【登場人物】
提督(バッドガイ)
最初はピンとこなかったけど思い出した
香取先生(熱血ティーチャー)
メガネがステキなエレガントティーチャー、股人指導で性績アップ!
鹿島先生(お色気ムンムンイケナイティーチャー)
香取先生の妹、美少年は国の宝
グラーフ・ツェッペリン(オパーイ空母)
魔界から来た上級魔界貴族、笑顔が怖い
「残業ですか?珍しいですね」
通常業務はとっくに終わり、既に執務棟には人けがなくなった夜の時間、執務棟内にある資料室でビデオを見ていると青髪ロング子がオレンジジュースしかないですけど?と缶ジュースを片手に机に置いた
「まぁな」
「それ、川奈大佐の演習ですよね、対戦相手の研究なんて随分仕事熱心じゃないですか」
「俺はいつだって仕事熱心なのだよ」
まぁ、この程度のビデオ映像では大したコトはわからんが相手が相手だけに見ておいて損はない
「次の演習、私が出ますよ」
「………珍しいな、自ら登板を希望か、随分と仕事熱心じゃないかね」
「私はいつだって仕事熱心ですよ」
…こやつめ、コイツのこーゆートコがムカつくんだよな
◆◆◆
春はAKEBONO、春の陽気と花粉と黄砂とPM2.5につられ、車でも洗うかと駐車場に行くと、俺と同じ事を考えたバカどもが既に洗車祭りを開催していた…
「オイ高雄ォ、高雄ォ!高雄クゥ〜ン?こっちワックスかけてんだよ、水飛ばしてくんなよ、なぁ?オイ」
「あ゛?ワリーワリー、ザコすぎて見えなかったわ」
「ア゛ァ?」ピキッ!
「あ゛?なんやミョーコー、ヤるんか?」パキッ!
愛車のDQNカーに血で血を洗う血のデコレーション祭り!妙高はブッ潰しちゃうゾ?とか言いながら高雄の顔面を車のフロントに叩きつけてメリメリしキレーなデスマスクを作り、高雄は妙高の顔面をフロントガラスに叩きつけてカッコイーオープンカーじゃねーの?とゲラゲラ笑っていた…
「バカかアイツらは…」
「あら?提督、提督も洗車ですか?」
「ん…?おぉ、これはこれは香取先生」
バケツとホームセンターで購入したらしい洗車セットを片手に、いつものエレガントな格好とは違い、芋臭いジャージに身を包んでいるが、それでも隠しきれないエレガントさが溢れている、さすがだ……まったく、香取先生はいつだって俺をアツくしてくれる…
「今日は良い天気ですからなぁ、ハッハッハ、まさに絶好の洗車日和ですなぁ!ハッハッハ」
「そうですねぇ、あ、提督、もしよろしければご一緒させて頂いても?私、普段は洗車機ばかりで自分で洗車はあまり経験がなくて…」
「モチロン!喜んでお手伝いさせて頂きますよ、まぁ、その代わりと言ってはなんですが……この後ランチでも?」
「まぁ、タダではないのですね?お上手ですね、フフ…」
香取先生はエレガントに微笑みモチロン構いませんよと快諾してくれた、小粋なテイトクジョークにも大人の対応をする余裕、まったく…香取先生はいつだってエレガントでいらっしゃる
「うわ………相変わらず腹立つわー、このトレンディ小芝居」
「…鹿島?何か言った?」
「な、何も言ってない!何も言ってないよ!香取姉ぇ!」
そして香取先生と同じく芋臭いジャージを着て洗車セットを持っているのは香取先生の妹、鹿島先生
鹿島先生も芋臭いジャージ姿だがやはりその隠しきれないむしゃぶりつきたいナイスバディー、ジャージの中の腋のところとかちょっと臭そうなところとかたまらない、普通の男なら間違いなく涎ズビッ!中高生ぐらいのグリーンボーイならムスコさんがカチンコチンに緊張してしまうだろう
「鹿島先生も洗車ですか?」
「え?あぁ、はい、香取姉ぇ…じゃない、香取姉さんが天気も良いのにいつまでも部屋でゴロゴロするなって…」
「そうなんですよ、この娘ったら、せっかくの休日なのに美少年の本ばかり見て…」
「見てないからッ!び…美少年とか、いや……見てないし、た、たまたま買った本がそーゆー本なだけで別に選んで買ってるワケじゃ…」
「何言ってるの?姉さん知ってるのよ?鹿島の机の引き出し、二重底になってて不用意に開けたら発火するんでしょ?姉さん前々から言おうと思ってたけど危ないからヤメなさいって…」
「なんで知ってるのォー!!?」
…そうか、鹿島先生は美少年がお好きな方なんだな
ーーー
