【登場人物】
提督(クズの人)
寒くなってきたせいか、お尻が気になる
五月雨(秘書カーン)
専業秘書艦、陸奥曰く、心が広い子
白露(長女)
食欲の秋
爽やかな秋晴れに心躍る良き日、たまには真面目に仕事でもするかと考えた俺は執務机の上に長らく置いてあった書類が目に入ったので頼れる俺のライトアーム、五月雨にコレはナニかね?と訊ねた
「見ての通り、基地の防災機器点検のチェック表ですけど?あと、私からも一ついいですか?」
「ナニかね?」
「そのギザギザはなんですか?ファッションか何かですか?」
「これが気になるかね?」
「えぇ、ワリと」
たしかに、五月雨の疑問は当然かもしれんな…
今、俺が着ている制服の上着には袖が無く、ワイルドさを強調するようにギザギザしているが特にファッションと言うワケではない、両袖をおそるべき力で引っ張られて千切れてしまっただけだ…
朝、自販機コーナーで缶コーヒーを買っていたら金のサラサラジャーヴィーくん、緑のトゲトゲ山風クンの二人と運悪く遭遇し、俺は可能な限り穏便にシカトしてその場を去ろうしたが、クソガキ達のよくわからん口論の末、我が子を奪い合う母のように右から左から袖を引っ張られ、引きちぎられたと言うワケだ…
「へぇ…」
五月雨は大して興味もなさげに領収書に印鑑を押し、領収書箱に放り込む、こやつめ…自分で聞いておきながらこの興味の無さ………だが、そんな秘書を、それでも許そう
「とりあえずこの面倒な防災機器点検は片付けておくか、五月雨、共にチェック表にチェックを手に入れるぞ、付いて来い!」
「はいはい、あ、とりあえずそのダッサい上着は脱いで行って下さい、後で袖を付けます」
◆◆◆
「しかしなんでオマエの胸は絶壁なんだろうな…」
「なんですかいきなり…?ケンカ売ってるんですか?」
基地内の防災機器を点検しつつ歩き回っていると、ふと、シンプルな疑問が頭に浮かんだので絶壁の主である本人に問うと、若干イラっとした顔をしていたがすぐにニュートラルに戻った
「そりゃ私だって駆逐艦ですし、むしろ平たいのが当たり前じゃないんですか?」
「当たり前、ふむ…当たり前か、しかし卿の意見を是とするには些かパンチが足りないと私は考える」
「…はぁ?」
ニュートラルから2ndぐらいのイラっと具合だろうか?五月雨はチェック表を片手にボールペンを指でグルグル回して俺に投げつけてきたが、俺はそれをキャッチし、同じく指でグルグル回して五月雨に返球した
「例えばオマエの姉ちゃん達がいるだろう」
「春雨姉さんなら平たいですよ」
「達だ、達!複数なのだよ」
「冗談です、小粋なサミダレジョークですよ」
「ナニがサミダレジョークだ」
この青髪ロング子の姉には駆逐艦とは思えない超肉体、ハッキリ言って身体だけなら合法だよコイツぁ…と、思わず生唾ゴックンしちまうビシバシボディの村雨がいる
それに、村雨ほどではないが夕立も改二になった辺りから急成長し、将来性を期待させる身体つきになっている…
「まぁ、時雨様は絶壁寄りですね」
「姉に対してなんてコト言うのかね、この子は」
まぁ、時雨様はビシバシボディなどなくとも大抵の輩は身分の違いを思い知り膝を屈する…
そんな完璧なる時雨様について考えていると、廊下の向こう側からホカホカの焼き芋の入った袋を片手に抱え、もう一方の手で焼き芋を食い歩きするアホ面が歩いてきた
「ん?あ、テイトクと五月雨じゃん、ナニやってんのー?」
「白露ェ…」
「こんにちは白露姉さん、焼き芋ですか?」
「焼き芋だよ、一個あげよーか?」
狂気のヤンチャ駆逐艦、白露姉妹の長女にして歩く屁こきマシーン白露は袋から焼き芋を取り出して五月雨に渡した
「ありがとうございます」
「いいっていいって、テイトクは?いる?」
「いらねぇよバーカ、だいたいなんだその腹は?孕み袋か?お腹パンパンですかー?」
「孕んでねーし、ってか太ってね………や、ちょっと太ったかなぁ〜?アハ、アハハハ」
白露ねーちゃんは乾いた笑いをしつつ焼き芋を口に入れ、ゔっ!あづい!とか言ってゴホゴホむせ出した
「大丈夫か?救急車呼ぶか?」
「呼ばなくていいし、ってかテイトク、五月雨とナニしてんの?」
「ご覧の通り、防災機器点検だが?」
「や、ご覧の通りでわからねーから聞いたんだけど………まぁいいや、ふ〜ん、防災機器点検ねぇ」
「心配すんな、特にお前の部屋は念入りにしておいてやる、ベットの下からゴミ箱の中、あと、タンスの中も一枚一枚丁寧に取り出して危険な匂いがないかを確認してからジ●プロックしてやる」
「へ…変態…っ!!変態っ!!」
「変態じゃない、小粋なテイトクジョークだ」
「全然っ!小粋じゃないし………五月雨、ナニか困った事があったらお姉ちゃんに相談してね!」
「ありがとうございます、何か困ったら時雨様に相談します」
五月雨の殺人ストレートに多少のダメージを与えられたものの、そこはさすがに長女、震える手で焼き芋をワイルドにかぶりつき、心の安定を得た…
「そういや白露ねーちゃんも最近なんかエロくなったな」
「エロくなったとかゆーな、成長したって言え!」
「ちょっと妹の悩みを聞いてやってくれよねーちゃんよ、おたくの絶壁六女が絶壁なコトに悩んでんのよ?絶壁過ぎてスイマセンって、ちょっと白露ねーちゃんから絶壁を攻略するクライミングを教えてやってくださいよぉー?」
俺は白露ねーちゃんの肩に手を回し懇切丁寧かつフランクにお願いした
「ちょ!距離が近い!あと、手!しれっと胸揉むな!」
「ハッハッハ、小粋なテイトクジョーク」
「だから!まったく小粋じゃないし、五月雨!コイツマジなんとかしてよ!アンタの上司でしょ!?」
「まぁ、私だけじゃなくて白露姉さんの上司でもありますけど…」
五月雨はとりあえずため息を吐いた後、不遜にも俺のケツにキレのある蹴りを叩きつけ、激痛にのたうち回る俺に対し“あまり絶壁絶壁言ってたら夕張さんに失礼ですよ?”とまるで我が子を諭す母親のような感情のないマシーンの如く囁いた
「まぁ、私は特に気にしてませんけど…」
う…嘘つくんじゃないよこの青髪ロング子は……俺は知っている、コイツの一つ下の妹に向ける憎悪の目を、あれは身内に向けていい目じゃあない…コイツこそ無害なようでとんだ
「まぁいい、よし…腹減ったし昼飯でも食うか、五月雨、卿からランチの提案はあるか?」
「そうですね……たまにはスパゲティとかどうですか?」
「スパゲティか…ふむ、卿の意見を是とする」
…こうして、俺達はキリのいいところで昼食を摂るべく近所のサイ●リアへと行き、普通にスパゲティを注文したらたまたまサイ●リアへと来ていた貧乏姉妹こと秋月姉妹を見つけ、秋月が財布を握りしめ、店員さんに“コイツらにスパゲティを食わせてやりたいんですが!いいですかねーッ!”と注文していたので、俺と五月雨は店員さんに自分の皿をあの貧乏姉妹に与えてくださいと頼んだ…
次回は二回戦!
たぶん