不健全鎮守府   作:犬魚

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No.1しゃぶりたガール

【登場人物】

提督(紳士)
何故なら本当の紳士を目指しているからだ!

伊13(潜水艦)
通称ヒトミちゃん、とても真面目で妹想い


提督と伊13とチン・ピラ

ある晴れた昼下がり、孔子の論語について考えつつ歩いていると、自販機コーナーのベンチのところに何やら見知った顔があった…

 

「…こんにちは、テイトク」

 

「やぁやぁ、キミはたしか、えー………伊13クンだったかね?お姉さんの方」

 

「…はい」

 

昨今仕事量が激減したものの、未だその高い実力は評価を下げる事はないスーパーエリート集団、潜水艦ズ

その、エリート集団でも比較的新顔の部類に入るこの娘、伊13ことヒトミちゃん、物事を深く考えないおバカの多い潜水艦の中には珍しい物事を深く考えるタイプらしく、その常々ナニかを考えている物憂げな様子はあまりにも妖艶であり、潜水艦イチのNo.1しゃぶりたガールと言ってもいいだろう…

 

「ジュースでも買いに来たのかね?」

 

「…いえ、14ちゃんを待ってるんですが……なかなか来ないなって…」

 

13ちゃん曰く、最近は出撃による仕事も無いのでお金があまりないらしく、妹と一緒にアルバイトをしているとかなんとか…

 

「ちなみに、何のバイトかね?魚雷磨きかね?」

 

「…いえ、なんかこう……サルがシャンシャンするオモチャを組み立ててます」

 

「あぁ、そう…」

 

以前、赤城のヤロウに工場のバイトを紹介して貰ったらしい…流行ってんのか?アレ

 

「…正直、私としてはああゆう仕事が向いてるなって……結構、好き、です…」

 

「そうかね」

 

この独特の絡みつくような喋りと声、イチイチ可愛いなこの娘、もしかして誘っているのだろうか?いや、誘っているんだな!誘っているんでいいんだよな!

 

「…14ちゃんと、アルバイトのお金貯めて……デパートでお洒落な服買おうね、って…」

 

「ふ~ん」

 

なるほど、MITSUK●SHIか…ッ!しかし13ちゃん、13ちゃんさえその気ならおじさん何でも買ってしまいそうになるのだよ、ぶっちゃけ一般的な男子ならば13ちゃんの出す淫のオーラで精神をズタズタに破壊され、骨抜きにされるコトは必至…ッ!

もし俺が鋼の精神力を持つ知性溢れるメガネ男子でなければ彼女の淫気の前に屈していたやもしれん…

 

「しかし来ないな、イヨティンは…」

 

「…そうですね」

 

「どのくらい待っているのかね?」

 

「…15分くらいです」

 

いけないなぁイヨティン、お姉さんをお待たせしては……

よし!ここはこのハンサムな提督がおバカな妹が来たらガツンとヒトコト言ってやろうじゃあないか!チョーシに乗るな!ってネ!

 

そんなワケ、自販機コーナーでさらに待つこと10分…

未だに姿を見せないイヨティン…

 

「…14ちゃん何かあったのかな、ハッ!?も、もしかして事故とか…!怖い人に絡まれて震えているのかも…!」

 

「いやいや、外ならいざ知らず、基地の中でさすがにそれはないかと…」

 

「…まさか、急病…っ!運悪くどこかの物陰に隠れるように倒れこんでしまっているのかも…!14ちゃん運が悪いから…」

 

「まぁまぁ、そう後ろ向きに考えないで」

 

「…14ちゃん、14ちゃん……」ポロポロ…

 

イヨティンへのあまりの心配に涙を流す13クンの肩を叩き、安心しろ!安心するんじゃあ13クン!と勇気づけてみるが、やはり不安と心配は拭いきれないらしい…

やれやれ、コイツは困ったコトだが……この提督は紳士である、やれやれだが……妹好きのお姉さんを見捨てるワケにはいかねぇぜーッ!

