【登場人物】
提督(クズの人)
必殺技はピラニアンローズ
明石(クズ大人)
金と権力が本当に好き
「いらっしゃいませぇ~………って、なんだ、テイトクか」
「なんだとはなんだ?あ?なんだとは?提督がハンサムじゃあいけないのかね?」
基地施設内にある雑貨品からアニメグッズ、あと資材も少々取り扱っているみんなの店、アカシメイト…
1日1回、感謝の改修工作するだけが主な仕事の明石が経営する小売店である
「ジャ●プと缶コーヒーと菓子パンくれや」
「へいへい、っーかイイトシこいてまだジ●ンプ読んでるんですか?少年ジャ●プですよ、少年、わかってるんですかオッサン」
「やかましい、オッサンじゃない、提督だ」
そんな事は言われるまでもなくわかっとるわい、だが男と言うものは就職し、酒の味を覚え、社会の軋轢と不合理に揉まれ、清濁併せ呑む大人らしさを知っても常に、心の何処かで少年の心を持っているものだ…
そして少年だったあの日、友情・努力・勝利、大切なことを教えてくれたのは学校の教科書なんかじゃあない、大切なことはいつもジ●ンプが教えてくれたのだ
「まぁアレだな、もうここまで来ると俺が先に死ぬかワン●ースが先に終わるかのチキンレースだ」
「へぇー…」
明石の野郎は大して興味もなさげにレジカウンターに片ヒジをついたまま、あーそーなんですかーとやる気なさげに俺のアツい心意気に相づちを返してきた
「テイトクぅー…な~んか儲かる話ないですか~?儲かる話」
「ねぇよ」
「楽な感じでサクッとバシッと金が稼げる感じのぉー」
「だからねぇって言ってるだろーが、あるならまず俺がやっとるわい」
「ですよねぇー」
クズ…っ!まっことクズ!このピンク、工作艦としての仕事より常に金の事を考えおるわい
「あ、そーだ、プロレスとかどーですか?プロレス、こないだテレビで見たんですよ」
「プロレスか…」
「プロレス興行でもしたら儲からないですかね?」
「プロレス舐めてんのかテメーは」
しかしプロレスか………案としては意外と悪くない、基地開放祭の時は大抵何かしらのイベントをやっているし、特に、格闘技イベントはいつも立ち見ができる大盛況だ…
「………ふむ」
「なんですか?何かいい案あるんですか?」
「そうだな、ビューティー明石VSヘルシー夕張、因縁の有刺鉄線デスマッチとかどうだ?」
「イヤですよ!ってかなんで私が出るんですか!?」
「バッキャロー!金が欲しいんだろーが!頭で稼げねーなら身体つかわんかい!身体!だからテメーはピンクなんだよ!」
「や、ピンク関係ないし……ってかなんなんですか?そのリングネーム」
「思いつきだ、なんだ?ビューティー明石が気に入らんならダンプ明石でも…」
「ビューティーで」
ビューティーと呼ばれてそう悪い気はしないのか、明石はビューティー、ビューティーかと呟きつつ気色の悪い笑みを浮かべていた
「よし、じゃ宣伝は俺がしてやるからオマエはキチンと身体作っとけよ」
「え?マジでやるんですか?」
「金が欲しくないのか?」
「や、欲しいですけど………ただ、痛いのはやだなーって」
「ナマイキ言ってるじゃあないよこのピンクが」
こうして、初冬の基地特別興行、ビューティー明石VSヘルシー夕張の対戦に向けて俺達は手を取り合った…
◆◆◆◆◆
「はいみなさんこんにちはー!恐縮の申し子、実況の青葉です、今日は冬の基地特別興行!ビューティー明石VSヘルシー夕張のプライドを賭けたデスマッチ!本日の素敵な解説は雅な駆逐艦、初春様に来て頂いてます、こんにちは!初春様」
「うむ」
「いやぁ~…まさか金の為とは言え、明石さんが自らリングに上がるとは予想していませんでしたね!」
「そうじゃのぉ~」
「さぁ!その明石さんと対する夕張さん!実は両者は昨年の最大トーナメント1回戦で既にぶつかったコトのある顔合わせで、その際は明石さんが勝利と言う結果に終わってますが~…」
「まぁ、アレは相手が自爆したしのぉ」
昨年の最大トーナメント1回戦、明石VS夕張は明日を捨てた夕張がいきなりマックシングで自爆すると言う結果に終わっている…
「見たところ今回は大丈夫そうですね、夕張さんもかなり仕上げてきたみたいです!見てくださいよあの男受けするコスチュームに細いウエスト!マジイラつきますよ!」
「そうかのぉ?」
「そして対する明石さんも今日の為に身体を作ってきたとの情報があります!見てくださいよあのヤラシーコスチュームにムチっとした身体!チ●ビ勃ってますよ!」
「そうかのぉ?」
ーーー
提督による事前の宣伝により、地域の住民達だけでなく大観衆を集め、いよいよ始まるビューティー明石(工作艦)VSヘルシー夕張(軽巡)因縁のデスマッチのゴングが鳴ったッッッ!!
「フォーッ!!」
「な、なにぃ!?ドヘァ!!」
ゴング直後の明石強襲!!フライングニーが夕張に炸裂し、夕張はいきなりマットに転がったがすぐに立ち上がり…
「クッ!いきなりカマしてくれましたねこの守銭奴…!」
「フッ、この明石がただ可愛いくて気配りのできる大人の女性だとは思わないコトね」
明石はリング中央で腕を振り、オラオラかかってこいよこのデカメロン!肩にちっちゃいクレーン載せてんのかー?と夕張を煽り、夕張は一旦ロープ際まで下がるとはロープの反動を利用して勢い良く飛び出した!
