不健全鎮守府   作:犬魚

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誇り高き血統!Richelieu

【登場人物】

提督(1500万パワー)
意外と押しには弱い

Commandant Teste(コマさん)
ズラと言わないオシャレ水母

Richelieu(キンパツ)
通称、かませ犬のリシュリュー



提督とRichelieuと気品あるシュー

春は夜桜、夏には星、秋には満月、冬には雪、それで十分酒は美味い……しかしそれで不味いなら自分自身の何かが病んでいるのだろう

 

「へっきし!」

 

あー………風邪だな、たぶん

 

最近はワケのわからんウィルス的なものも流行っており、当基地でもうがい手洗いの徹底化を心がけている、もし規則に反した者がいれば即八つ裂きにして明日の基地スポに載るコトになるだろう

 

そんなつまらないコトを考えつつ廊下を歩いていると、教務棟の入り口辺りで駆逐艦のキッズ達がなにやら集まり……いや、ナニかに群がっていた

 

「コイツはメチャウマだわ!」

 

「メチャウマなのです」

 

「コイツは力を感じる」

 

………なんだ?いったい?

キッズ達が群がるその場所、そこに立っているのは~……誰だっけ?アイツ、たしかフランス人の…

 

「ギャン!!」

 

謎のフランス人について思いだしていると、俺の右足に何者かがハゲしく衝突し、ひっくりコケて手にしていたシュークリーム的なものを床に落としてしまった

 

「あ、ああああぁ~!暁のシュークリームがぁ~…」

 

…なんだ暁ちゃんか、なら仕方ないな

俺は大人であり紳士だ、俺の紳士道はこーゆー際のマニュアルも充実している…

 

「悪いな暁ちゃん、俺のズボンがシュークリームを食っちまった、次は五段のを買うといい」

 

俺は財布から取り出した紙幣を暁ちゃんに手渡した

 

「ありがとうテイトク!」

 

「ガハハハハ、いいってコトよ!ガハハハハ!」

 

まったく、良いコトをした後は気分がいいわい

 

しかしあのフランス人、なんであんなトコでガキどもにシュークリームなんぞ売ってるんだ?そもそも誰の許可を得ているのか?いけないなァ、提督の許可なくそんなコトをしては…

 

「オイ、そこのフランス人!ナニやってんだテメーはよォー?」

 

「?、あら、テイトク、コンニチハ」ペコォ

 

「こんにちは」ペコォ!

 

やけに低身に頭を下げられたので、ついこちらも頭を下げてしまったが……いや、コイツ、マジで誰だっけ?アホのリシュリューくんじゃなくて……え~、なんかオシャレヘアーの…

 

「コマさんコマさん!シュークリームもっとないの?」

 

「あのやたら美味しいやつ!」

 

「Pardon、今日はもう品切れしましタ、また明日デス」

 

ガキどもはシュークリームがないコトにガッカリしたのか、なら仕方ねぇぜーッ!と蜘蛛の子を散らすようにその場から去って行った…

 

そしてガキはこのフランス人をコマさんと呼んでいた、おそらくこのフランス人はコマさんと言う名前なのだろう、今、思い出した

 

「それで?コマさんはなんでこんなトコでガキどもにシュークリームなんか売っていたのかね?」

 

「Non、Pas à vendre、配っテいましタ」

 

「は?」

 

「最近RichelieuがChou à la crème作りに凝っテいるらしくテ、あまりに大量に作るのデこうしテLes enfantsに配っテいるのです」

 

「ふ~ん」

 

コマさん曰く、ある晴れた日、唐突にコレだわーッ!と読んでいた雑誌を投げ捨て、それからと言うものまるで何かに取り憑かれたかの如く一心不乱にシュークリームを作り出したらしい…

 

しかし、リシュリュー的には未だに納得のいく品が作れていないらしく、数多の試作だけが大量生産されているのだと…

 

「正直、困っテます」

 

コマさんだけに困っている、ん~…名言だな、コレは

まぁ、小粋なテイトクジョークはいいとしてだ、コマさん的にもガキどもに毎日毎日今日は無いのか?あのやたら美味しいシューは無いのかーッ!とまとわりつかれて少々疲れているそうな

 

「なるほど、よし……俺からリシュリューのヤローにビシッと言ってやろうじゃあないか」

 

「ホントですか?助かります!」

 

「ガハハハハ!困ってるコマさんを助けるのは当然じゃあないか?何故なら俺は提督だからね!」

 

◆◆◆

 

「………違う、コレじゃないわ」

 

困っているコマさんの悩みを解決するべく、海外艦の住むインターナショナル寮、その調理場へとやって来た俺…

 

その調理場では、まるで獅子のタテガミのごとき豪奢なキンパツをぶわぁーっと靡かせつつ今しがた完成したらしいシュークリームを壁にブチ撒けるリシュリューが居たッ!!

