不健全鎮守府   作:犬魚

686 / 940
春の何もない平和なお話

【登場人物】

提督(ミジメな敗北者)
アレを多用するアレな大人

五月雨(秘書艦)
アレでわかるワケないでしょ


提督と五月雨と春の通常営業

マスク不足と言う名のマスク・ジ・エンドに列島が悩まされる昨今…

 

「あー…そろそろアレの時期だなぁ〜、なぁオイ」

 

「アレ…?」

 

特にやる事もない春の執務室、週末には意味も目的もなくレモンステーキでも食べに行くのもいいだろうと考えつつユーキ●ンの資格カタログを読んでいた俺はふと、あるコトを思い出した

 

「アレだよアレ、ほら、アレだよ」

 

「アレアレ言われてわかるほど私も提督とツーカーではないんですけど…」

 

「アレだよ、大威震八連●制覇」

 

「…はぁ?」

 

大威震八●制覇…

三年に一度行われる当基地最大にして最恐最凶の修羅業行!八人一組の二チームで戦う団体戦をそれぞれ趣向を凝らした闘技場で行い、勝敗はどちらかが全滅する事で決するまさに生き残りを賭けた死闘の中の死闘ッッ!!

 

そして、戦艦金剛はこの大威震八●制覇を三回連続で制し、この基地において“帝王”と呼ばれる程の強大な権力を持つに至っている…

 

「そんなのやってたんですか?」

 

「やってたよ、ほら、今期予算に載ってるだろ?」

 

金剛、ヤツの増長を許したのは我が身の不覚と言えなくはないが……まぁいい、今年こそヤツの鼻っぱしらをへし折ってやるわい

 

「あ、ホントだ」

 

「大威震八●制覇だってタダじゃないんだからな、ちゃんと予算と予定組んで前々から準備してるんだぞ」

 

「へぇ〜」

 

「ナニがへぇ〜だ、他人事か…ッ!」

 

「他人事です、ってかそんな物騒なイベント、土下座で頼まれても出ませんよ」

 

「バッキャロォー!!オマエが出ないなら誰が出るんだよ!誰があの金剛をギャ・フーンと言わすんだ!」

 

「由良さんにでも頼めばいいじゃないですか?あの人、なんだかんだ言っても提督が好きみたいですし、土下座して頼めば頭踏まれて“ふーん?提督由良にお願いするんだー…へぇー…そんな無様な格好までしてー”とか言って散々ドS発言で罵倒した後に“ね?”って言って了承してくれますよ、たぶん」

 

「最後の“たぶん”で全部台無しなのだよ」

 

むしろあの由良さんが俺に好感を持ってるとか考えただけで吐きそうになるわい

 

俺と由良さんの間にあるのは、自分の利益の為ならさっきまでの仲間を裏切る事も躊躇わない、むしろ進んで地獄へ叩き落とすと言う感情のみ、まぁ……ある意味では好感を持てるが

 

「フーッ〜…まぁいい、とりあえず腹減ったしメシでも食いに行くか?」

 

「そうですね」

 

ーーー

 

今日はなんの気分?麺類ですかね?そんなくだらない会話をしつつやって来たのは基地の近所にある定食屋…

うどん、そば、丼物、定食、迷ったらジョ●フルかここに来ればだいたい大丈夫な安心感を与えてくれる…

 

「今日はBUKKAKEにすっかなぁ、オマエは?わかめうどん?」

 

「そうですね、たまには天麩羅うどんにでもしましょうか…」

 

店のおばちゃんにおろしBUKKAKEうどんと天麩羅うどんを注文し、お冷でも飲むかとグラスに注いでいると、見知った顔が入店して来た…

 

「あ、テイトクと五月雨ちゃん、奇遇ですね、お二人もお昼ですか?」

 

「ご覧の通り、お昼だが?」

 

「こんにちは、夕張さんもお昼ですか?」

 

最近新たなステージへと上り、唯一無二の5スロット軽巡と言う個性を獲得した戦慄のヘソチラ軽巡夕張、まぁ、むしろヘソチラではなくヘソモロだが…

そんな夕張は奇遇ですねーとヘラヘラしつつ、自然な流れで俺たちの座る席に相席した

 

「おばちゃーん、天麩羅そばー」

 

「オマエ天麩羅そば好きだな」

 

「そうですかね?まぁ、他のも食べますけど…」

 

いつも天麩羅そば食ってる印象しかないが、まぁ、好きに理由なんていらない、特に理由はなく自然な流れで好きなのだろう

 

「そういや提督、マニラ沖とかなんとかお達しが来てたみたいですけど、アレどうなったんですか?」

 

「アァ?あー…アレな、長門と陸奥がなんとかした」

 

「なんとかしたんですね」

 

今回、上からのお達しである作戦海域…

なんとたった1海域を制圧するだけで夢の甲勲章に手が届く!とあって世間の真面目な提督さんは目の色変えて海域に挑戦しているらしい…

 

そんなつまらないコトを考えていると、BUKKAKEうどんと天麩羅うどん、そして天麩羅そばが運ばれてきたので俺達は食材と神に感謝のいただきますを言って食事を開始した

 

「オマエそば派なの?」

 

「ふあぃ?………げふっ、そ…そうですね、まぁ、そば派と言えばそば派ですかね」

 

「ふ〜ん」

 

夕張とそばか……なんだろうな、合うと言えば合う、妙な安心感があるな

 

「ちなみに自分でも打てますよ、今度作りましょうか?」

 

「へぇ〜…」

 

意外と言えば意外だな、しかしコイツ………たまにバカ装備作ってくる以外はワリと謙虚で真面目なんだよな

 

「もしマズかったらテメーのケツを麺棒で滅多打ちにするからな」

 

「大丈夫です!たぶん美味しいです」

 

 

後日、そばの材料が無かったので代わりにオムライスを作った夕張だったが、味自体は普通に美味く、サミーも普通に美味と言っていたから侮れない…

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。