「喰らえ!アールスメロンクローズライン!」
「フォーッ!!」
ドガァァァ!!
「クッ!アレを受け切った!?」
「フッ!ゆるいわァ!!そんなアンタのア●ルみたいなユルい攻撃でぇ〜……」
明石は夕張の腕をロックしたまま絡み付き夕張の身体を締め上げるッ!!
「グエエエェェェェ!!」ギチギチギチギチ!
「かーらーのぉー!」
明石は夕張のロックを解除して上空に放り投げると自らも飛び、夕張の両足を脇にかかえて両腕をキーロックに固めツームストンドライバーの体勢で勢い良くマットに降下するッッッ!
「喰らえ!ア●ル・カタストロフ・ドロップ!!」
「グエエェェェェ!!」
ドグシャァッ!!!
ーーー
「き、キマったーッッッ!明石さんの
「う〜む、ア●ルとはなんじゃ?」
「ウ●コを出し入れする穴、平たく言えばケツのアナです、初春様」
「ふむ、菊門のコトか」
ア●ル・カタストロフ・ドロップをまともに被弾し、マットに崩れ落ちた夕張……
まさかの明石優勢で夕張が何もできずに終わる展開など観衆の誰もが予想だにしなかっただろう、観客席からはざわつきと共に、マットに転がり動かない夕張にアツいエールの声が聞こえてきた
『ガンバレ!ガンバレ!メロンのお姉さん!』
『そうだぜーッ!オマエはいつだって奇跡の大逆転を見せてくれるじゃないかーッッッ!』
『元祖唯一無二の4スロット軽巡ーッ!』
『『『ユー・バリ!ユー・バリ!ユー・バリ!』』』
「あーっと、場内空前の夕張コールです!まさかあの夕張さんがここまでエールを受けたことがあったでしょうかーッ!」
そんな空前の夕張コールが効いたのか、マットに転がったまま動かなかった夕張が、よろよろと立ち上がった…ッッッ!!
「立ちましたーッ!夕張さん立ち上がりました!まだ死んでない!ヘルシー夕張!ア●ル・カタストロフ・ドロップを受けまだ死んでないーっ!」
「ほぉ…」
ーーー
「バ、バカな…!夕張!何故立ち上がれると言うのだ!?」
「…バカね、明石……アナタのその技じゃ私のア●ルをカタストロフできるワケないじゃない、たしかに全身を痛めつけられたケド、この通り!私のア●ルは無事よ!」
「クッ!!」
たしかに!ア●ル・カタストロフ・ドロップは大技ではあるが、その名前とは裏腹にア●ルにカタストロフを与える効果はないッ!!
「この程度、痛みの内にも入らない………明石、教えてあげるわ!真の痛みとは苦痛の中に快感が存在するもの、アナタの攻撃には愛がない、愛無き力は無に等しい」
「あ、愛…?愛ですと……?」ガクガク…
この時、明石は心の底から恐怖した…
愛!まったく意味がわからない!愛があろうがなかろうが痛いものは痛いに決まっている!コイツがナニを言っているのかまるで理解できない!?
そう、思えばこの明石が愛を失ったのはいつだろう…?そもそも自分は愛を持っていたのだろうか?いや、たしかに明石の中にもかつては愛の心があったのだ……
いつの頃からだろう、愛から目を背け、金こそ全てだと自分に言い聞かせてきたのは………そう、あれはまだ明石が純真で女の子はみんなプリキ●アになれると信じていた頃………
「テイトクインフェルノーッ!!
グシャアッッッ!!!(テイトクインフェルノ)
「ンギィイイィィィィ!!!」
ーーー
「キマったァァァァァ!!ヘルシー夕張が放った掟破りの海軍三大奥義の一つ!テイトクインフェルノが炸裂ーッ!!ビューティー明石!壁にメリ込んだまま動けない!これは死んだァァァァァ!」
「…決着じゃ」
こうして、ビューティー明石VSヘルシー夕張のデスマッチは終わった……何故最後に明石は動けなかったのか、何故明石が守銭奴になった回想シーンがキャンセルされたのか………それは誰にもわからない、ただ、勝ったのは夕張であり、勝者となった夕張はリング上で提督からアツいビンタを受けて気色の悪い笑みを浮かべていた
●ビューティ明石 VS ○ヘルシー夕張
24分58秒、テイトクインフェルノ
◆◆◆◆◆
後日………
「まったく、ヒドい目にあいましたよ」
「ヒドくない、提督だ」
みんなの店、アカシメイト…
テイトクインフェルノのダメージから一週間程店を閉めていたが無事に再開し、今日もレジカウンターでやる気なさげに頬杖ついていた明石は全身が痛いとブツブツ文句をタレていた
「そういやテイトク、私の取り分」
「あ?」
「私の取り分、ファイトマネー」
「ねぇよ、そんなもん」
「なんでッ!?」
「オマエの治療費とオレのパチンコ代に全部使ったわ」
「ク…クズ!まっことクズだわこの男!救えない…っ!」
「そのままオマエに返してやるわい、まぁ俺も鬼じゃねぇし、メシぐらい奢ってやるよ」
「ハァー?メシぐらいで私の怒りがおさまると思ってるんですかねぇー?このクズは!いいですよ!ちょっと提督とは一度キッチリ話をしないと思ってたんですよ!お酒飲めるトコ行きますよ!酒飲めるトコ!」
「よーし、オマエの快気祝いだな!ガハハハハ!」
「笑いゴトかッ!!」