【登場人物】
提督(パイオツ鑑定士)
良いパイオツは触ればわかる、悪いパイオツは触らなくてもわかる
翔鶴(五航戦)
無敵の装甲空母姉妹の姉の方、妹の前では常に完璧
今年も豆を集めるだのワケのわからん仕事を押し付けてきた軍に不審を感じつつ喫煙所でタバコを吸っていると、喫煙所から見える廊下の先に、なんか白いのがフラフラと歩いているのが目についた…
「…ナニやってんだ?あいつ」
あの白いのはたしか………アレだ、五航戦の姉の方
常に病的な顔色をしており力の無い笑みを浮かべるその見た目の薄幸ぶりと生気の無さ、一説には、一航戦パイセンからのストレスで若くして頭が白くなったと聞いたことがあるが、たぶん間違いないだろう…
そんな病的な空母翔鶴は廊下の壁に寄りかかってズルズル前進としていたが………あ、コケた
「オイオイオイ、大丈夫かね翔鶴クン」
「……あら、テイトク…大丈夫です、大丈夫、よっこい…しょっと、ゴフッ!!」
翔鶴クンは血を吐きつつ立ち上がり、何事もないかの様に壁に手をつきながらもたれかかる…!いや、全然大丈夫じゃあないッ!!
「大丈夫です、大丈夫…嗚呼いけない、瑞鶴のおやつを用意しないと……ゴフッ!今日はお姉ちゃんお手製ドーナツよ、ゴホッ!ゴホッ!…って言ってあるんです、瑞鶴は昔から私の作ったドーナツが好きなんです…ゴブッッ!!」
「いや、そんな血を吐きながら言われても…まぁ、少し休んでいったらどうかね?」
「いえ、本当に大丈夫で……ブフッ!!」
「病院だよゥゥゥ!!」
全然大丈夫じゃねぇよッ!なんなんだこの姉は!何が彼女をそこまで生に駆り立てるんだ!この常に死に体である彼女を動かすエネルギーとはなんなんだ!?
「瑞鶴にィ……瑞鶴に、作って……作ってあげな……」
「わかった!わかったからちょっと休んでいこうな!な?ほら、ここに座って、な!」
俺は翔鶴クンをベンチに座らせ、自販機で温かいお茶を買い翔鶴に渡してやった
「ありがとうございます…」
「翔鶴クンよ、無理はいかんよ、無理は、無理をして逝ってしまっては妹さんが悲しむじゃあないかね?提督だって悲しい」
「…そうですね」
翔鶴クンはよく見るとスゴい美人なんだがこれだけ病的なのはイタダケないなぁ
「だいたいキミ、ちゃんと食ってるのかね?」
「えぇ、昨日もダブルハンバーグと山盛りサラダとコンソメスープを瑞鶴が…」
「いや、妹じゃないでキミだよ!キミ!」
「私は炊飯器のこびりついたオコゲを少し…」
あくまで、自身の生活……いや自分の命そのものを妹である瑞鶴の為だけに使っているッ!!彼女にとっては妹が全てであり、妹の幸せと健康こそが彼女の幸せ、いや、生きる為の全てなのだ…ッ!
妹の為に自身の食費を削り、妹の為に自身の健康を犠牲にし、そして時には妹の為に一航戦パイセンからうさんくさい開運グッズを購入する…
なぁ翔鶴クン、翔鶴クンよ、実に空虚な人生じゃありゃせんか?提督はそんな翔鶴クンにこそを幸せになって貰いたいのだよ、キミは誰よりも幸せになる権利を持っているんだ…ッ!
「誰よりも…ッ!!」
「………はい?なんですか、急に大声だして…」
「すまない、ついエキサイトしてしまってな、いや、本当にすまない」
「そうですか」
生気無く薄く笑う翔鶴クンはふーっと深く深呼吸をするとベンチに座って背もたれにもたれかかったが………よく見ると翔鶴クン乳デカいな、しかもほどよく柔らかそうだしハリもある…っ!おそらくはそのクッション性は並のショタボーイなら10秒で射●するだろう
妹想いな翔鶴クン相手にそんなゲスな考えはよくないなと考えていると、廊下の先から駆逐艦っぽい二人組がおしゃべりしながら歩いてきた
「あ、テイトクです」
「ティーッステイトクと……翔鶴サン、あ、もしかしておデート中でしたか?ギャハハハ!」
「んなワケねーだろ、舐めてんのかテメーらは」
数多の駆逐艦の中でもとりわけスター性の高い駆逐艦が多数いる駆逐艦姉妹、陽炎姉妹…
そのスター集団である陽炎姉妹の頂点に君臨する長女、そして次女、陽炎と不知火…
「もしかして翔鶴サンまた血ぃ吐いてたの?」
「まぁ、いつものコトですが」
「いつものコトすぎるのも問題だがな、オイ、オマエらも姉だろ?ちょっとこの翔鶴クンに妹への正しい接し方を教えてやれよ」
「妹ォ~…?」
「気に入らないコトがあれば殴ればいいのでは?」
「それな!ギャハハハ!」
コイツらに聞いた俺がバカだった
「瑞鶴を叩く………?そうね、悪いことをしたらキチンと叱るのはとても自然なコトね」ニコッ
意外…ッ!!病的なまでに妹スキーの翔鶴クンが妹への暴力を認めている…ッ!!
