【登場人物】
磯風
殺人シェフ、グ●メラックの申し子
やはり食材は死にたて限る
比叡(2)
何度か名前の出たバイオテロリスト
食材は当然のように殺したてが一番
「オムライスか」
「オムライスだ」
目の前に置かれた皿に載っているのは見た目はごく普通のオムライス、そう見た目的にはだ
「見た目は問題ないな」
「そうだろう!自信作だからな」
ただ、これを作った者は殺人シェフの二つ名を持つ磯風だ
この磯風の恐ろしいところは一見普通の料理に見せ、一切の毒物反応を検出させないところであろう
「ラットで試したか?」
「大丈夫だ、食後30分の生存は確認した」
「…30分以上は?」
「眠くなったのだろうな、まるで母の胸に抱かれた子供のように安らかに眠ったよ」
そうか、30分か…
即死じゃ不服だろうから時間差を与える感じか
使い方を間違えなければこれほど理想的な毒物はあるまい
「さぁ、おあがりよ!」ドヤァ!
「いやいやいや、おあがりよじゃねーよ!」
「そうか?違うか?ならば………会心の一食や!」ドヤァ!
「会心の一撃の間違いだろがァァァァァ!!」
「大丈夫だ!提督はラットのような軟弱者とは違う、強い生命体だ!ラットとは生物としてのステージが違うしな!」
「誉めてるつもりかもしれねーが何一つ嬉しくねぇよ!!」
「そうか、ではそろそろ食してはどうだ?オムライスはホカホカのまま食すのが美味いのだぞ」
「磯風くん」
「なんだ?」
「実は僕はオムライスが嫌いでね」
「そうか、では今日が自分革命になるな」
「医者から止められているんだ」
「そうか、それはヤブだな」
「実は朝からお腹急降下でね、椅子と便器を行ったり来たりさ」
「大丈夫だ、この磯風、常に正●丸の準備がある」
…この部屋唯一の扉は磯風の真後ろ、窓にはマグナムスチール製の鉄格子、壁は厚さ50cmのブ厚いコンクリート造り
なんでこんな部屋にしてしまったのか、我ながら後悔しかない
「なんならこの磯風がフーフーしてやるサービスをつけてやろう」
正面から行くか?奴を抜くにはゾーンに入るか?いや、無理だ
ならば光速の世界に入門する?いや、奴の神速の超反応がある
…古典的だが猫騙しで虚を突くか?
「ほら、口を開けるがいい」
行けるか?一瞬、虚を突いてボディに虎砲を叩き込むか、いや、先に虎爪で目を潰すか?
「磯風くん」
「なんだ?」
「前々から気になっていたのだが、左右の靴下のサイズが違うんじゃないか?」
「あぁ、これはオシャレだ」
「そうか…オシャレか」
「うむ、ほら、大きく口を開けろ、口を、痛かったら痛いと言え」
「歯医者かッ!」
ゴン!ゴン!
絶体絶命の危機に、分厚い鉄の扉を叩く音が響いた
「シツレーしまっす、オムライス作ったんすけど食べませんかー?」
なんで比叡ェェェェェ!!!?
「む?」
「おや?」
磯風と比叡の間に電流が走る、会話は無い、ただ、互いに理解し、確信したのであろう
自分の作った方が美食であると…
「まだグルメ刑務所に入れてなかったんですか?このグルメ駆逐艦、早く収監させた方がいいですよォ?」
「ハハッ?何を言ってるんだこのグルメ戦艦は、まだ“適応”しきれてないのか?」
このまま史上最悪の食戟が始まってしまう事を言葉ではなく心で理解した俺の身体はどうすればいいのか、最善の手段を執った
「まぁいい、さぁ提督よ、この磯風のオムライスを食すがいい」
「ま、待て!磯風、こ……コイツ!」
『………死んでいるッ!!』