【登場人物】
提督(大人)
提督とはなんぞや?
五月雨(サミー子)
役職ですかね、たぶん
秋雲(秋雲さん)
アツい少年漫画を描きたい少年漫画家志望、好きな漫画家は本宮ひ●し
かつて、海軍中央司令部には“深海進化研究室”と呼ばれる部署が存在していた
この部署は海から現れた謎の生物、深海棲艦の生態を調査・研究し、その進化の謎を解明する事を目的に設立され、多くの有用性あるデータを解析するなどのたしかな実績を作った…………が!
この“深海進化研究室”と言う部署は突如として抹消された
その理由は、不明
…当時を知る古参将校達の中にはその理由を知る者も居るが、おそらく生きている限り真実を語る事はないだろう…
◆◆◆
「はいもしもーし?ハンサムな提督で………なんだ、大将殿か、はいはい、なんすか?はい?いえ、違います、ウチはピザ屋です」
迫り来る春の気配を徐々に感じずにはいられない二月の執務室、たまに鳴る軍の回線を使った固定電話は大抵ロクな用件ではないが、その中でも、大将殿からの連絡は最もロクな用件ではない…
しかし俺も大人だ、大人とはイヤだイヤだと言いつつも清濁併せ呑むものが大人であり、社会の歯車とはいつだって替えの利くパーツである…
過ちに葛藤する若さをとうに失い、過ちをただ認め、次の糧にする大人である俺は大将殿からのロクでもない用件に一応の相槌を打ちつつ受話器を電話器に置いた
「何の用事だったんですか?」
「さぁ?よくわからんが昔、大将殿が左遷した誰かが最近見つかったとかなんとか、よくわからん話だった」
「へぇ…」
…まぁたぶんアレだな、これは次の長編回のフラグと言うヤツだろう、たぶん
「とりあえずコーヒー淹れてくれや、コーヒー、アツいヤツ」
「コーヒーですね」
秘書艦サミー子にコーヒーを注文しつつ、朝買ってきた基地スポを広げて今日のアツいエキサイトなNEWSをチェックする…
「サラトガ完全復活!最強主砲が今年も火を噴く、か…」
今年もアツいシーズンの開幕が迫っていると言うワケだな、あとは〜…大鯨ホエーヌズ今季も好調か?勝利の方程式を大いに語るか…
「コーヒーです」
「ありがとう」
いつもの見た目は普通、味はクソマズのサミダレブレンドが俺の前に置かれる………うむ、見た目、普通……香り、普通…そして味だが…
「………相変わらずオマエの淹れるコーヒーはマズいな」
「失礼な」
口いっぱいに広がる不快感と吐き気を催すハーモニー、しかし、とてもじゃないが飲めたものじゃないとは一概には言い切れず、我慢すれば飲めるレヴェルな奇跡がこの一杯にはある
「サミダリューン、卿は“平和”とは、なんだと思うかね?」
「平和ですか、そうですね…パチ●コメーカーでしょうか?」
「よく知ってんな、オマエ、パチ●カーか?」
「違いますよ、ジョークですよ、小粋なサミダレジョーク」
ナニが小粋なサミダレジョークだよこの青髪ロングは、シレッとしたツラしやがって…
「まぁジョークはいいとして、そうですね………争いもない、奪い合いもない、他者を想いやり理解できる世界ですかね」
「それが卿の考える平和か」
「まぁ、だいたいそんな感じじゃないんですか?提督は違うんですか?」
「いや、概ね卿と同じだ」
そして、この光溢れる地上に人類と言う種がいる限り争いは決してなくならない、人と人は争わずにはいられないのがDNAの定めしカルマ、つまりは真の平和とは人類……いや、全ての生きとし生ける者を根絶しなければ訪れる事はない死の世界なのだ
「その平和のくだり、大将殿の電話と何か関係あるんですか?」
「いや、まったくない」
◆◆◆
たまにはティーでもしながら俺と浜風ちゃんが仲良くなる為の冷静で的確な意見をアツくディスカッションしようとマミー屋へやって来た俺とサミー子…
