはワガママガールを精密なマシーンに育成するスクールとかじゃねぇんだよ

 

「とりあえず最初の人は空母の人です、軽空母」

 

「軽空母…?」

 

「はい、なんか潜水艦に強い感じの人らしいですよ」

 

「ふ~ん」

 

潜水艦に強いっーと、カス丸くんやガンビア・ベイみたいなアレか…

正直、イヤな予感しか感じずにいられないでいると、そんな俺の思いを察してか、五月雨は次の方どうぞーと扉の向こうに声をかけた、コイツマジあとでゼッテー腹パンしてやると心に決めると、扉を開き、最初の新人が入室してきた…

 

「Guten Tag…いえ、こんにちは…」

 

「ぐーてん?」

 

「私、神鷹って名前…その…航空母艦です」

 

なんだろうな…?一見、カス丸くんの2Pカラーみたいな感じに見えなくもないが……カス丸くんには無い気品のようなものを感じるのだよ

 

とりあえず履歴書的な書類を読み、この子が一体何者なのかを確認してみる………ふむ、なるほど

 

「キミはアレかね?ドイツ生まれのドイツ育ち的な…?」

 

「あ、はい、ドイツ的にはシャルンホルストって名前です」

 

「ふ~ん」

 

シャルンホルストか……なんかどっかで聞いたコトあるような、ないような…

 

「え~………お、キミ、いきなり3スロスタートかね?ハッハッハ、そうかそうか!3スロか!」

 

「え?あ、はい…」

 

正直、カス丸くんの2Pカラー的な見た目なので絶望の2スロで艦攻装備不可のカスかと思っていたが、いやいや、なるほど、うん、なかなか見所のある子じゃないかね

 

「うむ、まぁ、最初はファームで鍛えてからになると思うが、キミには期待しているのだよ」

 

「あ、え?あ、はい…ダンケ、じゃない、ありがとうございます」

 

「うむ、では下がってよろし………いや、サミダス、冷蔵庫にプリンがあっただろう?彼女に持たせてあげたまえ」

 

「90円のですか?150円のですか?あと、五月雨です」

 

◆◆◆

 

見所のある新人、金のカス丸の面接を終え、次なる新人を待ち受ける執務室…

 

「次は駆逐艦の人です、毎度お馴染み夕雲型の」

 

「毎度お馴染みだな」

 

駆逐艦の中でもエリートの中のエリート、スーパーエリート駆逐艦と名高い夕雲型の新人か…どうやら次はTOUGHな面接になりそうだぜ…

 

そんな予感を感じる中、次の方どうぞーと呼ばれて、ふわっとしたヘアーの子が入室してきた…

 

「夕雲型駆逐艦、その十五番艦、岸波です、貴方が提督…?そう………いいけど」

 

あ、コイツ、いきなり露骨に失望しやがったよ!間違いない、俺にはわかる、このガキ、イケメン提督じゃないコトにガッカリしやがった!

 

「そう、俺がこの基地の絶対支配者である提督様だ、宜しく頼むぞ、え~……岩波クン?」

 

「岸波よ」

 

「あぁ、そうだったな、スマンスマン、謝罪しよう」

 

「……チッ!」

 

態度悪いなコイツ、さすがはスーパーエリート駆逐艦と名高い夕雲型なだけはある、スーパーエリートのPRIDEと言うヤツか…

とりあえず、俺は手元の履歴書的な書類を読みつつ岩波改め岸波クンの性能について確認してみる…

 

「ふむ、まぁごくごく平均的な夕雲型と言ったところか、対潜がちょい強めの」

 

「そうよ」

 

「…ふむ、まぁ、下で徹底的に鍛え上げてからの実戦だな、ま、ガンバリたまえ」

 

「…チッ!」

 

また舌打ちしたよこの子、なんなの?え?俺なんかしたの?

 

「………岸波クン」

 

「なんですか?」

 

「ナニか不満があるのなら聞こうじゃないかね?ん?なんでも言ってみなさい」

 

「不満ですか…?そうですね、特にないですが…」

 

「いやいやそんなコトはないだろう?遠慮する事はない、提督は基地の仲間を皆ファミリーだと思っているのだよ」

 

「…チッ!」

 

また舌打ちしたよ!なんなのこの子!?面倒くさいどころの話じゃないよ!妹の教育どうなってんの夕雲姉さんよォ!

 

そんな気難しくて繊細な年頃であろう岸波クンに参ったなこりゃと頭を抱えていると、執務室の扉を勢い良く開き、夕雲型のアツき血潮の姉妹達が颯爽と現れたッ!

