不健全鎮守府   作:犬魚

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神前決闘!戦士の中の戦士!

【登場人物】

五月雨(白露型)
由良さん曰く、ワリと短気でキレ易い

叢雲(吹雪型)
前回改二に進化したヨコスカ所属の叢雲
アツくなり易いが物事は冷静に判断できる有能なタイプ


提督地獄変【最終章⑥】

東西のプライドを賭けた公式演習において前代未聞の一騎討ち!1対1!駆逐艦VS駆逐艦の戦いに、開戦前はやる気あるのか?海軍舐めとりゃあせんかぁ?と批判と不満の空気が漂う会場だったが………

 

『ウオオオオォォォォォ!!叢雲速攻ーッ!!』

 

『あの小柄でこのスピード!参るぜ!』

 

『フッ、俺達はヤツが敵じゃなかった事を神に感謝しなけりゃなるまい…』

 

主砲も魚雷も不要ッッ!!開始早々真っ向勝負のカチ合いからの高速格闘戦、そして、この大舞台で進化した叢雲改二…

 

今や会場に開始前のお通夜ムードは無く、この大舞台の主役2人に向けて熱狂と興奮の叫びを上げていたッッッ!!

 

『『ムッラクモ!ムッラクモ!ムッラクモ!』』

 

『『『コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!』』』

 

『『サッミダレ!サッミダレ!サッミダレ!』』

 

そして、会場の熱気に応えるかのように………戦いは叢雲が終始優勢のペース、怒涛のラッシュで五月雨を攻め、五月雨の方はと言うと、叢雲のラッシュを防御するのがやっとと言った動きでその猛攻を凌いでいた

 

◇◇◇

 

「……」

 

叢雲は切り札である改二と言うカードを使った、このまま一気に押し切れるか…?今、俺が出すべき指示は……そのまま攻勢で間違いではない

 

しかし、相手は彼と、その右腕とも言える秘書艦…

 

彼の打ってくる手を考えるのは考えるだけ無駄だ、今、警戒するのは叢雲の相手であるあの白露型六番艦五月雨、事前に提出された資料では性能はいたって普通、練度こそ上限に達しているが平凡の域を出ない駆逐艦、だが………ここ数年一度も海域作戦の出撃は無し、実戦から遠ざかっている

 

過去の作戦資料を調べてもこの五月雨に関してはかなり前のデータしか無く、今と昔ではどう違うのかまるで予想がつかないが、過去のデータを調べている中で、一つ目を引くものはあった…

 

『『『ウオオオオォォォォォ!!』』』

 

『ダウンーーーッッッ!!叢雲がダウンしたァァァ!!』

 

突然の大歓声で思考を中断し、すぐに戦場の叢雲に目を移すと、叢雲はダウンと言うより、スリップして尻もちをついたような形で座り込んでおり、すぐにインカムでそこから離脱して距離をとれと指示を出した

 

「チィ!!」

 

「無事か?」

 

「え、えぇ……掠っただけよ」

 

ただ、直撃を貰ってたらヤバかった…と続けた叢雲は少し荒い呼吸をしているようなので、とりあえず一旦距離を置いて態勢を整えるように指示を出す

 

「あんにゃろう……追撃はナシか、舐められたものね」

 

「いや、あっちも追撃する余裕は無いんだろう」

 

「…そーかしら?私のラッシュなんか気にしてなさげな澄まし顔じゃない?」

 

「…いや、そうでもないさ」

 

叢雲の波状攻撃、たしかに致命傷は一度もなかったが相手も無傷で済んでいない、速射砲のような攻撃をひたすら亀のように防御に徹し、タイミングを計りカウンターで大砲を撃ち込んで来るタイプ…

 

過去のデータでわかった事だが、この五月雨は、敵旗艦の撃破率が高い、戦艦、空母、重巡、自分よりも火力で勝るチームの中でおいて、確実に大きな戦果を挙げていた

 

「今ので確信したよ」

 

「アンタの読み通り、カウンター型ってワケね…」

 

こちらと同じく、相手もインカムで何か打ち合わせをしているようだが、狙いがわかった以上、こちらもそれなりの対策はある

 

「行くぞ、叢雲……第2ラウンドだ」

 

「オーケー…やってやるわ!」

 

◆◆◆

 

「もしもし?もしもーし?チッ、あの野郎、通話切りやがった」

 

バカが、一撃で決めろって事前に言っといたのに外しやがって、これはマズい流れになったじゃねーか

 

こっちに大砲があるとわかった以上、ここからは確実に警戒してくる、性能面で言うならサミーよかあのツンツン白髪の方が間違いなく上、現に今のラッシュで危険な場面が何度かあった

 

「…まぁいいか」

 

「まぁいいかで済ますんだ…」

 

本来、提督様専用である筈の指揮官席の隣に座っている由良さんから冷静で的確な意見が入るが無視しよう

 

「んなコト言ってもアイツ通話出ねぇし、なんか考えでもあるんだろ?」

 

「どうかなぁ〜…あぁ見えてサミー子ワリと短気でキレ易いし、ね?」

 

「そうだな、まぁアイツも気が短いとかキレ易いとか由良さんにだけは言われたかないだろうが」

 

「今なんて言った?ね?」

 

由良さんからの冷静な目突きと的確な金的をガードしつつ、少々のインターバルを抜けて再び演習海域中央へと戻った五月雨に視線を移すと、五月雨は再び攻勢に出るべく近付いて来る叢雲を迎撃するべくダラっと下げた両腕をあげていた

 

「さぁて……川奈クンの指示はどうかねぇ」

 

俺ならまずスタミナを削れって指示だな、一撃の距離にはまず入らねぇ…

 

ーーー

 

「さぁ〜………て!第2ラウンドと行きましょーか!」

 

「そうです………ねッ!」

 

近付いて来る叢雲を蹴りで牽制し、先程とは打って変わって脚を使って海上を右に左に動く五月雨は、叢雲との距離を開く

 

「…?ナニ?今度はスピード勝負?」

 

「スピードで勝負なんかしませんよ、単に近付かれるとウザいかなって…」

 

「アンタ………ホント、なかなか言うわね、マジで」

 

「そうですか?」

 

先程のラッシュ、防御に徹していたせいで有効打は殆どなかったものの、叢雲の攻撃は確実に五月雨に当たっているし、スタミナは削っている…

 

今、さらに距離を取ると言うなら、やはり五月雨にとってダメージの蓄積はマズいと言うコト…

 

「逃がさないわよ!!沈めッッッ!!」

 

「うわ、速っ………っと、さすが叢雲ちゃん、同期として尊敬します」

 

「そりゃどーも、ついでにラクに沈んでくれたらもっと嬉しいけどねッ!」

 

「それはイヤです」






不定期更新の最終章ですが、㉕で最終回です

年内で最終章前半戦は終わらせようと思ってます

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