「…でも、それはとても悪いコトをした時だけ、モチロン、瑞鶴を叩いた後は自らも瑞鶴が叩かれた痛みを受けるわ………右の頬をぶったら、右の腕が折れるまで鉄柱にぶつけるし、左の頬をぶったら、左の腕をコンクリートの壁に叩きつけるわ」
等価じゃねぇッッッ!!!痛みがまるで等価交換してねぇよ!!大ダメージ負ってるよ!
「オイオイオイ、クレイジーだよコイツ、ぶっとんでやがんなぁ不知火」
「まるで落ち度の塊ですね」
「やかましい、それとオマエら、それが本音だとしても本人目の前なんだからオブラートに包め、オブラートに」
陽炎と不知火はひくわーとか言いつつ俺達から若干距離をとった
「……ふぅ、だいぶ休めたし、そろそろ私、いかないと…ありがとうございました、テイト…ゴフッ!」
「オイオイ、大丈夫かね翔鶴クン」
「大丈夫、大丈夫です…」
ベンチから立ち上がりフラついた翔鶴クンの身体を支えると、他意でないが翔鶴クンのオパーイが…
「あー!!テイトクが翔鶴サンのパイオツ揉みしだいてるぅー!!」
「これはかなりの落ち度ですね」
「やかましい!!っーか揉みしだいてねぇ!!たまたま手が当たっただけだ!これはアレだ、そう…ラッキーってヤツだ!」
そしてやはり尋常ではない見事なパイオツであったことを!やはり俺は正しかったのだ!とこの感動を心に刻みつけた!
「クッ!なんて良い顔ッ!」
「まるで自分が正しい事をしていると心の底から勘違いしているドス黒い邪悪そのもの!」
「やかましい、心配しなくてもオマエらを性的な目で見るコトなんざねぇよ、ただし………浜風ちゃんだけは別だがな」
「浜風…っ!私の可愛い妹を…ッ!ゆ……許すワケにはいかない!このゲスチンヤローがこの陽炎の妹を!いや、浜風だけじゃあない…!可愛い妹達の誰であれ、その薄汚い欲望をブチ撒け!●●●をブチ破って●●をしたあげくに●●●●で辱しめ!あまつさえ●●を奪おうとしている…ッ!そんなケダモノ以下の●●●が許せるハズがないーッ!!」
いや、そこまで言ってないのだよ、っーか陽炎のヤツ、駆逐艦のガキのワリになかなか性的な知識が豊富らしいな、コイツ!かなり読み込んでやがるな!
「不知火!コイツはここで始末しなくちゃあならない!今!ここで!そうしなければいずれコイツは私達が入浴中に“テイトクも、一緒に、入っていいかなぁ〜?久しぶりに…”とか言いつつお風呂一緒にしようとする!」
「なるほど、たしかに……不知火としては別に構いませんが」
「は?」
「…はぁ?なんですか?その顔は?」
「ナニ言ってるんだ不知火ィィィィィ!!オマエ!●されたいのかーッ!!」
「大丈夫です、提督はホ●、これは紛れもない事実であり、この世界の真理です」
不知火は、ホ●なんだから別に問題ない、まぁしいて言えば姉妹一のイケメンの野分は“ウホッ!のわっちイイ尻してんな〜”と掘られるかもしれませんが……と付け加えた
「………なるほど、たしかにね」
「たしかにね、じゃねーよ、誰がホ●だ」
「テイトク」
「テイトクはホ●、ハッキリわかんだね」
このクソカスども…ッ!!クソッ!誰だよ俺がホ●とか言ったヤツは!見つけ次第ケツに鉄パイプ突っ込んで現代アートみてぇに基地の運動場の隅に飾ってやんよ!
そんな決意に満ち、殺意と拳を固めていると、廊下の先を曲がり、新たな影が姿を現し…
「あ、いたいた翔鶴姉ぇー!今日ドーナツ作ってくれるって言ったじゃーん、私もお腹ペコリーヌなんだけどー」
アイツは………!あのヘラヘラ笑いながら歩いてくるアイツは!瑞鶴!五航戦の瑞か…
「あら、ごめんなさい瑞鶴、少し提督とお話ししていたのよ、すぐに作るからね」
「もぉー!楽しみにしてるんだからねー」
…さっきまで死人の顔をしていた翔鶴はもういない、今、俺の隣に立っているのは生命エネルギーと自信と知性に溢れた完璧なる姉、まさしく姉の中の姉…ッ!キングオブ姉だ…ッ!!妹の前では常に完璧であり続ける姉の鑑!
「早く作ってよねー、私、先に部屋で待ってるから」
瑞鶴はヒラヒラと手を振り、さっさと自室のある寮へと去って行った………廊下の角を曲がり、瑞鶴の姿が消えたと同時に
「ゴブオォ!!」
ビチャアッ!!(吐血)
「しょ…翔鶴ーッッッ!!オイ!陽炎!不知火!担架だ!担架持ってこい!あと医務室に連絡しろ!」
この後翔鶴は医務室へと緊急搬送されたがおそるべき執念でドーナツを作り上げ、その、揚げたてでアツアツのドーナツを妹に届けたらしい…