【登場人物】
提督(27)
この鎮守府で一番偉い人、黒い疑惑がある
五月雨(12)
殺人バリスタ、黒い疑惑がある
香取(5)
グレートティーチャー、グレートですよォ~コイツはァ~
「…暇だな」
「そうですね」
作戦海域に関する上への報告書も送ったし、特に急ぎでやる仕事もない、とりあえず煙草でも吸って今日の晩飯について考えるか
「あ、煙草吸うなら外ですよ、外」
「…ケチくせぇな」
ゴン!ゴン!
煙草を胸元に戻し、喫煙所に行こうと席を立った丁度その時、執務室の重厚な鉄の扉がノックする音がした
「入れェ…」
「失礼します」
「おぉ、これは香取先生」
どんなクズでも徹底指導、わからないならわかるまでマンツーマンで個人レッスン、眼鏡の素敵な香取先生
「提督、目安箱の中を回収してきました」
「これはこれは、お手を煩わせてしまい申し訳ない」
「いえいえ」
香取先生は数枚の紙をエレガントに俺に手渡し、エレガントに微笑む、うむ、実にエレガントだ
「よければコーヒーでも淹れましょうか?」
「あ、お願いします」
香取先生の淹れるコーヒーはとても美味い、上質でエレガントな薫り立ち、先生らしさが際立つ深い味わい、できる事なら毎日でも飲みたいものだ
「………」
なんか青いのが露骨に苛ついてるが、まぁ、どうでもいいな
「どうぞ」
「これはどうも」
「五月雨さんも、どうぞ」
「はい、いただきます」
…エクセレントッ!
程良い苦さと上質な味わい
「ところで、目安箱なんかいつの間に置いたんですか?」
「一週間くらい前だったか?お前がキョーダイ達と鉄骨渡りやってる時に置いた」
「やってませんよ、鉄骨渡りなんて」
とりあえず何枚か投書が入ってたみたいだし、中を確認してみるか
『フッ、そろそろ体育館の出入り禁止をなんとかしてもらえないだろうか?』
「匿名希望のNGTさんからです」
「駆逐艦がスポーティーなコトしてない時は入って良し、次」
『提督、浜風の乳ガン見するのはよくないけぇ』
『提督、浜風のパイをチラ見するのはやめぇよ』
『提督よ、この磯風、浜風のおっぱいを見ていたらふとオムライスを思い付いた、今度作るから是非食べてくれ』
「以上、匿名希望のU風さん、T風さん、I風さんの投書です」
「べべべべ!別にィー!!そんな見てねーしィー!たまたま!そう!たまたま目に入ってるだけだしィー!」
先人は言った、人は何故山に登るのか?そこに山があるからだと、そう、男は皆アルピニストだ
「っーかI風さん隠れてねぇだろォ!匿名の意味わかってんのかアイツ」
ったく、ロクな投書がねぇな…まるで俺が浜風ちゃんのおっぱいが大好きな人みたいではないか
「まぁいい、次だ次」
『…こんなハズじゃなかった』
「匿名希望のK島先生です」
「…香取先生」
「はい」
俺は財布から五千円札を取り出し、香取先生の素敵な手にそっと握らせた
「これで妹さんと美味しいものでも食べて下さい、あ、領収証とかいいんで」
「お心遣い感謝致します」
これでいい、鹿島先生、貴女は我々にとって必要な人だ
この腐敗と自由と暴力の真っ只中を強く生きて下さい
「で、最後なんですけど」
「おぅ、読んでみろ」
『ツケが溜まってんだよ!さっさと払いなこのドサンピンがァ!』
「匿名希望の倶楽部HO‐SHOWからです」
「だから匿名じゃねぇだろーが!それただの督促じゃねぇか!」
「ってか、最近よくわからない領収証が多いんですけど、なんか切手代がやたら多くないですか?なんなんですか切手代って?」
「ハァ?そんなコトねーしィー!」
「見てくださいよ香取先生、この不明瞭な領収証!」
「あら?…あらあら?」
「ちょ!オマエ!やめろよ!香取先生!コイツ疲れてるんすよ!数字間違えちゃってるんすよこの文学少女!ほら!なんか髪も青ざめてるし!体調悪いんじゃないかなー?」
「これは地毛です!」