【登場人物】
山風(緑色)
常にイライラしたような目をした白露姉妹の八女
海風姉ぇのボインを羨ましく思いつつも五月雨と春雨を見ていると自分に勇気を与えてくれる
Jervis(金色)
英国から来たリトル淑女、とてもハツラツでグイグイくる
環境のせいではなく生まれついてのアレな子
入渠ドック………それは、ダメージを負った艦が傷を癒すトクベツな風呂である
通常の風呂とは違い、癒しの効果が期待できる謎に満ちた源泉を引いているらしく湯に浸かっているだけで新陳代謝が活発となるとの話だが実際のところはよくわかっていない…
そして今日、そんなトクベツな風呂である入渠ドックに………2人の駆逐艦が来ていた
「…チッ」
梅雨時期はトゲトゲしい髪質のトゲトゲ度が増し、コンディショナーはかかせないトゲトゲの申し子、山風
「It isn't liked…キニ・イラないわネ」
梅雨時期はベタっとした髪質で自慢のサラサラ度が激減し、トリートメントはかかせないサラサラの申し子、ジャーヴィス
互いにイ級に噛まれた程度の大したケガではないが、山風は一つ上の口うるさい姉から、ジャーヴィスは口うるさい女騎士から、場所は違えど時を同じくして風呂に行けと勧められてやって来た…
互いに普通に生活し、そのうち自然に出逢ったら決着をつける、そして…夜の入渠ドックに駆逐艦が2人………勝負でしょう?
そんな暗黙の前田●世ルールの下、脱衣所で出逢った山風とジャーヴィスは互いにメンチビームの火花散らしメンチを切り合った、だが!!ここ、入渠ドックは基地施設内でも珍しい“不戦の約定”により一切の争いを禁じられし永世中立地帯ッ!!
かつてこの基地がまだ街の荒くれ者が集まる冒険者の酒場のようだった頃、あまりにケンカが絶えない事を憂いた1人の軽空母、ビッグ・ママから制定されたルールである…
「…チッ」
「ナニ見てんのチビ?ブッコロ・スーぞ」
「…ブッコロされるのはオマエ、むしろブッコロしたなら使っていい」
2人は服を脱いで丁寧に畳んで籠に放り込み、まずは身体を洗うべく洗い場へ来て座った…
「…はぁ、なんでコイツと一緒な……」
まずは髪を洗うべくシャワーを手に取った山風は2つ隣に座るジャーヴィスをチラ見すると、ジャーヴィスのお風呂セットにはアレがないコトに気付いた!
シャンプーハット!!
シャンプーをする際、シャンプーハットがないとシャンプーの泡により目に深刻なダメージを受けてしまう……しかし、シャンプーハットさえあれば完璧ではないにせよダメージの90%はカットできるッ!!
「コ…コイツ!ま、まさか…!?」
シャンプーハットを使わないのか!?あ、ありえない…シャンプーハット無しでシャンプーなど自殺行為に等しい!海風姉ぇほどのボインならいざしらず!このキンパツチビがあの耐え難き苦痛に耐えられるワケが…
「ナニチラチラ見てんノ?」
「…見てないし」
ジャーヴィスから目を背けた山風、疑惑は確信に変わった…!使わないつもりだ!シャンプーハットを…ッ!そしてコイツは腹のナカで嘲笑っているッ!“キャハハハッ!コイツshampoo hat使ってルー!Darling見テ見テー!マジダッサーいキャハハハー!”と…
「…クッ!」
使うワケにはいかないッ!!姉の海風姉ぇや妹の江風に負けるのは別に悔しくはないが、このキンパツチビに負けるのだけは絶対にイヤだ!その、剥き出しのPRIDEが山風に火を点けたッ!
山風は手にしていたシャンプーハットを床に置き、覚悟をキメてシャンプーのボトルを押した
ーーー
洗い場に座ったラッキー・ジャーヴィスことジャーヴィスは焦っていた、よくよく見たら、自分のオフロセットーにshampoo hatがない…ッ!!おそらくは部屋に忘れてきてしまったのだ…!これはあまりにも痛いシッパイ!痛恨のmistake!
そもそもArkのヤツが“Jervis、いつまでそんなモノ使っているんだ?オマエも女王陛下の英国淑女たる者、いつまでもそんなものを使っていては…”と、毎度毎度セッ・キョーしてくるのが悪い、そう、ゼンブあの口やかましい説教女騎士が悪いのだ
…そしてあのトゲトゲチビ、こっちをチラチラ見てる
たぶんアタシを嘲笑っているのだろう“…うわ、あのキンパツチビ、シャンプーハット持ってない……ダサ、テイトク、あのチビ、マジダサ坊だよ…”と…
「クッ!」
せめて他のヤツならアタシ忘れちゃっター!貸しテ貸しテーとfriendlyに話しかけるところだがコイツにだけは借りを作るコトはできない!たしかにshampoo hatは欲しいが、ここで退くコトはできない!失われるッ!PRIDEが!