 

「フッ、待ってたぜ岩波ェー!」

 

「まったく、久しぶりね…トリートメントはしているかしら?岩波」

 

「朝ちゃん、沖姉……!あと、岸波だから」

 

夕雲姉妹のワイルド担当、いすゞさんにも目をかけらる対潜エリートの朝霜と、夕雲姉妹の知性溢れる天才担当の沖波クンは久しぶりねとか言いつつ馴れ馴れしく岸波クンの頭をバシバシ叩き、姉妹の再会を喜んでいた

 

「もう面接終わったんだろ?メシ食いに行こーぜ!メシ!」

 

「夕雲姉さんが鍋するから早く来いって」

 

「………チッ!」

 

この子また舌打ちしたよ!え?なんなの?もしかして姉妹仲悪いのか?それは些かアレだな、姉妹は仲良くしないと…

 

「岸波クン、ウザかったらウザいと言っても構わないんだぞ?」

 

「別に?ウザくありませんけど?」

 

じゃあ舌打ちすんなよ、どう見てもウザがってるじゃねーか………すると、朝霜と沖波はいやいやいやと言いつつズイっと前に出てきた

 

「テイトク、岸波は嬉しいコトや楽しいコトがあると舌打ちすんのが癖なんだよ」

 

「変でしょ?まったく、だからそんなゆるふわパーマなのよ」

 

「変とかゆーな」

 

◆◆◆

 

すぐ舌打ちする岸ちゃんが退室し、次なる挑戦者を待つ執務室…

 

「次も駆逐艦の人です」

 

「ほぉ…」

 

五月雨の淹れたアツいティーを飲みつつ、お茶菓子に出されためん●いをボリボリ食べながら残った履歴書的なものをチラ見した俺は、なんとも奇妙な点に気付いた…

 

「オイ、あと3人だよな?」

 

「はい、あと3人です、全員外人さん」

 

「全員かッッッ!!」

 

新人5人中3人が外人さんとかウチも随分とインターナショナルになったモンだなオイ、っーか待てよ、そもそも神鷹クンはドイツ生まれのHIP-HOP育ちとか言ってたし、冷静に考えたらほぼ外人じゃねーか!ほぼGermanyだろ神鷹クンは!?実質5人中4人が外人だYO!

 

そんな俺の悩みを気にする事なく、次の方どうぞーと呼ばれて元気IPPAI入って来たのはイタリアからの刺客ッッッ!

 

「Buon giorno♪マエストラーレ級駆逐艦!長女のマエストラーレです!テイトクぅ、私もどーぞよろしくお願いしますね!頑張りまーす!」

 

「うむ」

 

元気があってよろしい、なるほど…これが合法駆逐艦と言うものか

 

「えー…マエストラーレくんはアレかね?対潜とか得意な感じのアレかね?」

 

「ハイ!だいたい得意な感じです!」

 

「ハッハッハ、そーか!そーか!得意な感じか!」

 

マエストラーレはキャッキャとハシャぎながらまとわりついて来たので、俺は五月雨にマエストラーレくんに冷蔵庫のプリ…いや、エクレアを出してあげたまえと命じると、五月雨は俺に対して若干ドン引き気味にしていたが黙ってエクレア(580円)を出した

 

「delizioso!ありがとーテイトクぅ!私頑張るね!」

 

「ハッハッハ、あぁ…そうそう、今後の事だがマエストラーレくんは五十鈴に任せたいと思う、なに、乳はデカくてややキレやすいが優しいセンパイだ、きっと可愛がってくれるだろう」

 

「あ、その人知ってます!リベから聞きました!メチャシブいって!」

 

「五十鈴は私の信頼できる部下だ、困ったことがあればなんでも相談するといい、ハッハッハ」

 

◆◆◆

 

「次の方どうぞ~」

 

合法駆逐艦、マストラーレくんが退室し、次なる挑戦者がスルリと入ってきた…

 

「北欧、スウェーデンからやって来ました……航空巡洋艦ゴトランドです」

 

「え?なんだって?ゴト…?ゴトラタ…」

 

「ゴトランドです」

 

「ゴッド……ランド……だと?まさか!?GOLAN(ゴラン)!実在したのか!」

 

神の国(ゴッドランド)

自分達だけが神に選ばれた人間だと信じる最高にイカレた狂信者にして、その戦闘能力は冷酷無比、たった一人で500人のゲリラを殲滅できる殺人戦闘員(キラーコマンダー)と噂されている…

 

オイオイオイ、こいつはトンデモない刺客が来たモンだぜ…!

 

よく見ると、このGOLANクン、タダ者ではない目をしている…まるで睡眠中の暗殺を警戒してか、普段から快適な眠りをとっていないかの如き凶暴な目つき…っ!そして、あの太腿にチラリと見える短刀、おそらくは当たり前のように毒が仕込まれていると見たッ!