ミッドシップ2シーター………俺はこのクルマにカウンタックの姿を重ねていたのかもしれない
とりあえず俺と両先生はそれぞれの車を並べ丁寧に洗車を始めた、香取先生の車はエレガントな香取先生に相応しいムースピンクパールの可愛らしい軽自動車、そして…
「〜♪」
上機嫌に鼻歌まじりに洗車する鹿島先生の車はミッドナイトブルーの禍々しいボディとオーラを放ついわく付きの中古のZ………香取先生曰く、まるで魅入られたように購入したこの車は鹿島先生はとても気に入っているらしい
「ふぅ…」
「ピカピカになりましたなぁ」
「フフ、そうですねぇ」
「香取先生、鼻、鼻の頭に泡が…」
「あらやだ、お恥ずかしい、フフフ…」
「ハッハッハ」
鹿島先生が“うわ…このトレンディ小芝居…”とか呟いた気がしたが、香取先生が何か言った?と問うとナンデモナイヨー!と再び愛車を磨き始めた…
そんなオレ・タティーノの小粋なトレンディ洗車タイムの中、一台の見慣れない車が駐車場へとダラダラと入ってきた
「なんだアレ?」
「なんでしょうか?」
「ポルシェだよ、香取姉ぇ」
ポルシェ!Porsche A.G社の名を冠するスポーツカー、その走りは数々のオーナーを魅了する今なお世界的に人気のあるメーカーであり車でもある
そして、そのポルシェの運転席から降りてきたのは…
「…ふぅ」
駆逐艦のアホガキどもからは魔界に生まれし万能なる魔界の支配者と恐れられる恐怖のおっぱい空母、グラーフ・ツェッペリン…ッ!!
「よぉ、グラペン、それオマエのか?」
「ん…?なんだ、同志Admiralか、あと、私の名前はグラーフ・ツェッペリンだ」
「オマエの名前長いんだよ」
「名前が長いのは当然だ、だが略するのは頂けないな」
しかしコイツ、ポルシェなんか乗ってたのか…意外だな、むしろ免許を持っていたコトに…
鹿島先生は俺の後ろからグラペンのポルシェを興味ありげに覗き……
「それ、ポルシェの912ですか?」
「911以外はポルシェじゃない」ギロッ!
「ヒィ!?」
上級魔界貴族の眼光にビビったのか、鹿島先生はすぐに引っ込んだ、まぁ………鹿島先生じゃなくてもグラペンに睨まれたらおしっこチビりそうになる、俺だってチビった
「Admiral達は洗車か?」
「ご覧の通り、洗車中だ、オマエはどっか行ってたのか?」
「あぁ、ちょっと鶏肉を買いにな…」
海外艦の寮にはダルメシアンの老犬が飼われている…
いつの頃から居るのかは定かではないが、ある日、グラペンが寮に帰ってくると後を付いて来たらしく、寮の前で掃除していたレーベきゅんとマックスきゅんがグラペンにそれはグラーフの犬か?と問うとグラペンは“ふむ、私の犬に見えるのか”と答え、それ以来、誰が呼んだか、その犬はグラーフ・ツェッペリン犬と呼ばれ飼われているそうだ
「なんなら私の車も洗車しておいてくれ」
「誰が洗うかボケ、舐めてんのかテメーは」
「冗談だ、まぁ小粋なゲルマンジョークと言ったところだな…」ニマァ…
そして笑顔が怖い、自分的には小粋なゲルマンジョークでドッカンドッカン笑いをとりにきたところだろうが、コイツの笑顔はキッズなら泣き叫びながらおしっこチビるぐらい怖い、まるで血を吸う寸前の上級魔族の人類を見下した笑いだ
「まぁジョークはいいとして、あぁそうだ、同志Admiral、今度、同志ナガトが会合を開くので必ず出席するようにと言っていたぞ」
「同志じゃねーよ」
「次回の会合の議題は如何にして我々は自然な形で天使の輪に入る事ができるか、略してエンジェル・ハイ・ロウ!についてだ」ニマァ…
「ナニがエンジェル・ハイ・ロウ!だ、上手いコト言ったつもりか!」
グラペンはニマァと邪悪な笑みを浮かべたまま顔の前で謎の横ピース挨拶をして去って行った…
「………はぁ」
「お疲れ様です、提督」
香取先生はエレガントに微笑みつつ一枚のハンカチーフを俺に手渡してくれた
「おや、これはこれは…ありがとうございます、まったく、香取先生は本当によく気のついてくれる」
「まぁ……提督ったらまるで良妻賢母だなんて、フフフ…」
「いや、言ってない、言ってないよ香取姉ぇ…」
「鹿島…?」ニコッ…
「なんでもないです!なんでもないでーす!うわー!洗車ってたーのしぃー!」