【登場人物】
提督(大人)
海風姉ちゃんには正直ムラムラする
山風(八女)
海風姉ぇはたまにイラっとする
「またよくわからん任務だな…」
「そうですね」
今年も菱餅を集めてどーのこーのか……相変わらず上は何を考えているのかまるでわからんのだよ
だが、まぁ任務と言われれば任務だ、ウチみたいな地方の基地はこーゆー細かい仕事もシコシコやって上からの印象を良くしておかなければならない
「…そういや菱餅って書いた箱がなんか倉庫になかったか?」
「ありましたね、去年のが」
「…食えるのか?去年の」
「さぁ?去年、適当にダンボールに入れただけですから…」
たぶんカビルンルンなんじゃないだろうか?っーか、なんで捨ててねぇんだよ、バカか?フツー廃棄するだろ、誰だよ担当者、見つけ次第怒りのスネークバ●トで壁メリ込みの刑に処してくれるわい
「まぁいい、とりあえず倉庫にでも行って確認してみるか」
「倉庫に行くなら買いだめしてるボールペンも持って来てください」
「やまかしい、オマエは俺のなんだ?あ?」
「部下…?ですかね」
「そうだ、オマエは俺の部下であり秘書艦であり、あの日、共にこの銀河の星々をこの手に掴むと誓った唯一無二の莫逆の友……違うか?」
「いや、そこまでではないです」
いやだわこの子ったら、なんてノリが悪い子なのかしら
◆◆◆
そんなワケで、去年の菱餅を探しに倉庫へと向かっていると、前が見えない高さまで積み上げたダンボールと毛のない猫を載せた台車がゴロゴロと廊下を進んでいた…
「なんだアレ?」
「…あ、テイトク」
「ナニやっとんのかね?」
改白露型の緑のシビスケェ、山風…
トゲトゲしい髪質とは対照的に、基本的には真面目で良い子ではあるが提督的にはどうにもこーゆー気難しくて多感な今風の子と言うのは苦手である
だが、苦手と言ってもこの基地に来た以上は俺のファミリーだ、仮にファミリーが敵の卑劣な罠で拉致されれば俺は全力を以てファミリーを救うだろう!
「…明石さんの店のバイト、時給180円」
「あのピンク、またクソみたいな賃金でこんな子供を…」
どうやら明石の野郎にはわからせてやる必要があるらしいな…
「…テイトクは、暇なの?」
「暇じゃない、俺は今から倉庫に行くのだよ、あと、言葉をもっとオブラートで包みたまえ」
「…私もコレ倉庫に持って行くところ、じゃあ一緒に行こう」
「別に構わんが………その台車を提督に貸したまえ、前が見えないまま運搬するのはよろしいコトではない」
「…でも、コレは私の頼まれた仕事だし…」
真面目かッ!!クッ…!白露姉妹とは思えないぐらい良い子だなオイ!一部の姉共にも見習ってほしいわい
「いいから、ほれ!山風クンはこのキモいのだけ持っておきなさい」
俺はダンボールの上に載っていた毛のない猫を掴んで山風の頭にライドオンしてやった
「…キモくない、よく見なくてもかわいい」
「へいへい、キモカワキモカワ」
ーーー
その猫、名前あんの?ネコ、そんなくだらない話をしながらやって来た基地の倉庫、ここは昼間でも薄暗く、夏でも妙に寒い…
「えー………どれだ?」
さて、どの箱だったかな、たしか箱に菱餅とか書いた気もするが去年のコトなどイチイチ覚えてない
「オイ山風クン、菱餅って書いた箱があったら教えてくれ」
「…わかった」
とりあえず適当な箱を開けてみるか、この箱は〜……違う、二次元アイドルグッズか、じゃこっちは〜……こっちもう●プリか、違う、じゃ…こっちの箱は〜……ホ●ドリか
「っーかなんだこの大量の箱はッ!!明石の野郎ォ!!基地の倉庫をなんだと思ってやがるあのクソピンクがァー!!」
「…テイトク、コレ、なんか服が入ってる」
「あ゛ぁ?」
山風の取り出したのは緑と黒の市松模様の羽織みたいなアレ……ちなみに、箱には鬼●魂と書いてあった
「パチモンかッ!!っーか多いな!鬼●魂の箱っ!」
「…鬼●治もあるよ」
明石の野郎、ここぞとばかりに仕入れてやがる…っ!そういや最近、明石の店の前にクレーンゲーム置いてガキどもがキャッキャ言いながらやってたな…
本来なら、明石に1わからせカウントをつけるところだが、
まぁいい、許そう、パチモンのアン●ンマン以外は全て許す、工作艦明石、ヤツもまた俺と同じ“大人”だからな
過ちを認め、次に活かす、それが大人の特権だよ
「チッ、まぁ明石のヤツにはあとで制裁を与えるとしてだ………ないな、菱餅の箱」
「…ホントにあるの?」
「ある!だって在庫表に載ってたから!」
たぶんある、だって在庫表書いたの俺だから!まさかミスってるとかバレたら青髪ロング子に鼻で笑われるコトは必至!そんな屈辱……ッ!俺は屈辱を与えるのは好きだが屈辱を与えられるのと陵辱は趣味じゃあない
「…あ、ネコがなんか見つけた、って」
「あ?ウンコか?」
「…違う、ネコがなんか見つけてる」
たしかに、山風クンの頭から離れたネコがなにやらダンボールの箱をカリカリしているようだが…
「…菱餅って書いた箱、コレ」
「マジか!」
マジか…!そ、そうか…!たしかに猫は人間に比べて鼻が良い生物!おそらくは腐った菱餅の匂いを嗅ぎ別けたのか!毛のないキモい猫だと思っていたが、なかなか良いヤツじゃあないか
「たしかにコレだな」
「…間違いない」
俺は箱を見つけた猫によぉーしよしよしよしよし!と頭をグイングイン撫でてやると、猫は不遜にも俺の手を叩きやがった
「…ちなみにこのネコは、私のネコ」
「そうだね」
「…私の飼っているネコが見つけたよ」
「そうだね」
「…ネコの飼い主は私、ネコだけが褒められるのは…」
………ハァン?なんだ、つまり山風クンも褒めて欲しいワケだな、よくばりさんめ!まぁいい、そんなシャイガールも褒めてや…
「痛っ!」
頭を撫でてやろうと手をやると、痛い!なんだこの髪質…ッ!まるでアロエみてぇーにトゲトゲしいぞ!
「………よくやった」
「〜♪」
…痛い、正直メッチャ痛いが、痛みに耐えるのもまた大人だ、あと、彼女にはトリートメントを勧めよう
「さて、ちなみに中身は腐った菱も……」
バ、バカな!!腐っていない!!丸一年、雑に放置していたはずなのになんと言う瑞々しさだ!まるで今、作りましたってぐれー新鮮に見えるぞオイ!!
「…腐ってなさげ?」
「あぁ、見た目はな」
そう見た目はだ、中身は腐ってるかもしれんが…
「そうだ、その猫に食わせてみるか」
「やめて」
「ジョークだよ、小粋なテイトクジョーク」
こうして無事、去年の菱餅を発見した俺はそれを回収し、菱餅探しを手伝ってくれた山風クンには明石の店で菓子パンとジュースを買い与え、明石には四連お腹パンチを与えた