ジャーヴィスは覚悟をキメ、シャンプーのボトルを押した
「ダイジョーブ…ダイジョーブ…」
そう、ダイジョーブだ…Arkのバカと一緒にオフロ行くと頭を洗ってやるぞーとか言ってアタシの頭をワシャワシャ洗う日もある、ダイジョーブ、耐えられる!ってかArkのヤツ乱暴すぎるのヨ!
とりあえず丁寧に、とても丁寧に己の髪をしっとりと洗う…
「クッ!!」
目にキタァァァァァ!!泡が!泡が目にィィィィ!!クソッ!!shower!showerで洗い流さな…!!
ーーー
無いッ!!?シャワーが…!シャワーがない!?目の前に…!右手の届く範囲にあるハズのシャワーに手が届かない!
山風もまた、苦しんでいた…
たまに海風姉ぇと一緒にお風呂に行くと髪を洗ってくれるが海風姉ぇいつまでもシャンプーハットとか恥ずかしいですよと使わせてくれず、泡のダイレクトアタックに苦しむが自分なら大丈夫!そう大丈夫だと覚悟をしていたが大丈夫じゃなかった…!やっぱ海風姉ぇみたいなボインじゃないとダメなのだ…!?
両目をヤられ、懸命に右手を伸ばす山風だったが、やはりシャワーを手にとることは出来ず、山風は最後の手段に出た…ッ!!
湯船に顔を突っ込んで泡を除去する!!
山風は見えない目でフラフラと立ち上がり、たぶん湯船のある方向へと歩きだした………湯船は洗い場と間逆、そっちに行けばお湯が…!お湯がある…!
ゴンッ!!!
「痛い!?なに!?」
「アイッター!!っ…!ナ、ナニ!?」
ーーー
奇しくも、ジャーヴィスもまた、同じ結論に、湯船に顔を突っ込むと言う結論に至っていた…
ジャーヴィスも見えない目で湯船へとフラフラ歩き、山風と額直撃の接触事故を起こしたのだ…
「アイッタ〜………クッ!ドコ見テんの!」
「…オマエこそドコ見てるの!邪魔!」
「ハァ!?ジャマはテメーネ!トゲトゲチビ!」
ジャーヴィスのパンチは空を切り、そのまま勢い良く山風の身体と接触し…
「コ…コイツ!?」
ジャーヴィスは戦慄した、ぶっちゃけ、目が泡でヤられたせいでよく見えないがこのトゲチビ、なんか柔らかいと……
「クッ…離れ…て!」
…そういやコイツのsisterにはやたらとボインがいっぱい居る気がする、まさかこのトゲチビもその片鱗が…いや、たしかな可能性が感じられるのだ、今!この手に掴んでいるのは腹の肉なんかじゃあない!
………始末するしかない
アタシとDarlingのゼッ・チョーをジャマする可能性は排除しなければならない、ってかムカつく
ジャーヴィスは見えないものの、山風の位置はわかっているので、とりあえず肘を振り回してみた
「痛い!!こ、このキンパツ…チビ!何すんの!!」
山風も見えないものの、自分の射程内にいるのはわかっているので腕を振り回すとナニか当たった
「イタッ!!こ、コノ…!この汚らしいアホウがーッ!」
互いに見えてはいない!だが射程内に確実に居る!ジャーヴィスと山風は互いにとっくみ合いになり、このチビだの!このブスだのキィーキィーと醜い罵り合いを開始し…
つるん…っ!!(石鹸)
「あ」
「あ」
なんだここは!滑るぞ!と思った時は既に遅かった…
2人は石鹸でツルツルになった床に滑り、勢い良く頭を強打した…
◆◆◆
五月雨のアホンダラが有給取っていない執務室、そういや今、入渠ドック誰も使ってないハズだし掃除でもするかと来てみると、なんか緑色のチビスケと金髪のチビスケが69みたいな形で白眼を剥いていた
「………ナニやってんだ、コイツら」
風呂でハシャギすぎガールか…?
「とりあえず、誰か呼ぶか…」
この後、手痛いタンコブを作ったらしいが山風とジャーヴィーくんは無事に生還したらしく、ついでに山風は海風姉ちゃんからこっぴどく怒られ、ジャーヴィーくんは陛下からお言葉と尻打ち頂いたそうな…