【登場人物】
Warspite(王)
王の印とオーラを持つマジモンの王、庶民文化にはわりと興味津々丸
Ark Royal(恥辱に堕散る白き華)
通称、クッ殺イヤル、女王陛下に忠誠を誓う誇り高き騎士
黙って立っていたら有能に見える
楽しい焼き肉食べ放題に女王陛下降臨………ッ!
その、緊急事態に対処するべく俺達は入店する前に円陣を組んだ…
「オマエら、わかっているとは思うが…」
「あぁ、わかっとる」
「言われんでもわかっとるねぃ」
仮に陛下の機嫌を著しく損ねた場合、 俺達は全員もれなくロイヤル断頭台に登るコトになる…ッ!仮に陛下が激怒でもしようものなら日英開戦待ったなし、むしろ日本も英国もアメリカも旧ソもフランスもドイツもイタリアもスウェーデンも戦艦も航空戦艦も改装航空戦艦も正規空母も軽空母も装甲空母も護衛空母も攻撃型軽空母も重巡洋艦も航空巡洋艦も軽巡洋艦も軽(航空)巡洋艦も練習巡洋艦も重雷装巡洋艦も駆逐艦も海防艦も潜水艦も潜水空母も潜水母艦も水上機母艦も補給艦も工作艦も揚陸艦もハンサムもイケメンもブ男も痴女もビッチも男も女も老いも若いも関係ねぇ、誰が一番強いのか、やってみよーぜ?と世界大戦勃発となるだろう…
俺達はその“最悪”を避けねばならない…
「よくわからんが、この磯風に任せておけ!」ドヤァ!
よし、コイツは役に立たないな!知ってたけど!俺と浦風と谷風クンは互いに“死ぬなよ…”とアイコンタクトを交わし、それぞれの配置へとついた…
ーーー
「これがヤキニクイホーダイですか…」
「はい、庶民が足繁く通う店だと…」
はじめての庶民派バイキングレストランに色々と興味津々丸な陛下、そして忠義の騎士は早速空いてるテーブルの椅子を引き、こちらをお使い下さいと陛下を着席させた…
「女王陛下、暫しお待ちを………Admiral、本日のmenuは…?」
「ねぇよそんなモン、あっちに行って自分で好きなモン取ってくるんだよ」
「なん……だと?」
ダメだ、この残念女騎士やっぱ理解してなかった…
「き、貴様ァァァ!まさか女王陛下に自ら料理を運ば……運ばせるだとォ!そのような無礼が…」
「Ark」
陛下はただ静かに、クッ殺騎士の名を呼んだ…
「し、しかし女王陛下…」
「Ark、それがこのヤキニクイホーダイのRuleなのでしょう?そうですね?Admiral」
「は……はい、その通りで御座います」
「ではRuleに則るのが正しいコトです、そうですね?」
「しかし女王陛…!」
「Ark」ギロッ
「………ハッ、申し訳御座いません」
女王陛下は優雅に席を立ち、それではAdmiral、escortをお願いできるかしらと優雅にその御手を出し、俺は危うくイエスユアハイネスと膝を折り、生涯の忠誠を誓いかけたが持ち前のヤマトダマシイで、左手の小指一本を自ら折るコトで耐えた…
ーーー
「なるほど……ここから自分の好きな料理を選び、皿に載せると…」
「ハッ!その通りで御座います!」
絶対なる女王陛下VS庶民派バイキング、自ら料理と食材を調達するべく席を立った陛下だったが、皿を運ぶのはアークロイヤルである…
陛下が自ら選び取る事は譲ったが、皿を陛下自らがテーブルに運ぶ事だけは頑なに譲らなかったのはクッ殺女騎士とは言え、さすがは誇り高き忠義の騎士、陛下もそこら辺の意志は汲み取ってくれた…
「Admiral、あれは…?」
「アレ…?あぁ、カニクリームコロッケですな」
「か…かにくり?」
カニクリームコロッケ!それは、お弁当の定番とも言えるどの辺にカニ要素があるのかわからないアレ!