 

「まぁまぁ13クン、とりあえずイヨティンを探してみようじゃあないかね」

 

「…テイトク、ありがとうございます……優しい、優しい人、優しい人は、好き……です」

 

「ガハハハハ!まぁ、提督の半分は優しさでデキているからね!ガハハハハ!」

 

ヒトミを潤ませるヒトミちゃんか………殺人的な破壊力だッッッ!!もし俺が本当の紳士じゃあなかったら間違いなくこの娘をファックしていたよッ!

クッ…!ムスコのムスコさんがギンギンになりそうだ…ッ!し、鎮まれ!鎮まれ俺の聖剣…ッ!まだその時じゃあない!

 

---

 

………そんなワケで、13ちゃんと共にイヨティンを探す旅に出発した俺だが、13ちゃん曰く、イヨティンはアルバイトに行く前の時間潰しに談話室に漫画読みに行くとかなんとか言っていたらしいのでまずはその談話室へと行くコトにした

 

「…14ちゃん、14ちゃん…どこ……?」ポロポロ…

 

「まぁまぁ、提督に任せておけばすぐに見つかるのだよ」

 

先程からこの13ちゃんのドスケベサキュバスオーラを浴び続け、俺の理性もそろそろ怪しいな…もし仮に、今、薄暗い倉庫とかに入ったら間違いなくこの娘をファックする自信がある

 

そんな暗い理性と溢れる知性が俺の中で鎬を削っていると、談話室の方から何やら騒ぎたてるような声が聞こえてきた

 

『インチキ…っ!インチキだ…っ!!』

 

『ナニがインチキだボケ、だいたいテメーごときにイカサマするワケねーだろーが』

 

『負け犬がCanCam吠えてんじゃねーぞコラ、オラ、金がねーなら身体で払えボケ』

 

『クソッ!やめろ!やめろめろ!離せーッ!!』

 

………ナニやってんだ?マジで、っーかこの負け犬の声、どっかで聞いた気が…

 

「14ちゃん!!」

 

普段はナマケモノのようにゆったりおっとりスロウリィな13ちゃんがダッシュした、やはり今の声はイヨティンだったか…

 

談話室へとやって来た俺達が目にしたのは、ちとちよに両肩を掴まれ、ヤメロー!と叫ぶイヨティンの無残な姿だった…

 

「チクショウ…!チクショウ!あ、姉ちゃん…!!」

 

「どうしたの14ちゃん!?ナニがあったの!?」

 

「あ、え~………いや、ちょっと、空母の人と麻雀してて…」

 

「…麻雀?」

 

たしかに、談話室のテーブルの一つには今しがたまで麻雀をしていた様子がある…

イヨティンのヤツ、どうやらチンピラ空母達にうまく誘われ、カモられていたらしい…

 

「………なんで麻雀してるの?今日アルバイトって知ってたよね?」

 

「え!?あ、いや…すぐ終わる気だったんだよ!ホント!うん!」

 

「…そう」

 

どうやらイヨティンのヤツ、アルバイトに精を出すより楽して儲けたいと思ったらしいな、なんたるクズ…っ!救えない…っ!

 

「…それで?いくら負けたの?」

 

「え?あー………いやー…」

 

「…いくら負けたの?」

 

あの顔は下の毛どころかケツの毛まで毟り取られてやがるな、間違いない

 

「ククク……払えない分はお姉ちゃんが払ってくれるのかい?」

 

「美しい姉妹愛だねぇ、泣けてくるよ…」

 

チンピラオブチンピラ空母、飛龍と蒼龍、それに赤城と加賀か…

 

「フーッ~…オイ、そいつ金ねンならビデオ撮るぞ、ビデオ」

 

「ヒュー!加賀サンマジ鬼畜ー!」

 

「よっしゃ!潜望鏡チェックしよーぜ!」

 

あ、相手が悪すぎる…ッ!よくこのチンピラどもの誘いに乗ったな、イヨティンはヤメロー!とか叫びつつ手下のちとちよに引き摺られ…

 