 

「…いえ、だから、ゴトランドです」

 

ゴトランドくんは若干イラっとしたような顔をして太腿の辺りに手をやったのを俺は見逃さない!先手必勝…ッ!俺は椅子を蹴って飛び出し、ゴトランドくんの左腕をとってそのまま身体を押して壁にダァン!した

 

「うにゃ!?」

 

「フー……フー……危なかった」

 

しかし相手は殺人戦闘員(キラーコマンダー)とまで名高いGOLAN、とりあえず、このナイフは奪っておくかと左の太腿に手をやると…

 

「ヒッ!?ヒィィィ!!!ナニすんのよ!!」

 

ビタンッ!(ビンタ)

 

「あべしっ!!」

 

ゴトランドくんからの強烈なビンタを浴び、大きく仰け反ると、ゴトランドくんは凶暴な目をさらに凶暴にして俺を睨みつけ…

 

「ハー……ハー…!さ、最低っ!!」

 

「なるほど…手首のスナップといい腰の入れ方といい、こーゆー元気なビンタが繰り出せるなら君の健康状態は間違いなく“良好”だ!」

 

「ヒッ…!?さ、最低!最低よ!最低!最低…ッ!!」

 

「最低じゃない、提督だ、しかし失礼したね、もしかして大事な物だったかね?」

 

「え、えぇ…今、まさに必要になってる大事なモノよ」

 

なるほど、さすがは神の国の名を持つ謎の艦種、軽(航空)巡洋艦…どうやら彼女と打ち解けられるのはまだまだ先らしい

 

◆◆◆

 

GOLANからの刺客が退室し、いよいよ最後になった最凶新人艦面接…

 

「最後は戦艦の人です」

 

「戦艦か…」

 

相変わらずまるでいい予感がしねぇな、戦艦と言えばアレだよ、恐竜みたいなもんだ、ガンガン殴られても平気な浮かぶパンチングマシンなのだよと考えていると、執務室の重厚な扉をワイルドに開き、これまたワイルド感と底知れぬ自信に満ち溢れたサラサラキンパツヘアーの美女が入ってきた…

 

「余がNelsonだ!貴様が余のAdmiralという訳か、フッ…なるほどな、いいだろう」

 

英国から来た新たなる刺客…ッ!超弩級戦艦ネルソン…ッッッ!!

 

「…スイマセン、ネルソン?さん、ちょっと秘書と作戦タイムいいですか?」

 

「作戦タイム…?フッ、構わないぞ」

 

俺は五月雨にちょっとこっち来いと手招きして呼び、作戦タイムを開始する…

 

「サミダリューン、卿も感じたか?」ヒソヒソ

 

「なにがですか?」ヒソヒソ

 

「オマエにもわかったハズだ…」

 

そう、ひと目で尋常でない面倒くさい奴だと見抜いたのだよ…

 

「………まぁ、些かアレな感じですね」ヒソヒソ

 

「だろ?絶対めんどくさいタイプだぞアイツ、だって“余”だぞ?“余”!ファラオかよ?」ヒソヒソ

 

「ファラオかどうかは知りませんけど、たぶんあの溢れる面倒くさげなオーラはタダ者じゃないでしょうね、貴族的な人なのでは?」ヒソヒソ

 

「貴族か……なるほど、卿の意見を是とする」ヒソヒソ

 

俺たちのヒソヒソタイムを寛容に許したネルソンは今も鏡の前でなにやらカッコいいポーズの練習的なものをしており、どうやら下々の者らしい俺たちの話し合いにはまるで興味がないらしい…

まさしく上に立つ者、高貴な者だけが持つ高貴な余裕というものだろう

 

「私見ですけど、たぶん、陛下以下ジャーヴィスさん以上の地位ぐらいの人なんじゃないかと?」ヒソヒソ

 

「なるほど…」ヒソヒソ

 

たしかに、唯一無二の絶対支配者にして究極女王(アルティメットクイーン)である女王陛下を頂点とするなら、このネルソンはおそらくそれに次ぐ大貴族と言うワケか……なんたって余だしな

 

「フッ、そろそろ良いか?Admiral?」

 

「え?あ、あぁ、うん、では始めようか」

 

「フッ…では改めて、私がNelson級1番艦Nelsonだ、よろしく頼むぞ」

 

「う、うむ…私がこの基地の提督、Admiralだ、よろしく」

 

っーか乳デカいなコイツ、ナニ食ったらそんないやらしい身体になるんだよ

 

「フッ…AdmiralについてはLadyやArkから先日聞いているぞ、なかなかの快男児だとな!」

 

「は、はぁ…?」

 

「特にArkはAdmiralの事をいたく気に入っていたな!今度共に狩りにでも行ってはどうだ?嗚呼、わかっている…sandwichだな?勿論用意させよう、最高のものをな」

 

「い、いえ…お気遣いなく」

 

「フッ、何も心配はいらん、Ladyには余から話を通しておいてやろう!」

 

あ、ダメだコイツ、あの残念女騎士アークロイヤルと同じタイプかと思いきや、精神が貴族すぎてなおタチが悪いタイプだ

 

「おっと……そろそろ時間だな、すまないがAdmiral、これから稽古の時間でな、余はこれで外させて貰う」

 

「え?あぁ、はい」

 

フッ、では今度、食事でもしながらゆっくり話そうではないか……そう言い残し、ネルソンは来た時同様にワイルドに扉を開けて去って行った……

 

「……」

 

「……」

 

「これで終わりか?」

 

「終わりですね、私、もう帰っていいですか?」

 

「そうだな、今日はもう店じまいにするか…メシ食いに行くから付き合え」

 

「え?普通にイヤですけど?」


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