「本日のオススメはありません」
「ないのかよ!」
新しいパターンだな、いつもは執拗なぐらいオススメしてくるのに…
間宮曰く、今日はどうしても必要な材料が手に入らず、別の同じ食材で代用するのはA級グルメ給糧艦である彼女のPRIDEが決して許さない為、本日は何もオススメしないそうな…
「私はね、皆さんに“本物”を味わって欲しいんですよ、まがいものには決して出す事ができない“本物”だけが持つ本物”の輝きを!」
…大したグルメ給糧艦だ、ただケツのデカいだけの給食オバちゃんでは無いと言うコトか
「伊良湖ちゃん、包丁持ってきて」
ーーー
心を読むタイプの能力を持っていたらしい間宮から危うく包丁で滅多刺しにされるかされないかの恐怖の攻防を乗り越え、適当な席にでも座るかと店内を歩いていると、隅っこのテーブルで変なのがうなだれていた…
「なんだアレ?」
「秋雲さんじゃないですか?たぶん」
なるほど、妙にラフな格好しているがあの刺突性のスピアーのような髪、たしかに秋雲だ
秋雲だが……ナニやってんだコイツ?死んでいるのか?死ぬなら部屋で死ねよ、部屋で、迷惑な野郎だな
「オイ、オイ秋雲、秋雲センセーさんよォー?ノックしてもしもぉーし?」
俺はうなだれている秋雲の頭をバシバシと叩いた
「痛い……痛い、痛てぇーっすよ!なんなんすか?って……なんだ、テイトクとサミー子ちゃんっすか」
「なんだとはなんだ、テイトクがハンサムじゃあいけないのかね?」
「ハンサムとか言ってないし、お2人もティーですか?」
「ご覧の通り、ティーだが?」
「ふ〜ん、仲良いんすね、デキてるんすか?ゲハハハ」
「オッさんか、オマエは」
ゲハハハハ!なんて笑い声は今日び山賊か野盗ぐらいしか聞かねぇぞオイ、オークだってもうちょい上品に笑うわ
そんな山賊王秋雲にまぁ小粋なジョークはいいとしてと相席しねーっすかと誘われ、断る理由も特にないので俺たちはそこに座った
「で?なんでうなだれてたんだ?オマエは」
「いや、ネタに詰まって…」
「ふ〜ん」
この秋雲、趣味で漫画を描いており、常々海軍なんてヤ●ザみてーな仕事を抜け、プロの漫画家になりたいと夢を見て努力している…
「最近ジャ●プもアレが人気らしいしな、アレみたいなの描いたらどうだ?アレ」
「アレっすか、実は秋雲さんアレ読んだコトないんすよ、なんか古鷹さんがどハマり中らしーっすけど」
「へぇ、古鷹さんが…」
「まぁ古鷹さんはミーハー寄りですからね、新しいのに敏感ですよ」
ミーハー寄りか、サミーのヤツ、なんて容赦のない冷静で的確な意見を…
「ってか秋雲さん、アレ読んでないんですね」
「チラっとは見たっすよ、ただ、最初はまたジャ●プには相応しくねー漫画が始まったなオイ、こりゃ10週打ち切りだなガハハハ、って舐めてた」
「俺もな」
「2人して見る目ないですね」
「やかましい、オイ秋雲、オマエこの青髪ロング子に舐められたままでいいのか?あ?なぁ?違うよなオイ?俺はよぉー秋雲、オマエならデキるって信じてるんだぜぇ〜…自信を持てよ秋雲ォー、オマエならデキる、オマエならワ●ピースを終わらせるジャ●プの新しいカンバンになれると俺は信じているんだぜーッ!」
「て、テイトク……そこまでこの秋雲さんのコトを…ありがてぇ!ありがてぇ!」ポロポロ…
「よぉし!今日は秋雲の新しい
「よぉーし!!なんか元気がMORIMORI湧いてきたっすよぉー!パフェ食っていいっすかーッ!」
「よっしゃ!食え食え!遠慮なんかすんな!ア●ルからスライム浣腸されてまるで妊娠したみてぇーにお腹がパンパンになるまで食え!ガハハハハハ!」
「ヒュー!テイトク、ボテっ腹ーッ!ガハハハハー!」
この日、財布がカラになるほど食った秋雲はお腹をくだし、翌日はトイレと友達になったらしい