「ま、待って!払う…!払います!14ちゃんが負けた分…っ!」

 

13ちゃんはイヨティンが負けた分は自分が払うからカンベンしてやって欲しいとチンピラどもに頭を下げた

 

「へぇ…払うんだ?アンタが」

 

「赤城ィ!」

 

「ククク………いいじゃない加賀さん、払ってくれるってなら、気持ち良く払って貰おうよ、それで丸く解決…」

 

「まぁ、赤城ィがそう言うなら……オイ、請求書書いてやれ」

 

ざわ…ざわ…

 

イヨティンが負けた金額の書かれた紙を渡された13ちゃんは、その額の大きさにフラフラと倒れそうになったので俺は肩を掴んで転倒を防止した

 

「……………14ちゃん」ブルブル…

 

「えー………その~……ゴメンね!」

 

イヨティンはスイマセンシター!と頭を下げた

 

「…すいません、最後に14ちゃんとお話させて貰っていいですか?」

 

13ちゃんはチンピラ空母どもに懇切丁寧に頭を下げ、加賀のヤロウがちとちよに放してやれとジェスチャーを送るとイヨティンは解放され…

 

「…ねぇ14ちゃん、今なんでお姉ちゃん怒ってるかわかるかな?ねぇ?お姉ちゃんね、スゴく怒ってるんだよ?ねぇ?わかる?ねぇ?うん、わかってる?わかってるの?14ちゃん、こっち見て、お姉ちゃんの目を見なさい、なんでこっち見ないの?14ちゃん今説教されてる自覚ある?ないの?なんで?ねぇ?こっちをちゃんと見て、うん、そうだよ?お姉ちゃんの言うコトきちんと聞くべきだよね?わかる?ねぇ?14ちゃんがなんで怒られてるか今、自分でわかってるの?ねぇ?いい?お姉ちゃん14ちゃんのコトが心配なんだよ?お姉ちゃん本当に心配してるの、わかってる?本当にわかってる?ねぇ?悪いコトしたって思ってる?14ちゃんはね、本当に悪いコトしたんだよ?ねぇ?いけないコトしたの、お姉ちゃんそういうコトするのは良くないコトって14ちゃんに教えたよね?ねぇ?なんで泣いてるの?ダメだよ14ちゃん、泣いたらダメ、今14ちゃんは怒られてるんだから泣く前にお姉ちゃんに言うコトあるよね?ねぇ?」

 

…両手でガッチリと顔をホールドされ、13ちゃんのマグナム説教を受けるイヨティンは、俺にチラリと視線を向け、その僅かな目の動きでたしかにこう伝えてきた…

 

“タスケテ…”と…

 

「ムリ」

 

さらばイヨティン…まぁ、悪いのはオマエだが

 

イヨティンは赤城、加賀、そして二航戦のチンピラ空母どもにも同じく救いを求めたが………がっ!無理…っ!やっぱり無理っ!救われない…っ!

あのチンピラ空母どもも13ちゃんのマグナム説教にドン引きしたらしく、カラオケいくべ、カラオケとか言って席を立っていた

 

「ったく、取りぱぐれだなこりゃ、アタマにくるぜ…なぁ?赤城ィ…」

 

「いいさ、どうせ大した額じゃない……そんなみみっちい金じゃ勝ったとは言えない、もっとデカい勝負………あるんだろ?」

 

「あぁ、あるぜ…っ!とっておき、オマエにうってつけのが…っ!」

 

加賀曰く、近日、ある高貴な王室筋のデカいヤマがあると…!頼むから国際問題だけはやめて欲しいんだが…

いや、マジで…

 

 

後日、心を入れ替え、すっかり真面目になったイヨティンは真面目にアルバイトに取り組むようになったらしく、13ちゃんも14ちゃんはやればできる子なんですととても嬉しそうに話していたが、たぶんすぐにいつものイヨティンに戻るだろう…


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