「………ふむ」
陛下が大層興味津々にしておられる、そんなに珍しいのだろうかと考えていると、陛下はそれを皿に載せ、クッ殺女騎士は恭しくそれを受け取った…
「Ark、ではこれを」
「ハッ!お任せ下さい!」
イエスユアハイネス!と元気に返事し、アークロイヤルは速やかに皿をテーブルへと運ぶ、その堂々たる姿たるや、まるでここが庶民派バイキングレストランである事を忘れさせてくれる…
ーーー
適当に料理と食材を皿に載せ、帰ってきましたテーブル席…
「Admiral」
「ハッ!なんで御座いましょうか!」
「先程から気になっていたのですが………これは?」
「ハッ!コンロであります!」
「コンロ…?見たところ、火格子式のgrillのように見えますが…」
テーブルの中央に埋設されているのは焼肉店ではお馴染みのアレである、我々庶民にはごくごく当たり前のものでも高貴な御方である陛下には大変物珍しいものらしい…
俺は陛下に、こちらのグリルに火を点け、網の上で今しがた取ってきた肉や野菜を焼くのですと懇切丁寧に、そして当たり障りなく説明した…
「まぁ!ここで自ら…?直接?chefが焼くのではなくて…?」
「はい」
「女王陛下の御手で自ら…だとォォォォォ!!バカな!あり得ん!あり得んぞォ!Admiral!そんな不敬が許される筈が…」
「Ark」
「ハイ…」
女王陛下に睨まれ、黙りなさいと怒られてシュンとしたアークロイヤルの姿はとても小さく見えた…
そんなワケで、コンロに火が点き、俺たちはとりあえず女王陛下にご満足頂くべく作戦をアイコンタクトで通した
食い放題の店である以上、肉の質はもはや誤魔化しは利かない!だが、俺達は肉を選定する際、駄肉の中でも輝きを放つ肉を選んだ!こう見えて陛下はバカガキどもと行くファミレスのハンバーグが許せるほど広い心の持ち主!肉の質は仕方ないと汲んでくれるだろう…
「さぁ〜じゃんじゃん焼くんじゃあ、陛下!陛下も遠慮なくどうぞ、じゃんじゃん食べてくれていいけぇ」
浦風はそれとなく良い肉を陛下に勧める
「コイツは……うん、もうイイ頃合いだねぇ!」
そして谷風クンが最高の焼き上がり調整してくれている!
「なるほど…これがヤキニクイホーダイですか」
陛下はなるほどと感心したように頷き、かつてない庶民派な食事のスタイルに目を輝かせている
「陛下、ではこちらの肉を…」
「えぇ…」
怒られてシュンとしていたクッ殺イヤルは再びやってきた自分の出番、網から肉を取り、陛下の皿に載せるという仕事を見つけ、早速網から肉を取り…
ヒョイ!(磯箸)
「む」
「うん、良い具合に焼けているな」モニュ…
磯風ェェェェェェェ!!それ陛下の為の肉ゥゥゥゥ!!なにやってんだオマエはァァァァァ!!っーか直取りすんなテメーはッ!!せめてトング使えよ!
「ではこちらの肉を…」
ヒョイ!(磯箸)
「…む」
「どうした?みんなも食べないか?この磯風、言っておくが焼肉に容赦せんぞ」ナポォ…モニュ…
磯風ェェェェェェェ!!!空気!空気読めオマエ!バカか!?バカなんだな!?バカでいいんだよなオマエは!
俺は浦風に磯風をなんとかしろとアイコンタクトを送る!
『ムリじゃ!ウチじゃこの娘は止めきれん!』
なら谷風クン!!
『え?あー…ムリムリ、この谷風さんにもムリだね、コレは!』
なんてこった…ッ!!浜風ちゃん…っ!せめて浜風ちゃんさえ居ればこのバカを止められるかもしれないと言うのに!磯風は意外にも浜風ちゃんの注意は聞くらしく、二人はとても仲がいい方らしいのだが…
「………面白い、女王陛下、このアークロイヤル、必ずや最高の肉を貴女に!」
アークロイヤルのトングが動く!狙う場所は磯風とは対角の真逆!距離、そしてこのスピードならまず間違いなくアークロイヤルが勝つ!
………がッ!!磯風は網に箸の先端を差し込み!網を軽く持ち上げ………回したッ!!こ、コイツ……網そのものを回して肉を近付けただと!?
「フッ…甘いな」ドヤァ!
最高の焼き加減を口に入れた磯風は何事もなかったように次の肉に狙いをさだめている…その眼差したるや、まさにネコ科の肉食獣!
「………あの陛下、こちらで宜しければ」
「Thanks a lot、ありがとうございます、Admiral」ニコッ
俺が自分用に確保していた肉を陛下に譲渡すると、陛下は殺人的なロイヤルスマイルで俺のような下々の者に礼を言った、そのロイヤルスマイルに思わず英国と貴女に絶対の忠誠を誓いかけたが、左手の薬指と中指を自ら折ることでなんとか耐えた…
◆◆◆
「ただいマッスルインフェルノ」
「仕事放っぽり出してよく戻りましたね…」
帰って来た春のゴキゲンな執務室、明日の事は明日やればいいと放置した書類を集めトントンと纏める秘書の鑑にお土産の回転焼きを渡し、自分の椅子に深々と腰掛けた…
「あー………マジ疲れた」
「美味しかったですか?焼肉」
「美味かったかって…?どうだかな、よくわかんねーな…」
「へぇ」
「んなコトより茶淹れてくれ、茶、アツいヤツ」
秘書艦の青髪ロング子は俺の様子から色々察したらしく、特に文句も言わずに茶を淹れ、超絶美形提督専用と書かれた俺の湯呑みを置いた…
「あ、そうそう、さっき浜風さんからキス貰いましたよ、キス、いっぱい釣れたそうです」
「キスかぁ〜…」
浜風ちゃんからKISS貰ったのか〜…
「とりあえずママんトコにでも持ってくかぁ〜…」
「そうですね」