 

「Vous!違うわ!こんな味じゃあまだよ!」

 

「オイコラ、リシュリュー!ナニやってんだテメーは!シュークリームを粗末に扱うんじゃあない!」

 

「…?あら?mon amiral…?ナニか用かしら?」

 

「ナニか用かしら?じゃねぇよ、テメーが無駄にシュークリームばっか作ってコマさんが困ってるってんでこの俺が直々に貴様に制裁を下しにきたのだよ」

 

「セーサイ…?あ、そう………アトにして頂戴」

 

リシュリューは再びブツブツと念仏でも唱えるようにアレは違うコレは違うとか言いながらこの俺からそっぽを向いて調理台を前にしている

 

…コケにしやがって、この俺をシカトとは随分とエラくなったものよのぉ、ウチに来たばかりでメソメソしていたあの頃のヤツとは違うと言うコトか

 

「オイ、くだらねーシュークリーム作りなんぞどうでもいいんだよコラ?こっち向けコラ、修正してやる」

 

「………くだらない、ですって?」

 

“くだらない”と言う言葉に反応したのか、リシュリューはゆらりとこっちを振り向いた…

 

な、なんだ…?この寒気、いや、プレッシャーか!この自称最強戦艦が私にプレッシャーをかけていると言うのか!

 

このプレッシャー……以前どこかで似たようなプレッシャーを感じた事がある、そう、アレはたしか食堂だったか?腹が減っているのにやたらと待たされ、間宮の野郎にチャーハンくれーさっさと作れやデブ!と文句をつけた時だったか…?

 

「この戦艦Richelieuが金やちやほやして欲しいが為にChou à la crèmeを作っていると思っているのー!!」

 

ダァン!!(テーブル・ダァン!!)

 

「私はね!mon amiralに“美味しい”って言って貰う為に作っているのよ!!いい?Délicieuxよ!」

 

「お、おう?」

 

ナニ言ってんだコイツ…?イカれているのか?

 

「フーッ………!でもダメね、こんなのじゃダメだわ、まるでダメ!まだamiralに食べさせる味には遠いわ、美しさがない、気品がない、愛情がない、こんなものはただのクリームが入ったパイよ」

 

「そ、そうか?いや、俺は食ってないがガキどもはワリと美味そうに食っていたが…」

 

「Ne te moque pas de moi!!馬鹿にしないで頂戴!まだ私には足りないものがある、そう……足りないものが、それが一体何なのか?クッ!わからない!わからないわ!!C’est très frustrant!」

 

リシュリューは再びテーブルをダァン!し、少し疲れたわと言って調理場を去って行った…

 

い、いったいヤツに何があったと言うのか…?実家のお母さんに電話してみるべきか?

 

◆◆◆

 

甘いモンも辛いモンも売ってる意識と価格の高いスイーツショップ、マミー屋

 

「へぇー…リシュリューさんが」

 

「卿の意見を聞きたい」

 

リシュリューの乱の翌日、俺と秘書艦髪の長い奴はティーを飲みつつ先日のリシュリューの謎について話し合うべくマミー屋へとやって来た

 

「コーヒーとエクレアくれ、二人前」

 

「本日のオススメは“冬のスペシャルパフェ-アース&ファイヤー&アイス-です」

 

「コーヒーとエクレアくれ、二人前」

 

「本日のオススメは“冬のスペシャルパフェ-アース&ファイヤー&アイス-です」

 

「コーヒーとエクレア二人前、モタモタすんなデブ、その安産尻に電流バチバチディ●ドーぶち込まれてヒーヒー言わされてのーか?」

 

「伊良湖ちゃん、青龍刀持って来て、青龍刀、そこの棚の一番上にあるやつ」

 


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