不健全鎮守府   作:犬魚

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秋のびっくりするほど平和的回

【登場人物】

提督(紳士道に殉ずる紳士)
悪球に強く、ストレートにはわりと弱い

五月雨(サミー)
申告敬遠でいいですか?

石垣(そーゆー時期)
占守姉妹の末っ子、クソでもメスでもないガッキー


提督と五月雨とカタガッキー

秋雨最前線からの台風フルコースに悩ましい秋の執務室、先に来ていた秘書艦の青髪ロング子に今日も寒色系だなオイと小粋なテイトクジョークを交えた挨拶をしつつ、いつものように基地スポの紙面を開いた…

 

「奇跡の逆転優勝へ!アイオワ、シーズン2度目のノーヒットノーラン達成か…」

 

そして大鯨ホエーヌズはBクラス確定か、ママのしかめっツラが目に浮かぶようじゃわい、ガハハハハ…

そんなエキサイティングな記事を読んでいると、秘書艦サミー子は何か言いたげな目でこちらを見て…

 

「コーヒーでも淹れましょうか?」

 

「いや、ティーにしてくれ、ブランデー入りのな」

 

「はぁ…?」

 

………まぁ、コイツが言いたいコトはわかる、たぶん俺がこの執務室に入って来た時から気になって気になって仕方ないのだろう、うん、仮に俺がコイツの立場なら俺だって気になって気になって仕方ないと思う

 

「…あと、そっちの子はオレンジジュースでいいですか?」

 

「そうしてくれるかね」

 

俺の両肩で足をブラブラし、まるで肩車に乗るように俺に乗っているそっちの子、占守姉妹の末っ子のガッキーくん…

 

何故この子が朝っぱらから俺に肩車させているのにはとても深い事情があり、説明すると大変長くなる…

 

「オレンジジュースです、どうぞ」

 

「ありがと」

 

サミーからオレンジジュースの入ったグラスを受け取り、キチンとお礼を言えるこの子はとても良い子なのだろう、まったく……海防艦は最高だな、その純粋さに照らされて、俺も自分を偽らず、素直に生きら……

 

「なワケねぇーだろッ!!」

 

思わず両手で机をダァン!した俺は五月雨にちょっとお話いいですか?とあくまで紳士的に話しかけた

 

「なんですか?」

 

「ツッコめよッ!!この異常事態にツッコめよ!!執務室に入って来た時点でわかるだろォ!?なんで朝っぱら肩にちっちゃい艦載せてんの?って!ロ●コンかナニかなんですか?っていつものキレのあるストレート放ってこいよッッッ!!」

 

「…いや、今更ツッコむほどのコトじゃないかと」

 

「じゃナニでツッコむんだよ!あ?オマエは俺のなんだ!?あ?」

 

「…部下、ですかね?」

 

五月雨は自分用に淹れたティーを飲みつつ、菓子棚を開けて買い置きのチ●コパイを取り出すと、俺の両脇あたりに足がバシバシ当たり…

 

「王!王!アレ、アレ食べたい!」

 

「だとよ、オイ、ガッキーくんそれ食べたいって」

 

「はぁ?」

 

五月雨はチ●コパイの小袋を2個、こちらに投げて寄こしたのでそれをキャッチし、1個をガッキーくんに渡してやった

 

「ってか提督、海防艦の子に王とか呼ばせてるんです?正直ドン引きです」

 

「呼ばせてない、この子が勝手に呼んでいるだけなのだよ」

 

このガッキーくんは天龍や木曾と同じく“そーゆー時期”に早めに入門しているらしく、このガッキーくんにとって、俺は現世にて提督の身となっている邪眼の王らしい

 

本来なら、俺は女子供にも容赦しない主義、提督様を舐めたクソガキには容赦なく垂直落下式のブレーンバスターで硬い床に叩きつけるところだが…

 

「美味しい」ニマァ…

 

「そうかね」

 

…ただ純粋に、俺を邪眼の王だと慕う純な子供、まぁ、もう少しぐれー“ユメ”を見せてやってもいいだろう…

 

「ドン引きです」

 

「ドン引くな、俺だってツレーんだ」

 

特に肩とか、ってか俺は剛力タイプではなく溢れる知性タイプなのでたとえ子供とは言え、延々と肩に乗られると身体に重大なダメージを受けるのだよ

 

「で?今日はその肩車スタイルでお仕事ですか?ガチロ●コンのペド野郎提督」

 

「ガチロ●コンのペド野郎提督じゃない、提督だ」

 

こやつめ、コケにしやがって………しかし俺だってこのままでいくつもりはない、まぁ所詮は子供の浅知恵、どうせすぐ飽きるだろうと思ってはいるが…

それに、このままでは俺は喫煙所どころかおしっこにすら行けないのだよ

 

「まぁいい、サミダンテ、この状況を可能な限り平和的に解決すべきか、卿の案を聞きたい」

 

「…はぁ?平和的解決ですか?………あと、五月雨です」

 

この状況、武力による解決は容易い、いっそガッキーくんを床に叩きつけてやればいいだけだからな!しかし今回、それは私の望むところではない、平和的解決となるとこれはなかなか難しいと言わざるを得ないのだ

 

「そうですね…とりあえず石垣ちゃんの生足ペロペロとかしてみては?」

 

「………その行動に平和的解決への意図はあるのか?」

 

「いえ、特にありません」

 

…俺は手にしていたチ●コパイを五月雨に投げつけた

 

「痛っ」

 

「次舐めたコトぬかしたらテメーのその髪、石鹸水でバリバリにすっからな」

 

五月雨は大して気にした様子もなく、小粋なサミダレジョークですよとか言いつつ投げ返されたチ●コパイを今度は俺の頭上めがけて放り投げた

 

「とった!王!とった!」

 

「はいはい、取れた取れた、ナイスキャッチナイスキャッチ」

 

そしてガッキーくん、チ●コパイをキャッチする為とは言え提督の上でいきなり動くのはやめてもらいたい、今、首に強烈な負荷が掛かったのだよ

 

「…サミダリューン、とりあえずこのまま仕事するから、何か良い案を思いついたらすぐに私に伝えてくれないか?すぐに」

 

「わかりました」

 

 

この後、お昼の時間まで俺の荷重負荷トレーニングは続き、お昼のチャイムが鳴って俺から降りたガッキーくんはお昼は姉妹で食べると言って執務室から去って行った…

 

「お昼どうします?私、夕張さんとおそば食べようって約束ありますが…?」

 

「………行ってきなさい、俺は疲れている」

 

「そうですか」


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