【登場人物】
提督(メガネ男子)
データ通りです
香取先生(メガネ先生)
データも大事ですが全てではありません
鹿島先生(ドスケベエロボディ先生)
いささか趣味がアレな先生
「…はぁ?劇ですか?」
「はい」
新型ウィルスの蔓延に列島震撼の今日この頃、天気も良いしたまには真面目に仕事でもするかと執務室で申請が必要な書類やらキャバクラの領収書やらを上手に処理していると、今日もメガネがステキな香取先生がやって来た…
「不思議なコトに鹿島が俄然やる気になっていまして…」
「ほぉ、鹿島先生が…」
今日もメガネがステキな香取先生は駆逐艦のクソガキどもにアツい熱血指導をしてくださる素晴らしい先生であり、これからの明日を担う若者達に未来へ羽撃き、1人1人が自分達の思う通りの未来を掴んで欲しいと心から願う素晴らしい教育理念を持っていらっしゃる…
そんな香取先生が、春のアツい教育オリエンテーションの一環としてクソガキどもに演劇をやらせてはどうかとの相談に来たワケだが…
もちろん俺の答えはYESだ
香取先生の素晴らしい提案を却下するなどあるハズがない、香取先生はいつだって生徒の今、そして未来を事を考えてくれている、まったく……香取先生のアツい教育魂はいつだって俺の心をアツくしてくれるのだよ
「ちなみに演目は決まっているのですか?」
「えぇ、鹿島が言うにはサイユウキとか…」
「ほぉ、サイユウキですか…」
定番オブ定番なMOMOTAROやSHIRAYUKIじゃないんだな…
「しかし鹿島先生が俄然やる気とはまた珍しいですなぁ」
「えぇ、不思議なコトに」
いつもはメンドくさがって積極性が無い妹なんですけどと香取先生は小粋なジョークを交えつつエレガントに笑った
たしかに、香取先生に比べると鹿島先生はアツい熱血指導とは言い難いところもあるが、あの立ってるだけで色気ムンムンなむしゃぶりつきたいランキングNo.1の激エロボディは積極的と言わざるを得ない、むしろこっちのギンギン丸が積極的になってしまうね!
「それで、劇については鹿島の方が自分で準備とか色々となんとかすると言ってましたので、おそらく鹿島から提督になにかしらご相談があるかと…」
「わかりました、その際はもちろん相談を受けますよ、ハッハッハ」
「ありがとうございます」ニコッ
まったく、香取先生は笑顔もステキでいらっしゃる!
◆◆◆
香取先生から劇がどーのこーのとお話を聞いてから数日後、明石の店で菓子パンと缶コーヒーでも買って喫煙所にでも行くかと廊下を歩いていると、体育館の方からナニやら元気な声が聞こえてきたので覗いてみると、壇上に誰かが立ってヨロシクオナシャースとアイサツしていた…
「えー……陽炎姉妹の天津風ちゃんですか」
「ハハハ…天津風ちゃんですか、ハハハ…」
そして、壇上を見上げる形に置かれた長机に、珍しくメガネをかけた鹿島先生……と、古鷹さん?あと陸奥か、ナニやってんだアイツら?審査員か…?
「では三蔵役のオーディションを始めます、どうぞ」
なるほど、劇の役を決めるオーディションか…
なかなか本格的じゃあないか、鹿島先生は手元の書類をチラ見してからメガネをクイッ!として壇上に立つ天津風にどうぞと演技を促し…
「い、行くぜ野郎どもォー!!」
天津風の元気な声が体育館に響いた…
「ハイ、ありがとうございました、もういいです」クイッ!
「え…?も、もう終わり…?」
「ハイ、もう結構です、お帰りください」
…天津風はありがとうございましたとキチンと頭を下げ、確かな手応えのなさに肩を震わせ、トボトボと階段を下りた…
「やはり天津風ちゃんでは声が可愛いすぎますね」
「そうですね、イメージと真逆すぎます」
「まぁ、見る前からわかってたわね」
審査員席からの容赦の無い鋭利なナイフッ!!厳しい!たかがガキどもによる楽しい劇の役選びなのにあまりにも厳しい!!
「鹿島先生、駆逐艦の子達では近付けるイメージに限界があると思います、やはりここは軽巡、もしくは重巡まで幅を広げてみるべきでは?」
ナニ言ってるの古鷹さん!?
「まぁ、正直三蔵役は駆逐艦の子達じゃ厳しいわね」
そして陸奥も同意見ッ!
「そうですね、そうなると姉さんや提督に相談しないと……えぇ、わかりました、相談してみます」
鹿島先生はメガネをクイッ!として書類を机に置いた
………いやいやいや、ちょっと待て、なんだこのオーディションは、なんかおかしいぞ?三蔵役のイメージってなんだよ、これは楽しいオリエンテーションじゃあないのか?
そんなコトを考えていると、俺の背後から何者かが声をかけてきた…ッ!
「こんなトコで覗きでもしてるんですか?」
「誰が覗きだ!って……なんだ、サミー子か」
「なんだとはなんですか、私は鹿島先生に呼ばれて来たんですが…」
「鹿島先生に…?」
なんだ?コイツも劇に出るのか?と考えていると、サミーはさっさと扉を開けて体育館の中へと入って行った
「お疲れ様です、どうですか?」
「あぁ五月雨ちゃん、よく来てくれ……あ、提督も一緒なんですか?」
「いえ、たまたま会っただけです、そこでずっと中を覗いてましたよ」
失礼な言い方ァ!!!あのクソ青髪ロングがァ!!
「オイ!失礼な言い方すんなコラ、俺は通りがかりにチラっと見てただけだ」
「ジョークですよ、小粋なサミダレジョーク」
ナニがサミダレジョークだ、この野郎が、肩甲骨ブチ割って上半身を腰寛骨まで鯵の開きのように裂いてやろーか…
「お疲れ様です提督」ペコォ
「あ、お疲れ様です、鹿島先生」ペコォ
今日も鹿島先生は大変お美しい、そしてスゴく良い匂いがする……まったく、鹿島先生の体臭は催淫効果でもあるんじゃあないだろうか?
「それで……提督、早速なんですが少々ご相談が」
「鹿島先生、俺もちょっと確認したいコトがあるんですが」
「はい?なんでしょう?」
「…劇の演目は、サイユウキ、ですよね?」
「ハイ、サイユウキ、です」
………西遊記、それは、三蔵法師と三匹の下僕が遥か西、天竺へありがたい経文を取りに行くお話で、その旅は笑いあり、涙あり、冒険ありの胸ワクワクで摩訶不思議なとびっきりのアドベンチャーである
「しかしどうしても駆逐艦の子達では三蔵役のイメージか合わなくて……やはり三蔵は一味のリーダー的存在でありオトナの魅力がどうしても外せないんです」
「えぇ、そこはどうしても妥協できませんね」
鹿島先生と古鷹さんはわかっている風に頷き合っている
「今回のオーディションに当たり、有識者である陸奥さんと五月雨ちゃんの意見も取り入れてはいるんですが、やはりお二人もそこは妥協できないと…」
「ほぉ…」
………いや、わかるよ、たぶん齟齬があるコトはわかってる、鹿島先生が珍しくやる気、古鷹さん、陸奥、そしてサミーのアドバイザー、これだけの材料か揃っているんだ、俺の役職は提督、名探偵だ、もう謎は解けていた…
いや、わかっていた、本当はわかっていたんだ…
鹿島先生が目指しているのは、俺の言ってるサイユウキじゃあないコトは…